旅のウンチク

旅行会社の人間が描く、旅するうえでの役に立つ知識や役に立たない知識など。

危険と自己責任

2004年06月08日 | 旅行一般
 海外を旅していていつも不思議に思っていたカナダ人旅行者。バックパックに誇らしげにカナダ国旗を縫い付けた旅行者にあなたも海外で出会った事はないだろうか。私は当初、”カナダ人は愛国心の強い人間が多いんだなぁ”と思っておりました。
 バックパッカーなどと呼ばれるスタイルの旅行者の多くはどちらかというと無政府主義的な思想の持ち主が多いのですが、そんな中で国旗を背負った彼らは少し不思議な存在に思えたのです。ところがドミトリールームで同室になったカナダ人と話してみると特に愛国心が強い印象はないのです。
 その頃若かった私はこの謎を解明することよりも、同じ事を日本人の自分がやったらどうなるかばかり考えていたので(ちょっとカッコいいかなぁなどと考えて真似しそうになりましたが、日本の場合、国によっては投石されたりしそうなのでやめました。)、カナダ人たちにその理由を尋ねる事を忘れたのですが、他の旅行者から聞いた話によると、カナダ国旗を身につけている限り、どのような地域であれ、あるいはその人物がどういった思想の持ち主であれ、カナダ政府は全力を尽くしてその人間の安全確保を図るという制度があるので、多くのカナダ人旅行者は国旗を身に着けているのだという事でした。
 真偽の程はよくわかりません。もしかするとカナダ人旅行者の間で流行していただけかもしれませんし、バックパッカーが勝手にそうだと思い込んで実践していたのかもしれません。この件、真偽の程をご存知の方は是非教えていただきたいですね。私も今度、カナダ人ガイドに聞いてみようかなぁ。
 いずれにしても当時の私はこの話に特に感銘を受けたり、感動したりする事はありませんでした。なぜならやはり若輩者。日本も”外務省”や”大使館”が存在するという事は在外邦人の人命を見捨てるような事はしないと思っていましたし、日本だけでなくそれはどの国も同じだと思っていたからです。
 実は私はイラン・イラク戦争中にテヘランのすぐ南にあるコムという町で逮捕軟禁経験があります。容疑は"スパイ容疑"。今風に言うと”そんなに危ないところへ行くんだから自業自得だ”という話なのですが、パキスタンからトルコへ陸路で抜けるにはソビエト占領下のアフガニスタンを抜けるよりもずっと安全なルートでもありました。
 逮捕した当局側も容疑が固まっているわけではなく、ただ疑わしい行動を取っていた(実はホテルを探してウロウロしていただけ)のを連行した状況だったので拷問されたりしたわけではありませんし、留置されたわけではなく、ホテルに軟禁状態になったわけですが、私は釈放してもらうためには日本大使館の援助を得るのが一番だと考え、警察当局が日本大使館に確認するために連絡を取るように仕向ける策を考えたのでした。
 結局、大使館に確認を取るまでもなく私の容疑は一応晴れて、釈放されました。
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 さて、いよいよ危険な話題に触れなければなりません。インターネット上のヒステリックな議論を見ていると、正直な話、腰が引けていたのですが・・・そのためしばらくウンチクの更新を停めていたのですが・・・どうやら遠い記憶になったようなので・・・。
 そうです。イラク邦人人質事件
 ここで我々旅人に係わり合いのある話は、国が救出にあたってくれた場合どうなるかということですね。ネット上の議論とは一線を画しますよ。
 今回わかった事は、政府は国民の無事救出のために努力してくれるという事実。そして、”渡航延期勧告”がでている地域の場合は”有料”になるという事実。この2点に関しては、今回の対応が今後同様の事態が発生した場合の参考とされることになるので、あなたが人質になった場合も"有料”で救出のために努力してくれる”事になるわけです。
 この事実を踏まえて、我々旅行者がやるべき事は・・・・
 今後、渡航を考える際にはまず、外務省の海外安全ホームページをチェックして、危険度をチェック。危険情報が発令されていた場合、その危険度の場合の”自己責任”の金額はいくらなのか確認する必要があるということでしょうか。あまり高額な場合、政府の支援は仰げる人と仰げない人が出てきますね。地獄の沙汰も金次第の世の中ですね。政府も”救出費用負担料金表”を公表した方がよいかもしれませんね。その料金表を参考に海外旅行傷害保険の救援者費用に加入する必要がありますからね。
 私は家族に”自分が海外で誘拐されたり、人質にされた場合、救出を政府に依頼しないように。政府が救出にあたろうとした場合は「自力で出て来た実績もあるので余計な事はしないでください。」と言うように”釘を刺しました。旅するのが難しい世の中になったものです。

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