まちの駅福蔵(ふっくら)。秋田県横手市増田町増田中町。横手市増田伝統的建造物群保存地区。
2023年6月2日(金)。
まちの駅福蔵(旧佐藤與五兵衛家)は、9時30分ごろ通ったときは開いていなかったが、重文・佐藤家住宅の見学を終え、漆蔵資料館へ向かうと開店していたので、内部を見学した。現在は、お休み処だが、骨董品店のように物が置いてある変わった雰囲気の土蔵造りだった。
まちの駅福蔵(旧佐藤與五兵衛家)の建築年代は、主屋が明治後期~大正期、座敷蔵が明治12年。旧佐藤與五兵衛家は、代々の地主であり、戊辰戦争では御用金を献納した名家で、明治には増田銀行設立時に監査役の一人となった。大正期に増田勧業社を設立し、セメントやトタンなど建設資材を扱う商いをしていた。
主屋は、棟札から明治18年の上棟であることが確認された。商いを開始するのに合わせ南隣に入母屋造り二階建ての建物を増築し、店舗に改修したのではないかと推測される。
座敷蔵は二階建て切妻造りで、棟札から明治12年の上棟であることが確認された。正面の妻壁や鳥居枠、土扉は黒漆喰仕上げとなっているが、角を欠き込んでないところからも建築年代が古いことが窺われる。内部は太い柱が一尺間隔で配置されており、二階の小屋組は重ね梁となっている。欄間は、麻の葉模様の組子で仕上げられ、また一階の木部は総漆塗りとなっている。
佐藤養助・漆蔵資料館(国登録有形文化財)。横手市増田町増田本町。
建築年代は、座敷蔵が大正10年、旧米蔵が大正後期。入場は無料。
座敷蔵は大正10年(1921)に建設された。基礎・土台には院内石、煙返しの踏み段に黒御影を使用し、土蔵の側廻りは白黒の漆喰塗りを施し、開口部を磨き漆喰で仕上げる贅を尽くした造りとなっている。
また、主要な部材は杉、欅、栗材で構成され、4寸8分の栗の通し柱を1尺5寸間隔に並べ、磨き漆喰の塗込壁で仕上げとしている。
1階座敷から外庭方向。
座敷蔵2階へ昇る階段。
座敷蔵2階。洋小屋組(トラス構造)。
座敷蔵2階。「釣りキチ三平」で知られる地元増田町出身の漫画家・矢口高雄の展示があった。
小屋組も他の土蔵とは異なり、洋小屋組(トラス構造)を意識した大寸法の梁・母屋・棟木を組合せた合掌構造としている。現在では入手不可能な良質な材料を惜しげもなく使用し、大工や左官工の技術の粋を結集させ造り上げられた究極の蔵と呼べる土蔵といえる。
西洋技術の伝播に伴い増田の土蔵建築も大正期以降、和洋折衷様式へ変化して行ったことを物語る変革期の土蔵の一つといえる。
座敷蔵の横を通り裏側へ。
座敷蔵の裏側。
座敷蔵の裏側から眺める外庭。
旅行ガイドでは、稲庭うどんの営業をしていることになっているので、女性職員に尋ねると、現在は商品販売のみ、という。40年ほど前に食べた角館の稲庭うどん店も商品販売だけになったという。ただし、近くの稲庭町に佐藤養助稲庭うどん店の総本店があるという。これから、川原毛地獄近くの泥湯温泉に行くというと、ちょうどルート上にあるといい、旅行ガイドの記事を思い出した。11時から営業開始なので、ちょうどいい。10時45分ごろに駐車場へ戻り、出発した。