「女流棋士」
筆者は高橋和である。
「たかはし・やまと」と読む。
プロのいわゆる女流棋士だった。
「だった」と記したのは今年の初めに引退したからだ。
彼女は私の高校の後輩である。
つっても六つも下だから当然直接知る由もない。
でも、高橋和という女流棋士がいて彼女が高校の後輩であることは前々から知っていた。
でもそれ以上のことは知らなかった。
この本を読もうと思ったのだって本屋でぱらぱらとページをめくっていたら私の母校のことを書いた章があったからだ。
曰く「鎌倉高校には『鎌ボケ』という言葉がある。優雅でのんびりした風景に体がなじんで、勉強どころではなくなってしまうのだ」
はーい!典型例でーっす!
「誰が言ったか知らないが『日本一の二浪校』と呼ばれていた」
やったー!日本一に貢献できたーっ!
(ちなみにこれは10年以上前の話で今では二浪は皆無らしい)
「県立であるにもかかわらず、禁止されることや先生に注意されることはほとんどない」
「私たちは本当の意味の『自由』を理解し、実行していたように思う」
「そんな、いい加減さと真面目さを兼ね備えたのが、鎌倉高校だった」
どうやら彼女は鎌高生活を楽しんだ口らしい・・・
こりゃあ読むべぇ・・・
と思って読んだのだが、なんのなんの・・・どうしてどうして・・・
高校の話などとは別に私は何度も目頭が熱くなる思いをした。
自伝的エッセーというがこれは母娘の壮絶な愛情の跡である。
彼女は4歳の時にトラックに轢かれ左足に障害を抱えている。
4歳といえば私の娘と同じ年だ。
長引く入院生活・・・繰り返される手術・・・
克明な記憶に驚かされるが、彼女の記憶を呼び起こしたお母さんの日記が本文中に記載されている。
その壮絶なこと。
事故にあったのを自分のせいだと責めて責めて責めまくる。
まさに悔恨が書き連ねてある。
そして娘の将来に対する不安も赤裸々に書いている。
「4歳、4歳なんですよ。私達のかわいいかわいい娘は。私は生命なんてちっともおしくはないのに。どうぞ私の命と引きかえに、和のかわいい足をおすくい下さい」
そして勝負の世界に身を投じながら感じる戸惑いを彼女は本書の中で告白する。
うん。
一人の女性の成長記であり、勝負師としての勝負録である。
魂、揺さぶられました。