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遠藤雷太のうろうろブログ

何かを観たら、とにかく400字または1000字以内で感想を書きつづるブログ。

レポート「崖の上のポニョ」(DVD)

2009-10-30 20:25:06 | DVD・VHS・動画など
 ようやくDVDで見た。人づてに聞く限り、結構な「問題作」らしいので、恐る恐る。

 結果的には「面白かった」という感想。

 ただ子供向けの作品と言えるかどうかはよくわからないとも思った。
 子供を主人公にすれば子供向けになるというわけではない。この映画には「子供の能力の限界」がわりと正確に描かれているので、子供目線では感情移入しにくいような気がする。大人目線で見れば「子供っぽくてかわいい」になるとは思う。男の子はあくまで「いい子」であって、本当に子供が感情移入するような主人公としては難しいかもしれない。パズーやキキのほうが子供には感情移入しやすいはず。

 また、いたるところで違和感が残る。
 ポニョの姿がシュールすぎること、妹が多すぎる、ポニョの母親が海と一体化しているわりになんだかケバい、形式的過ぎるラスト、明らかに心配な二人のその後、母親のリサのほうが魅力的に見える、世界の何が危機だったのか、などなど。
 説明が足りないのは、そういう見せ方もあるので別にかまわないが、それにしてもあちこちに変な「ざらつき」がある。

 どうもファンタジー世界と現実世界の繋がり方がうまくいっていないような気がする。
 ポニョの父親が魔法使いでそれっぽい姿なのだが、名前が「フジモト」って普通の日本人風の名前じゃダメだと思う。あとでネットを見ると「海底2万マイル」乗組員の中に同じ名前の人間がいるそうだが、そんなこと見ている間はわからない。知識として知っていたとしても、なぜSFの世界の住人である彼が魔法使いになってしまったのか、よくわからない。

「トトロ」や「千と千尋」では、ファンタジー世界への入り口をわかりやすく見せていたが、「ポニョ」にはその入り口がほとんど描かれていない。日常の中にいきなりファンタジーが出てくると、映画のジャンルとしては「シュール」になる。

 そういうジャンルの芝居として面白かった。中途半端に「魔法」なんていう理屈付けはしないほうがよかったんじゃないだろうか。宮崎駿が「子供向け」を公言していたり、あの破壊的なテーマ曲も全部伏線で、子供の映画と思わせておいて実はそんな芝居だったと考えたほうが楽しく見られる。

 あれだけいる妹のうち成人になるのは何割なのかとか考えるだけでぞくぞくするもの。
コメント (2)
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レポート「平田オリザの現場⑦ バルカン動物園」(VHS)

2009-10-30 00:15:43 | レポート
 VHSで見る。たまたま疲れていたので、前半はほぼ寝てしまい、ちゃんと見たのが40分くらい。それで感想だなんてまじめな人には怒られそうだけど、「それでも面白かった」んだからしょうがない。

 舞台はとある大学の研究室。 猿を人間に進化させようという「ネアンデルタール計画」の研究を主にしているが、別にSFっぽい話ではない。 命への価値観の見本市。

 細菌を必ず全滅させてしまう大学生から予期せぬ妊娠をしてしまった大学院生まで、それぞれ異なる「命との付き合い方」があり、その違いを楽しむ芝居。細菌、植物、ラット、ニホンザル、チンパンジー、ボノボ、人間の子供…いろんな命との付き合いを眺めることができる。
 ニホンザルはダメだけどチンパンジーなら成功するかも…なんて研究者が言っているのは、さりげない分、こわい。

「命は大切である」というのは当たり前だけど、「命の大切さには差がある」という、みんなが思っていてもなかなか口に出せない真実を芝居にして語っているように思える。

 描き方にもずいぶん工夫をしている そういえば、既存の国旗の「描き方」を工夫しただけで、美術史に残る作品を製作した画家もいる。

「バルカン動物園」に限らず、平田オリザの芝居は距離感の芝居。さりげない会話の中に時々「飛び込んでくる」セリフがある。うまいアウトボクサーの試合運びを見るような感じ。「さわる」「つかむ」ではなんともなくても「なでる」だと心地よいという感じ。

 価値観の違いとその描き方を眺める芝居なので、話の展開には面白みはない。

 特に「オチのある話」に慣れてしまっている自分には、あのラストの絵は衝撃的だった。
 おそらくネタバレによる弊害はないと思われるので書いてしまうが、予期せぬ妊娠をしてしまった女性は、一人で最後にポテトチップスをただ黙々と食べる。食べ終わると研究室を出て行く。それで終わり。こんなシュールな終わり方はない。

 深読みすれば、食べることは生物の基本である。岐路に立たされた彼女は、生物としての基本に立ち返ることで現状の困難を克服しようとしているのである…と考えられなくもないが、やっぱりこじつけだな。ポテチだし。

 どう考えても展開は地味だ。
 なので寝てしまうのはある程度しょうがない。
 そうやって自分を正当化していきたい。
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