英語講師の仕事の息抜き日記

教室や身の回りで起こる、ちょっとした出来事を書き綴ってみました。
あなたの仕事の息抜きにお寄り下さい。

海外で暮らすための二つの要素

2005-10-28 12:12:04 | Weblog
Photo: The Miura Peninsula, Japan

何年か前のこと、新聞か雑誌の投稿にこんな意見が紹介されていました。

先日、XX駅のエスカレーターに子供と並んで立っていると、後ろから来たビジネスマンに退くように言われた。次から次へと人が来て、子供と並んで立つことができなかった。エレベーターの片側を空けるように、とはどこにも書いていない。最近そういうエスカレーターが増えているようだが、小さな子供がいる親は並んで立つのが安全だから、そういうことはやめて欲しい。

こんな内容だったと思う。ただ、トーンはもうちょっと不満、というか怒っている感じだった。

この方の意見には賛否両論があると思うのですが、わたしがこれを読んですぐに思ったのは、この人はもし海外で暮らすことになったら、苦労するだろうな、ということ。

わたしたちは、明文化されていない暗黙のルールの中で生活しています。表示や張り紙があるわけでもない、ルールブックがあるわけでもないのに「そういうことになっている」ということがたくさんあります。

たとえば、ある場所のトイレはフォーク並びだけれど、別のトイレはそうではない。ある職場のあいさつは、いつでも「おはようございます。」会議の時のあの席は誰々さんが座る席。出張へ行ったらその土地のおみやげを買って帰る、などなど。人が集まって生活していると、いつの間にか誰が決めたわけでもないルールが出来てきます。それをたまに親切な人が教えてくれる時もありますが、自分で「気付く」ことが要求される場合が多いです。

それができないと新しい環境になかなか馴染めなかったり、「どうして、わたしの前の職場では . . .」と自分の中の常識を回りに要求し、恥をかいたり、痛い目にあったりします。

エスカレーターの意見の投稿者の心には「小さな子供を持つ親はエスカレータに並んで立つ」という常識があり、おそらく普段は使っていないXX駅にもその常識を通そうとしたために摩擦が起こってしまったのでしょう。

わたしはたまたまXX駅を知っていたのですが、そこはまわりに多くの会社が集まる場所で、私鉄とJRの乗り入れがあります。そこのエスカレーターは乗り換えの人がいつも列をなし、右側は急ぐ人が足速に登っていきます。その女性はその駅での暗黙のルールに気付かなかったのか、または気付いても受け入れられなかったのかもしれません。

海外で生活するということは自分の常識を覆すような暗黙のルールの海の中に入るようなものです。職場や学校、ショッピングセンターや美容院。いたるところに「そういうことになっている」という決まりのようなものがあり、最初は戸惑います。戸惑いながら、失敗を繰り返しながらも「そういうことか」と受け入れていく人もいれば、「どうしてよ!」と不満をひきずり、なかなか環境に馴染めず、ストレスをためてしまう場合もあります。

ですから、外国で暮らそうと言う人は、暗黙のルールに敏感な方がいいかと思います。また、たとえ敏感でなくても、ルールを知ったあとに、「そういうことなんだ」と受け入れる心の柔軟さがあった方が本人にとって楽だと思います。

多少の疑問や不満を持つのは全く自然なことだと思いますが、結果として自分の常識とは異なる「その場の常識」を前向きに受け入れる姿勢がないと必要以上に苦労することになるでしょう。

そして、この「暗黙のルールに気が付く力」と「自分の常識と異なる常識を受け入れる柔軟性」は実は語学学習においても重要な要素なのです。次回は、このことについて、わたしが教えている大学1年の学生が投げかけた英文法に関する疑問とそれに対するわたしの返答をご紹介したいと思います。

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