今回の『ショボい巨塔』は第13回という記念すべき不吉な回(笑)なので、病院に憑き物の、いやいや付き物のお話です。
怖い話が嫌いな人は読まないで下さい!(そんなに怖くないけど…)
医師や看護師さんと付き合いのある方々なら、一度くらいは聞いたことがあるのではないでしょうか?
病院に纏わる例の、いやいや霊のお話を…。
「使われていない○○科の部屋に、深夜真っ白な服を着た女の人が入って行った…」
とか、
「昔、深夜の職員更衣室に見知らぬ髪の長い女性が立っていて、フッと消えた…」
とか、
「誰も居ないはずの部屋から子供の声がした…」
とか、数え上げたらきりがありません。
そうです、それなりに歴史のある病院には、この手のお話が大なり小なり必ず存在し、スタッフの間で語り継がれているものです。
「居るよ、この病院には絶対に居るからね!」
そう断言する看護師さんもいます。
「霊感のある子に訊いたら、ここのロビーにはよく座ってるらしいよ」
「誰がですか?」
「決まってるでしょ」
「・・・」
「しかも一人じゃないってさ」
「・・・・・・・」
なんて会話もあります。
勘弁してもらいたいものです。なんと言っても深夜1時からは、事務当直は一階の当直室にたった一人です。
ロビーの椅子に、そんなあらぬ世界の人たちが座っていたら、こっちも気が休まりません。
だって当直室はロビーの前にあるんだし…。
でもそんなことを言われつつも、私が仕事を継続しているのは、単に霊感が無いからです。
そうです、見えないんです!なんにも。
「キレてなーい!」
でおなじみの『シック プロテクター3』が如く、
「ミエてなーい!」
状態ですので、もう全然気楽です。
見えない以上、気にする必要も無く、そして意識もしない。いちいち見えていたら、恐ろしくて病院で仕事なんか出来ません。
が、それでも見えちゃう看護師さんや、時には患者さんもいるらしく、
「深夜、ベッドの中に誰かこの世の人じゃない奴が潜り込んできた」
とか、
「仮眠中に背中側で勝手に添い寝された」
なんて話や、
「毎晩、部屋に飾ってある絵の額縁から、誰かが覗いている…」
とか、数え上げたらどんどん出てきちゃいます。
探せばいくらでもそんな話が出てくるのに、私は長州力の、
「キレてないですよ!」
が如く、
「ミエてないですよ!」
な状態ですので、気楽なものです。
ある時期などは、私が当直業務に入る度に、毎回(五回連続で)誰か(もちろん入院患者や救急患者)が亡くなり、
「うーん、事務当直じゃなくて、霊安室マスターになっちまうなぁ…」
などと思っていた程でしたが、やはり私には何も見えませんでした。
それよりも深夜二時半のコンビニ受診の方が、余程恐ろしいと思っていた程です(笑)
しかし、そんな私でも一度だけ不思議な体験をしました。
それは深夜一時のことでした。
この時間になると外来の担当看護師はお仕事が終了となり、着替えて帰ってしまいます。
「お疲れ様でした」
「お疲れ様!」
受付の前で挨拶をして、私は当直室へ、看護師は着替えに更衣室に行こうとしたその時でした。
「ピンポーン!」
聞き慣れた音が、真っ暗な一階に響きました。
「ん?」
「は?」
二人で顔を見合わせます。
「聞こえました?」
「…うん、聞こえた」
「あれ、受付のチャイムの音ですよね」
「うん、間違いないよ、でも内科じゃないよね?」
「内科って、今僕らから見えてるじゃないですか…、そっちから聞こえた気がするんですけど…」
「放射線科だよ…」
「ありましたっけ?これと同じチャイム」
「う、うん…、ここと、内科と放射線科だけ…」
目の前の受付カウンターには、受付が不在の時に押してもらう室内用のチャイムが置いてあります。
「外かな?」
「って、インターホン?」
しかし自分たちが立っている位置からは、ガラス扉を通してインターホンの付近が見えますが、人影は一切見えません。
「ちょっと待って」
数歩歩けば、インターホンが押されたかどうかは、モニター画面で確認出来ます。
「いや、押されてないですよ、インターホンは…、モニター点いてないし…、それに音が違いますから」
「やっぱりこの一階の中だよね」
「・・・」
すでに病院の建物出入口は完全に施錠してあり、一階には私と看護師一名、他には誰もいないはずです。
「調べましょうか…」
私はダッシュで放射線科に向かいますが、薄暗い廊下には当然誰もいません。そのまま内科の前を経由して、受付に戻ります。
「確かに放射線科と内科に受付と同じチャイムがあるけど、誰もいませんよ」
「嘘…、私今もずっとここから見てたけど、誰も見てないよ」
「ですよね、チャイムが鳴ってから、この目の前の廊下は誰も通ってないですよね、この廊下を通らない限り、二階には上がれないですよね」
私はブルッと背中を震わせます。
「このままここに居てもらってイイですか?一階を完全に調べますから!」
私は一階の照明を全灯すると、あらゆる通路、診察室の扉の施錠確認、トイレの個室、そして機械室の中まで調べ上げました。
「ふぅ、やっぱり誰もいませんでしたよ」
「うわぁ、やっぱり?」
「ここで見ててもらったけど、当然誰も通ってないですよね」
「うん…、どーしよー、聞いたよね、二人で」
「ええ、間違いなく二人で聞きましたよね、チャイムの音…」
背筋がゾワゾワとします。
「もしかしてさぁ…」
「何ですか?心当たりが?」
看護師は目を見開きます。
「夕方勤務に入った時、救急患者が一人入ってたでしょ」
「ああ、亡くなった男性がいましたよね。霊安室は僕が閉めたんだっけ」
「あの人さぁ、急性心不全だったんだよねぇ、しかもご遺体は放射線科の前を通って霊安室に運んだからね、ストレッチャーで…」
「本当ですか?」
「うん、たぶんあの男性だと思う…、いきなりだったし、まだ若かったからね」
「・・・・・・うわーい、僕、今から当直室で寝るんですけど、一人で…」
「うん、私は着替えて急いで帰るからさ、着替え終わるまでここで待っててくれる?」
「え、マジですか?自分は帰るまでここに僕を居させて、後はススッと帰っちゃうんでしょ?」
「当たり前じゃない、だって怖いでしょ!」
「うわぁあああー、僕なんか一階に一人で放置プレイ状態ですよ?」
「大変だよねぇ、事務当直って、でも取りあえず私が帰るまではここに居てね、よろしくぅ!」
「・・・・・・・・」
この日以来、私は突然霊が見えるようになってしまいました…。
えー、冗談です(笑)
相変わらず何も見えませんが、誰もいないはずのロビーで、突然『尿』の臭いを感じたりすることはあります。
きっと成人用オムツ『ラ○フリー』なんかを着用したお爺ちゃんの霊が座っているのかも知れませんが、相変わらず私には何も見えていません。
ただ、病院側はこれらの問題を重大視しており、新たに専門の職員を雇用するそうです。
その名も、『霊務当直』!
病院内の一切の霊障を解決する、除霊のエキスパート職員です。
結界や護符を使いこなせたり、魔法陣を使える方に対しては、資格手当や特殊能力手当も充実しておりますので、ドシドシご応募下さい!
何かに取り憑かれてしまった場合は労災も使えますし、リフレッシュ休暇も充実しているそーです。
※ くれぐれも本気にしないで下さい、お願いしますね(笑)
最新の画像[もっと見る]
- 新・くみたてんちゅ(アメリカ編1) 8年前
- 新・くみたてんちゅ(アメリカ編1) 8年前
- 新・くみたてんちゅ(アメリカ編1) 8年前
- 新・くみたてんちゅ(アメリカ編1) 8年前
- 新・くみたてんちゅ(アメリカ編1) 8年前
- 新・くみたてんちゅ(アメリカ編1) 8年前
- 新・くみたてんちゅ(アメリカ編1) 8年前
- 新・くみたてんちゅ(アメリカ編1) 8年前
- バリウム検査とイカ墨パスタ(後編) 12年前
- バリウム検査とイカ墨パスタ(後編) 12年前
私ももっと鍛錬を積み、カミヤミさんの『植木等』が如き無責任な下半身を見習い、SAをコートでダッシュさせるよーな『漢』になりたいと思います(笑)
あ、タイガーウッズの怪我は、恐らく生き霊のせいだと思います!(笑)
お互いのその日の健康状態を確認しあう、仲睦まじい関係の証です。
いわゆる濃厚な『健康チェック』ですな(笑)
次回、雑食王で挑戦!…しないと思います(笑)