旅のウンチク

旅行会社の人間が描く、旅するうえでの役に立つ知識や役に立たない知識など。

 ベーシックな事を高める努力の大切さ 

2017年11月25日 | 旅行一般
 山歩きの場合でも、海外を旅する場合でも、砂漠のラリーを走る場合でも私にとって重要な準備は”ベーシックな事を固める”作業です。

 最新技術は”快適”であったり、”便利”であったりはするのですが、必須ではありません。以前、登山の装備の話をしていた時に友人と話したのですが、私が本格的に登山をしていた時はまだ大学の山岳部では”キスリング”という形式の帆布でできたバックパックを使っていました。だから今の良くできたバックパックとは違ってパッキングの技術が問われました。おそらくエドモンドヒラリー卿がチョモランマに登頂したときだって同じような装備だったのだと思えば、担ぎやすいバックパックやパッキングしやすいバックパックを”必須”と考える事はできません。むしろ、適切なパッキング技術こそが”必須”だという見解に達します。

 バイクも同じで、故障しずらいバイクというのはもちろん好ましいのですが、機械である以上、故障や消耗は避けられません。海外ツーリングをシリアスに考えるのであれば”海外ツーリングに向いたバイク”を探すのは少しばかり的外れな考え方であって、故障に対応できるように自分の知識や技術を高めるのが必須条件。一昔前であればこの条件を満たせないツーリングライダーが海外に出かけるなんて考えられなかったと思います。ツーリングライダーとしても半人前扱いしかしてもらえませんでしたから。

このあたりは”お手軽”に海外ツーリングを手配している私の罪なのかもしれません。

 一昔前のツーリングライダーは今よりむしろ自由にバイクを選んでいて、私がパキスタンで会ったライダーはSRX600で、イラン国境の砂漠で何度も転倒した話を面白おかしく聞かせてくれました。E&Gホームページの旅の書棚で紹介している玉井洋造氏は2ストのRD250で世界一周しています。

 1998年のUAEデザートチャレンジでは、私の装備していたGPSは初日に故障してしまいました。ラリーの”必須装備”となっているのでスタート前に抜き打ちでチェックされる場合があるのですが、とりあえずスイッチだけは入ったのであとは得意の語学で適当に言い逃れして切り抜けて、実際の走行はルートブックについてくる全体図と手持ちのコンパス、そしてまるで狩人が獲物を追うような具合に先行車の轍を選びながらCPを目指しました。登山をしていた頃に修得したナビゲーションのベーシックな技術を最大限に活かしてGPS無しでルートを走っていたのです。あまり速いライダーでもないのに、何度も止まって方向を定めている私は極端にタイムの遅いライダーとして周囲に心配をかけましたが、自分は砂漠の真っただを自分の力で切り抜けていくゲームを楽しんでもいたのです。

 GPSの使い方に長けていても、GPSが壊れたら終わり。GPSの機種や機能にどれほど詳しくてもGPSが壊れたら終わり。
 コンパスなら、たとえ落として壊しても砂漠のラリーでもない限り、どこかで買いなおせる可能性は高いですし。お土産物のキーホルダーについているコンパスだって使い方を本当に理解していれば十分役に立ちます。

 バイクについても同じ。どれだけその車種のウンチクを語れても、それは日本にいて、周囲のライダーに”物知りぶり”をアピールするツールとしては役に立っても、旅している道中で役に立つのはもっとベーシックな整備技術。どうしてエンジンがかからないのか途方にくれたり、文句を言ったりしていても埒はあきません。燃料は云っているのか、火花が飛んでいるのか、圧縮はあるのか、確認して原因を探る作業が出来なければ、場所によってはそのまま”行方不明”です。

 旅先では、自分が身に着けているベーシックな知識や技術が”スイスアーミーナイフ”のように応用性の高いツールとして役に立つというのが私の信条。だからE&Gやまあるき部の活動でもすべて地図とコンパスでルートファインディングをこなしますし。スーパーカブで旅するタイ北部では地図でナビする説明を毎朝行っています。

 海外を旅する上で最上のスイスアーミーナイフは実は語学力です。
 
 日本での日常生活を考えれば容易に想像がつくでしょうが、大抵の問題は誰かに助けれもらえれば解決がつきます。駅で切符の買い方がわからなければ駅員さんに聞けば教えてくれますし、宿の人におすすめのバーを聞けば教えてくれます。道に迷ったら、燈りかかった人に聞けば教えてもらえますし、修理が必要なら、修理工場を誰かに聞くことだってできます。体調が悪ければ病院へ連れて行ってと頼む事だってできます。いくら情報としてどこに病院があるかどうか知っていても、いざ体調が悪化したら自分でそこへ行けるとも限りません。

 旅に出る前は不安なので、ガイドブックを漁ったり、インターネット上の情報を漁ったり、体験者に話を聞いたりしていろいろな情報を集めようとするものですが、実際に現場へ行ってみれば変わっている場合も多々あって、戸惑わされる事になります。そんな時には語学力が生きてきます。

 海外を旅しようとするのであればある程度の英語は身に着ける努力をする方が、妙な情報収集に奔走するよりずっと応用力の高い技術となります。できれば現地の言葉を片言でも...でもこれは現地へ行ってから学ぶ楽しみとしても良いとは思います。

 ”英語が出来なくても世界を旅できますか”という質問、そろそろやめませんか。旅を目標に英語を学ぶことを楽しみにするくらいの遊び心を持ちましょうよ。

 ”情報化社会”の中で、皆情報収集がすべてと思いがちですが、深い旅をすればするほど、”自分”が全てだと気づかされます。自分の知識や技術はもちろん、性格や宗教観までもが旅先では試されますし場合によってはそれを間違えただけで命を落とすことだってあり得ます。どうすれば便利かとかどうすれば得かという情報を収集する傍ら、少しでも”自分を高める”ために時間を割いて損はありません。身に着けた知識や技術が旅先で役に立たなかったとしても、旅をきっかけに努力した事は旅の思い出とともに心に残りますしいずれ何かの機会に突然使える時がやってくるかもしれません。
 
 1988年、私はパキスタンからヨーロッパへバイクで旅をしたのですが、出発前に沢山の理解者/協力者を得ることが出来ました。以前、タイで知り合った日本人旅行者は、同じエリアを旅した旅行者を紹介してくれましたし、私がバイクを購入したショップの”バイク屋のおやじ”は惜しみなく修理技術を教えてくれました。このすべてがこの旅全体の素敵な思い出であることはもちろんですが、”バイク屋のおやじ”に学んだ修理技術があったから後にオーストラリアンサファリラリーにメカニックとして同行させてもらえる幸運も得ましたし、そのきっかけがなければUAEデザートチャレンジを走ってみようとも思わなかったと思います。

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