当たり前のことだが、T県は寒いだけでなく雪が降る。
T市内は新たに雪が積もり、今も雪がチラついている。
「いやぁ、今朝はハルちゃん驚いちゃったよ、ホントに」
ハルはレンタカーの後部座席で、朝からパワー全開だ。正確に言うと午前三時ごろからエンジン全開だ。ハルの就寝時間は午後九時から十時、起床時間は午前三時から四時だ。
「なんたって、朝起きたら頭に雪が積もってるじゃんね」
「はぁ?」
小磯が眉間にしわを寄せる。私は乗り慣れない車で、経験が少ない雪道の運転に集中しているので、二人の会話に参加する余裕が無い。
「だからぁ、起きたら窓から雪が降り込んでて、頭が雪だらけだったの!」
「がははは、どうせまた窓開けて寝たんだろ」
「窓開けるなんて当たり前でしょう。あんなに部屋が暑いと寝られないよぉ」
「がはははは!お前だけだ」
私は二人の会話に驚いた。
「ハルさん、雪って寝る前から降っていませんでしたっけ?」
「うん、降ってたよ」
「それでも窓を開けて寝たんですか?」
「そりゃそうでしょ!」
「本当の話ですか?」
「本当よぉ。寝る前は風がなかったから大丈夫だと思ったんだけど、何よ、朝になったらベッドと俺の頭に雪が積もってるんだもんね、びっくりしちゃったよ」
「ちなみに朝って何時のことですか?」
「決まってるでしょ、朝って言ったら三時でしょう」
「がははは、そりゃお前だけだ!」
また小磯が爆笑する。
「ハル、世の中の普通の人間は、朝って言ったら六時から七時なの」
私も小磯の意見に賛成だ。
「七時?七時なんて言ったらもうお昼前だよ」
「がははは、木田君、こいつに普通の人間の生活を教えてやってくれ!」
「いや、僕は逆に寝るのが三時ごろなんで…」
残念ながら小磯の要望には応えられそうに無い。
「そうだったよ、木田君は寝ないんだった」
「ええ、大体三時間くらいですね」
「それはおかしいよ木田さん、おかしいから治した方がいいよ」
「がははは、お前もだ!どうしてウチには普通の人が居ないんだ?」
私は苦笑いをしながら、TS火力発電所に車を乗り入れた。
ミストエリミネータが完了したので、今度は煙道で作業を行う。
加納にも手伝ってもらい、ホースやガンの段取り換えを行う。煙道内部の作業が終わると、今度は剥離片の排出場所を用意しなければならない。
煙道は途中で直角に立ち上がっていて、その最下部には直径300ミリのフランジが付いていた。ここにホースを繋いでゴミと汚水を排出する。
「木田君、大変だよ!早くこっち、こっち!」
「木田さん、早く来て!」
歩廊の上に居ると、先に排出場所の地面に降りていた、小磯とハルが呼んでいる。
「どうしたの?」
「いいから早く、こっちの階段から降りて来て!」
小磯が大声で呼ぶ。私は何事かと思い、慌てて階段を駆け下りた。
「ぬぉおおお!」
私は大声を上げて地面にスッ転び、尻餅をついた。
「がははははは!」
「うひゃひゃひゃ!」
小磯とハルが腹を抱えて笑っている。私は何が起きたのか分からなかったが、後ろを振り返って見て、ようやく状況を理解した。
「これ、氷?」
「そう、氷だよ。危ないからって注意したんだけどね」
加納が申し訳なさそうに言う。後ろでまだ小磯とハルが笑っている。
「はいっ、怒らない!俺もハルもここで転んだんだから」
小磯が私の肩をバシバシと叩く。
「転んだ?二人とも?」
「そう、最初に俺が転んだの。次が小磯さん」
ハルが階段の最終段の真下、アスファルトに張り付く薄くて透明な氷を指差す。
「俺が最初にハルさんに注意したんだけど、転んでな」
加納は地元の人間だけあって、この直径三十センチのトラップに気付き、ハルに注意を促したらしい。
「何のことか分からなくて転んじゃったのよ」
転んだハルは、自分と同じ目に会わせるために、小磯を大声で呼んだらしい。
「俺も大声でハルに呼ばれて、『何事?』と思って階段を駆け下りたら、ここで吹っ飛んだんだよ」
そして二人は私をこのトラップに呼びつけたらしい。
そこへH電力の山上が通り掛った。
「お、そこは氷が張って危ないからな、気をつけてね」
「・・・気をつけます」
そういうことは、もっと早く言ってもらいたい物だ。
T市内は新たに雪が積もり、今も雪がチラついている。
「いやぁ、今朝はハルちゃん驚いちゃったよ、ホントに」
ハルはレンタカーの後部座席で、朝からパワー全開だ。正確に言うと午前三時ごろからエンジン全開だ。ハルの就寝時間は午後九時から十時、起床時間は午前三時から四時だ。
「なんたって、朝起きたら頭に雪が積もってるじゃんね」
「はぁ?」
小磯が眉間にしわを寄せる。私は乗り慣れない車で、経験が少ない雪道の運転に集中しているので、二人の会話に参加する余裕が無い。
「だからぁ、起きたら窓から雪が降り込んでて、頭が雪だらけだったの!」
「がははは、どうせまた窓開けて寝たんだろ」
「窓開けるなんて当たり前でしょう。あんなに部屋が暑いと寝られないよぉ」
「がはははは!お前だけだ」
私は二人の会話に驚いた。
「ハルさん、雪って寝る前から降っていませんでしたっけ?」
「うん、降ってたよ」
「それでも窓を開けて寝たんですか?」
「そりゃそうでしょ!」
「本当の話ですか?」
「本当よぉ。寝る前は風がなかったから大丈夫だと思ったんだけど、何よ、朝になったらベッドと俺の頭に雪が積もってるんだもんね、びっくりしちゃったよ」
「ちなみに朝って何時のことですか?」
「決まってるでしょ、朝って言ったら三時でしょう」
「がははは、そりゃお前だけだ!」
また小磯が爆笑する。
「ハル、世の中の普通の人間は、朝って言ったら六時から七時なの」
私も小磯の意見に賛成だ。
「七時?七時なんて言ったらもうお昼前だよ」
「がははは、木田君、こいつに普通の人間の生活を教えてやってくれ!」
「いや、僕は逆に寝るのが三時ごろなんで…」
残念ながら小磯の要望には応えられそうに無い。
「そうだったよ、木田君は寝ないんだった」
「ええ、大体三時間くらいですね」
「それはおかしいよ木田さん、おかしいから治した方がいいよ」
「がははは、お前もだ!どうしてウチには普通の人が居ないんだ?」
私は苦笑いをしながら、TS火力発電所に車を乗り入れた。
ミストエリミネータが完了したので、今度は煙道で作業を行う。
加納にも手伝ってもらい、ホースやガンの段取り換えを行う。煙道内部の作業が終わると、今度は剥離片の排出場所を用意しなければならない。
煙道は途中で直角に立ち上がっていて、その最下部には直径300ミリのフランジが付いていた。ここにホースを繋いでゴミと汚水を排出する。
「木田君、大変だよ!早くこっち、こっち!」
「木田さん、早く来て!」
歩廊の上に居ると、先に排出場所の地面に降りていた、小磯とハルが呼んでいる。
「どうしたの?」
「いいから早く、こっちの階段から降りて来て!」
小磯が大声で呼ぶ。私は何事かと思い、慌てて階段を駆け下りた。
「ぬぉおおお!」
私は大声を上げて地面にスッ転び、尻餅をついた。
「がははははは!」
「うひゃひゃひゃ!」
小磯とハルが腹を抱えて笑っている。私は何が起きたのか分からなかったが、後ろを振り返って見て、ようやく状況を理解した。
「これ、氷?」
「そう、氷だよ。危ないからって注意したんだけどね」
加納が申し訳なさそうに言う。後ろでまだ小磯とハルが笑っている。
「はいっ、怒らない!俺もハルもここで転んだんだから」
小磯が私の肩をバシバシと叩く。
「転んだ?二人とも?」
「そう、最初に俺が転んだの。次が小磯さん」
ハルが階段の最終段の真下、アスファルトに張り付く薄くて透明な氷を指差す。
「俺が最初にハルさんに注意したんだけど、転んでな」
加納は地元の人間だけあって、この直径三十センチのトラップに気付き、ハルに注意を促したらしい。
「何のことか分からなくて転んじゃったのよ」
転んだハルは、自分と同じ目に会わせるために、小磯を大声で呼んだらしい。
「俺も大声でハルに呼ばれて、『何事?』と思って階段を駆け下りたら、ここで吹っ飛んだんだよ」
そして二人は私をこのトラップに呼びつけたらしい。
そこへH電力の山上が通り掛った。
「お、そこは氷が張って危ないからな、気をつけてね」
「・・・気をつけます」
そういうことは、もっと早く言ってもらいたい物だ。
そして、遅くなりましたが・・・・
“はくりんちゅ”の3ケタ台突入おめでとうございます!!
まだ全体の3分1ほどしか読み終えてませんが(ごめんなさい)これからじっくりと熟読していきたいと思います(笑
私の旅情報はあまり役に立たない(笑)かもしれませんが、少しでも役に立てば嬉しいですね。
夏ごろに旅を再開されるのを、楽しみにしています!
ゆっくりと北海道で過ごして、雪の中の日本海側を南下、先日鹿児島に到着したそうです。
彼のはまさに「旅」ですね。そして私も、いつかまた「旅」に出たいです。