旅のウンチク

旅行会社の人間が描く、旅するうえでの役に立つ知識や役に立たない知識など。

国境病

2006年11月23日 | 旅行一般
旅人の間で"国境病"などと呼ばれる病気があります。

旅人として、何ヶ月も、そして何年もかけて、いくつもの国境を越えながら旅を続けていると、国境で、ありもしない書類の提出を要求されて面くらったり、途方もない入国税や出国税を請求されたり、その他、様々な難問を突きつけられる事が多々あるわけです。つまり、賄賂を要求されているわけです。

東南アジアの日本でも旅行先としてメジャーなとある国にはこういう言葉ああるそうです。
"社会的地位が欲しければ軍人に、財産が欲しければ警官になれ"

私が旅した事のあるエリアでは、露骨に賄賂を要求された事はあまりなく、むしろ、不思議な書類(つまり本来、存在しない書類)の提出を要求されたり、情報とはかけはなれた金額の出国税を要求されたりといった事がほとんどであって、要求する側にも一種の芸人気質が感じられたものです。

制服を着た人間や大企業を背景とした人間の言う事を何でも鵜呑みにして、何でも指示に従う従順な人間であれば、逆にここで賄賂を要求されている事にすら気がつかないかもしれません。こういう人は国境病にはかかりません。知らぬが仏という事でしょう。

そんな事もあって、私は、次の国境ではどんな芸風が見られるかが楽しみでもあり、国境にはいつもワクワクさせられたものです。

さて国境病。
上のような事情をある程度経験していて、なおかつ私のように脳天気な反応をできるわけでもないナイーブな旅人は、国境が近付いてくると、次の国境で何を要求されるのか、それを切り抜けられるのかが心配で神経を擦り減らしはじめるわけです。食欲も減退し、睡眠も充分取れなかったり、心労が重なって体調も崩しはじめます。

元来、国境というのはそこに到達した旅人にとって、新たなる国の事情がよくわからなかったり、もともと不安と不確定な要素が多い場所です。これにつけ込まれるケースというのは我々の身近にも多く存在し、例えば、空港で乗ったタクシーが大幅に大回りして目的地へ向かったり、"このホテルの方が良い"と、強引に違うホテルへ連れて行かれたり、そのような事例は数多く存在しています。こういった心労に更に国家を背景にした、しかも自分の出入国に対して絶対的な権限を有する人間が立ちはだかるわけですから、国境病にかかるのも理解できるというものです。

ここまで読んできて、"何とも面倒な話"と感じた人は多いでしょう。しかし、もう少し考えてみれば、これは私達が普段暮らしている日本でも起こっている事であって、別に特別な事ではない事にお気づきでしょうか。

談合、裏金、ヤミ献金、そして我々は従順で"知らぬが仏の"国民・・・。

なぁんだ。日常生活を送っている社会を変わらないじゃないですか。この事に気がつけば、あなたももう国境病から脱出です。


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