どんぴ帳

チョモランマな内容

バリウム検査とイカ墨パスタ(中編)

2013-04-06 02:16:25 | 長七郎観察日記
お下品なスカトロ系のネタです!
嫌いな方は読まないよーに!


 あれから18年、私はバリウム検査を受けるに値する、立派なオジサンに成長した。

 もはや持病もあり、自分の健康に自信が持てなくなり始める年齢だ。今この時も、私の身体の中で癌細胞が増殖しているかもしれないのだ。
「よし、今年はバリウム検査を受けるぞ!」
 私は決意をすると病院に電話をして、市の特定健康診断と胃癌と大腸癌の健診を受けることにした。

 健診当日、私は血圧と身長と体重と腹囲を測定され、大切な血を抜かれた上に、恥ずかしながら尿を紙コップで差し出した。医療でなければきっと人権蹂躙だが、私は素直に従った。
 一応医師の問診もあり、色々と聞かれる。
「何か持病は?」
「橋本病です」
「どうやって判ったんだね?」
「最初は整形外科に行って…」
 昨年も同じ病院で健康診断を受けており、問診をしているのも同じ医師、というか院長、担当看護師ももちろん同じだ。
「なんか去年も全く同じ会話のやり取りをしたよなぁ…」
 そんなことを思っていると、いよいよ18年ぶりのバリウム検査になった。

 看護師から待合で座っているように言われたのだが、私は廊下を二度ほど往復している作業着姿の男性が気になっていた。それは大手T社の作業着で、どうやら医療機器のメンテナンスに来ているようだった。
「さ、こちらに来て下さい」
 熟女看護師の後ろから、若い看護師が付いて来る。手には発泡剤とそれを飲むための水の入ったガラス容器を持っている。
「これ、どうするんですか?」
 若い看護師が恐ろしいことを質問する。
「飲むに決まってるだろ…」
 私は頭のなかで突っ込んだ。
「発泡剤よ、撮影の時に飲むのよ」
 熟女看護師が答える。
「大丈夫なのか?この病院…」
 家から近いから去年も来たが、来年は変えたほうがいいかも知れないと思った。
「はい、じゃあこの上に立って下さいね」
 熟女看護師に言われ、やけにピカピカの機械の台に上った。
「実は今日初めて使うんですよこの機械、新品なんです!患者さんが第一号ね」
「はあ、そうですか…」
 あまり嬉しくない情報だ。車やAV機器などは新品の方が嬉しいが、医療機器の、しかもX線を使用するの機器の新品なんてのはあまり歓迎する気分にはなれない。そう思って操作室側を見ると、ガラスの向こうに先ほどの大手T者の作業着の男性が一名、なにやら準備をしている。脇には熟女看護師とかなり無知そうな若い看護師が立っている。
「まさかこのメンバーで撮影開始なんて、あり得ないよね…」
 一抹の不安を感じる。
「さ、やりますかね!」
 突然ドアが開き、白衣姿の院長が部屋に入って来た。当たり前のことだが、なぜかちょっと安心する。
「はい、バリウムですよぉ、昔に比べると美味しくなってるはずなんですけどね…」
 熟女看護師が、重量感たっぷりのバリウム入りのPET容器を私に手渡す。
「どんなに味が良くなってもバリウムはバリウムだよね…」
 私はそう思いながら院長の指示通りバリウムを飲み込む。
「…やっぱりこんな味だよね」
 発泡剤を飲み干し、院長の指示に従いもう一口バリウムを口に含む。
「はい、台を寝かせますよぉ」
 院長は作業着姿のT社の人間のアドバイスを受けつつ機械を操作し、私が立っている台を寝かせる。しかしバリウムは口に含んだままだ。
「んー、んー、ホヘ、ホヘ!」
 私は操作室に向かって口の中のバリウムを指さす。
「あ、ごめんなさい、飲んで下さい」
 院長はマイクで答え、私は上半身を起こすと不味いバリウムを胃に流し込んだ。この後は院長の指示に従って身体の向きを変え、
「はい、息を止めてぇ」
 と言われて撮影を繰り返す。
「こんなに長く撮影したっけ?」
 疑問に感じ始めた頃、いきなりアラーム音が鳴り響いた。
「ピピピピピピ!」
 急に不安になる。
「何かな?」
 院長がマイクを入れたままメーカーの人間に尋ねる。
「タイムオーバーですね」
 メーカーの人間がサラリと答える。
「おい、必要以上に浴びせてないだろうな、放射線…」
 二年ほど前から人々は放射線ネタに敏感である。私は心のなかで突っ込んだ。
 メーカーの人間がアラーム音の消し方を院長に教えると、再び撮影が再開される。なんだか自分が実験台になっているみたいで、微妙に嫌な気分になる。
「はい、これで終了です!」
 院長の声を聞きながら、私は18年越しの願望を実現しようとテンションが上がり始めるのを感じていた。
「よぉし、サイゼリヤへ直行だ!」
 看護師から受け取った大腸がん検診用の検便キットを左手に握りしめ、私は右ポケットから車のキーを取り出した。

 ※長くなったので中編にしました。後編へ続く


 


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