
『おじさんはパースーマン』、『チビドン』、『花の菊千代』といったこれらのシリーズは、連載終了後、版元の児童漫画系レーベル・てんとう虫コミックスではなく、双葉社の「100てんランドコミックス」で単行本化されることになるが、小学館系列の児童系雑誌に連載された諸タイトルを除き、当シリーズから唯一コミックスとなった作品が、1980年から「少年少女新聞」で一年間執筆された『ババッチ先生』(80年4月6日付~81年3月15日付)である。
キヨシの家に下宿して来たババッチ先生こと馬場先生は、ゴミの中でなければ生活出来ない不思議な体質を持った中年男だった。
このババッチ先生の頭上には、いつも一匹のハエがたかっている。
実は、このハエ、アインシュタインという名の超天才バエで、人語も話せば、高等数学も楽々解いてしまう、ババッチ先生にとってのブレーンだったのだ。
ババッチ先生が大学に入れたのも、教師になれたのも、アインシュタインがいつもそばで答えを教えてくれるからであって、もし、アインシュタインがいなければ、教師なのに、簡単な九九の問題さえ、解答に窮する有り様なのだ。
しかし、教師としては欠陥だらけでありながらも、生徒達を愛する心は誰にも負けず、アインシュタインの力を借りつつも、持ち前のバイタリティーで、熱血教師さながら、様々な問題に取り組んでゆく。
掲載媒体のユーザー特性を考慮してか、ブラックコメディーの確固たる定番をモチーフとして得ながらも、決して不浄の笑いに傾きを掛けることなく、悪趣味の一歩手前ギリギリで、品位あるヒューモアを保っている、その適宜にして精緻なストーリーテリングに、赤塚ならではの職人的な手腕を感じさせる一作だ。
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