どんぴ帳

チョモランマな内容

ショボい巨塔(その14)

2010-02-18 04:11:22 | 病院

 ここでアレほど注意しているにも関わらず(笑)、相変わらず深夜に、病院にコンビニエンスな電話を掛けてくる人がいます。

 しかも大半は風邪…。
「あの、風邪なんですけど、今から診てもらえませんか?」
「・・・」
 なぜ深夜三時に、自分で『風邪』だと申告する、いかにも体力がありそうな二十代の若者を診察する必要があるのでしょうか。
 これが肺炎を併発しそうな高齢者ならまだ分かるのですが、電話の向こうの『患者様』は咳一つせず、正常そうな呼吸で、淡々と話されています。
「風邪、なんですよね…、今は深夜三時、あと六時間もすれば通常の診察が開始されます。通常の診察を受けて頂く訳にはいきませんか?」
 無条件にそう言う患者さんを受け入れるのもどうかと思い、たまにはこちらから『お願い』してみました。
「やっぱりダメですかね?普段は仕事があってなかなか病院に行けないんですよねぇ…」
「・・・・・・・(怒!)」

 じゃあなんですかね、今日も朝から仕事があるから、深夜三時に仮眠している医師を叩き起して、ギリギリの人数で回している病棟の看護師を一人外来に呼び出して、今からカルテを用意して診察しろと、そう言うことなんでしょうか。
「このままでは倒れて意識を失いそうだ!」
 とか、
「脱水症状で苦しい!」
 とか、
「熱で意識が朦朧として来ました!」
 とか言うのならまだ分かります。
 が、大変失礼ながら、あなたは今日の朝から仕事をするつもりなんですよね…。車を運転して会社に行くんですよね…。それだけの体力があるんですよね…。それなら深夜三時(なんでこんな時間なんだ!?)に病院にわざわざ来て、医師の診察を受ける必要は無いですよね。
 ちなみに、深夜の診察料金は高いです。これは保険の点数がそうなっているので、別にボッている訳ではありません。そしてその内の七割は、皆さんが支払った健康保険から拠出されます。

 病院に行く、行かないは、個人の自由です。
 どんな会社に就職するかも個人の自由です。
 病気で仕事を休むかどうかも個人の自由です。
 もし病気でも仕事を休ませてくれないのなら、それはその会社が悪いと思います。その会社が変なんだと思います。
 で、その変な会社を選択して入社したのは、あなたです。つまりあなた本人の責任なんです。
「昼間は仕事で病院に行けないから…」
 と言う理由だけで、あなたの好きな時間(しかもそれが深夜二時とか三時とか!)に病院に電話をして、無理やり診察を受けてもイイという理屈は通りません。
「じゃあ、俺は(私は)いつ病院に行けばイイんだよっ!」
 と思われた方、それは自分の会社の上司とか、社長にブツけて下さい。いや、本当に。元凶はそこだし…。

 さて、この体力バリバリっぽい患者さんですが、やはりどうしても深夜三時に診察が受けたいみたいです。
「とりあえず診てもらえませんか?」
「…分かりました。現在当直の医師は耳鼻科の医師ですがよろしいですか?お薬は基本的に一日分になります」
「…薬、一日分なんですか?」
「ええ、あくまでも時間外の診察になりますので」
「じゃあ、イイです」
「…診察は希望されないとうことですか?」
「はい」
「・・・・・・・・(じゃあ何で電話して来たんだよ!)」

 かと思えば、非常に自立心(?)の高い患者様もいらっしゃいます。
 深夜二時過ぎ、けたたましく鳴る外線を取ると、怪しい息遣いが聞こえてきます。
「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ…、あの、そちらでいつもお世話になっている、△△です」
 私が若い女性なら即座にガチャ切りですが、ここは病院なのできちんと応対します。
「はい、どうされました?」
「息が、く、苦しくて…」
「先にお名前と生年月日を教えて下さい」
「△△☆☆、ハァ、ハァ…、昭和○年○月○日です」
 六十代の男性です。
「きょ、今日は内科の先生ですか?」
「はい、そうですよ」
「今からハァハァ…」
「分かりました、医師に確認しますのでお待ち下さい」
 当然、診察しますとの返事です。
「すぐに診察させて頂きます。付き添いの方はいらっしゃいますか?」
「一人です、今から車で行きます」
「い、いや、ご自分で運転されるのは危ないと思いますので、せめてタクシーか、何なら救急車を呼んで下さい、受け入れますので」
「ハァ、ハァ、分かりました」
 さっそく病棟の看護師に連絡を入れますが、病棟は病棟で先ほど入院患者さんが亡くなったらしく、人手が足りなさそうです。
「あ、お疲れ様です」
 深夜二時半だと言うのに、看護師長が呼び出されて応援に来ました。
「霊安室、開けてもらえます?」
「了解です」
 バタバタとして来ます。
「ピンポーン」
「ん?」
 インターホンのモニターを覗くと、電話のあった患者さんらしき人が…。
「あれ?タクシーですか?」
「ハァハァ、自分で…、う、運転して来ました、ハァハア…」
「・・・・・(おいおい、ダメでしょ…。あなたはそれで良くても、万が一事故を起こしたら、無関係な他人に迷惑がかかるでしょうが…)」
 この男性、自力で歩くのも怪しく、ついに動けなくなってしまいました。
「入院ですね!」
 看護師が私に告げます。

 思ったよりも重症のこの男性、処置には当直医師一名と、二名の病棟の看護師が掛かり切りです。もちろん病棟では主治医も呼び出され、亡くなられた患者さんの処置も行われています。慌てて駆けつけた親族の方も次々とお見えになります。ナースコールが鳴りまくる病棟は、スタッフが全然足りません。
 そしてそれを見計らったように、またしても若い男性から外線が入ります。
 時間は深夜三時。
「あのぉ、風邪みたいなんですけど、今から診てもらえませんか?」
「・・・・・・・・・・(怒!!)」

 本当にお願いします。
 明日仕事に行けるだけの気力と体力があり、ご自身で『単なる風邪』だとおっしゃる様な状況で、深夜に病院に電話を掛けないで下さい。
 冬真っ只中に風邪を引いている日本国民は、ごまんといらっしゃいます。その全員が思い思い好きな時間に病院に押し寄せたら、それこそ数日で日本の医療体制は崩壊しますから…。

 それから、本当に具合が悪い人は命がけで車を運転せずに、素直に救急車を呼んで下さい。
 この六十代男性の車は数日経った今でも、病院の真ん前の駐車場で斜めに歪んで止められたまま、二台分のスペースを占有し続けています。

 今週の目標: 車はまっすぐに駐車しましょー!いや、本気で違うな(笑) 
 



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2 コメント

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都市伝説 (カミヤミ)
2010-02-19 00:32:49
館ひしと早優が、膣痙攣で運び込まれて『泣かないで』とか言ってるのは、診察していただけますか?
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空港伝説 (どんぴ)
2010-02-19 01:49:06
 柏原○恵の手荷物検査でバ△ブが見つかったって伝説もありましたよね。

 膣痙攣の二人は、柴田○兵みたいな医師が診察に当たります。
「行くぜ!」
 と叫んで、華麗なステップで救急車を受け入れますので、安心してストレッチャーの上で『泣かないで』を歌って下さい(笑)
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