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遠藤雷太のうろうろブログ

何かを観たら、とにかく400字または1000字以内で感想を書きつづるブログ。

徳島市立高等学校『水深ゼロメートルから』(2020こうち総文)

2020-11-04 01:29:00 | 動画で演劇を見た(観劇三昧以外)

2020/10/25

水のないプールの掃除をする女子生徒たちが、女性としての自分と向き合う話。

本作だけ映画として作られている。

演劇を前提に作っている作品だから、どんなにうまく映像化しても問題が残るだろうに、それでも作るという創作への欲の深さは見習いたい。

空のプールで泳ぐ動作も、演劇くらい抽象化してないと見ていて心配になる。

生まれも育ちも北海道なので、水のないプールの絵が新鮮。

経験したことのない高校生活の日常が垣間見えるのは楽しい。

序盤は『アルプススタンドのはしの方』を思い出させる。

真ん中にいない人たちの話、野球部との対比、最終的に映像化。表面的な共通点は多い。

本作の場合、生理、大きくなる胸の厄介さ、男女差起因の理不尽、女性としての生きづらさをこれでもかと集めて描いているが見所。

もうちょっと整理できそうな感じもするけど、内省的な話に、同じく理不尽な外部の存在としての砂を合わせることで、うまくまとめられていた。

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愛知高等学校『井戸の茶碗』(2020こうち総文)

2020-10-28 01:29:00 | 動画で演劇を見た(観劇三昧以外)
愛知高等学校『井戸の茶碗』


2020/10/25

正直者の屑屋が、頑固な浪人から古い仏像を買い取って苦労する話。

小さな子供でも聞き取れるくらいゆっくり丁寧なセリフ。

話し方や動きの抑揚も大きめ、粗筋もしっかりしてるので面白さの敷居が低い。

お客さんの敷居が低いということは提供側のスキルが高いということなんだけど、だからと言って高文連みたいな勝ち負けがはっきりする場で、こんな緩く楽しめる人情劇で勝負できるものなのか。

単純化された見せ方のなかでも屑屋の演技の引き出しが多い。

千代田卜斎に20両差し出す時の動き、どっから出てきたんだ。

父親が娘を差し出すところ、落語なら古典だし語りだけだからそんなに気にならないんだけど、同じ大会の中でゴリゴリに女性の生きづらさを描いた作品があるのを見てしまうと、ちょっとノイズに感じてしまう。現代風の演出もあるので特に。

達観してるのか呆れてるのかよくわからない微妙な表情で座り続けている娘に笑った。
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劇団かふぇいん(土佐女子中学高等学校演劇部)『あやな先生のトランプ』(2020こうち総文)

2020-10-27 00:10:00 | 動画で演劇を見た(観劇三昧以外)

劇団かふぇいん(土佐女子中学高等学校演劇部)『あやな先生のトランプ』


2020/10/25

演劇部に劇団名がついてるのが面白い。大学のサークルみたい。

小道具が大きくてかわいい。

臨時採用の教師が今後の進路に悩む話。

文化祭の課題研究を決められないグループが、夏休みのある日、図書室に集まって何を研究するか相談する。

その中に311の影響で高知に引っ越ししてきた、はなちゃんがいる。

はなちゃんの一人語りはとても真に迫ってきてよかった。

ただ、全体的に10年後くらいに作者が読み返したら照れてしまいそうなセリフが多い気がする。

実際にある話なんだろうけど、現場で7年も実務こなしてるのに採用試験に落ち続けるなんて制度自体の欠陥としか思えない。

採用試験を受け続けるかどうかの悩みと、震災、貧困の問題はそれぞれ別の話のはず。

帰宅難民の話から、はなちゃん自身、母親の話、自分探しの話から、人はなぜ帰ろうとするのかというのがテーマなのかなと思ったけど、採用試験の話とうまくつながらなくて困った。

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埼玉県立川越高等学校『いてふノ精蟲』

2020-09-03 22:25:00 | 動画で演劇を見た(観劇三昧以外)

埼玉県立川越高等学校『いてふノ精蟲』


2020/8/28

東京帝大に画工として赴任した平瀬が、世界ではじめてイチョウの精子を発見する話。

実在の研究者を扱い、登場実物は大学の研究者ばかり。

いわゆる「高校生らしさ」のない作品。

逆に言えば、高校生であることの強みに頼らず、完成度の高い作品を作ったということ。

立体感のある舞台装置、とりあえず観ている人の感情に働きかけるツカミ部分、話の分割によるテンポアップ、わかりやすい人物造形、観客が見やすくなりそうなことは大体取り込んでいる。

平瀬、池野、牧野の主要三人も、日頃の訓練をうかがわせる、地に足のついた演技で魅力がある。

大学の研究と言っても、その瞬間を逃さないために、木の上で寝起きしたり、研究室を銀杏臭まみれにしたり、その過程は大変泥臭い。地味で地道な調査を積み重ねていく。

不遇だった偉大な功労者を、冗長な笑いや奇抜なことなしに、地道な積み重ねを以て讃える話が、きちんと評価されていることに感動する。審査員はいい仕事をしている。

(WEB SOUBUN)
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宇高演劇部『されど、ブヨは尻で鳴く。』

2020-08-28 10:02:00 | 動画で演劇を見た(観劇三昧以外)

2020/8/25

資金繰りに苦しむ男が、浪費癖のある息子を、ソフィストなる詭弁家に習わせて乗り切ろうとする話。

ギリシアの古典をやろうと思いつくことと、実際に上演まで持ってくることには雲泥の差がある。

しかも、単に上演するだけでなく、換骨奪胎してちゃんと自分たちが楽しいと思える段階まで再構築している、ように見える。企画倒れになってない。咀嚼力が強い。

原作は読んでないけど、ゼウスやソクラテスのような有名どころが出てくるのでなじみやすい。ゼウスの演劇的な処理がすばらしい。

劇中にインプロパートがある。高校演劇では初めて見た。

博打要素のあるノリが男子校っぽい。

どのくらい珍しいことなのかはわからないし、当たり外れはあって当然だけど、映像ではちゃんと一定水準を超えてくる。勝負強い。

関東大会までは行ったとのことだけど、更に全国を取りに行く気概もうかがえる野心作だった。



公演時期 2020/02/02

キャスト
神山太志/金子駿介/荒川皓佑/丸山生真/富崎智睦/丸山生真/富崎智睦/篠原宇人/後藤瑛大/猪狩和樹/梅田晴澄/吉原俊佑

スタッフ
作:アリストパネース("Νεφέλαι")/訳:高津春繁(岩波文庫「雲」より)/翻案:宮野鉄平・荒川皓佑・畑康博・宇高演劇部/【栃木県立宇都宮高等学校演劇部】演出:荒川皓佑・金子駿介/舞台監督:丸山生真/音響:石井樹矢・神谷春陽・金子駿介/照明:小山琉聖・荒川皓佑/大道具:丸山生真・神山太志/小道具:髙柳碧・神山太志・丸山生真/衣装:荒川皓佑・金子駿介・髙柳碧/顧問:畑康博・加藤雅彦

あらすじ
アリストパネースは、同時代の実在の人物や世相を風刺、揶揄することを得意とした喜劇作家である。彼の代表作「雲」が上演されたのは、古代ギリシア、紀元前423年のアテナイであるが、そこでは当時、ソフィストと呼ばれる弁論家の活動が盛んであった。彼らは弁論というよりも、金銭と引き換えに詭弁を教えるという面が強く、人々から悪いイメージを持たれていた。このソフィストたちの詭弁から、本当の哲学に脱皮する契機となったのがソークラテースであるが、当時の人々にとっては、彼もソフィストの一員に過ぎず、むしろ代表であると思われていた。

第55回関東高等学校演劇研究大会-茅野会場-上演24
茅野市民館マルチホール
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「LONELY ACTOR PROJECT特別編」(BLOCH AID24時間劇場イベントオンライン〜みんなの愛でBLOCHを救う〜)

2020-08-15 00:52:00 | 動画で演劇を見た(観劇三昧以外)

2020/8/12

お馴染みの一人芝居イベントを配信で。

恩田陸『みわ』。

男子高校生の恋の顛末を描いた話。

クリアな語り口とバネの効いた身体捌き。

ちょっと劇団柿喰う客の作品群を連想。

森舞子『テラリウム』。

運命の人と出会い、別れる話。

コミカル要素は控えめ。五七調を活かした進行と森さんの声質やリズムが心地よい。

今の時世との重なる終盤の言葉選びもうまくいっていたと思う。

桐原直幸『熱血鮫島刑事の事件簿』。

鮫島が新人と奇妙な事件を解決する話。

ステレオタイプをこなすにも技術がいる。

類型の多い作品なので最後の突飛な展開もアリかも。

ひらりそあ『祭はリバーサイド』。

女の子がデート相手と出会えない話。

信じるも信じないもあなた次第の井上悠介くんらしい題材。

演技が初々しさ込みで自然。

前後の説明が額縁代わりになっていて、オチのない話をきれいにまとめていた。

MCは野村大さん。

全然仕切る側の人ではないけど、人を安心させる声質と話し方はさすがだった。


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「プレイタイム ライブ配信のための演劇」

2020-07-13 23:50:00 | 動画で演劇を見た(観劇三昧以外)
シアターコクーンライブ配信「プレイタイム」

2020/7/13

付かず離れずの男女が愛を受け入れる受け入れないと語り合う話。ライブ配信を視聴。

岸田國士『恋愛恐怖症』を元に構成されている、森山未來と黒木華の(ほぼ)二人芝居。

とは言え、主役はシアターコクーンという劇場。

動画が始まると何かの機械内部のような狭い場所をウネウネ移動していく映像。

ちょっと知ってる人なら劇場の舞台裏だとわかる。

そのまま仕込みの様子、演者のウォームアップが映り込み、(おそらく)ワンカットで終演まで。

ミスがないどころか移動や画角の切り取り方にも違和感がない。

一体、撮影はどうやっているんだ。

劇場の裏側を見せることは、作品世界への没頭感が目減りするので諸刃の剣でもある。

それを圧倒的なカメラワークの技術で美しく見せる。

仕込み中に見えていた仕掛けが上演中に発動するところ。

前振りと回収の気持ちよさは、おそらく『カメラを止めるな』の面白さに近い。

映像ならではの魔法の掛けかたで、役者、戯曲の言葉、テクニカルを全てを使って、劇場をカッコよく見せていた。

多くの人が劇場という場に飢えているこの時期だからこそ、より効果的に楽しめる作品だった。


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ホシノポケット朗読公演『月夜のでんしんばしら』

2020-06-29 13:56:00 | 動画で演劇を見た(観劇三昧以外)

ホシノポケット朗読公演『月夜のでんしんばしら』


2020/6/29

宮沢賢治の『月夜のでんしんばしら』をzoomを使って6人で読む朗読公演。配信。

ヨミガタリニストマッツさんによる『注文の多い料理店』の序文の朗読で始まる。

ちょっと芝居がかった読みと、背景との合成、画質の粗さまでバランスが取れていた。

本編も画面の暗さや演者の視線、担当の振り分け、動きなど、テキスト外の見せ方が練られている。チューニングがうまい。

夜、少年が電信柱の列の行進を目撃する話。 

石川啄木の「かぞへたる子なし一列驀地(ましぐら)に北に走れる電柱の数」の影響があるらしい。

六人六様の良い声と、変わった状況、繰り返しのオノマトペがファンタジーとしておもしろい。朗読の楽しさを余韻にしてテキストに戻って読み返したりする。

朗読の良さと読書の良さは違うので、楽しみ方は合ってると思う。

むしろ、作品を知らない人は先に読んでいたほうが飲み込みやすいかも。

更に自分でも読んでおくと、読み手の技術が認識しやすいのでさらにオススメ。

(2020/6/13配信)

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G/PITライブ ‪空宙空地‬『如水』

2020-06-21 00:32:00 | 動画で演劇を見た(観劇三昧以外)

2020/6/20

薬剤師の女が、母親を死に至らしめた経緯を被告人として語る一人芝居。

最初に観たのが2016年に劇場で。その後は観劇三昧の配信で何度か観ている。

今回は名古屋の小劇場G/PITの上演をライブ配信で見る。

どうしても時間軸をいとも簡単に行き来しているように見えるおぐりさんに目が行く。

なごやんがつぶれているような汚い部屋で、若き日の「母」が楽しそうに飛び跳ねているところが好き。

最後の母→娘→母の切り替えが更に進化していて、もはや特殊効果のように見える。

もう人生の最後の最後で何もかも失ったように見える老婆と、そこに至る彼女の人生の豊かさが対比して描かれている。

決して後味のいい話ではないはずなのに、最終的には「人間すごい」に着地するからすごい。

日常の尊さを痛感する今の時期だからこそ、意味のある上演だったと思う。

(2020/6/11上演 アーカイブなし)

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札幌シェアター寄席「独りで演じるふたり会」

2020-06-19 02:58:42 | 動画で演劇を見た(観劇三昧以外)
 
2020/6/17

ジャンルも活動拠点も異なる2人がオンライン上で落語を披露しあう、配信ならではの催し。

札幌の舞台俳優の飛世早哉香さんは微笑亭乙姫として「たけのこ」を演じる。

演目は初めて聴く。検索してみると上方落語らしい。

塀をこえて生えてきたたけのこを、隣家からの間者に見立て美味しくいただこうとする話。

そんな見立てにつきあってくれるうえに、やれやれという感じで負け札を引いてもくれる隣のお武家さん、いいご近所付き合い。

たけのこお裾分けしてあげてほしい。

続いて東京を拠点に活動している飯干大嵩さん。専門は朗読。

演目は「長短」。気の長い長さんと気の短い短七が仲良くケンカする話。

淀みない語りでまくし立てる短七よりも、とにかく遅い長さんのほうがテンポ良く感じる不思議な聞き心地。

内容よりも語りの緩急で聴かせる。

本人の好みや、できるかどうかはさておき、どんな噺をやってほしいか想像するのも楽しい。

乙姫さんが「たちきり」やったらどんなになるんだろうとか。

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