ともこもなこ !

ソプラノ大森智子のページです。
ふわふわと流れてゆく雲のように
あんなことこんなこと・・・

めるへんたいむ (16)

2006年11月30日 23時55分50秒 | めるへんたいむ
今日は久しぶりに大学でレッスン。

本番が重なったり、大学が入試だったりでお休みが続いてしまったけれど
ちゃんとさらっている学生もいれば、ボーッと過ごしてしまった子もいて・・

これは自分の問題だから、私がとやかく言うことではないのだなぁ。
限りある時間を大切に過ごしましょう



さて、めるへんたいむの時間です。
あぁ、これも久しぶりだにゃー。


先日の小出郷文化会館での中越大震災復興祈念ガラコンサートの写真が送られてきました。
すごいでしょう? これだけ見たら何のコンサートか分かりゃしないったら。

 ラストは紙ふびき 写真家の相田憲克さん撮影です

コンサートの自分のステージで、読ませていただいた詩があります。
この詩に続けて『わたしはここに』を歌ったのですが、
お客さまはシンと集中してこの詩と歌に耳をすましてくださいました。




      
      信頼        能祖将夫



      大地は揺るがない
      その信頼の上に、人間は家を建てる
      大地は裂けない
      その信頼の上に、人間は生活を築く

      だが、時に大地は揺らぐ、裂ける
      家を壊し、生活を、命を呑み込む

      信頼は失われたか?
      人間の大地への信頼は?
      いや、信頼は絶えず回復される
      大地への信頼なしに
      人間がどうやって生きていけばいいというのか?
      人間は大地を踏みしめ
      大地を踏みしめる人間と人間が信頼しあう
      その揺るぎなさ

      そうでなくて
      人間はどうやって生きていけばいいというのか?




これを読んでの歌はズシンと重くきたけれど、お客さまはとても温かく
聴いてくださったように思います。


魚沼、寒さがましているのだろうな。
いまなお、たくさんの人々が暮らしている仮設住宅にも、雪は降るのだろうな。

めるへんたいむ (15)

2006年10月11日 23時47分48秒 | めるへんたいむ
今日は玉川グリーンハーモニーへ。

1ヶ月ぶりでしょうか、皆さんごめんなさい~!
でもいつ来ても皆さんのお顔を見るとホッとします。

皆さん、ほんとに優しい方ばかり
自分の活動の都合で長々お休みしても、いつでも温かく迎えてくれる、
そんな仕事場を持てて、私は幸せ者です。

前にも書きましたが、来年の4月1日に紀尾井ホールにて演奏会をするので
その練習を頑張っていらっしゃいます。
今日は寺嶋陸也さん作曲の「二月から十一月への愛のうた」でした。


これ、谷川さんの『魂のいちばんおいしいところ』に収められているんですよね。
「二月のうた」に始まり「十一月のうた」までの10編の詩です。


で、めるへんたいむの時間です。

10編の詩はつながっているようでもあり、それぞれ別のようでもあり、
男の話のようで女の話のようで・・
愛の形が繊細に細やかに描かれています。
しかも月によって季節によって、光だとか湿気だとか冷たさだとかを感じられるのが、この詩のすごいところです。


どれも素敵な詩ですが、秋から晩秋の匂いのする2編を。



    「二月から十一月への愛のうた」より
     
     十月のうた         谷川俊太郎


     何の動きも感じられなかったのに
     草の間から風が湧いた
     小さな栗がかぶりをふった
     枯れるのをおそれるかのように
     
     遠い山の中腹の一軒家から
     煙のあがるのが見える
     この透明な空気の中では
     どんな小さな嘘もつくことができない
  
     愛しあいながらも
     ふたりはどちらからともなく
     ふと 手をほどく・・・・

     しじまのうちに
     すべてはこんなに明るく語られている
     こんなに明るく




     11月のうた


     愛しているから
     愛していると云えないのです
     許してください
     私の不器用な沈黙を
     私はあなたをとりかこむ空気になりたい
     あなたの肌にむすぶ露になりたい

     視線の動きだけで
     もう小鳥は飛び立ってしまう
     ただひとつの囁きだけで
     夜は明けてしまうのではないか
     ただ一滴の涙だけで
     愛は凝固してしまうのではないか

     私は身動きできないのです
     この余りにも完璧な
     あなたとの夜に



指揮の秀幸先生が、“しな”を作って恋する女性の心の機微を表現されるのですが
これがウマイったら!

谷川さんといい、やっぱり男性のほうがロマンチックで繊細な生き物、なんでしょうか。。。

めるへんたいむ (14)

2006年09月08日 14時27分54秒 | めるへんたいむ
風が気持ちよいですね。
好きな季節がやってきます。


めるへんたいむの時間です。


『いわずにおれない』、大好きな詩人まど・みちおさんへのインタビューと、
まどさんの詩や絵が紹介されています。

現在96歳の現役詩人。
人間や雑草やアリや蚊や石、この世に存在しているあらゆるものに興味を
持ち続け、いとおしみ、それらをかぎりなく平易な言葉で輝かせてしまう
まどさん。

ものの本質に近づきたい。一途に思い続けることの素晴らしさ。
その詩は、どんどんどんどん透明さを増しているようで
読んでいると、爽やかな風がわたしの身体をさらさらと吹き抜けていく
ように感じます。

まどさんがご自宅でものを書いていらっしゃる写真なども載っていますが、
なんだかまどさんの身体さえも半分透けているように見えるのは、
私だけかな。。。


   
      
      つけものの おもし        まど・みちお


      つけものの おもしは
      あれは なに してるんだ

      あそんでいるようで
      はたらいているようで
    
      おこっているようで
      わらっているようで
 
      すわっているようで
      ねころんでいるようで

      ねぼけているようで
      りきんでいるようで

      こっちむきのようで
      あっちむきのようで

      おじいのようで
      おばあのようで

      つけものの おもしは
      あれは なんだ



       
      きょうも天気


      花をうえて
      虫をとる

      猫を飼って
      魚(うお)をあたえる

      Aのいのちを養い
      Bのいのちを奪うのか

      この老いぼれた
      Cのいのちの慰みに

      きのうも天気
      今日も天気


     「なんでもないことを本当になんでもなく書けたらと思います」
      


やっぱり憧れてしまいます

めるへんたいむ (13)

2006年08月01日 14時14分31秒 | めるへんたいむ
昨日の海の写真、どんより灰色に写ってましたが、
もっときれいな空と海だったんですよ~。
最近、ピンボケしたりで、携帯カメラの調子悪し・・



さて、めるへんたいむの時間です。

昨日の「ラ・カンパネラ」さんのところでは、木下牧子さんの『月の角笛』を
練習したのですが、久しぶりに歌ってみて、やっぱり素晴らしい曲集だなぁ
と感じ入ってました。
9人の詩人による12の詩に、木下さんが平易で美しく優しいメロディをつけて
いらっしゃいます。

それぞれの詩も素朴で、且つ無駄のない、選び抜かれた言葉たちなので、
その詩・曲の持つシンプルさを壊さぬよう、歌うほうはかなり神経を使います。
それでも、「歌いたくてたまらなくなる」歌たちなのです

その曲集の中で私が特に好きなのは、「しじみ蝶」と「白いもの」。
今日は「しじみ蝶」の新美南吉の詩をご紹介したいと思います。

新美南吉と言うと、『手ぶくろを買いに』というお話が大好きですが、
彼の書く詩も、独特で素敵な世界。
29歳という若さで、作家として世に広く知られることなく亡くなった南吉の、
“優しさと悲しみ”がどの作品からも滲み出ています。



     
     しじみ蝶           新美南吉


     そより
     風と
     生れ

     草の
     光に
     まぎれ
   
     かげの
     花には
     みえつ

     うすい
     秋陽(あきび)の
     まひる

     しじみ
     蝶々の
     ちらら
  
     きえも
     はてずに  
     まうは
 
     あはれ
     杳(はる)かな
     夢の
  
     あはれ
     はかなき
     おもひ



     

     貝殻


     かなしいときは
     貝殻鳴らそ。
     二つ合わせて息吹をこめて。
     静かに鳴らそ、
     貝殻を。

     誰もその音を
     きかずとも、
     風にかなしく消ゆるとも、
     せめてじぶんを
     あたためん。

     静かに鳴らそ
     貝殻を。

めるへんたいむ (12)

2006年07月12日 23時18分06秒 | めるへんたいむ
今日は久しぶりに玉川グリーンハーモニーのお稽古へ。
おかあさんコーラス東京大会以来だから、1ヶ月ぶり! お懐かしゅうございます~
来月の全国大会へ向けて、こんどは揃いの半纏(はんてん)が準備されていました。(写真撮るの忘れた

イナセっ! 
私は下町生まれの下町育ちなので、祭っぽいものを見るとワクワクしてしまいます。
民謡に合わせて振り付けの練習もいたしました。
がんばっていきましょ~



ところで、めるへんたいむの時間です。

今日は、先日沖縄で初演しました「わたしはここに」をご紹介させていただきます。

新しい歌のための詩ということで能祖さんに依頼した際、
「生きていること」「キラキラしていること」「生まれるということ」
ということをテーマにお願いしたところ、自分ではまったく予期していなかった大きな詩(うた)を創ってくださいました。

・・と言いながら、あれこれと注文などもしてしまいまして、ほんと、何と申してよいのやら・・・
創造する苦しみや創造したものに対する愛着を差し置いて「あの、ここなんですけど・・」などと、
感じるままに言ってしまうのですから。
しかも言葉の師匠に。。。

でもでも!わたしも、歌うからには「自分の歌」として、すみずみにまですごく実感を持って歌いたかったのでした!

・・そして、出来上がった「わたしはここに」。
大きな大きな詩(うた)に、長生さんが寄せては返す波のような美しいメロディをつけてくださいました。

ずっとずっと大切に歌い継いでゆきたい、私のたからもの。




     わたしはここに     能祖将夫 作詞、長生 淳 作曲

    

     はじめは確かに泣いたかもしれない
     それから眠って
     そして笑った

     気づけばわたしはここにいて
     光を浴びて
     風を感じて
     いつもあなたに抱きしめられて
     愛を感じて
     そして笑った

     あれからたくさん泣きもしたし
     これからだって泣くかもしれない
     いつか一緒に笑ってくれる
     あなたがいればたぶんうれしい

     今わたしはここにいて
     光を浴びて
     風を感じて
     いつかきっとあなたに抱かれて
     ここを去って
     そして眠る
     その日がくるまで 
     光を浴びて
     風を感じて
     今わたしはここにいて
     今わたしはここにいるから

     だから生きよう

めるへんたいむ (11)

2006年07月04日 23時46分17秒 | めるへんたいむ
今日は1週間ぶりの大学。

お留守番をさせてしまった学生たちに“ちんすこうショコラ”を渡しながら
「はい、沖縄のお土産。・・・仕事だよ
と念を押していたのでした。

“沖縄”って、スペシャルな響きですからねぇ。
あるむすめなどは、「先生、水冷たかったですか~?」なんて聞くんですもの。。
先生は仕事だったの、仕事~



さて、久しぶりにめるへんたいむの時間です。

その沖縄コンサートのとき初めて歌いました
ドヴォルザークの「家路」の歌詞を。

「家路」と言うと、
♪遠き山に 陽は落ちて~ 星は空を ちりばめぬ~♪
がもっとも有名でしょう。
他にも何人か(宮澤賢治や野上彰や、最近では亡くなった本田美奈子なども)
この美しいメロディに言葉を託しています。

私も、小さい頃から ♪と~おき~や~まに~ ひ~はお~ちて~♪って歌ってました。

だけどその後がいつも自分の中にピンと来なくて(言葉が少し古くて難しいのですよね)
今回、「家路」を歌うと決めてから(これからアンコールの最後に歌っていこうと思っているのです)
あたらしくオリジナルで美しい言葉を歌えたらなぁと、またモクモク湧き上がってしまい、
今回の新曲に続き、能祖さんにお願いしてしまいました!(ほんとにいつもありがとうございます




     家路 (交響曲第9番「新世界より」)   能祖将夫 歌詞
               

     暮れる空のしずけさに
     鳥も花も安らいで
     夢に見るは懐かしい
     甘い香り楽園か
     燃える空のその果ては
     いつか帰るところかな
     ところかな


     星は空に満ちあふれ
     ふいに涙こぼれ落ち
     銀のしずく行く先は
     夢の中のあこがれか
     遠い光その果ては
     いつか帰るところかな
     ところかな



優しい言葉たち。
大切に歌ってゆきたいと思っています

めるへんたいむ (10)

2006年06月07日 22時55分43秒 | めるへんたいむ
心ざわめく日は、本を読もう。

めるへんたいむの時間です。(記念すべき10回目!
今日は大好きなまど・みちおさんが95歳!!に出版された「ネコとひなたぼっこ」です。
この詩集は、ゆっくり時間ができたときに読みたいと思って、買ってすぐ本棚にしまっておいたのですが、
ゆっくりの時間はそうそう訪れそうもないので読むことにしました。




    クツは              まど・みちお


    クツは
    ぬいだがさいご
    だまっている
    このとしになるまで
    きづいてもいなかったが
    なんでみてみなかったんか
    ぬいだクツをぬいだクツだと・・・
    ああ いじらしい
    かけがえない あいぼうと
    いなさる
    ここに いないかのように
    ここに ふたりで・・・




    んだったっけ


    きのうのあさおきてすぐだ
    うえとしたと二つのイレバを
    はずしてあらっていたらイレバの
    ワッカとワッカがからんで
    なかなかはなれない
    なかがいいなあ・・・
    とかんしんしているばあいじゃない
    ルーペにピンセット
    ペンチまでもちだして
    ああやったり こうやったり
    さんざんやりながら
    やっとのことキがついた
    そうかあ 天のプレゼントかあと・・・
    で キラキラ チエノワ
    天にかかげてかんしゃしたあと
    ゆっくりと とりはずしを
    たのしませていただいた
    んだったっけ・・・



ざわめきが、すこし、ほぐれた。
こんどは天気のいいお昼、ソファに寝そべって読みたいな。

めるへんたいむ (9)

2006年05月12日 19時46分52秒 | めるへんたいむ
本屋さんで谷川さんの新刊を見つけてしまった。
で、久しぶりにめるへんたいむの時間です。

「すき」という詩集から2編。

谷川さんは校歌の作詞もされていて、「わたしがたねをまかなければ」は立川市立幸小学校校歌だそうです。
歌声が聞こえてくるよう。(ちなみに作曲は林光さん)

小学校の校歌って、けっこう覚えていませんか?
だって6年間も、何かの折に歌っていたでしょう?
私、ちゃんと歌えますよ。

     たなびく朝雲 東京の 空が明ければ 心も開ける
     いつも元気な 小鳥のように 明日の日本の 力が育つ
     第二大島 かがやくわれら~♪

明日の日本の力が育つ、っていうのがちょっと時代を感じるのだけどいまも変わってないのだろうか?
もしかしたら一番最初に歌ったクラシックかもしれないなぁ。

もうひとつは、この間の旅で感じたことがそのまま書いてあって、ちょっとビックリしたので。

     
     
     わたしがたねをまかなければ         谷川俊太郎


     わたしがたねをまかなければ
      はなは ひらかない
     ぼくがあしを ふみだすとき
      みちは かぎりない
     じぶんで かんがえ
     じぶんで はじめる
      幸小(さいわいしょう)のわたしたち

     わたしがあすを あきらめたら
      あさは もうこない
     ぼくがほしを みつめるとき
      そらは かぎりない
     あせらず こつこつ
     ねばって やりぬく
      幸小のわたしたち

     ひとりが うたを うたいだすと  
      こえは こだまする
     ひとりひとり てをつないで
      ゆめは かぎりない
     みんなで なかよく
     ちからを あわせる
      幸小のわたしたち




     歌っていいですか


     歌っていいですか
     独りの部屋であなたがうなされているとき
     歌っていいですか
     あなたの苦しい夢の中で

     歌っていいですか
     塹壕(ざんごう)の中であなたが照準を合わせているとき
     歌っていいですか
     幼い日の思い出のしらべを

     歌っていいですか
     ふるさとを見失いあなたが路上にうずくまるとき
     歌っていいですか
     足元の野花の美しさを

     歌っていいですか
     もう明日はないとあなたが無言で叫んでいるとき
     歌っていいですか
     暮れかかる今日の光のきらめきを

     歌っていいですか
     この世のすべてにあなたが背を向けるとき
     歌っていいですか
     愛を あなたとそして私自身のために

めるへんたいむ (8) 

2006年04月23日 21時56分27秒 | めるへんたいむ
今日はおうちで一日練習。
来月歌う、モンテヴェルディの「聖母マリアの夕べの祈り」。
久々のバロック、声のスタイルを調整して、音に色づけしたりしなかったりする作業などなどなど・・。
やることいっぱい!
でも、やっぱりバロックは好きです、楽しいです。

コンサートの詳細につきましてはまた後日お知らせいたしますね。


さて、めるへんたいむの時間です。

先日てんとうむしに噛まれてから、そういえば「てんとうむし」って詩があったなぁ
と気になって探したら、ありました。
阪田寛夫さんの詩。

♪サッちゃんはね サチコっていうんだ ほんとはね♪の、童謡「サッちゃん」の作詞者です。
私は、阪田さんの本をみるたび「アホの坂田」の坂田利夫の顔を浮かべてしまいます。
(字づらが似すぎ!)
でも阪田さんも大阪の人だし、本当にあんな顔だったらどうしようと、さっき調べてみたところ、全然違ってました~。
文学者顔で、白髪で、毛もたくさんありました。

では「てんとうむし」と関西弁がおもろい「葉月」の2篇を。



     てんとうむし           阪田寛夫


     ごらんなさい
     この通り
     パンがひとかけ
     ふる靴が片いっぽう
     でもここは
     てんとうむしも通る
     春の道です


     
     葉月 


     こんやは二時間も待ったに
     なんで来てくれなんだのか
     おれはほんまにつらい
     あんまりつらいから
     関西線にとびこんで死にたいわ
     そやけどあんたをうらみはせんで
     あんたはやさしいて
     ええひとやから
     ころしたりせえへん
     死ぬのんはわしの方や
     あんたは心がまっすぐして
     おれは大まがり
     さりながら
     わいのむねに穴あいて
     風がすかすか抜けよんねん
     つべとうて
     くるしいて
     まるでろうやにほりこまれて
     電気ぱちんと消されたみたいや
     ほんまに切ない お月さん
     ───お月さん やて
     あほうなことを云いました
     さいなら わしゃもうあかへん
     死ないでおれへん
     電車がええのや
     ガーッときたら
     ギョキッと首がこんころぶわ
     そやけど
     むかしから
     女に二時間待たされてからて
     死んだ男がおるやろか
     それを思うとはずかしい


・・・私の中ではこれ、やっぱり「アホの坂田」が読んどるわ。

めるへんたいむ (7)

2006年04月05日 19時22分02秒 | めるへんたいむ
花冷えの雨、ですね。
今日は二十四節気でいう「清明」。
“桜など草木の花が萌え出で、万物に清朗の気が溢れて来る頃”を言うそうです。
万物に晴朗の気というならば、私のこの鼻づまりも終わっていい頃、と思うのですけど、
今日ぼハダがつばっていばす


さて、めるへんたいむの時間です!

さまざまな詩をご紹介しようと思いながら、どうしても特定の詩人になってしまいます。
また谷川さんです。すみません。
この本は中学2年生のとき初めて買った詩集。前にご紹介した「生きる」が載っています。
久しぶりに読み直してみたところ、以前は「?」て感じだった詩が「!」に変わっていたりして、感慨深かった

いい詩がたくさんですが、今日は初めて読んだときから好きだった2篇を。



     からだの中に           谷川俊太郎 


     からだの中に
     深いさけびがあり
     口はそれ故につぐまれる

     からだの中に
     明けることのない夜があり
     眼はそれ故にみはられる

     からだの中に
     ころがってゆく石があり
     足はそれ故に立ちどまる

     からだの中に
     閉じられた回路があり
     心はそれ故にひらかれる

     からだの中に
     いかなる比喩も語れぬものがあり
     言葉はそれ故に記される

     からだの中に
     ああからだの中に
     私をあなたにむすぶ血と肉があり

     人はそれ故にこんなにも
     ひとりひとりだ



     道順             
     
 
     煙草屋の角を右へ折れて下さい
     足の悪い男の子が走ってゆきます
     枯れかかった樫の木の下を通ると
     ふと前世の記憶が戻ってくるかもしれません
     道なりにゆるく小学校のほうに曲がって
     (老人同志云い争う声が聞こえるでしょうか)
     訳もなく立ち止まってもいいんですよ
     その時すれちがった一人の若い女の不幸に
     あなたは一生立ちいる事ができないのです
     でも口笛を吹いて下さって結構です
     風がパン工場の匂いを運んできたら
     十字路は気がむいたら左折して
     ちょっとつまづいたりして石塀にそって
     仕方なく歩いてくると表札が出ています
     私はぼんやり煙草をふかしているでしょう
     何のお話をしましょうか番茶をすすって
     それともあなたは私の家を通り過ぎて
     港のほうまでいらっしゃるのですか


今から30年以上前に書かれた言葉たち。
いまだに新しい感動をくれる言葉たち。