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き書横右

2006-09-29 | いろいろ
 一二三先生の授業で、「卒業論文の資料になりそうな文献を読んできてその内容を発表しなさい!」との指示がありました。最近は近代日本語史に興味があるので、その中で特に詳しく知りたいと思っていた日本語の書字方向(文字を左・縦・右のどちらの方向に書くか)について記述している屋名池誠さんの「横書き登場」という本を読みました以下に授業で行った発表を転載してレビューを書きます!↓↓↓

1. 文献情報
著者名・ 屋名池誠
発表年・2003
題名・横書き登場‐日本語表記の近代‐
出典・岩波新書
出版社・岩波書店
ページ数・218

2. この文献を選んだ理由
 古い新聞の見出しや看板は右から左方向に書き進める右横書きで書かれているものが今でも目にされる。しかし日本語表記の横書きは現在、左から右に書き進める左横書きに完全に転換している。私は戦後が一大転換期となって日本語表記の横書きは左横書きなったものだと思っていたが、その考えに根拠はなかった。また現在でも自動車の側面に書かれている文字には右横書きが見られる。
 日本語学習者に「なぜ日本語は左横書きになったのか、なぜ自動車の側面に書かれている文字には右横書きなのか。」と質問されても、私には答えることができなかったのでこの文献を読むことにした。

3. 要約
 もともと日本語には横書きがなかった。江戸時代以前にも欄間に掛けられた横長の扁額には右横書きが見られるが、それは一行一字の縦書きである。その根拠としては、縦に二字以上書けるスペースがあれば全て縦書きで書かれ、この文章のような複数段の横書きは存在しなかった。
 日本語における横書きは、横書きする外国語の影響で幕末から始まった。その初期の横書きは右横書きだった。西洋の外国語に触れたことのない多くの幕末の日本人にとって、文字を上から書いたり読んだりすることはできたが、文字を左から書いたり読んだりすることは発想になかった。
 しかし、外国語と日本語を共存させるには、左横書きが効率的だった。たとえば英和辞典には日本語の左横書きが最適なように左横書きはだんだんと広まっていった。自動車の側面に書かれている文字だけは今も右横書きなのは、それが先頭からの横書きだからである。
 
 左横書きは戦後から始まったという考えは間違いであって、戦前から左横書きの例は多くみられる。具体的な資料としては、下の太平洋中の1942年に採用された国定教科書「初等科理科一」(同書P.145より転載)が挙げられる。


 太平洋戦争中、右横書きが伝統的とする保守主義者により、左横書きの排除が主張されていたが、戦後の急速な欧米化の影響を受けて日本語表記の横書きは左横書きに統一されていった。

授業ではこんな感じで内容の発表をしました
 現在使っているこの左横書きは太平洋戦争後から広まったのだと、自分は思っていましたが、実際はそうではなかったことがこの本を読んでわかりました。また、自分は紙に文章を書く時は無意識に横書きになりますが、長いまとまった文章を読む時には縦書きの方が読みやすいかなと個人的には思います。
「横書き登場」は小さくて軽い新書版なので寝転がりながらでも気軽に読める本なのですが、内容は論説を補強するために非常に多くの図や写真が掲載されていて興味深く、そして大変おもしろく読めました。かなりオススメの本です
 

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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (k)
2006-09-29 22:44:16
縦書きは普通に書きにくいよ↓
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たしかに (saka)
2006-10-03 17:15:35
行をそろえて書くの難しいよね。

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