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「私は低学歴を愛している」トランプがハーバード大を攻撃する真の理由 

2025年05月13日 13時29分41秒 | 社会

このままでは米国の産業は空っぽに…「私は低学歴を愛している」トランプがハーバード大を攻撃する真の理由

Yahoo news  2025/5/12(月)  プレジデントオンライン シェリーめぐみ  ジャーナリスト

 

2025年5月7日、ワシントンD.C.のホワイトハウスの大統領執務室で、デービッド・パーデュー元上院議員の駐中国大使就任宣誓式を前にスピーチするドナルド・トランプ米大統領。 - 写真提供=Pool/ABACA/共同通信イメージズ

 

■凍結された助成金は3000億円超

 世界大学ランキングでトップ5の常連であるハーバード大学と、トランプ政権のバトルが激しさを増している。移民強制送還の波は大学にも及び、先日は日本人留学生のビザが剥奪される事態となった。このままいくとアメリカのエリート大学は世界的な信頼を失い、ランキング上位の座を失いかねない

 そこまでのリスクを冒してまで、政権はなぜ高等教育を攻撃するのか? そこには保守アメリカの悲願とも言える政策目標が隠されている。

 「トランプ政権が、ハーバード大学に対する22億ドル(約3150億円)の助成金を凍結した」

 これが報道された瞬間、世界に衝撃が走った。4月14日のことである。ここにトランプ対大学の大戦争の火蓋が切られた。

 ハーバード大学といえば、世界大学ランキングの上位に常に君臨。建国の父ジョン・アダムズからケネディ、オバマまで歴代の大統領を8人も輩出した超名門だ。

■私学の方針に政府が介入する異様さ

 アメリカの名門大学は単なる教育の場ではない。研究機関としてもあらゆる知が集結し、医学から経済、軍事から産業、思想・文化まで、アメリカという国のほぼすべてを支えていると言っていいほどのパワーを持つ。国家の知的インフラの中枢だからこそ助成金も莫大なのだ。そのお金を政府が凍結するなど聞いたことがないから、アメリカ人は本当に驚いた。

 第2次トランプ政権の大学への攻撃はハーバードが初めてではない。最初のターゲットは、筆者の住むニューヨークのコロンビア大学だ。600億円の助成金をカットすると通達され、返してほしければ政権の方針に従えと厳しい条件を突きつけられた。

 これも相当な衝撃だった。アメリカの、特に私学の方針に政府が口を出すことはまずない。多くの大学が「アカデミック・フリーダム(学問の自由)」を最も重視しているからだ。助成金は貰っても、独立性を守るために各大学が自らの基金を持ち、自律的な運営を行っている。この「独立性」こそが自由なイノベーションを産む「知のグローバル・ハブ」としての原動力になる。

■コロンビア大学が屈した“無茶ぶり”

 コロンビア大学に対する要求のひとつは、ガザ紛争をめぐるキャンパス内での抗議行動の取り締まり強化。キャンパスが昨年、親パレスチナ運動の最大の拠点となったことで、政権は「反ユダヤの動きを許している」と大学を強く非難した。

 加えて、政権の多様性政策の廃止に伴い、入試や職員の採用方法の見直しを求めた。さらに中東・南アジア・アフリカに関する研究内容には外部の監査を受けるよう、政府によるコントロールを要求した。この無茶ぶりとも言える条件は、明らかに教育の自由の侵害、憲法違反である。

 ところが、コロンビアは学生や教職員の安全を守るためとして、この要求に応じてしまった。これに気を良くしたのか、政権は全米の60以上の大学に対しても、同じような攻撃を仕掛けた。

■ハーバード大はトランプ政権を提訴

 ハーバード大学にも似たような条件が提示されている。親パレスチナ運動の取り締まり、入試や採用における人種、国籍に基づく優遇措置の中止や、多様性プログラムの閉鎖を求めた。また「反ユダヤ主義を含め、アメリカの価値観や制度の敵と見なされる」留学生を入学させないようにする。まさに教育内容から校風・文化まで、あらゆる面で政府方針に従うよう求めた。

 しかし、アラン・ガーバー学長が「私立大学が何を教え、誰を入学させ、雇用し、どのような研究をすべきかを、政府が指図すべきではない」と要求を突っぱねると、政権は前代未聞の総攻撃に出る。助成金打ち切りに加え、非営利団体としての税控除を大学から剥奪、そして、海外からの留学生の受け入れを止めるという脅しに出たのだ。

 ハーバードは「大学はその独立性を放棄することも、憲法上の権利を放棄することもない」と徹底的に戦う構えを見せ、政権を提訴している。

 ハーバードの強い態度は、他の大学にも勇気を与えた。主要私立大を含む約10校が結束し、連邦政府に反対するグループも組織された。しかし、大学側の立場は決して強くない。突出した莫大な自己基金を持つハーバードは例外で、他の大学にとって助成金を失うのは大きなダメージになる。

 ただし少し考えれば、これが国家にとっても大きな損害だということもわかる。助成金が減れば、あらゆる産業の基礎となる研究は間違いなく弱体化する。こうした大学ではすでに研究費が削られ、がんや感染症などの研究に支障をきたしている。このままでは近い将来、国としての競争力低下は避けられない。

 そんなリスクを負ってまで、トランプ大統領はなぜこのような総攻撃を仕掛けているのか? それは、「文化戦争に勝つこと」が政権にとって何よりも重要だからだ

■保守ブルーカラーvs.リベラルエリートの構図

 政権が大学を攻撃する最大の目的は、リベラル教育の解体だ。大学とはそもそも科学に立脚した場所。全米だけでなく世界中からの優秀な生徒を集め、多様な人種、文化を礎にイノベーションを生み出す。そのため、現政権が人間活動によって引き起こされる気候変動を虚偽とし、多様性政策の廃止を主張する姿勢とは、真っ向から対立する。

 またトランプ支持の岩盤層である白人ブルーカラー保守は、リベラルな大卒エリートに強い反感を持っている。「知識階級がアメリカを蝕んでいる」「大学は伝統的なアメリカ的価値観(キリスト教国家、家族の価値、白人中心主義)を傷つける存在」とも考えている。

 トランプ政権は伝統的なアメリカを取り戻すために、リベラルな大学に文化戦争を仕掛けている。その戦いに勝つために教育の自由、つまり将来のアメリカの産業を犠牲にしようとしていると言ってもいい。

 ちなみにトランプ支持の保守層が最も共感・賛同する政策は、移民の強制送還だ。政権はこの移民政策と大学への攻撃を、実に巧みに組み合わせている。

■無実の日本人学生もビザを剥奪された

 「日本人の学生がビザを剥奪された」 このニュースは私たち在米日本人には大きなショックだった。

 ユタ州の名門ブリガム・ヤング大学に留学中だった恩田すぐるさんの学生ビザが、前触れもなく突然無効になったのだ。

 学生のビザや永住権(グリーンカード)が突然剥奪されるニュースは、もう珍しくない。例えばコロンビア大学の大学院を卒業したばかりのマフムード・カリルさんは永住権を剥奪され、不法移民として拘束され収容所に送られた。その理由はキャンパス内で親パレスチナの抗議活動をしたから。パレスチナ人である彼は、母国を守りたい一心でイスラエルの攻撃に反対しただけだが、それが反ユダヤ主義とみなされた。同じように親パレスチナ運動に参加した学生の多くが、学生ビザを剥奪されている。

 ところが恩田さんは違う。彼は過去に仲間と釣りに行った際、所持している釣り免許の許容範囲以上の魚を持ち帰ってしまい告発されたが、のちに容疑は取り下げられた。つまり罪にも問われていないのにビザを剥奪されたことが、多くの留学生にショックを与えた。

 恩田さんはすぐに訴訟を起こし、ビザは回復した。しかし彼以外にも、ハーバード大など超一流校を含む大学で約1500人の学生ビザが無効にされたとみられている(これが大きく報道されると、政権は全員のビザ回復を発表した)。

 さらに問題は、今回影響を受けた者の多くが、中国人やインド人などの白人以外の留学生だったことだ。

■アメリカの基礎教育が崩れ始めている

 コロンビア大学ロースクールの移民権利クリニック所長、エローラ・ムカルジー氏はコメントで、「政権は、アメリカで歓迎されないのは誰かという明確なメッセージを送っている」「アメリカの移民政策は今、外国人嫌悪、白人ナショナリズム、人種差別主義に突き動かされているようだ」と強く批判している。

 このような状況下では、多くの人がアメリカに留学するのを躊躇するだろう。優秀な頭脳が入ってこないだけでなく、大学経営も厳しくなるのは否定できない。

 トランプ政権の教育への攻撃は大学や留学生にとどまらない。着々と進められる「教育省の廃止」だ。

 アメリカの教育省は日本の文科省とは少し違う。学校で教える内容の多くはそれぞれの州や地方の教育委員会に委ねられている。教育省としての主な役割は低所得者や人種的・ジェンダー的マイノリティ、障害者などが平等な教育を受けられるように、資金を提供することだ。

 トランプ大統領は、教育省が仕切るアメリカの公教育も、大学と同様マイノリティの権利保護に傾きすぎていると考えている。

 しかし連邦政府からの資金がなくなれば、特に財政困難な州では、マイノリティ以外のあらゆる低所得者層の子供も影響を受ける。基礎教育から格差が拡大し、その結果アメリカ全体の学力が低下するだろう。

■「低学歴の有権者を愛している」発言の真意

 ところがトランプ大統領はどうやら、それでもいいと考えているフシがある。その根拠となるのが、彼が2016年最初の選挙戦で行った驚きの発言だ。

 「私は低学歴の有権者を愛している」

 実際に昨年の大統領選でも、高卒以下の6割近くがトランプ氏に投票し、大卒以上の過半数はハリス氏を支持した。低学歴の人が多いほうが、自分には有利と考えるのは当然とも言える。

 リベラルな大学を攻撃し、公教育を支えてきた教育省を廃止しようとするトランプ大統領。しかし一方では、キリスト教系の私立学校には優遇措置をとろうとしている。その背景には、アメリカ保守が長年温めてきた悲願がある。

 極右のシンクタンク・ヘリテージ財団が、第2次トランプ政権の青写真として作成した文書「プロジェクト2025」には「アメリカはキリスト教国家として再定義されるべき」と明記されている。その実現のために、「選ばれた教育機関」だけを強化する、つまり教育を選別し、排他する意図があると考えられている。

 国家としての知的基盤を縮小し、批判的思考を持たない市民をつくる一方で、高等教育では体制に忠実なエリートを育てる――この二重構造こそが現政権の目標ではないかという見方も強い。

■科学者の「アメリカ脱出」が始まった

 イエール大学でファシズムを研究するジェイソン・スタンリー教授はこう語る。

 「高等教育への攻撃は、ナチスドイツなど独裁者のマニュアルだ。1930年代にはドイツから多くの学者が流出した。イタリアでは教授らが政府の方針に従うと宣誓させられた。同じようなことが、今アメリカで起きている」

 自由な言論の場である大学を攻撃するのは、政府批判を抑え、歴史を書き換え、科学を否定し、愛国心を煽(あお)る教育に変えるための、ファシズムの手法だというのだ。

 実はこのスタンリー教授を含む、イエール大学の著名な3人の教授がアメリカを離れ、夏からカナダの大学で教えることを表明し、波紋を呼んでいる。これに追随する者も増えると予想される。ネイチャー誌が科学者1600人超を対象に行った世論調査によると、4人のうち3人がアメリカを離れることを検討しているという。

 世界の大学ランキングの中でも著名なひとつ「タイムズ世界大学ランキング」にはアメリカから2位のMIT(マサチューセッツ工科大学)と3位のハーバード大学、4位のプリンストン大学など、3校がトップ5入りしている。

 このランキング評価基準の中で、「教員や学生の国際性」「研究の環境や質」「産業界との連携」などは重要だ。助成金カットで研究費が削減されれば、当然研究の数も減り質も下がる。留学生が減り、多様な教授陣が出て行ってしまえば国際性も下がる。

■世界大学ランキングからアメリカが消える?

 そして「大学のブランド力」に直結するのが、「産業界との連携」だ。MITやハーバードの評価が高いのは、卒業生が世界的企業やスタートアップ業界で活躍しているからだ。しかし教育の質が低下すれば、この連携も難しくなるだろう。

 一方で若者の大学への期待も下がっている。近い将来AIが大卒の職種の多くに取って代わると予測される今、高額の授業料を払って通う意味はどこにあるのか? という疑問が生まれ、むしろ「手に職」がつけられる専門学校のほうがいいという考え方も高まっている。

 こうした中で、世界ランキングにおけるアメリカの大学の地位は、すでに下降傾向にある。第1次トランプ政権が行った学生ビザや技術系就労ビザの制限などが、大きく影響しているのだ。バイデン政権の努力も虚しく、この傾向は変わっていない。

 これまでのアメリカの大学の高い評価は、開かれた社会と多様性によって支えられてきた。しかしこのままいけば「知のグローバル・ハブ」はヨーロッパやアジアに移るだろう。その結果、中長期的にアメリカの衰退を招くことになる。

 現政権が、文化戦争に勝つために教育を犠牲にする姿勢を貫くなら、アメリカの大学がトップ5から脱落する日も近いかもしれない。

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シェリー めぐみ ジャーナリスト、ミレニアル・Z世代評論家

NY在住33年。のべ2,000人以上のアメリカの若者を取材。彼らとの対話から得たフレッシュな情報と、長年のアメリカ生活で培った深いインサイトをもとに、変貌する米国社会を伝える。専門分野はダイバーシティ&人種問題、米国政治、若者文化。ラジオのレギュラー番組やテレビ出演、紙・ネット媒体への寄稿多数。アメリカのダイバーシティ事情を伝える講演を通じ、日本における課題についても発信している。


大阪維新「文化行政」コスト削減の結末 大阪市立図書館が大混乱 予約した本が借りられない、本が書棚にない

2025年05月11日 23時50分32秒 | 社会

予約した本が借りられない、本が書棚にない…市立図書館が大混乱 大阪維新「文化行政」コスト削減の結末

2025年5月10日 東京新聞

 

 図書館なのに、予約図書の貸し出しがスムーズに進まない。そんな窓口の混乱が大阪市立中央図書館で起きている。2日にはサイト上に謝罪文が載った。自治体最大級をうたい、過去には表彰も受けたこの図書館。なぜ、こんな事態になったのか。取材すると、業務の民間委託の弊害が浮かんできた。(福岡範行)

◆「自治体の図書館で最大級」先進性称えられ受賞も

 混乱は、大きく二つある。スタッフが利用者から予約された本をなかなか見つけられず、数日かかる場合があることと、返却された本を戻す書棚が分からず、なかなか並べ直せないことだ。混雑する大型連休中には、返却用のワゴンが本で満杯になったという。

 謝罪文では「図書等を迅速にご提供できておらず、大変ご迷惑をおかけしております」と平謝りだった。

 

大阪市立図書館の公式サイトに載った謝罪文(スクリーンショット)

 

 同館は地上3階、地下1階の開架と書庫に蔵書計約234万冊(2024年3月時点)を抱える。貸出数は年間約187万冊。「自治体の図書館で最大級」をうたう。過去には、地域資料のデジタル化などの実績から、NPO法人が先進的な図書館を表彰する「ライブラリーオブザイヤー」に選ばれた。

 そんな図書館が、なぜ基本的な業務でつまずいたのか。「こちら特報部」の取材に、利用サービス担当の岡本泰子課長代理は窓口業務の委託先が4月に代わったと説明した上で、「スタッフが業務に慣れていないこともある」と語った。

◆金額ベースの一般競争入札に変更したら

 民間委託は2007年度から始め、今年3月まで図書館流通センターが受注し続けてきた。今回は、業者間の競争を確保する観点から、どう業務に取り組むかの提案書も審査する総合評価方式をやめ、金額がベースとなる一般競争入札に変更。応札したのは2社で、流通センターより9500万円ほど低い約4億2200万円を提示したバックスグループが落札した。

 入札の参加資格では公共図書館の業務実績などを求めていた。ただ、「自治体最大級」と同水準の経験を求めると「門戸を閉ざすことになりかねない」ことから貸出数の実績は年間37万点以上を条件にした。実際に仕事が始まると、習熟不足があらわになった。バックス社はスタッフの追加採用を進め、今は1日30人余りが勤務するという。同社は取材に「多くの皆さまにご迷惑をおかけし申し訳ありません」とコメントしたが、対応の詳細は守秘義務を理由に答えなかった。

 先の岡本氏は、委託した側として「入札をどう改善したらいいのかなど、これから考えないといけない」と述べた。

◆「維新の下ではサービス維持は無理」

 同館によく通った科学ジャーナリストの添田孝史さんは「以前は海外の新聞のデータベースも利用でき、すごく評価が高かった」と懐かしんだ上で、大阪維新の会の市長が続く背景から、「文化行政を削る維新の下ではサービス維持は無理だろう」と語った。

 大阪在住のジャーナリスト吉富有治さんも同じ見方を示し、「コスト削減は悪いことではないが、削らなくていいところまで削って困るのは市民だ」と語る。

窓口業務の停滞について謝罪文を出した大阪市立中央図書館=同館提供

 金城学院大の薬師院はるみ教授(図書館情報学)は図書館業務の民間委託でコストを削減するのは全国的な流れとし、職員の人件費が下げられ最低賃金近くになる例にも言及。「時給1000円ほどで働く人に習熟を求める方がひどい」と語る。

 書棚に本を戻す「配架」を業務委託していること自体も問題視する。市職員が関われる業務が「ぶつ切り」になるからだ。「魅力的な本の利用が少ないことを配架のときに気付けばアピールできるのに」。知識や情報を広く届ける公共図書館の機能が低下している状況を嘆き、こう訴えた。「安上がりがいいと思うか、ちゃんとした公共サービスを求めるのかの問題だ


金子勝 フェイクのトランプは日本政治を写す鏡 エネルギー自給、農業・先端産業育成で日本の再生を

2025年05月10日 12時58分56秒 | 社会

フェイクのトランプは日本政治を写す鏡 エネルギー自給、農業・先端産業育成で日本の再生を

慶応大学名誉教授 金子勝さんに聞く

2025/5/9 現代の理論 第41号DIGITAL─2025春号 特集 どう読むトランプの大乱

 

1.トランプ関税戦争は一過性のものか

2.アメリカ-世界支配のレーゾンデートル

3.対抗できる中国とトランプへの貢物がない日本

4.トランプは安倍政権のやり口を逆輸入した

5.日本の再生はアベノミクスを捨てることから

6.危機克服の手立てはエネルギーと食料の自給率を高めること

 

まず、トランプ関税が歴史的にどういう意味を持つかということ、次に、日米関税交渉――実質的には交渉にはならないと思うが――では、アメリカに差し出すものが日本にはもうないということを述べます。

3つ目に、「安倍晋三はトランプ以前からトランプ」との「評価」(Trump bifore Trimp:2019年3月、トランプ元側近のスティーブン・バノンの自民党本部での発言)に端的なように、実は今トランプがやっている国内の民主主義破壊は、ほとんど安倍と同じだということです。山口二郎氏も「安倍政策の逆輸入」と言っています。たしかに安倍元首相も平気で山ほど嘘をついたが、トランプはSNSを通じたフェイクファシズムといった様相を呈しています。さらに、国内政治では野党の対抗策は減税論ばかりだが、相対的には食料品の消費税ゼロが最も妥当だとは思うものの、トランプ関税戦争下の問題は減税や給付だけでは解決不能です。その深刻さを説明したいと思います。

1.トランプ関税戦争は一過性のものか

このトランプ関税、関税戦争はすごく古い話。教科書で言うと少なくとも戦前です。第二次大戦後はこういう話はなかった。皆さん驚いて、これは戦後体制を揺るがす事件だということはわかってはきていると思うのですが、歴史的に起きた必然だということを、あまり考えていない。トランプがパーソナリティーのひどいやつで、駄々をこねていると感じるばかり。それは一面あるけれど、本質ではない。

この2020年から25年に起きてるいことが、50年周期のコンドラチェフの循環で説明できる。主流経済学者は、マルクス経済学者も含めて、コンドラチェフ循環を否定しますが、今起きていることがコンドラチェフ循環にピタリと当てはまっていて、自分でもびっくりするぐらいというのが本当のところです。

2020年に新型コロナのパンデミックが始まって、2021年の後半ぐらいから中国のバブル崩壊が始まる(恒大集団が事実上のデフォルトに陥る)。2022年2月にロシアのウクライナ侵略が始まり、2023年の後半にイスラエルが本格的にガザに攻撃を仕掛けてジェノサイドを始める。そして2024年の10月にトランプが大統領に当選して、そこから関税戦争が始まり、今年4月2日に全面開戦をしてしまった。これは戦後を揺るがすようなシステミックな危機だと思います。

では50年前の1970年から75年を振り返ってみましょう。1971年にニクソンショックが起きて、金・ドル交換が停止して、しばらくして変動相場制になり、金属貨幣の時代がここで終わった。1973年に第4次中東戦争が起き、それで石油ショックになって、猛烈なインフレーションが始まる。結局アメリカ一極の体制が崩れてG7体制ができ、IMFのSDR特別引出権というセーフティーネットを入れながら、変動相場制に本格的に移行した。

ところが、このコンドラチェフの波には、真ん中に中折点があって、そこまでが下降局面で、その後上昇局面になる。下降局面で大きな技術革新や発見が起き、上昇期に普及する。2000〜03年頃が中折点になるわけで、ちょうどイラク戦争です。2001年のアメリカ同時テロと2003年のイラク戦争。リーマンショックが起きますが、実はここで一気に情報通信革命が開花していきます。

1985年のプラザ合意を引き合いに出して、メディアで新プラザ合意と言ったり、米中冷戦体制と言ったりしますが、全く不正確です。なぜかというと、冷戦体制が終わっているからです。実際アメリカ一極の世界になっているし、政治に限らず、たとえば情報通信などではアメリカが世界を支配しています。それをバックにユニラテラリズム(単独行動主義)になったわけです。つまり、社会主義体制と対抗して、資本主義体制の先進国が共同して何かを達成する仕組みがG7体制だったけれど、それが本格的に崩れたのがこのイラク戦争だった。

1985年のプラザ合意は、何はともあれまだ冷戦だったので、社会主義国と対抗するためには資本主義国が妥協してアメリカを支えざるを得ないという理由があったわけです。日本もそうで、猛烈な為替レートの切上げを受け入れた。ドイツと日本は機関車だと言われて。ところが、冷戦体制も崩れて、ユニラテラリズムになった。トランプ=共和党政権はその延長にあります。

2.アメリカ-世界支配のレーゾンデートル

アメリカが世界を「支配」するレーゾンデートルは3つあると思います。1つは世界の憲兵としての役割、軍事力です。2番目は、いわゆる戦後の自由貿易体制の盟主としての役割。市場を開いて、それを引っ張っていく。だから、貿易赤字になってもドルを基軸通貨として受け入れることの承認ができたわけです。それが行き詰まった最後が変動相場制だったわけです。他の国が外貨準備としてアメリカ国債を持つ、もたれ合いの体制になった。

3番目は、戦後の社会主義に対抗する民主主義体制の、いわばモデルだったわけです。ところが、トランプはこの3つを全部投げ捨てた。投げ捨てて、アメリカのむき出しの要求をほかの国に、60カ国に関税の全面戦争で挑みかかった。当然のことながらこんなことはうまくいかないので、失敗が始まるわけですが、そういう意味では、アメリカの戦後支配のひとつの画期になって、下手をするとモンロー主義に戻ってしまうきっかけになるかもしれない。あるいは逆にむき出しの力の支配の時代になり、世界で戦争を引き起こすかもしれない。いずれにせよ非常に不安定な状態になってきているというのが今でしょう。

トランプ政権が発足して、メキシコ、カナダに25%の関税をかけ、中国に追加関税20%を課して、4月2日には、大規模に60か国にそれぞれバラバラの関税率を間違った式に基づいて強制した。ところが、金融市場ではこの戦後体制をひっくり返す措置に対する拒否反応、というかアレルギー反応が出て、アメリカ売りになった。ドルが売られ、国債が売られ、株も売られて「トリプル安」になってしまった。そこで10%のベース関税を実施したうえで、追加分については「90日間交渉しましょう」となって、その最初のターゲットが最も御しやすい日本になったわけ。

他の国は交渉をしていないので、日本の間抜けな新聞やテレビはトランプが日本を最大限尊重しているなどという論調を作っている。赤澤大臣がトランプの赤いMAGA Capをかぶってニコニコするという「お上りさん」ぶり。はっきり言えば、「日本は何も文句言わないからいい子だね」の状態なのが露呈したということだろう。

中国が反抗したら即125%の報復関税を追加して合計145%にした。ヨーロッパも相互関税を打ち出したけれど、ヨーロッパは90日間猶予があるならその間待つというスタンスだった。それぞれ簡単に言うことを聞かないのが明らかなのに対して、日本はとにかく属国に近いので一番やりやすい。トランプはそれを取引モデルにして、他の国とも交渉しようというのが見え見えです。

3.対抗できる中国とトランプへの貢物がない日本

ところが日本は、これまでの日米交渉で搾り取られきっているので、もう「ない袖は振れない」状態になっている。譲歩する材料がないくらいまで、日本は国力を弱めてしまったわけです。そもそも1970年代から自動車の輸出自主規制が始まって、1980年代半ばに日米半導体協定91年に外国企業の半導体輸入割当てを強制されて、先端産業が全部潰れたわけです。その「交渉」過程で、自民党と経産省は「自動車さえ守れれば他は何でも譲る」という姿勢を取り続けた。結果、日本は「自動車1本足打法」になり、貿易赤字になったということです。

財政赤字もどうしようもない水準になっている。例えば米軍駐留費の問題。すでに年間2000億円の米軍の駐留費を負担をしているし、米軍関係全体に対しては8000億ほどの援助をし続けているわけです。だから、これ以上やれと言われても、GDPの2.57倍の財政赤字を抱えて――ギリシャでさえ1.8倍なのに――もうダメ。それ以上の要求を飲むのは難しい。

もっと言えば、「非関税障壁」については、ずっと同じことを言われてきたけれども、先に言った、自動車や半導体で結果的に日本がアメリカの要求を飲まされた1980年代までは、ジャパンズナンバーワンだったわけです。当時の貿易黒字の体制の時にアメリカに譲る話と違い、今はもう貿易赤字が恒常的になって、この状態で譲れと言われても、どうにもならないわけです。

アメリカの貿易赤字を救うためにさらに日本が貿易赤字になっていくという、非常にまずい状態が現状です。自民党と経産省の失敗のツケがここまで来ており、今までのゲームのルールが通じない。さらに、どう引き受けるかが非常に微妙なのは、参議院選挙を控えているから。米の輸入と言われても、90日の前までに米の輸入を認めたら、多分東北の6県は自民党が全議席を失いかねません。早くさっさと決着してしまうのも難しく、参議院選挙の後で合意をするのも難しい。が、どちらかしかないわけです。

一方、2025年の1〜3月のアメリカのGDPの落ち込みがすごい。商務省が公表した1〜3月期のGDP速報値は、それまで2.2%台あったものが、前期比年率でマイナス0.3%になっています。駆け込み輸入の増加と消費の減速が原因です。

加えて、インフレ傾向も大きく出てきて、スタグフレーションになるだろうと言われているわけで、これは日米ともに非常に苦しい選択になってくる。日米関税交渉と言われるけれど、交渉ではなく、朝貢なので、何を貢ぐかを日本が決めなくてはいけないのに、それを決められないほどに厳しい状況に追い込まれている。アメリカも追い込まれたけれど、アメリカに譲って必死に支えてきた日本も追い込まれている。ウィンウィンのいい話は一つもないことがはっきりしている。

トランプは「俺が大統領になればインフレを全部退治する」と言っていたのが、国内がスタグレーションになると完全に裏切られてしまうので、今どんどん支持率が落ちている。非常に悲惨な結果になる可能性が高いわけです。

もう一つ明らかになっているのは、米中が経済では非常に密接な関係になっているが故に、デカップリングをやろうとすると双方で痛みが発生する。それを調整し始めると関税政策の客観的基準がますますなくなるという矛盾に、トランプは追い込まれていることです。パソコンとスマホ、半導体の製造装置は中国製品を輸入しても関税をかけないとか、「なんなんだこれは」というような話になっている。はっきり言えば、アップルは大量に献金をしてトランプ政権を支えているからだということ以外には何の基準もないわけです。

中国は中国でかなり競争力を強めているが故に、自信を持っている。アメリカが戦後の自由貿易体制を自ら壊しにきてくれたので、このチャンスを逃さず、最大限利用しようとしているのが今の状況でしょう。半導体も5ナノ、6ナノという非常に微小なものをファーウェイなどで作れそうになってきているようで、中国は非常に有利なわけです。生成AIも自分たちで作れるということも明らかになった。もう昔のように米中間に経済力の圧倒的格差があった時代、社会主義国との差があった時代の貿易戦争とは全く違っている。

しかも、日本と違って、中国は簡単には言うことを聞かない。むしろ、デカップリングで分断すればするほど、中国は真似する方が強いので、競争力を高めてくる可能性が高い。ボーイングはいらないと言ってエアバスに変えるなど、強気な姿勢で次々手を打つ。そして、しばしば話題になるように、アメリカの国債の値段が落ちるときに、中国が外貨準備としての米国債を売っているのではないかとの臆測が常に出てくる。

つまり、この米中の貿易戦争を強めれば強めるほど、戦前起きた為替や通貨を含む金融戦争に火が付く、そういう恐怖心をバックにして中国は強気に出てきているのが今起きていることでしょう。中国は、日本に次いで世界第2位の大きさの米国債を外貨準備として持っている国なので、それなりに無視できない影響がある。日本は米国債を売るなどはできないけれど、中国なら売ってしまうかもしれない。それから、ここのところ中国の為替レートがどんどん元安になっている。これは戦前の為替切下げ競争と非常に似た兆候だとも思われている。

そうすると、米中双方は簡単には譲らないと思うものの、どうみてもアメリカが一方的に勝って、日本をねじ伏せたようなことは、中国に対しては多分できない。むしろ紛争が相互の力をむき出した対立になるが故に、世界経済が非常に大きな打撃を受ける。その中で、日本と台湾と韓国が一番苦しい。その3か国は、米中両方と貿易関係が強い国なので、二股でやってきたわけですが、中国との関係を維持しようとすればトランプは許さないし、そうかといってトランプにくっつくと、中国市場を喪失して業績が非常に悪化する。こういう矛盾に直面してるのが今の状況だろうと思うわけです。

4.トランプは安倍政権のやり口を逆輸入した

先述の戦後の3つのレーゾンデートルで言えば、アメリカが世界の憲兵としての役割をやめると言うと、日本の防衛費負担の猛烈な増加を要求してくるので、日本は非常に苦しい。2番目に、戦後の自由貿易体制の盟主としての役割を放棄されると、米中に二股かけている日本、韓国、台湾は非常に苦しい状態になる。

で、3番目の問題。戦後の民主主義のモデルだったアメリカがそれを全部投げ捨てた。これで重要なのは、トランプ政権は日本の安倍政権の手法を逆輸入しているということだ。だから、今我々が眼前に見ていること、トランプのしていることを見ながら、日本がどういう体制に陥ったのかがよくわかる、反省しなければいけない点がよく見えてくるということです。

冒頭で、第1次トランプ政権時の最高戦略責任者、スティーブン・バノンの“Trump before Trimp”発言(2019年)を紹介したとおり、安倍首相は「トランプ以前のトランプだった」とされた。最初にあげたのは、対中国強硬姿勢をとったこと。これがトランプにとっての1つのモデルだということを言ったわけです。さらに安倍は、内閣人事局を作って、日本の官僚を全部手なずけて忖度官僚にしました。今イーロン・マスクがやっているのは、政府効率省なるものを作って、気に食わない官僚の首を切っていくこと。狙いは同じで、官僚を手なずけるやり方は全く同じ。

パウエルFRB議長が、関税を幅広くやるとスタグフレーションが起きますよと警告を出したりすると、トランプは辞任させると脅かした。そうしたら金融市場が強く反応してドル売りが進んだので引っ込めたけれど、それも安倍が黒田東彦を日銀総裁にしてアベノミクスを強制したのと同じです。

それから、籾井をNHK会長にしてメディア介入を露骨にやったし、内閣法制局長官を小松元仏大使に代えて、集団的自衛権の解釈を変更し、閣議決定で安保法制を恣意的につくった。トランプは、メディアに関しては、FCC(連邦通信委員会)を含む独立規制機関の権限をホワイトハウスが制限するように動く一方、GAFAM(Google、Amazon、Facebook、Apple、Microsoft)に献金させ、保守化させてファクトチェックを全部やめさせる。事実上フェイク花盛りのフェイクファシズム状態にしたわけです。SNSを通じた新たなメディア介入という形だけれど、これも安倍の放送・メディア介入と同じことでしょう。そして議会を通さず、ほとんど大統領令だけで政策を進める手法も安倍と同じです。

さらに安倍が黒川検事総長を据えようとしたのに対し、トランプはもっと露骨に司法長官を抑えて、ディープステイト(陰謀国家)が自分を逮捕させたとして司法長官、FBIとCIAの長官を自分の子飼いで固めてしまうというやり方だった。また安倍政権から菅政権まで大学自治や学術会議への介入と同じく、「多様性・公平性・包括性(DEI)」否定反ユダヤ主義根絶を理由にハーバード大学への補助金や免税特権を撤回した。議会制そのものを全部破壊したわけではないにもかかわらず、事実上独裁体制を敷いていく。私が『裏金国家』(朝日新書2024年)で「2015年体制」と言ったものを、トランプも同じような形で作ろうとしている。彼は関税戦争を導き出す一方で、世界にフェイクファシズムを輸出しています。そして、兵庫県知事選や財務省解体デモのように、日本がそれに最も染まっている。

5.日本の再生はアベノミクスを捨てることから

ではどうしたらいいのかという最後の話です。日本政府は対策がほとんど何もない。どこまで貢ぐかという交渉しかないという程度で無策。野党も現状認識は全く不十分。そこに根本的な原因がある。5万円を給付金しようと言ったりして、ばらまきを最大の政策にしているが、給付や減税をしてもこの国の産業衰退や経済衰退は全く解決しないのは明らかです。問題の核心は、メディアを中心にしてアベノミクスの大失敗を全く総括できていないことです。これでは、ますますこの国の競争力は衰退していかざるを得ないでしょう。

アベノミクスはもうデータを見れば明らかに大失敗です。GDPはどんどん落ちて、今や世界第4位。間もなくインドにも抜かれて第5位になる。1人当たりGDPは、安倍政権誕生時の2012年には世界17位だったのが、2024年では韓国にも台湾にも抜かれて38位まで落ちた。実質賃金が全く伸びないまま、外からインフレがやってきたために、アベノミクスはやめなければいけないのに、やめるにやめられなくなり、円安インフレをどんどんもたらしている。結果として一番大きいのは、この経済力の衰退の結果、子供が生まれない、産んでも展望がないと、少子化が激しく進んで、国力の衰退が起きていることです。これをどうしたらいいかという危機感がなく、アベノミクスを続けているかぎり、この国はどんどん沈んでいくだろう。

米中の貿易戦争・関税戦争が激化しないまでも長引いていく結果、日本は高付加価値産業が全くないので、「自動車1本足打法」でアウトになっていく可能性が高い。アメリカに輸出できないし、やがて電気自動車や自動運転では、中国メーカーに全く勝てなくなっていく。中国は先に言ったように半導体や医薬品の開発でも最も力を入れ、どんどん伸びている中で、日本だけが取り残されていく。この先少なくとも4年間続くトランプ時代の関税戦争時代の中で、日本が耐えられないほどの経済危機に落ちる危険性があることを見るべきです。「減税万歳」の類の議論をまだやっているころに末期症状があると言わざるを得ないと考えます。

とくに国民民主党やれいわ新選組が言う赤字国債依存の消費税減税が一番悪い。国と地方で消費税5%分で15兆円、10%で30兆円もの財源がいる。結局、日銀の金融緩和で支えて円安インフレをもたらすことになる。5%減税しても5%物価上昇が起きれば、財政を悪化させるだけです。れいわと共産党が言っている消費税廃止論も、ひとつの税制論としてありえますが、少子化対策を本気で取り組まないと、現役世代に保険料と所得税負担を集中させるので、いずれも新自由主義の闊歩を許すことになっていく。

軍事費を削ると言っても、残念だけれどすでに契約した防衛品を破棄することはなかなかできないわけです。契約期間を長引かせることしかできないので、例えば5年契約を10年にするとかして金額を落としていくしかない。手段が限られていて、しかもトランプ相手では交渉が難しいので、簡単にできない。そういう現実を知らなすぎる。

実際、大企業の内部留保を吐き出させると言っても、いきなり15兆とか30兆という金額は出てきません。内部留保の課税は、非常に論争が起きやすい。株式会社は株主のものだという考え方で言えば、株の配当にも課税しているので二重課税だという批判が必ず出てくる。その株主も含めてステークホルダー論で対応していかざるを得ないので、そんな簡単に10兆円もの数字が出てこないわけです。時間をかけて少しずつやるしかない。

差し当たりは、法人税減税を元に戻し、金持ちの金融所得に対する所得税率を少しでも引き上げるとか、租税特別措置の大企業優遇・法人税減税措置を縮小していくのが実際にできることなので、現実的に財源や規模を考えると、4兆円から5兆円程度になるでしょう。すると食品の消費税ゼロが現実の限度ではないかと思います。

今、エンゲル係数が異様に高い。その限りでは食品の消費税ゼロはありえます。立憲民主党は、それを1年経ってインフレが収まれば給付付き税額控除に変えようと言っている。これは1990年代にイギリスで出たマーリーズ・レビューという有名な税制改革提案に沿ったもので、世界的な常識に従っていると考えられるので、そんなに無理がない。ただしいきなり1年間の10%減税を戻すというやり方も無理があります。食品価格上昇率やエンゲル係数の上限を決め、それを下回ったら5%戻し、次に10%戻し、給付付き税額控除に変えて行くのです。赤字国債依存の消費税減税とか消費税廃止論とか、形の上で景気がいいように見えるけれど、大きな弊害があることを見抜くべきです。

何よりも、減税しても多くの人が消費を増やすとは思えません。特に赤字国債依存であれば社会保障を削ることになるし、消費税廃止になれば、先に述べたように超少子化の状態だから現役世代にますます保険料や所得税の負担が集中する。結果として負担に耐えられないから、実際には新自由主義者と同じ結論になるというところに考えが及ばないわけです。目先の利益を追い求めるポピュリスト的な政策ではなく、未来の社会を考えながら、本当に困っている人たちを救う税制改革こそが必要なのです。

6.危機克服の手立てはエネルギーと食料の自給率を高めること

本当に手取りが増えるようにするには、やはり新しい高付加価値な産業を作ることが大事だし、それから、どういう時に危機が起きるのかを考えてほしいわけです。大きく財政赤字が出てくるような政策をやれば、金融市場は先物中心で、コンピューターで高頻度取引をやるので、2022年秋にトラス英政権で起きたように円や株が急落することになりかねない。

自民党の森山幹事長が、財源を示さない減税政策は「国際的信任を失う」と指摘したそうだが、それは私が先に言ったことです。だったらコロナ給付金に12兆円ばらまき、マイナンバーで3兆円をばらまき、バカ高い原発に税金をドボドボ注ぎ込むゆとりはないはずです。実際に先物取引主導で危機が起き、実物の国債の売りに結びつけば、本当に深刻な危機になる。実際非常に際どいことになっている。だから、アベノミクスの失敗をきちんと総括してないまま赤字国債依存だけを続けていけば、すぐにもそういうことが起こるということを自覚すべきです。

貿易赤字の動向(2021年〜)

貿易赤字の推移

加えて、このまま貿易赤字を続けていけば、米中を含めた関税戦争の中で日本がその貿易赤字体制を定着させてしまい、結局やがて経常収支の赤字になっていく。例えば自動車産業が負けると、海外へ出ている下請産業などもダメになっていくので、その海外での収入、投資の収益が上がらなくなってくる。その時にすごい深刻な事態になる。

MMT論者やリフレ派が言ってるように、赤字国債が膨んでも通貨発行権があればデフォルトが起きないというのは、全くの無知そのものです。先進国でも、イギリスや韓国でも、事実上デフォルトに近い状態になって、IMFの介入を受けたりもしています。ロシアやメキシコやブラジルやアルゼンチンやギリシャなど、いろんな国々で何度もデフォルトになってきています。日本は一人あたりGDP38位で、もはや先進国ではないのです。

その時共通しているのは、経常収支が赤字になって、その赤字を埋めるために外国人投資家がその国の国債を買い始めたり、外国資金の短期資金に頼ったりするようになるとアウトになるということです。経済指標が悪い時に、一気に外国人投資家が国債を投げ売りすると、日本ならばそれによって円からドルに一気に転換するので、円が猛烈に暴落をし始める。国債が暴落を始める。で、金利が猛烈に上がってくる。そして経済危機になるわけです。こういう最悪の事態は日本ではまさか起きないだろうと思っていますが、貿易赤字国になり、日銀の金融緩和で海外に金を流して投資でかろうじて稼いでいるだけです。円安インフレで日銀が金利引き上げを余儀なくされれば、政府は国債利払い費が膨張し、日銀は当座預金の利払いで債務超過になる危険性が迫っています。産業がさらに衰退し、海外の債券が暴落したりしたりすれば、あっという間に円や国債が投げ売りされる事態を招きます。

それを防ぐために必死に貿易黒字を稼ごうとしたのが日本の経済の高度成長の教訓です。もう一度逆戻りするんですか、ということです。アベノミクスが、そんな危機は起きないという完全な嘘を振りまいたために、お札を刷れば何とかなるというとんでもない嘘がまかり通っています。日本国民全員が一億総振込め詐欺にかかった状態です。

そういう経済危機に近い状態に陥った時に、すぐ貿易を黒字に戻せますか。戻せないと考えると、今この国の安全保障にとって最も重要な項目は、エネルギーの化石燃料の輸入25兆円と食料品・農産物の輸入超過12兆円を、自給率を高めることによってとにかく半減させていくことです。それによってようやくまさに国難を防ぐことが可能になってくる。

その中で、例えば癌治療の分子標的薬を作って、それを輸出するなどの新しい付加価値を生み出す産業を生み出す。あるいはエネルギー転換で化石燃料の輸入を大幅に削るとか、食料を自給して地域経済を強化していくとか、そういう現実に人々が生活を成り立たせていくような経済構造をどう作り出すかが一番大事なことです。それなくして手取りが増えるわけがない。赤字国債で減税して手取りが増えることは全くない。インフレになるだけです。そういうあたり前の常識を共有すべきです。

お札を刷ってうまい汁を吸うなどとの安直な発想そのものが、この国をダメにしています。このトランプ関税戦争が少なくも4年間続き、世界経済が危機に陥る中で、私たち自身がどうやってその危機を未然に防ぎながら国を成り立たせていくのかを真剣に考えなくてはならない。そういう時期に来ていることを、今考えなければ間に合わない。そのことを声を大にして強調しなくてはなりません。

 

かねこ・まさる  1952年東京都生まれ。東京大学大学院経済学研究科博士課程修了。慶應義塾大学経済学部教授を経て、同大学名誉教授。立教大学大学院特任教授の後、2023~24年淑徳大学大学院客員教授。専門は、制度経済学、財政学、地方財政論。著書に『金子勝の食から立て直す旅』(岩波書店)、『閉塞経済』(ちくま新書)、『新・反グローバリズム』(岩波現代文庫)、『新興衰退国ニッポン』(共著、現代プレミアブック)、『「脱原発」成長論』(筑摩書房)、『資本主義の克服「共有論」で社会を変える』(集英社新書)、『日本病―長期衰退のダイナミクス』(岩波新書・児玉龍彦との共著)、『平成経済 衰退の本質』(岩波新書)、『メガリスク時代の「日本再生」戦略』(ちくま選書・飯田哲也との共著)、『人を救えない国』(朝日新書)、『現代カタストロフ論』(岩波新書・児玉龍彦との共著)、『高校生からわかる日本経済』(かもがわ出版)、『裏金国家』(朝日新書)など多数。


国民民主党・玉木雄一郎「改憲」への危険な野望! 日本会議に尻尾を振り、憲法調査会では愛人を動員

2025年05月04日 10時44分54秒 | 社会

国民民主党・玉木雄一郎「改憲」への危険な野望! 日本会議に尻尾を振り、憲法調査会では愛人を動員

2025.05.03 リテラ 編集部

金子勝@masaru_kaneko

【アベノミクス残党の亡国タマキ国民民主は消費税5%減税を打ち出すが、15兆円の赤字国債でまかなう。年5兆円の赤字国債を発行して子育てと教育科学技術を出す。少なくとも年20兆円の国債を日銀で支えて円安インフレに突進するアベノミクスの大失敗を反省しないクズ

【消費税減税】立憲民主の食品ゼロ税率は、食料品価格上昇率とエンゲル係数とリンクさせて一定の上昇率まで続け、平常になったら給付付き税額控除に転換すべきだろう。通常では金持ちは松坂牛、貧困者は豚小間肉の金持ち優遇で、公明党のような恒常的な食品税率軽減はいけない。

【フェイクファシズムの時代若い世代ほど、アベ政権が破壊し忖度だらけになったTVや、ファクトチェックのないSNSを頼っている。これだけ経済衰退(産業衰退、貿易赤字、一人あたりGDP急落、人口減少)が起きているのにアベノミクス残党のフェイク詐欺を信じている

佐高信@satakamakoto

「玉木、立花、斎藤、石丸の正体」が予想外に売れている。立花は、選挙に関心のなかった50%を狙ったと言っているが、つまりは騙しやすい者たちということだろう。「騙されない力」を持たない者たちが狙われた。ホリエモンを含めて玉木雄一郎、立花孝志、斎藤元彦、石丸伸二への処方薬は旬報社から。

「玉木、立花、斎藤、石丸の正体」佐高信、2025年5月刊。(「おわりに」より)

『聞く力』がベストセラーになったことがあったが、いま必要なのは「だまされない力」だろう。誰にだまされてはだめなのか玉木雄一郎であり、立花孝志であり、斎藤元彦であり、石丸伸二である。 彼らに共通するのは反省のないこと。あるいは反省を求められても受け付けないことである。不倫が発覚しても役職停止ですませたのは玉木であり、百条委員会や第三者委員会でパワハラ等を指摘されても斎藤は能面のような顔で無視する。少子化対策を問われて、一夫多妻制などと言った石丸も論外だろう。立花に至っては、絶対に信用して・・・・・。

私は、自民党をヤクザとすれば維新は半グレだと言ってきた。維新に寄って自民党のトップになった安倍晋三によって、自民党の維新化、つまりヤクザの半グレ化が進んだのだが、限りなく与党化する国民民主党は財務官僚出身者が多いことを皮肉って、インテリヤクザ党だと断罪したい。そのデタラメぶりからも玉木は同党党首にふさわしい。カタギの衆の判断力が退化して、これらのヤクザや半グレに転がされている。

彼らを疑うことから出発して、彼らのニセモノ性を見破り、それを広めていくしかない。そのネタ本として、私はこの時評集を出す。インスタントに判断しないこと、考えて判断することのために提供するのである。

◎詳細目次

はじめに――ペテン師立花孝志の介

玉木雄一郎、斎藤元彦、石丸伸二の解剖、「ニセ者」で「バカ者」の玉木雄一郎ヤクザと半グレに推された斎藤元彦、兵庫県知事選から見えるメディアの敗北、石丸伸二と支持者の軽さと薄さ、背景にあるホリエモンの「成功」幻想

☆いかがわしい者たち すり寄りと排除の政治家―小池百合子、かつて「ミイラ化」計画も―池田大作、「大常識」ならぬ非常識―百田尚樹、強者に向かわない怒り―松本人志、自公も推す候補を応援―内田樹、積極的平和サギー山口那津男、大阪に咲いた徒花―吉村洋文、嘘と偽りの政治家―小池百合子、鈍感かつ無責任―豊田章男、新一万円札の渋沢を持ち上げる愚行―高橋源一郎、旧勢力に操られたピエロ―石丸伸二、三人のオンブおばけを抱えたボンボン―小泉進次郎、「反日」なれど自民党と一体化―韓鶴子

 

本日5月3日、日本国憲法の施行から78年となる憲法記念日を迎えた。憲法改正を党是とする自民党は昨年の衆院選で大敗を喫し憲法改正の国会発議に必要な3分の2を失ったこともあり、改憲は遠のいているようにも見える。しかし、実際には、安倍政権時よりも改憲の危険は高まっている。そのキーパーソンが、国民民主党の玉木雄一郎代表だ。

 玉木代表はSNS の駆使とともに「手取りを増やす」と喧伝したことで若者・現役世代から圧倒的な支持を集めており、7月の参院選でも大幅に議席を増やすことは必至。もし参院選で自公が過半数を割ることになれば自公と国民民主が連立を組み、玉木氏が総理大臣として担ぎ出される可能性だってある。非自民で連立政権を組んだ場合は、その可能性はもっと高まるだろう。

 だが、玉木氏の台頭は、この国が一気に“危険な改憲”へなだれ込む大きなきっかけになるかもしれない。というのも、経済政策を強く打ち出す一方で玉木氏が声高に叫んできたのが「緊急事態条項の創設」だからだ。

 そもそも、国民民主といえば、2019年の参院選では立憲民主党や共産党、社民党など5野党・会派で13項目の共通政策に合意、統一候補の一本化など野党共闘でたたかった。この際、玉木代表も合意の署名をおこなった市民連合と5野党・会派の「共通政策」では、安倍政権が進めようとしている改憲に反対し、改憲発議をさせないために全力を尽くすことが明記されていた。

 ところが、玉木氏は選挙が終わって1週間も経たないうちにYouTube番組内で「私ね、生まれ変わりました! 安倍総理、たしかに総理の考えと私、違いますけど、憲法改正の議論はしっかり進めていきましょう!」などと発言。この時期あたりから玉木氏は保守層を取り込むべく、改憲、とりわけ緊急事態条項の創設を打ち出すようになっていった。

実際、国民民主は2023年に日本維新の会や衆院会派「有志の会」の2党1会派で緊急事態条項の条文案を公表し、昨年9月に発表した「2024年重点政策」においても〈大規模災害時などの緊急事態に国会機能を維持するための憲法改正〉と明記している。

そして、玉木氏は衆院憲法審査会の委員として緊急事態条項の創設を主張。「自民党の憲法改正は保守層をつなぎ止めるための“やるやる詐欺”になっている」「熱意と本気度が感じられない」などと自民にマウントをとったり、「私たちの緊急事態条項が成立してもナチスは出てこない。緊急事態条項=戦争国家づくりとのレッテル貼りはやめろ」と反対野党を攻撃してきた。

日本会議系集会で「櫻井よしこ先生に日本男児と認めていただけるかな」と媚を売る玉木雄一郎

しかも、玉木氏の改憲への入れ込みぶりは、自民党の穏健派のようなプラグマティックなレベルにとどまるものではない。ある時期から、極右・歴史修正主義勢力と連動するような動きまで見せるようになった。

たとえば、玉木氏は日本会議の機関誌「日本の息吹」2024年1月号の特集「今年こそ、憲法改正実現の年へ」において「肝心の自民党に覚悟が足りない」とコメント。昨年5月30日に開かれた日本会議系の改憲イベント「国民の命と生活を守る武道館1万人大会」に登壇した際にも「我々はたぶん、もっとも熱心に緊急事態条項に取り組んできた政党だと思います」とアピール。ちなみに、2023年5月3日に開催された日本会議系の改憲集会に参加したときには、いかに改憲に向けて取り組んでいるのかを強調したほか、「櫻井よしこ先生に少しでも日本男児と認めていただけるかな」などと媚を売ってみせている。

しかも、玉木氏は緊急事態条項だけでなく9条改正の野心も持っている。2022年、足立康史氏らとYouTube番組に出演した際には、9条2項の削除の本音を持っていることを示唆した上、「安全保障の議論というのは、いついかなるときに日本国民は血を流す覚悟ができるかということなんですよ」と発言している。

 2019年には護憲派の憲法集会に参加していたというのに、一転して改憲を振りかざし極右にまですり寄る変節ぶり──。これだけでもいかに玉木氏が信用ならない人物なのかがよくわかるが、もっと呆れるのが、この玉木氏の改憲への策動が例の不倫関係と一体化していたことだ。

 周知のように、玉木氏は昨年11月、元グラビアアイドルで高松市の観光大使を務めていた小泉みゆき氏との不倫関係を「FLASH」電子版で暴露されたが、この小泉氏が玉木氏の出席する憲法審査会に足繁く通っていた。

憲法審査会の傍聴者は、多くの場合が議員や党の関係者を通じて申請、傍聴券を得て参加しているといい、小泉氏も玉木氏を通じて傍聴に訪れていたと見られている。小泉氏が衆院憲法審査会の傍聴に訪れるようになったのは2年ほど前からで、すでに玉木氏と不倫関係にあったと言われている時期と重なる。つまり、玉木氏は不倫相手を国会に招き入れ、自らの勇姿を見せつけていた、というわけだ。

 しかも、小泉氏はたんに傍聴していただけではなく、昨年に入ってからは「静かにさせて!」「黙れ!」などとヤジを飛ばすようになっていたという。

この問題を報じた「週刊文春」(文藝春秋)の取材に応じた傍聴参加者は、小泉氏の様子について、こう証言している。

「玉木氏の発言に対して傍聴席からヤジが飛ぶと、小泉さんが立ちあがってその人物を指さし、衛視に注意するよう求めるようになったのです。厳しい口調に加え背が高いこともあり、その場をコントロールしているかのような、高圧的な印象を受けました」

「国民民主党は憲法改正賛成の立場ですが、それに反対する護憲派の傍聴者らは咳をしただけでも小泉さんに睨まれるようになり、年配の方たちはすっかり委縮してしまっていた。彼女が傍聴席の空気を支配していました」

実際、小泉氏自身もこの憲法調査会での行動を「見張り」だと称し、昨年5月、自身の旧Twitterでは〈木曜の見張りに今回は参加できず。みんなしずかにお話をきけたかな? 今日もうるさいなら更にゴリゴリの直談判するつもりだったけん、行きたかったな!〉などと投稿していた(現在は削除済み)。

 先の「文春」記事によると、〈委員会室に入って来た玉木氏と小泉とが、アイコンタクトを交わしているように見えたこともあった〉というから、玉木氏は、不倫相手に護憲派の傍聴者を“威嚇”する役目を担わせていたのかもしれない。

例の不倫相手を憲法審査会に動員、国民民主党から国政選挙に出馬させようとしたことも…

 しかも、玉木氏にはこの不倫相手である小泉氏を国民民主党から出馬させようとしていた疑惑がある。先の「週刊文春」によれば、当初は衆院選に出そうとしたが、調整がつかず、7月の参院選で国民民主党の候補にしようとしていたフシがあるという。

 実際、玉木氏は文春の取材に、党が正式に検討するには至っていないとしながらも、「小泉氏は政治への興味関心があったことから、玉木が個人的に国政に限らず何らかの選挙への立候補の可能性について話したことはあります」と認めている。

不倫が発覚したため小泉氏の出馬はなくなったが、報道がなかったら、そのまま小泉氏を参院選に小泉氏を担ぎ出し、改憲派の急先鋒として売り出していた可能性が高い。

愛人を自分が代表を務める公党の候補者に仕立てようとするとは驚きだが、この公私混同ぶりは、玉木氏が独裁者体質をもっていることの証左ともいえる。

減税や手取り増という甘い言葉に踊らされていると、その先にとてつもなく危険な事態が待ち受けていることを、国民は認識しておくべきだろう。

 

国民民主・玉木雄一郎の不倫に“政治活動中の公私混同”疑惑が浮上! ヤバすぎる差別体質とビジネス右翼ぶりにも懸念の声

2024.11.13 リテラ 編集部

 

首班指名選挙の当日に、まさかの謝罪会見──。衆院選で大幅に議席を増やし、一躍「政局のキーマン」に躍り出た国民民主党・玉木雄一郎代表だが、特別国会の招集日だった11日、スキャンダルに見舞われた。周知のとおり、元グラビアアイドルである高松市観光大使の女性との不倫デートを「SmartFLASH」にすっぱ抜かれたのだ。

 玉木氏は午前に緊急会見を開き、「報道された内容についてはおおむね事実」と述べ、「妻にはすべてを話した」「叱責された」「今回の(不倫)騒動を挽回するためにも『全力で103万の(壁の)引き上げをやってこい』と、妻からも息子からも言われました」と涙目で説明。夜に有楽町でおこなわれた街頭演説では、「趣味は玉木雄一郎」と語ることでも知られ、ネット上で人気を集めている榛葉賀津也幹事長が玉木氏の肩を叩き、玉木氏が聴衆に謝罪する姿を温かく見守る様子がSNSで拡散された。

 この一連の対応に、支持者らを中心に「対応早い!」「辞任より減税」「国民にとってよい政治をしてくれると信じてるので、プライベートがどうだろうと関係ないです」などと玉木氏擁護が殺到し、会見や街宣での言動にも「政治家の妻の鑑やな」「榛葉さんに泣ける」「なんかこの2人かっけぇ」といったコメントが相次いだ。同様に、12日放送の『めざまし8』(フジテレビ)でも、MCの谷原章介が「その日の夕方にすぐに街頭に打って出て、みなさんに訴えて謝罪をしたのは『やるな』ってちょっと思ってしまった」と語り、元NHK解説委員の岩田明子氏も「勇気あるなと感じました」と評価していた。

 公党の代表にふさわしいか否かの問題なのに「妻からの叱責」を免罪符にし、代表続投という甘すぎる党内の対応を批判もせずに、“男の絆”の物語で消費したり「勇気ある」と称える……。かたや、相手の女性は高松市観光大使の職を「解職も含め検討」されていることを考えれば、あまりにも不均衡としか言いようがないが、その上、ネット上では擁護論のみならず「玉木氏は財務省にハメられた」という陰謀論まで飛び交う始末となっている。

 まったく何を言っているのだか。そもそも玉木氏といえば、「週刊文春」に「パパ活不倫」をスクープされて衆院議員を辞職した宮澤博行氏のスキャンダルに際し、〈宮澤博行氏のケースは、政務三役にもセキュリティクリアランスが必要なことを示している〉とし、国会で審議中だったセキュリティクリアランス法案について〈性的行動をチェックする国民民主党の修正案を取り入れてもらいたい〉とSNSに投稿していた。その張本人がゆるゆるの「性的行動」をとっていたとは、とんだお笑い種だ。

 だいたい、報道から会見までの対応の早さを評価する声も大きいが、「FLASH」が玉木氏に不倫疑惑の質問状を送付したのは先週木曜の7日だ。会見中に手にしていた想定問答のペーパーからも明白なように、会見に向けて入念な準備を進めてきたことは想像に難くない。しかも、首班指名選挙では党の全会一致で玉木氏に投票することを決定しておきながら、会見を無事に済ませた安心感からか、国会での選挙中には居眠りする様子がカメラに捉えられていた。さっきまで涙を浮かべて謝罪していたのに、あまりにも不遜すぎやしないか。

 だが、もっとも問題になるべきは、「政治活動のために宿泊したホテルに不倫相手を泊めた」という疑惑だ。

「FLASH」によると、玉木氏は7月25日から28日に香川県内で政治活動をおこない、26日17時半に高級ホテル「JRホテルクレメント高松」にチェックイン。一方、相手の女性は16時すぎに同ホテルに到着しており、玉木氏が14階の客室に入室した直後にチェックインしないままエレベーターに乗り、玉木氏と同じ14階で降りて客室へ。〈2人とも、この日は同ホテルに宿泊した〉という。

 このホテルは玉木氏が政治資金パーティを開催してきた場所なのだが、こうして報道されてしまった以上、この日の宿泊費を政治資金や文通費で落とすことはないだろう。だが、香川の政界関係者は、玉木氏と不倫相手の女性が時間差でホテルに入る様子を2022年後半以降「2回、目撃」していると証言。果たして、過去の逢瀬で使用したホテル代が政治資金で賄われた可能性はないのだろうか。

医療費削減のために尊厳死を法制化、同性愛差別発言…玉木雄一郎の弱者切り捨て思想

 今回の一件で、熱心な支持者以外からは党代表としての振る舞いを疑問視する声も上がりつつある玉木氏。しかし、不倫の是非以前に、玉木氏は公党のトップにふさわしい人物ではない。それは、玉木氏が差別主義者だからだ。

 その一例が、先の衆院選中に露呈させた高齢者差別だ。玉木氏は日本記者クラブ主催の党首討論において「若者をつぶすな」と主張するなかで、こう述べた。

社会保障の保険料を下げるために、我々は高齢者医療、とくに終末期医療の見直しにも踏み込みました。尊厳死の法制化も含めて。こういったことも含めて医療給付を抑えて若い人の社会保険料給付を抑えることが、じつは消費を活性化して次の好循環と賃金上昇を生み出すと思っています」

 医療費削減のために尊厳死を法制化する──。この主張には「姥捨て山か」「優生思想にほかならない」と批判が噴出し、玉木氏も〈1分間の中ですべて説明しなくてはならなかったので雑な説明になったことはお詫びします〉〈尊厳死は自己決定権の問題として捉えています〉と釈明した。だが、国民民主党の政策パンフレットでは「現役世代・次世代の負担の適正化に向けた社会保障制度の確立」という項目のなかに「尊厳死の法制化」は位置づけられており、財政論の一環で尊厳死を捉えていることは疑いようもない事実だ。

 さらに、玉木氏の差別性があらわになったのが、同性愛をめぐる態度だ。

 議席を伸ばした衆院選直後である10月29日に玉木氏が生出演した『ひるおび』(TBS)では、自民党の石破茂首相と立憲民主党の野田佳彦代表が玉木氏を引っ張り合うイラストが描かれたパネルを使い、玉木氏が「モテ期」であると紹介。しかし、これに玉木氏は「嫌ですね。この男同士が(自分を)引っ張ってるって。気持ち悪い絵ですね」とコメントしたのだ。

 社会の差別を助長することにつながるという懸念ももたず、公共の電波でホモフォビアをむき出しにする。これだけでも公党の代表にふさわしくないが、たんに玉木氏個人の差別性が露呈しただけではない。というのも、国民民主党は同性婚の導入に賛成する立場をとっておらず、先の衆院選でも賛否を明確にしなかった。ようするに、党をあげて同性愛者の当然の権利に背を向けているのだ。

 そればかりか、2023年に成立した「LGBT理解増進法案」でも、国民民主党と維新が自民党に要求した修正案によって、それでなくても酷かった与党案よりも法案内容をさらに後退させたことも記憶に新しい。とくに酷かったのが、国民民主と維新が「ジェンダーアイデンティティにかかわらず、全ての国民が安心して生活することができるよう留意する」という項目を加えさせたこと。つまり、不当なトランスヘイト言説を前提にし、マジョリティであるシスジェンダーに配慮することを加えさせたのだ。

「対決より解決」と謳いながら、高齢者や外国人を敵設定し分断と対立を煽ってきた玉木雄一郎

 また、玉木氏の差別性を語るうえで外せないのが、排外主義、外国人差別だ。

 たとえば、今年5月、栃木県日光市で発生した強盗事件でベトナム人男性が逮捕された際、玉木氏はSNSにこう投稿した。

〈過疎地域での外国人による犯罪対策を強化すべきだ。不法残留は厳しく取り締まってもらいたい。そもそも、特定技能は事実上の移民につながるので、なし崩しで拡大してはならない。〉

 そもそも国内の外国人による犯罪率は日本人と変わりがないうえ、減少傾向にさえある。にもかかわらず、外国人と犯罪を結びつけて語るのはど真ん中の外国人差別だ。しかも、政治家であるならば、技能実習生がこの国の労働力を支えている実態を踏まえ、現行制度下に置かれた技能実習生の劣悪な労働環境や搾取の構造に目を向けるべきなのに、それを無視して「移民を増やすな」などと主張するのは、外国人に対する恐怖と憎悪を煽る、そのへんの極右と何が違うのか。

 玉木氏といえば2021年にも、コロナ禍で困窮する大学生を対象にした10万円の緊急給付金に留学生も含めるというニュースに対し、〈真面目に働いている月給10万円の日本人の独身世帯には1円も給付されない。明らかに不公平ではないか。ちゃんと税金を払っている日本人にこそ10万円を給付すべきだ〉と主張。本来、個別で考えるべき「真面目に働く独身日本人」と「外国人留学生」を対立させ、外国人に対する偏見を助長させようとしたことがあった。これは、「医療費のかかる高齢者」と「現役世代」を対立させることで、若年層〜現役世代の支持を得ようとする卑劣なやり口とまったく同じだ。

 このように、世代や属性の分断を煽ることで党勢拡大を図ってきた玉木氏。同時に、日本会議系の改憲集会に登壇しては「櫻井よしこ先生に少しでも日本男児と認めていただけるかな」と媚を売ってみたり、動画内で「安全保障の議論というのは、いついかなるときに日本国民は血を流す覚悟ができるかということなんですよ」「本質ですよ、本質」などと語ったりなど、極右への目配せにも注力。そんななかで、アイヌ民族への偏見と嘲笑にまみれたYouTube番組に出演し、ネトウヨ出演者たちと一緒になって大笑いするなど、ありえない醜態を晒してきた。

 ようするに、玉木氏というのは、「手取りを増やす」「若者をつぶすな」と叫びながら差別を振りまく、「ビジネス右翼の新自由主義者」にほかならない。不倫騒動よりも、玉木氏のこの危険で有害な本質こそ、目を向けられるべきだろう。


アベノミクス検証 まだ増える迷惑外国人観光客 極度の円安が日本旅行の割安感と物価高を生む

2025年05月03日 13時45分54秒 | 社会

神社に落書き、旅館に逆ギレ…まだ増える迷惑外国人観光客 日本を守る秘策とは

Yahoo news  2025/5/3(土)  デイリー新潮 香原斗志

今年は4000万人を超えそうな勢い 旅行者の質も低下している…

 いまや全国津々浦々で外国人を見かけるようになった。京都はもちろん、東京都内の各所は外国人がぞろぞろ歩いていて、電車内にも外国人の乗客が多い。いや、欧米人のように日本人と見た目が違う人だけでも激増しているが、じつは、日本人だと思ったら外国人だったということも多い。大阪や福岡に行くと、見た目から日本人ではないかと思う人たちに囲まれながら、日本語がまったく聞こえない

 日本政府観光局の(JNTO)の発表では、今年3月の訪日外客数は349万7,600人(推計値)となり、3月として過去最高だった2024年の同月比で13・5%も増加した。また、3月までの累計は1,053万7,300人で、昨年が855万8,483人だったから200万人近くも増えている。もちろん1,000万人を超えたのは過去最速で、年間でははじめて4,000万人を超えそうなペースである。

 内訳は韓国69万1,700人、中国66万1,700人、台湾52万2,900人、アメリカ34万2,800人、香港20万8,400人、タイ14万8,200人、オーストラリア8万4,800人、カナダ6万8,100……。おそらく人波には、見た目だけでは気づかない外国人が、思いのほか多くふくまれているのだろう。

 政府は2030年には、この「訪日外客数」を6,000万人にし、消費額を15兆円にまで増やすことを目標にしている。昨年の訪日外国人旅行消費額は、国土交通省によれば過去最高の8兆1,395億円で、目標達成は現実味を増している。

 ただ、ここで忘れてはいけないのは、現在、訪日外国人がこれほど増えているのは、日本の魅力が増したからではなく、極度の円安のおかげで日本旅行の割安感が増したからだ、ということである。

日本は4割以上も割安に

 その円安を招いたのは、もとはといえば第2次安倍晋三内閣が掲げたアベノミクスだった。「三本の矢」の一つの「金融政策」として、2013年に日本銀行の黒田東彦総裁が「異次元緩和」と称されるゼロ金利政策を打ち出すと、1ドル80円程度だった円は急降下した

 それでもコロナ禍前の2019年には1ドルが110円程度だったが、昨年には160円の大台を突破するにいたった。これほど円安が進んだのは、コロナ禍が終わって日米および日欧の金利差が拡大したからである。これまで異次元緩和政策を続けるために、日銀は日本国債を無制限に買い取り、長期金利の上昇を阻止してきた。その結果、金利差が開いて円安が進んだわけだが、では、方向転換すればいいかというと簡単ではない。いまや大量の国債をかかえる日銀は、金利が上昇すればその利払いができず、債務超過になりかねない。

 そんな事情で円安が続き、外国人が値ごろ感の高い日本に押し寄せるようになった、というわけだ。なにしろ、1ドル160円なら、1ドル110円のときにくらべ、物価は3割以上も安いことになる異次元緩和導入前の1ドル80円時代とくらべたら半値である。

 ここでは余談となるが、いまの日本の物価高が、外国人にとって日本が割安であることの裏返しであることも忘れてはならない。カロリーベースの食料自給率が38%とG7諸国のなかでも極端に低く、エネルギー自給率は12%にすぎない日本では、円安になれば物価は必然的に上昇する。

外国人旅行者の質が低下している

 さて、動機は「安いから」であっても、訪日外国人が増えることを、私たちは歓迎すべきなのだろうか。必ずしもそうだとはいえないのは、外国人によるトラブルが激増しているからである。

 たとえば、日本の伝統や文化への敬意が欠如している事例が多い。神社仏閣なら、神聖な場で大声で騒ぐ、鳥居で懸垂する、落書きする、庭のコケを踏みつける、そこら中にごみを捨てる、立ち入り禁止エリアに堂々と入る……と枚挙にいとまがない。こうした行為からは、日本の文化への敬意がまったく感じられない。そもそも、日本の文化について、一定程度の下調べをしてきたとも思えない。

 新幹線などの車内で、ほかの人が予約している場所に大量の荷物を置く、という話もよく聞く。水洗トイレになんでも流して壊してしまう、というケースも多いらしい。また、1泊2食付きだった旅館が食事の提供をやめるケースが増えているという。伝統的な和食を出されても食べられずに残す外国人が多いそうで、そこまではまだわかるが、食べていないのに金をとるな、というクレームにつながるのだという。

 いま挙げた事例は、外国人旅行者による迷惑行為の、ほんの一部にすぎない。文化的背景が異なる人たちが多方面から押し寄せれば、こうした問題は避けられないものだが、一つ指摘しておきたいのは、質の悪い外国人が増えているという点である。訪日する外国人の質を日本側が選択することはできないが、円安による割安感だけが理由で訪日する人が増えれば、外国人旅行者の質が相対的に低下するのは避けられない。

外国人観光客に応分の負担をしてもらうべき

 だから、現在のインバウンドの増加は、とてもではないが手放しではよろこべない。黙っていても外国人が押し寄せる現状では、日本側も日本の魅力をいかに増し、磨き、外国人にPRするかという努力をしない。だが、そうした努力を重ねていないと、いざ円高に振れたときに、外国人からそっぽを向かれてしまう。

 とりあえずいま必要なのは、外国人が日本を訪れるハードルを若干高くすることだろう。すでに東京都、大阪府、京都府、金沢市、福岡県、長崎市などは宿泊税を導入しており、今後、外国人に人気の温泉旅館が多い県や市も、本格的に導入するという。ただ、これらは日本人も外国人も等しく負担するものだ。加えて、外国人だけを対象にした課税を考えてもいいのではないだろうか。

 たとえば、先に挙げた寺社仏閣や城をはじめ文化財や史跡などは、維持するために多額の費用がかかり、多くの場合、そこには日本国民の税金も投入されている。それを外国人にも負担してもらうのである。外国人から多く徴収するというと、外国人差別だという議論になりがちだが、それは違う。外国人にも日本の名所を訪れる以上は、その保存や維持のための費用を応分に負担してもらう、ということにすぎない。

 昨年6月、兵庫県姫路市の清元秀泰市長が、「姫路城の入場料は外国人には30ドル(4,000円台)払ってもらう」と発言し、議論百出となった。結果的に、現行の1,000円を来年3月から姫路市民以外にかぎって2,500円に値上げする、という話に落ち着いたが、外国人だけ4,000円超にしてもよかったし、それがモデルケースになればなおよかったと思う。

 そうすることで、観光資源の維持や管理のための費用を捻出するとともに、割安だというだけの理由で日本を訪れる外国人観光客を一定程度排除する。その結果、「訪日外客数」が減るなら、むしり好都合だ。また増やしたいなら、今度こそは日本の魅力を高め、本質を理解してもらえるPRをし、高くても日本を選ぶ観光客を増やせばいい。

 簡単ではないのはわかっている。しかし、外国人観光客の質を高める努力をしないかぎり、現在のオーバーツーリズム問題が解決に向かうことはないだろう。

 

香原斗志(かはら・とし)

音楽評論家・歴史評論家。神奈川県出身。早稲田大学教育学部社会科地理歴史専修卒業。著書に『カラー版 東京で見つける江戸』『教養としての日本の城』(ともに平凡社新書)。音楽、美術、建築などヨーロッパ文化にも精通し、オペラを中心としたクラシック音楽の評論活動も行っている。関連する著書に『イタリア・オペラを疑え!』(アルテスパブリッシング)など。