旅のウンチク

旅行会社の人間が描く、旅するうえでの役に立つ知識や役に立たない知識など。

ウエールズのニンジャ

2015年08月24日 | 旅の風景
1988年の多分10月の事。ずいぶん昔の話になりました。

 私はイギリス、ウェールズの田舎町のとある家に泊めてもらっていました。家の1階はフィッシュ&チップスのお店、その奥はパブになっていてそれぞれに入口がある少し変わった建物です。2階が店の経営者一家の家になっているのですが、そのうちの1部屋に泊めてもらっていたのです。

 経営者はイギリス海軍の退役軍人。艦船でいろいろな国へ行ったことがある事を写真を見せながら懐かしそうに語ってくれました。子供さんたちはほとんどが独立されているようで、その分部屋が空いていたところに私が転げ込んだ感じでしたが、1人だけ家業を手伝っているようでした。おそらく10代後半かと思われるその青年はフィッシュ&チップスの店を手伝っているわけではなさそうで、夕方になるとパブの方を開店します。パブ担当と推理。

 昼間、特にやることもなくブラブラしていると、同じくブラブラしているその青年が自分の部屋を案内してくれました。壁にはショー・コスギさん(ケイン・コスギさんのお父さん)の"忍者"のポスターが一杯。部屋の片隅には四角い鍔がついて真っ黒な鞘に収まった刀が立てかけてあり、机の上に手裏剣が置いてあります。

 多分、クローゼットには黒装束が入っていたに違いありません。

 どうやらこの青年、忍者マニア。だから日本からの珍客には興味津々なわけですが、10代の難しいお年頃。その事をストレートに表現はできないようでした。だから自慢のコレクションを見せて私の反応に期待だったのでしょうね。

 ネット通販など存在しないその頃にウエールズの小さな田舎町でどうやって手裏剣や刀(どちらも模造品ですが)を手に入れたのかには興味を惹かれましたし、日本でも見かけないこれらの模造品がどこで生産されて販売されているのかも少し興味を惹かれましたが、それぞれの品物自体にはたいして興味ない反応しかできない私。

 そんな反応から"忍者"の事に詳しくない人間とみられたのか、"忍者って知ってるか?"から始まって、サムライのカタナと忍者のカタナの違いとか、手裏剣という武器の解説などを聞かせてくれるのです。

 "ウエールズの片田舎で地元の人から忍者を解説される日本人"という旅の風景。

 一連の解説を聞いた後で、実は私の故郷の近くに甲賀という場所があってそこは忍者で有名だという話をしたところ、私の英語表現が誤解されたのか、その青年は一言。
 
 "今も忍者がいるのか"と。
 
 もちろん"イエス"と答えておきました。


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