小学5年のころ、俺はいつもランドセルの中に横笛と縦笛、それにハーモニカを入れていた。元々学校では縦笛を授業で使っていた。たまたま祭りで横笛を買い、吹いてみてもなかなか音が鳴らない。そうすると、親父がしゃしゃり出てきて、こう吹けば音が出ると言い出したが、あまりちゃんとした音が出るわけではなかった。ただ、息を吹き込む角度を微妙に変えることで、かすれたような音が出るのが分かった。その後、試行錯誤し、続けていると、かすかに音らしきものが出た。なんだかんだかなりの時間練習して音が出るようになった。しかし、そのとき初めて分かったのだが、日本のいわゆる横笛は、学校で習うような音階ではなく、あまり役に立たないことが分かってしばらくは横笛はそのままに放置されることになった。
普通ならば、ここで横笛の話は終わるわけだが、耳鼻科通院の途中で、本屋と文房具店が一緒になった店をのぞいていると、学校で使っている縦笛と同じメーカーの横笛を見つけた。指の部分はほとんど同じで、音を出すところだけが縦ではなく、横になっているという代物だった。早速購入し、吹くようになった。学校へ持っていくと、最初は興味を持たれたが、それも大して続かず、普通になった。ただ、音階が全く同じで、音を出してもそれ程違和感がないので、授業でもひとりだけ横笛を使うことにした。俺は全く有頂天、音楽家気取りで、曲なども作ってみるようになった。ただし、音楽の才能なんてものはさらされなく、どう見ても、笛もうまく吹けるというほどにはならなかったのを覚えている。中学に入学した後は、笛はやらなくなり、興味関心は全く別の方に移っていた。
<次に続く>