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高階秀爾 『ダ・ヴィンチの「最後の晩餐」はなぜ傑作か?-聖書の物語と美術』

2014-08-17 21:35:07 | 書籍(美術書)

ダ・ヴィンチの「最後の晩餐」はなぜ傑作か?-聖書の物語と美術
高階秀爾
小学館
2014

本書は今年はじめに刊行された『ミロのヴィーナスはなぜ傑作か?-ギリシャ・ローマの神話と美術』の姉妹編にあたる(同書のレビュー記事はこちら)。
ヘレニズム(ギリシア・ローマ)とヘブライズム(キリスト教)は西洋文明の基盤をなす二大源流にあたり、これら二冊ではそれぞれの一級河川から誕生した選りすぐりの絵画作品が紹介されている。

本書『ダ・ヴィンチの「最後の晩餐」はなぜ傑作か?-聖書の物語と美術』で扱われている主題は次の七つ(意図してかどうか、天地創造の日数)。

1 「天地創造」(ミケランジェロ)
2 「アダムとエヴァ」(マザッチョ)
3 「水浴のスザンナ」(ティントレット)
4 「バテシバの不倫」(レンブラント)
5 「『雅歌』とサロメの踊り」(モロー)
6 「受胎告知」(フラ・アンジェリコ)
7 「最後の晩餐」(レオナルド・ダ・ヴィンチ)

名前を挙げた画家の作品以外にも、それぞれの主題に関わる名画を幅広く寄せ集めて配置しているあたりは、毎度のごとく見事である。

レンブラントの《バテシバの水浴》と古代ローマの石棺の浮彫(《花嫁の化粧》)との関連性はとくに興味深かった。

詳しくは本書70頁に書かれているが、レンブラントはたんに聖書のエピソードからのみ着想を得て絵画を描いたのではなく、古代ローマの石棺からも図像を「盗用」したことにより、作品解釈に奥行きを与えている。


Rembrandt 'Bathsheba at Her Bath' (1654)


(本書71頁)

ただ気になったのは、55-56頁で解説されている別のレンブラント絵画。
作品のキャプションおよび説明文には、絵画のタイトルが《ペルシャザルの祝宴》と表記されている。

しかし欽定英訳聖書(King James Bible)をみても新共同訳聖書をみても、作品の題材のもととなった「ダニエル書」には「ベルシャザル」(Belshazzar)とある。
おそらく誤植ではないかと思われるのだが、どうなのだろうか。


Rembrandt 'Belshazzar's Feast' (c.1635-38)

ともかくも、全体としては丁寧でやさしい解説書だったように思う。

"There's one thing," said I as we walked down to the station. "If the husband's name was James, and the other was Henry, what was this talk about David?"

"That one word, my dear Watson, should have told me the whole story had I been the ideal reasoner which you are so fond of depicting. It was evidently a term of reproach."

"Of reproach?''

"Yes; David strayed a little occasionally, you know, and on one occasion in the same direction as Sergeant James Barclay. You remember the small affair of Uriah and Bathsheba? My Biblical knowledge is a trifle rusty, I fear, but you will find the story in the first or second of Samuel."

---Conan Doyle, 'The Adventure of the Crooked Man'

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