旅のウンチク

旅行会社の人間が描く、旅するうえでの役に立つ知識や役に立たない知識など。

Tokyo

2006年12月26日 | 旅行一般
私は関西の出身で、就職して東京に配属された結果、いつの間にか当分ここに自分の身を置く事になった人間ですが、東京という町に拠点を構える前に訪れた数々の町と比較して、確かに人の多さに閉口する事はあってもそれほど悪い町だとは思っていません。いや、むしろ、意外とこの町の事が好きです。

今頃のシーズンになると、町にはお金ばかりがかかって何となく薄っぺらく感じるクリスマスのイルミネーションが瞬いていたりするのですが、そんな中を俯き加減で歩いている疲れた表情の人々がふと顔を上げてこういったイルミネーションを眺めている光景を目にすると、ハッとさせられる事もあります。その瞬間に今まで薄っぺらく感じていた風景が急に私にも生き生きと感じられたりもするのです。そんな時、やはり風景というのはそこに人があって、その人物の生活が感じられてこそ完成されるものなのだなと思ったものでした。

ある時、何人かで話をしていた際に私と同じ関西在住の人間が"東京は人が冷たい。電車の中で足を踏んでも「すみません」の一言もない"と言ったのです。実は同じ関西出身者でも私の感じ方は反対で、"東京の人は優しい。電車の中で足を踏まれて、「すみません」の言葉がなくても、怒鳴ったり、喧嘩になったりしない"という事であったので、お互い、視点を替えれば同じ事柄でも感じ方が違ってくるものだなと話した事があります。

幼なかった頃の長男を抱いた小柄な妻を連れて金曜の遅い時間の電車に乗り込んだ際に席に座っている酔った乗客の何人かが"みんな、少しずつ席を詰めてあげて"と声を掛けあって席を空けてくれた事もありました。眠り込んでいる長男を見て隣りの酔客が"寝ちゃうと重いんだよね"などと優しい声を掛けてくれたのも印象的で今でも時々思い出します。

先日は私自身が通勤途上にオートバイの交通事故を目の当たりにして、救急車が来るまでの間、怪我をしたライダーに声をかけたり、辺りにちらばった荷物を集めたりしていたのですが、その際に横たわっている怪我人を見て、通行人の多くの方が"だいじょうぶ?""がんばって""何かできる事は"と声をかけているのを見て、やはりこの町の人は一見、無関心のようでいて、実は優しい人が多いんだなと感じたりもしました。

東京の人々は足を踏んだとか、肩が当たったとか、そんな小事で大さわぎはしない程度に無関心。これが関西だったり海外だったりすると"喧嘩を売ってるのか?""エクスキューズミーくらい言えよ"などと大さわぎかもしれませんね。でも、そんな程度の尺度で人の優しさやマナーを測る事はできませんし、その町を感じ、理解する事はできたとは言えないのでしょう。


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