判定

　旅することに必要とされる資質はいろいろあって、例えば人と接することが得意であることとか、計画を立てたり準備をしたりすることが得意なこと、あるいは人や地域と馴染むことが得意なことなどもあると思います。

　スーパーカブで旅するタイ北部の現場では時々白状する事なのですが、私はこれらの資質がほぼ全て欠如していて旅を始めた頃には随分苦労したのです。
　
　苦労しながら計画をたてるのですが、旅先で計画を実現していくためには大抵の場合、人と接する必要が出てきます。そこで計画はたちまち崩壊。毎日、今日一日をどう過ごすかに胃が痛くなる思いで目覚め、毎時間途方にくれていたような具合でした。

　それでも”自分は一人旅なんだ。その辺をウロウロしている団体客とは違うんだ”などと自分で自分によく判らない虚勢を張ってみせたりしているわけですから始末に負えません。今から思えば、人とうまく接することができない自分を他の人と分けて”接しようとなんてしてない”と思い込もうとしていたのだと思います。

いま、”実は人と接することが大の苦手で、旅し始めた頃、全然うまく行かなかった”という話を告白しても、たいていの人にはホントの事と思ってもらえませんが、実のところ、そういう性格は変わったわけではなさそうです。

だから、東南アジアの街角でトゥクトゥクを呼び止めて料金交渉するときだって一瞬躊躇したりしています。もちろん一緒にいる人にはバレない程度ですが....。ただ、旅してきた経験を通じて、必要な作業に”慣れた”という事なのだと思います。

　海外旅行に行ったことがある人で、あまり楽しめなかったという人や、やっぱり国内がいいという人と話をすると、どうしてここまで適性のない自分が旅することを続けてこれたのかが不思議に思えて来るわけです。

　その後、海外旅行が好きではないという人何人かと話すうちにかなり多くの人が”食に馴染めなかった”という理由を持っていることを知らされました。そして、ここにたびに対する適性へのヒントが有ると思ったわけです。

　食事だけでなく、旅先では馴染みのない習慣や慣れない気候などなど、日常生活とはガラリと違う事物に毎日関わらざるを得ません。

　馴染みのない食に”馴染めない”のは当たり前なのですが、それが理由で海外が好きでないのはおそらく知らず知らずに”日常”の尺度で旅先を”判定”しようとしているのだと思うのです。だからおそらく”食に馴染めなかった”理由を上げる人はその他全て日本と違うことが苦痛に感じられて海外旅行が嫌になったのだと思います。

　この点では私は幸い、自分の考えと訪問先の考えが違う場合や、自分の考えと旅先であった人の考えが違う場合、”自分の方が間違っているのだろうな”と思う程度に気が弱いので、例えば食の話に立ち戻れば....

　”何だか妙な匂いもするし、やたら辛いなぁ”
　と思ったとしても
　”でも数千年の歴史を経てこれが美味しいとこの地域の人達が考えているんだから、自分が慣れてないだけなんだろうなぁ”
　と受け入れる気持ちに展開します。

　なんとなく慣れない食事を繰り返しているうちに、その料理に慣れ、実は美味しいと気づくことも多々あります。

　その料理ががその国の気候や風土の中で存在する合理的な理由が見えてきたりもします。

　体によい食事、悪い食事という考え方がありますが、それは気候や風土とも連携しているものだと気づかされたり、伝統的な食事は結局、その国にある限り必ずヘルシーな食事だと気づくこともあります。

　旅している時、我々は他所者です。訪問先の国にはそれぞれ歴史があって、その中で風俗習慣が形成されてきたわけで、ひょっこり訪れて数日過ごした人間が批判する程度の風俗習慣はとっくに淘汰されているに決まっています。判定するより、そこに込められた意味に興味をいだき、そこから何かを感じ取ったり学んだりする事それ自体が、旅の楽しみのうちだと思いますし、そういう気持ちになれるかどうかが旅する上で一番必要な資質だったのかと最近考えるようになりました。
　
　それ以外の事は不得意でもそのうち”慣れる”...。

　今はインターネットのクチコミサイトを始めとして、皆で色々な事を判定する習慣があります。逆に他人が行った判定に自分の判断が大いに影響される場合もあります。異質な文化の異質な風俗習慣の中に飛び込んでいく際にはこういう判定は日本に置いていって、現地の風俗習慣を知ろうとする姿勢や学ぼうとする姿勢やそれが無理でも慣れようとする姿勢で挑む事が旅を楽しく充実したものにしてくれるのだと思います。

◆◆◆第6回旅行好きの夕べ開催/参加者募集◆◆◆

　旅先での楽しい体験や失敗談、有益な情報など、旅行好き同士で語り合おうではありませんか。

□日時：2017年12月8日（金）　19時～22時
□場所：四谷三丁目　サロンガイヤール
□参加費：3,500円/食べ物、飲み物代込み（飲み放題ではありません）
□内容
*旅の写真上映会
*ヘンなものや良いものが当たるかもしれないじゃんけん大会
*懇親会
□お申込み、お問合せは下記からどうぞ
http://www.bekkoame.ne.jp/i/eandg/event/yube.html