旅のウンチク

旅行会社の人間が描く、旅するうえでの役に立つ知識や役に立たない知識など。

弱さを受け入れる強さ

2016年01月28日 | 旅行一般
 10年ほど前の事だと記憶しているのですが”自分探しの旅”という言葉が流行した事があります。それに伴って”旅では自分は見つからない”という自称”旅人”達の意見が出たりもしてある程度インパクトのある言葉や考え方だったかなと思います。

 自分が見つかるかどうかは別として私は旅で自分と出会う事はできると思います。言い方を変えて”旅は自分を見つめなおす機会を与えてくれる”という言い方がしっくりきます。

 格安ツアーでの海外旅行や、お得な航空券とホテルを事前に手配しての疑似自由旅行や、あるいは現地にいる知人頼りで渡航するタイプの旅行ではなかなか自分と向き合う”必要”に迫られることはありませんが、毎日自分で情報を集め、判断し、決断することを重ねながらの旅の場合、毎日何度も自分と向き合う事を迫られます。

 日々の生活では自分の判断だけでなく誰かに相談する事もありますし、失敗しても会社の上司が謝罪してくれる事だってあります。両親、兄弟、友人、学校の先生、会社の同僚や上司といった人たちに判断を委ねていたり、周囲の人達とのコネクションを使って問題に取り組むとか、その世界にいる間だけしか通用しないような肩書を盾にすることができる場面のあったりします。

 そんな環境のなかで、自分の力が見えなくなっている事も多いのです。

 周囲の人達の助けがあってこそ力を発揮できている部分が見えなくなって自分を過大評価している事は多かれ少なかれ誰にだってあるのではないでしょうか。

 旅先では日々の生活で自分を助けてくれていた周囲のパワーが働かなくなります。自分で判断し、自分で行動し、その結果を自分一人で受け入れるという繰り返しの中で見えてくる自分はたいていの場合、自分自身の期待には添えない存在で、自分の弱さを思い知らされます。

 だから、実は旅先で自分を見つめなおす事はとても難しい事でもあります。自分を見つめ直す機会はいくらでもあるのですが、実際に自分を見つめ直すことができる人はあまりいません。自分の弱さや脆さを直視するのは誰にとっても辛い事だからです。旅先で現実を突き付けられたとしても目を背けていたいのがまた人の弱さでもあります。

 まずは自分の弱さを受け入れるだけの”強さ”を持つことがポイント。そうすれば弱さも見えてきますし、自分の弱い事を回避するか、その部分を強化するかを考えることもできます。そして何より、日々の生活で自分の弱さを補ってくれている周囲の人々や社会が違って見えてくるはずです。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿