近況報告。

・・・のつもりではじめたのですが・・・。
ゼミについては、学科公式ブログで報告しています。

Foundling Museum。

2016-05-29 19:41:01 | 近況とか。
文教地区ラッセルスクエアの近く、Foundlig Hospital(棄児養育院)であったところの展示です。

http://foundlingmuseum.org.uk/



ホスピタルとなっているのですが、ここもまた医療と福祉と教育が未分化な収容施設であった感じがひしひしといたします。

子どもの父親に見捨てられた女性が、やむなく子どもを預けて行き、子どもたちは新たなアイデンティティを与えられてここで育てられ、巣立っていくという感じの場所でした。

就労可能年齢、後には義務教育修了年齢までここにいて、その後は男子は軍隊か徒弟修業、女子はメイドといったルートが一般的とのことでした。
20世紀まで機能していたそうです。



ここの隣のBrunswich Squareで、ピーターパンの著者バリーがここの子どもたちを見て、ピーターパンを思いついたというのは有名な話。

ディケンズの家も近く、ディケンズはここの子たちやRagged Schoolsの子たちを見ながら、オリバー・ツイストを書いたそうです。


孤児に関する児童文学の展示が行われていました。
Drowing on Childhood http://foundlingmuseum.org.uk/events/drawing-on-childhood/

『オリバー・ツイスト』、『ピーターパン』(ロストチルドレンが出てくる)、『ハリーポッター』はもちろん、「精神的捨子」である『マチルダ』など、中産階級的子どもへのまなざしがその陰画を見つけ出していく様はちょっとおもしろかったです。



なお、ディケンズの家も博物館になっています。
http://dickensmuseum.com/



こちらは、子ども部屋は屋根裏にということがわかってよかったです。確かに、本で出てくる子ども部屋は絶対に屋根裏なのです。



ディケンズは、お客様に子どもを会わせたくなかったそうです。子どもに対する優しいまなざしを寄せたディケンズですが、私生活では不仲の妻にたくさん子どもを産ませていてなんだかなーです。

色々な施設を見るに、ビクトリア朝的な子ども観の誕生というときに、日本的な感覚で読み解いてはいけないのだろうということが、よくわかります。



Ragged School Museum。

2016-05-28 17:53:43 | 近況とか。
明治維新で近代学校教育制度をがばっと輸入しようとした日本とは異なり、イギリスは教会や慈善団体等が立ち上げていた学校があったところに、国が義務教育の網をかけるという形になっています。

ビクトリア朝時代(19世紀後半)にはパブリックスクール、グラマースクールなどの裕福な層向けの学校とは別に、貧困層向けの学校ができます。


その一つが、ragged schools(貧民学校、直訳すると「ぼろ学校」)という動きです。

Wikipedia(英語):https://en.wikipedia.org/wiki/Ragged_school
British Libraryの記事:http://www.bl.uk/romantics-and-victorians/articles/ragged-schools
貧困層の多いイーストエンド地区にあるRagged School Museumはそれらの1つで、Barnardosという有名な慈善団体を立ち上げることになるBarnardoがつくった学校の1つをミュージアムとして保存していました。

http://www.raggedschoolmuseum.org.uk/


しかも、毎週第1日曜日の午後には、Victorian class roomの模擬授業があるとのこと。大人も子どもも生徒役として参加可ということで、2月に行ってきました。(気づいてよかった!)

まず、行ってみて思い知らされるのは、ここは私たちが「学校」と思うものとだいぶ違うということ。

上記のホームページの絵からもうかがえますが、食べさせ、最低限の医療を提供することがまずなされていたということが、展示からわかります。
(この時代、できる医療行為は限られているので、医療も福祉っぽいはずで、医療や教育がきちんと機能分化していないのですね。)



しかし、クラスルームは、おお学校だ!
役者さんがふんするMiss Perkinsonが生徒に要求するのは、きちんと切られた爪、アルファベットの読み書き能力、九九等の簡単な計算能力です。

「きちんとした身なりをしていたら」「字が読めたら」「計算ができたら」…「道で花を売らなくていい」「事務の仕事につける」と繰り返しインセンティブを植え付けられます。

貧困層にとっての学校とはこういうものであったかと身体レベルで理解することができました。


(お子さんは「コスプレ」可能です。ちょっと憧れます。小公女セーラみたいな。)

姿勢を良くする棒?や、D(ドンキー=のろまのD)と書いた懲罰帽など、お約束グッズも登場。何より、私は「?」となるのに、参加した西洋人たちは老若男女、「出たー」という反応します。怒られたら、Yes, Miss Parkinsonと答えたり、私たち日本人は身体化していない応答様式を21世紀の今も身体化しているという事実がおもしろかったです。


ガイドブックに乗っているような場所ではありませんが、第1日曜にひっかけて渡英できる場合、おすすめです。

※イーストエンドといえば、チャールズ・ブースのロンドン貧困地図。きちんと売店で売っていました。




オックスブリッジ。

2016-05-27 20:56:45 | 近況とか。
ハリーポッターついでに、オックスフォード。研究会などもあったので、何回か行きました。

何といいますか、石像動くよねー、階段、本棚、絶対動くよねーと想像してしまうのが非常によくわかると言いますか。

 

ホグワーツグレートホールのモデル。

 

学部学科とは別にとても閉鎖的なカレッジというシステムがあり、もう部外者には何がなんだか。

中世の大学としての伝統が今も残っているので、なんとも理解しがたいです。
ここはイギリスではなく、オックスフォードというところなのだと、何度か思い知りました。

 

パブリックスクールからオックスブリッジという特異としかいいようのないライフコースを歩んだ人が国の中枢を握っているイギリスという国、難しいです。



ついでのついでにケンブリッジ。こちらは、機会に恵まれず、最後の最後にええい!とただ観光で行きました。
きれいだから行けと言われた意味がわかりました。

   





多様すぎるイギリスの学校。

2016-05-26 20:45:34 | 近況とか。
こちら放置しておりましたが、3月末に帰国、4月より通常業務復帰しています。

私の在外研究は、元々の研究対象が日本なので、深くイギリスの何かを研究したというよりは、広く浅く日本を照らし出す鏡を見て回ったという感じです。成果は形にせねば!と思いますが、とりあえずいくつか学校やミュージアム等の見学をご報告したいと思います。

(遊んできたと思われるかもしれませんが、まあ全力で「物見遊山」してきたのです。長期的には論文に反映されると信じたいですが、個別の見学報告は論文の形になったときには消えてしまうので、ある意味、行かせていただいた者の義務のようなつもりで、子ども・教育に関係しそうな話は報告しておきます。)

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いわゆる公立学校に入れていただく機会は、日本人ネットワークで数回実現しました。
ただ、写真等はNGであることが多いので、ここでは割愛します。

もう1つは、いわゆるパブリックスクールの見学です。
有名なイートンは公開を取りやめていたので、最古のパブリックスクール、ウィンチェスターカレッジの公開に行きました。

(ウィンチェスターとは、七王国を統一したアルフレッド大王で有名なところであります。)



こちらも写真NGのところが多かったのですが、いわゆる回廊にチャペルに、リアルハリーポッターの世界でした。

チャペルは、映画『レ・ミゼラブル』でジャン・バルジャンが死ぬシーンの撮影に使われたらしく、ガイドさんが「ヒュー・ジャックマンが死んだところ」と連呼していました。それ、ちょっと違うから…。

屋内は写真NGでしたが、「シャーベットレモン」っていうとダンブルドアの部屋出てくるでしょう?というようなところがたくさんありました。
シルクハット置き場があったり、マントがあったり…。

   

英国の「公立」(state-funded schools)と「私立」(independent schools)は、日本の公立私立とはだいぶイメージが違います。公立といっても無償であるというだけで、設立母体や運営形式は色々。
中世からある名前とか、過去3分岐制度だったときの名残とか、最近どんどんいじっている新しい学校とかが混在しているので、わかりにくいことこのうえありません(詳細割愛)。

私立のほうは、高額なかわりに完全に国のカリキュラムから独立独歩です。(GCSEやA-levelなどの試験があるので、ぶっとんだ内容の勉強はできないはずですが。)

私立なのに名前が「パブリック(公)」なのは、優秀な子を無償で通わせるスカラーシップがあるからで、ウィンチェスターカレッジにもスカラーシップ生の貼り出しがしてありました。(実際は名誉だというに過ぎないという説もありますが、実際にこれのおかげで通えたという話も聞いたので、一応機能はしているようです。)

 

歴史のあるところは、中世からの伝統もあるので、学校の多様性は日本の比ではないと思います。