旅のウンチク

旅行会社の人間が描く、旅するうえでの役に立つ知識や役に立たない知識など。

タイの山岳少数民族

2016年01月23日 | 旅行一般
 タイ北部からミャンマーにかけての山岳地帯には独自の文化をもった少数民族の人々が暮らしています。彼らの暮らしは思いのほか昔からタイの観光資源の一つとなっていて、たとえば、チェンマイからドイステープ寺院へ行ったあと、王族の夏の別荘をけんがくしてからメオ族(モン族)の村を訪れるコースなんかは私が今から30年前でもある意味”定番”のコースでした。

 山岳地帯にはメオ族、アカ族、カレン族、ラフー族、リス族、ベンロン族などといった人たち、それから山岳少数民族とは少し違うのですが中国の共産主義革命の際にタイへ逃れた国民党軍が暮らしている村もあります。

 山岳少数民族の村を徒歩で巡る”トレッキング”も30年前からすでに存在していて、今年新コースとして設定した山岳少数民族の村々を巡る旅は元から現地にある”トレッキング”のコースに私の意見を取り入れて修正してもらった形です。

 チェンマイからのトレッキングはとても歴史が長いので多くのガイドがコースとして使う村々では旅行者が快適に滞在できるように村には元々無かったトイレやシャワーが村の中に設置されているところもあります。また、山岳地帯そのものも標高も高いわけではなく、アップダウンもありません。どちらかというと”森歩き”的です。この点では同じ”トレッキング”でもネパールやペルーとは全く違います。

 ツーリストの受け入れ体制ができた村、つまりトイレやシャワーが完備されているようなところはいい意味でも悪い意味でも村の人々がツーリストのあしらいに慣れている印象で、我々が村を出た途端に民族衣装を脱いで普段着に着替えるのではないかと勘繰りたくなるような事も時々ありました。

 私はチェンマイやチェンライから何度もトレッキングに参加したことがありますが、その中でとても印象的だったのはチェンライから行ったツアー。ガイド自身がカレン族の出身で自分の生まれ育った村とその周辺の村々へ連れて行ってくれるコースでした。

 普段はツーリストが入らないコースなので村には電気や水道やガスはもちろんトイレすらありません。排泄物は村に飼育されている動物たちが処理します。シャワーは川で水浴び。小さな滝に竹が差し込んであって竹を伝って水が流れ出しているのを浴びるのです。小さな小屋の雑貨店があるのですが、売られているのはなぜか小袋に入った”味の素”。村の人達がここで使う現金をどうやって手に入れているのかは謎のままでしたが。

 村の周囲に広がる恵まれた自然と調和しながら暮らす彼らの暮らし振りを眺めていると、毎日必死で確保しようとしていた生活が”便利さ”を少し犠牲にすれば思いのほか手近にあるのではないかと考えさせられたものです。

 30年の月日が経って、自分でパンを焼いたり、自分で漬物をつけたりする私の今のライフスタイルには彼らの村々での体験が影響しているのかもしれません。

 今、日本の若い人たちと話をすると”生活のため”という言葉が悲しいほど頻繁に出てきます。どうして私たちは生活のためにそこまでもがき苦しむ社会を築いてしまったのか。複雑怪奇になりすぎた”先進国”の生活から一度離れて、彼らのシンプルな生活から感じ取る機会を少数民族の人々との出会いは提供してくれるかもしれません。

 ”彼らから学ぶ旅”

 山岳少数民族の村々を巡る旅では現地のガイドに設備は劣っても構わないから村の生活その物を体験できるコース、そしてツーリストがあまり入らないコースをを用意するように伝えてあります。皆さんに素敵な出会いと体験を得ていただける機会となればと思います。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿