イリアーデの言霊

  ★心に浮かぶ想いのピースのひとかけら★

黒龍王(17) 虹霓教の木偶をやめ、羅剛の正妃たる人間になれ

2007年11月26日 16時55分02秒 | 小説

 その名を近隣諸国に轟かせ帝国になろうとしている侈才邏王国の“真に健気な美人”現国王・羅剛は、恋する冴紗を霊峰・麗煌山の頂にある虹霓教総本山の大神殿に拉致監禁され取り戻した時には、冴紗は宗教的洗脳を施され虹霓教の木偶に堕落し偶像崇拝という愚かな考えに囚われた愚民どもには麗しく気高い神の御子などと崇め奉られています。神官になりたくなかったし崇め奉られる苦痛に耐えられないし、徒人なのに喜怒哀楽を…人前での飲食を禁じられ人としての部分を仮面を被ることにより封じられ、現人神として崇拝される《虹霓教聖虹使》を虹髪虹瞳に生を受けた自分の責務だと吹き込まれたのを真に受けても、否応もなく果たすことを無理強いされて幾度も辞めようとしたくせに、何故、羅剛との婚姻を受け入れた時にそれを機に辞めなかったのかしら?自分を監禁していた大神殿と《聖虹使》と虹霓教との縁を切る絶好の機会なのに、何故、綺麗さっぱり縁を切り、王宮に…羅剛の許に還らなかったのだろう。

 宰相を筆頭とする他の《七重臣》らと共に直系の世継ぎに固執した《七重臣》の一人として邪魔な冴紗を追い払おうと画策した永均に助言にみせかけた讒言を吹き込まれ、そうとは知らずに羅剛は恋しい冴紗を守るために大神殿に預けましたが、神官にするつもりなどなく王宮に置いても大丈夫だと判断して呼び戻そうとしたのに最長老どもは無視して冴紗を監禁して帰しませんでした。冴紗は本当は神官になりたくなかたったですから、余計に《聖虹使》なんかになりたくはありませんでした!重臣神官総ぐるみの姦計で引き裂かれ大神殿に拉致監禁されましたが、たかが虹の髪と瞳を有していても《聖虹使》になる必要などないのです。

 ところが、少し早いがなんて最長老はとぼけていましたが、大神殿に監禁してからすぐに《聖虹使》をやらせ、じわじわと宗教的洗脳を施したことから無理強いしたのは明白です。無理強いされて、民の心に《聖虹使》として植えつけられ、既成事実が出来てしまって辞めるに辞められないならまだしも、有りもしない民の信心を裏切れないと、羅剛の心を踏み躙ってまでも嫌々やっている《聖虹使》になろうとするなんて、呆れます!流されても抗えば、何とか大神殿を逃れて羅剛の許にすぐに還れたかもしれないのに、冴紗は今も昔も流されるまま《聖虹使》を忌み嫌った自分の本当の心を忘れ、羅剛に…そして、侈才邏に災禍を齎す元凶の《聖虹使》になろうとしている!!いつの時代も偶像崇拝は不幸しか齎さないのに。

 嫌で嫌で堪らない《聖虹使》を冴紗が無理強いされていることは羅剛が知っている。仮面を被り《聖虹使》という名の偶像として神の御子を演じるのを冴紗が幾度も辞めたいと訴えたにもかかわらず民の信心を裏切るのかと罵られ続けざるをえなかったし、無理強いされているのを冴紗はこれが自分が羅剛と侈才邏のために役に立てることだと思い込んで《聖虹使》を辞めようとしないことで羅剛を苦しめていることがわからないなんて情けない。



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