どんぴ帳

チョモランマな内容

はくりんちゅ21

2007-11-13 23:54:20 | 剥離人

 今日もB軍基地でお仕事だ。

 ここに来る前は、
「B軍基地って、いったいどんな所だろう?」
 と期待をしていたのだが、基地内は思っていたよりも普通の場所だった。
「車はもしかして右側通行なのか?」
 と思っていたが、何のことは無い、日本国内と同じく左側通行だ。
 
 入門ゲートの近くには、なんと『マ〇ドナルド』がある。お昼時になると、兵隊が大勢ハンバーガーを買いに来る。注文は英語、日本語どちらでも可能だし、支払いもドル、円どちらでも可能だ。ただし、メニューは日本国内の一般店舗とは若干異なる。多分『ハッ〇ーセット』なんて物も存在しないし、もちろん海兵隊々員向けの『アーミーセット』なんてのも存在しない。
 最初はただ店を眺めているだけだったが、別に我々が購入しても問題無いと聞いたので、やや緊張しながら『マ〇ドナルド』に向かった。カウンターの前に立つと、日本人の女性店員が応対してくれた。
「いらっしゃいませ」
 やさしい店員さんは、決して作業着姿の日本人に対して英語で話し掛ける様な意地悪はしない。日本国内と同じ手順で、ハンバーガーとポテトを注文する。ただ一つだけ異なっていたのは、次の一言だ。
「お支払いは『円』でよろしかったでしょうか?」
 私は『ペソ』で支払いたかったが、素直に『円』で支払っておいた。

 昼ごろになると、食料品を満載した『売店バス』が船の側にやって来る。後のドアから入って商品を選び、運転席前で会計をするシステムになっている。制服姿の兵隊と、作業着姿の職人たちが、入り混じって一列に並んで買い物をする様子は、一種異様な光景だ。
 バスの中には国内では販売されていないB国製の食品がぎっしりと詰まっていて、様々な種類のドリンク、スナック菓子、そしてハンバーガーやピザ、ブリトー(薄焼きパンに具材を巻いたもの)などが置いてあった。それらのB国製食品を目当てに、私はいつも嬉々としてバスに乗り込んでいた。
 中でも私のお気に入りは、スポーツドリンクの『ゲー〇レード』だ。日本国内では白っぽい半透明の物、一種類しか販売されていないが、ここでは赤、青、黄、緑、紫、の五色(もちろん味が異なる)が売られている。500ミリのペットボトルは、歯で引っ張ると飲み口が「カチッ」と上にスライドして、吸う様に飲める容器になっている。この健康に悪そうな原色のスポーツドリンクを飲んでいると、まるでジャンキーなB国人になったような気がして楽しく、私はほぼ毎日これを飲んでいた。
  
 このバスの中に一つ、最凶なドリンクがあった。それは『バニラ味のソーダ』(名前が読めなかった)だ。KT社のトモオが試験的に購入して飲んだのだが、トモオは一口飲んでいきなり岸壁にそれを吹き出した。
「ほぉおおおおぅ」
 トモオは意味不明な声を出すと、頭を抱え出した。
「俺にはB国人が理解できねぇ…」
 トモオはシンジに勧める。
「うわっ、なんだこれ?」
 シンジは江藤に勧める。
「おうぇ、すげぇ味」
 江藤が氷室に勧める。
「っぶ、ぶほっ」
 むせる氷室に全員が爆笑する。
「ちょっとイイ?氷室さん」
 私も缶を受け取って挑戦してみる。
「!」
 甘ったるい液体が、鼻の奥に人工的なバニラ臭を運び、同時に口の中でシュワシュワという炭酸の刺激が広がる。
「おぉうぇぇ」
 不味い、あまりにも不味すぎる。その時、私の横に一人の兵隊が通りかかった。彼は突然話し掛けてきた。
「グッドテイスト?」
 私はすかさず眉間にしわを寄せながら答えた。
「ノー、ベリーバッドテイスト」
「ハハハハハ!」
 彼は大笑いをすると、胸の前に拳を力強く突き出し、そして親指を立てた。
 
 私も日本を代表して、負けじと親指を立てた。「ベリーバッドテイスト」だけど・・・。



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