所用で、房総半島を高速バスで往復した。
高速道路は半島の中央部を通る。
美しい若緑の景色を堪能した。
房総の山は、気候と同じく穏やかな形をしている。
若草色の抹茶饅頭と、濃い緑の草餅を、不規則に連ねたような丸みを持つ。
おや、私は空腹だったのかな。
その山々の合間に、田植えの済んだ水田が、美しく並ぶ。
あるときは、2,3軒の人家が寄り添うようなたたずまいを見せ、
あるときは、ひとかたまりの集落が人の気配を含んだ温かみを思わせる。
ふと気がつくと、海の上に出ている。
東京湾アクアラインだ。
梅雨に似つかわしく、肌寒い小雨模様の午後。
海も空も明るい灰色で、水平線はさだかでない。
置き忘れられたような、赤茶色のブイがポツンとひとつ。
遠くに霞む船はコンテナ船か。
われ知らず、静かな心持ちにひたる。
アクアラインの長いトンネルに入ると、景色は消える。
こりゃ、眠るしかない。
次に目をあけると、もう、都心の高層ビルと、幾重にも重なる高速道路。
幾何学模様のおもしろさか。
写真を撮りたかったが、電池切れ。
何も残すことはできませんでしたとさ。
おしまい。