「困った時はお互い様」    

NPO法人「ドネーションシップわかちあい」事務局ブログです

ベーシックインカムは希望になるのか

2010-09-17 10:47:30 | キャンペーンより
※会員ページの日記に書いた報告を転載します(さき)

◆ベーシックインカムは希望になるのか
9月12日、テーマに惹かれて
この↓シンポジウムに参加してきました。
────────────────────────
ウィメンズカウンセリング京都15周年記念シンポジウム
隠されてきた女性の貧困
~ベーシックインカムは希望になるのか~
────────────────────────
〈シンポジスト〉
寺田まりこ(しんぐるまざあず・ふぉーらむ・京都代表)
船木 浩(弁護士・反貧困ネットワーク京都事務局長)
山森 亮(同志社大学経済学部教員)
井上 摩耶子(ウィメンズカウンセリング京都)
【主催】ウィメンズカウンセリング京都
 http://www.w-c-k.org/

シンポは、
寺田まりこさんが、シングルマザーの貧困について、ご自身の体験から報告。
舟木浩さんが、反ー貧困運動の現状と課題について報告。
そうした現実をふまえて、
~ベーシックインカムは希望になるのか~ということで、
山森亮さんが
「福祉権フェミニズムが拓く新しい社会保障のかたち」と題して話をされた。


*************************
以下、山森さんのレジメとお話から要旨を紹介します。
子ども手当は、子どもへのベーシックインカムと言えるものだが、批判が強い。
「将来にツケ」との財源問題
「お金より保育所」と現金給付より、現物給付を求める声
「所得制限なしはバラマキ」など。

けど、子ども手当と同じような各国の給付制度について調べてみると、
次のような数字がある。

◆家族関係社会支出のGDPに占める割合(OECD:2005)
デンマーク  3・4
イギリス    3・2
フランス    3・0
ドイツ     2・2
OECD平均 2・0
日本      0・8
→経済規模からいって、日本の家族関係社会支出は少ない
「将来にツケ」をまわしているのは他の支出

※現物給付と現金給付で分けてみると
<現金給付>          <現物給付>
デンマーク 1・5     デンマーク  1・8
イギリス 2・2     イギリス    1・0
フランス    1・4     フランス    1・6    
ドイツ     1・4     ドイツ 0・7
OECD平均 1・2     OECD平均  0・8
日本      0・3     日本 0・5
→現金給付も現物給付も不足している。どちらも必要

ついでに、デンマーク、スウェーデン、イギリス、フランス、ドイツ、
いずれの国の子ども手当相当の制度にも、所得制限はない。
選別主義の福祉ではなく、普遍主義の福祉を採用している。
「所得制限なし=バラマキ」は日本特有の図式。

日本には 税による普遍主義的給付(社会手当)が不在。
 ・社会保険(保険料を払って、給付を受けとる)か
 ・公的扶助(生活保護など、税による選別的給付)しかない。

◆日本には
<その人の社会的地位に関係なく生存権を保障する社会的責任>
という社会政策の哲学が欠落している。
 ベーシックインカム(基本所得)という考え方=
 すべての個人を対象に、生活に足るだろう所得を無条件に給付する

<「基本」の意味>
・基本的人権だから無条件
・基本的必要を満たすに足る金額
・あくまで基本または基礎であり、その上に労働による賃金所得や、配当、
 あるいは「障害」などの理由による給付があっていい

◆日本での実現可能性
(憲法25条には生存権が明記されているが、そのためにどこまで、)
現行の仕組みを機能させることができるのか、持続可能なのか。

<現行の社会保障制度の機能不全>
完全雇用(探せば仕事がある、仕事があれば食べられる)はもはや神話。
失業保険給付受給できている失業者はたった23%
(2009年のILOの調査によるとドイツでは87%)
生活保護というセーフティーネットは穴だらけ
生活保護水準以下で生活している人のうち、
実際に生活保護を受給できている人の割合(補足率)は2割以下。
技術革新によって、生活可能な賃金を取得可能な労働は減少。
同時に、生活賃金を得ることができる職種も減ってきている。

さあ、どうする?
現行制度の破たん→
「貧困の罠」を生まない仕組みとしてのベーシックインカム(BI)

完全なBIを一夜にして導入することは難しい。
部分的BI(少額BI)を導入して徐々に額を増やしていく。
カテゴリー別(高齢、障害、こどもなど)の給付を増やし、
個々の給付を普遍化すると同時に給付額を充実させ、どこかの段階で統合する。

◆ブラジルでは2004年にBI法が制定されている
 実際には、段階的に実施するとされ、
 現段階では低所得者向けの家族手当が支給。

ベーシックインカムは、夢物語ではない。
ということで、アメリカ、イギリス、イタリアなどで
シングルマザーたちが求めた生存のための所得保障(BI)
の歴史なども紹介しながら、
ベーシックインカム(基本所得)という
「新しい社会保障のかたち」を提起された。


*************************
女性問題にかかわる方がたくさん参加され、皆さん熱心にメモをとりながら聞いてらした。
私も、そう!そう!って思いながら山森さんの話を聞いていました。

最後の方の発言で、
シングルマザーとして生きてこられた寺田さんの言葉。
――BIは、働くことの意味、生きることの意味を変える。
子どもと自分を養うために30年間請負で働いてきた。
NOと言えない労働、仕事をしてきた。
BIがあったら、もう少しゆとりのある、
人間らしい生活がおくれるようになるのではないか。――

そしてコーディネーターの井上さんの、
――70年代から、女性も男並みに働きたい!とやってきた。
けど、今も性差による賃金格差などは解消していない。
同一労働、同一賃金ということと同時に、
生存権保障を求めていくことも必要。
DVに耐えて生きるのか、シングルマザーで貧困のなかで生きるのか、
どっちかしかないのはおかしい――。
という言葉が印象に残りました。

(ちゃんと記憶してないのですが)
アンケート&質問用紙に、おおよそこんな↓ことを書きました。

山森さんの話がおもしろかった。
今はあたりまえだと思っている
基本的人権とか、普通選挙制度とかも
100年くらい前には、あたりまえではなかった。
今は夢物語のように思える、基本所得という考え方も、
いつかあたりまえのことになってほしい、そうしたい。
誰もがあたりまえに生きられる社会を、
子どもたちの世代に、リレーしたい。
ベーシックインカムは希望です!!

BIは最低限の生活のためのお金を給付する制度、仕組みですが、
お金に支配されない、人と人とのつながりを回復していくための仕組み、
でもあると思ってます。


***********************
◆シンポのなかで山森さんから紹介と呼びかけがありました。
ベーシックインカム(BI)を法律で決めたブラジルから
11月に、BIの活動をしているメンバーが来日されるそうです。
http://www1.doshisha.ac.jp/~tyamamor/

直接ブラジルのBIのお話を聞ける機会で、楽しみです。

<おすすめ!>
◆広げよう!考えよう!ベーシックインカムの輪
http://www.ab.auone-net.jp/~bincome/
ドネの会員さんが作成されたサイトです
http://blog.goo.ne.jp/donationship/e/040ca6762aabd08020679f2b75962f16

◆『私の見た世の中 小さな店主の思いと人生』
 ――ベーシックインカム 新しい世の中へ―― 
http://blog.goo.ne.jp/donationship/e/7a27e75029ec8a9a2f428fb0074d39f6
ドネの会員さんがつくられた冊子です
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« イマジンイラク写真展~未来... | トップ | 反貧困世直し大集会2010   ... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

キャンペーンより」カテゴリの最新記事