TVドラマ版のDVDの完結巻に収録されていた談話で原作ではシベリア鉄道みたいな列車で日本民族が放浪する第1部(映像化された部分)で終わったと話していた通りに、昔の映画での小野寺が怪我を負いながら玲子との再会を夢見て貨物列車に揺られているラストのシーンが心に残っています。リメイクされた映画『日本沈没』(2006年)は地盤沈下や大地震などの災害、そして洪水や最後に日本が沈没するシーンが昔の作品に比べるべくもなくリアルに描かれているのでしょうが、映画を観たいという吸引力どころか心を動かされる魅力さえ感じない のです。
TVドラマ版での、五木ひろしさんの歌う主題歌「あしたの愛」はとても素敵です。「第14回 明日の愛」で阿部玲子の高校時代のクラスメイトであり、彼女に想いを寄せる遠洋航路の航海士・桂省吾役でゲスト出演した五木さんの船出にかぶさるように、“日本沈没”という哀しい現実を描くドラマの主題歌が流れました。五木さんの演じる桂は田所に《気ままなカモメ》という名で“噴火の映像や地震のデータetc”を送り続けていました。嘗て、新潟地震で両親を失った桂は、何かの形で日本の地震研究に役立ちたいと心に誓ったからだったのです。ラストの、遠ざかる桂の乗る船を見送りながら、“今度、あの青年が還ってくる時は…日本はもう……”という田所博士の言葉が重かった。
TVドラマ版の唯一の欠点というか、いい加減なシーンを答えるならば、最終回「東京最後の日」で高台から足を滑らせて落ちかけている玲子と彼女を助けようとする小野寺が助かったのか否かはどうなのか?救助のヘリが来たけれど2人が洪水に呑み込まれて死んだかもしれない可能性もあるので、その重要な部分がハッキリせず、“日本は沈没した”というナレーション(内藤武敏)で幕になっている事です。