まず驚くのが、肥後薩摩弁のクセの強い文体がとても生き生きとしていて、これは一体なんだ?と驚く。一歩間違えれば地元の人しか分からない方言そのままに小説を書くと言う大胆にして名文。日本列島の南西の果てから水俣の実態を叫ぶ力がこぶしのようにガツンと頭を殴られるような文章になって溢れ出ている。水俣を語る前に、まず何よりも一流の方言文学だ。
だからこそ、ここには生々しい水俣病患者の姿が伝わる。活字ではなく、目の前に患者さんがいて、目の前で奇病の苦しさを語っているかのごとき。まだテレビもほとんど普及していない、ましてやインターネットなんて陰も形もなかった時代、こういう文学が地方棄民の現実をリアルに伝えていた。そしてそれは現代においても何ら色褪せない。福島ではまだこのような告発は小生は寡聞にして聞かない。やはりインターネットの時代、即時性のある動画情報が誰ても簡単に流せるので、こうした地方からの告発に文学の果たす役割は減じてしまったのかもしれない。
だがしかし、このような問題は10年、20年と言った長期戦になる。記録性に乏しいインターネットでは継続的な告発は難しい。福島からも彼女のような告発力のある人が登場することを期待して止まない。
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