平野啓一郎の「ある男」を読み終えました。
過去が他人と入れ替わっている男を追う弁護士が主人公です。事故で死んだ夫が別人だったということから話は意外な展開に進み、そこからさまざまな人間関係が露わになり、最後まで緊張感ある展開が続きます。
過去を捨てて新たに生きる人の葛藤と希望、その人へ愛情を持つ人達、の心理が綿密に描かれているのは、平野作品らしいという印象です。
構成が複雑なので、途中「あれ? . . . 本文を読む
30日の納竿釣行が爆風で中止になったので、ばあさんと一緒にセール中のブックオフへ。ざっと眺め歩いて、これ読んでみようかな、と手にしたのがこちらの本。
将棋を題材にした推理小説です。初めて読む作者。
銘駒を抱いた白骨死体をめぐり、主人公の棋士、上条啓介の生い立ち、銘駒の持主を追う刑事、の2つのストーリが交差しながら進み、最後にそれらが結ばれます。
プロ棋界を知らない人にとっては、新鮮な内容 . . . 本文を読む
こないだ読んだ「許されようとは思いません」が意外に面白かったので、ばあさんに「この著者の本は他にないのか?」と聞いたところ、これを読めと持ってきたのがこの本です。
いやぁ、前提知識なしで読み進めていたのですが、最後にやられました。同じ作者の「姉のように」という短編でひっかかったのと同じパターンです。
人間心理の盲点を突いた、こんな小噺があります。
50歳になるまで独身を通してきたAという男 . . . 本文を読む
平野啓一郎の「透明な迷宮」を読みました。
こちら内容紹介。表題作を含む6編からなる短編集です。
「消えた蜜蜂」は偏執狂的な男の話。蜜蜂との関連性が最後まで理解できなかった。
「ハワイに探しに来た男」は超短編。次元が変わったような感覚を受けることから安部公房的な展開を感じます。
「透明な迷宮」はちょっと怖い話。ハンガリーの知識があればもっと深く理解できるのかもしれませんが、私には難解 . . . 本文を読む
平野啓一郎の「空白を満たしなさい」を読みおえました。
表紙がゴッホの自画像なので、「葬送」のように画家を扱った小説かと思いながら読み始めましたが、ぜんぜん違いました^^;
上下巻からなる小説は、死んだ人間が戻ってきた世界が舞台で、死因への謎、家族愛、社会生活の軋轢、死への畏れなどが、作者独特の綿密な心理描写で描かれています。また、幼少期に父親を亡くした作者が、本小説の中に描く父親像について . . . 本文を読む
孫ちゃんへのプレゼントと、ばあさんが買った本。
孫ちゃん1号はシラスが大好き。宇佐美に釣りにいったときのお土産、美吉丸のしらすはとりわけ好物で、もりもり食べます。
内容紹介。「人の命は、他の種の命の上に成り立つ」という大切なことをこどもにわかりやすく教えられる本。
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p.s. 塩分はオーバーしたけど、他はおおむね良しの一日。 . . . 本文を読む
ばあさんが唐突に「これ読んでみろ」と置いて行った一冊。
特に理由は言わないのですが、自分で読んで面白かった本なのでしょう。そのときは別の本を読んでいたので、この本は本棚の隅っこに放っておいたのですが、ふと思い出して手にとってみました。
芦沢央、知らない作者です。どんな小説なのか、男か女かもわからない。あえて事前知識を得ずに読んでみることにしました。カバーをはずし、むき出しの状態の文庫本を読み始 . . . 本文を読む
このところハマっている平野作品。一冊目、ドーン。
近未来のアメリカを舞台に、有人火星探索、大統領選、アメリカの戦争介入、震災によって壊れた家族、これらが複雑に絡み合いながら物語が進み、徐々にその関連性をあらわにしながら物語は進みます。なんどもページをめくり直し、作者の仕掛けた伏線を探し直す作業は「決壊」を読む進めているときに似ていました。
文中に出てくる科学的なネタが今の時代に読んでみても . . . 本文を読む
平野啓一郎の「決壊」を読み終えました。
文庫本2冊からなる長編小説です。上巻の後半から物語は緊迫し、何度もめくり返し読み返し、事件のヒントと思われる個所を確認しつつ、下巻は頁をめくる手が止まらずに一気に読み切ってしまいました。平野啓一郎作品は、長編にその面白さが発揮されると思います。
2011年の発行。初出は2006年。
こちらはその前に読んだ一冊、「顔のない裸体たち」。
. . . 本文を読む
高瀬川に続いて読んだ一冊。
筆者自ら、手応えを感じるという作品。
9編からなっています。
「白昼」。しょっぱなから難解で、理解しにくい奴がきました^^; 過去から未来に至る時間の連続性がテーマなのか?わしには難しい。短いながらも「追憶」のような手法がとられています。
「初七日」。戦争経験者である父の死を通じて、戦争に行く前と後で生まれた兄弟の心理描写がなされています。家に忍び込んだ . . . 本文を読む
平野啓一郎の「高瀬川」を読みました。
作者みずからが実験期と呼んでいる時期の作品で、概念的な作品あり、前衛的な作品あり、とタイプの違う4つの短編からなります。正直なところ、作者の意図があまりよくわからい作品の方が多かったです。つまらない、面白い、という二元的な感想ではなくて、わたしでは理解が及ばないことが多い、といったところです。
「清水」は、実存と非実存の概念の境界について書かれた(と思 . . . 本文を読む
このところ、わしが読んだ本をばあさんが読んだり、ばあさんが読んだ本をわしが読んだりと、まるで中学生のように本を交換して読んでいるのですが、「これ読んでみろ」とばあさんが持ってきたのがこちら。
おととしの芥川賞受賞作。
芥川賞らしからぬ、とばあさんが評していたのですが、そこのところは同感で、芥川賞とは何か?純文学とは何か?と考えさせられる作品でした。
この作者の文体には独特のグルーブ感 . . . 本文を読む
彼岸花が咲く島、と同時に芥川賞を受賞した作品です。
東日本大震災、コロナ禍がテーマで、ドイツの学生都市ゲッテンゲンを舞台に、野宮の来訪から幕を開けるストーリーは、なにか不自然さを纏いつつも、焦点が定まらない曖昧な感覚で読み進めざるを得ませんでした。
詩的な情景描写が延々と続き、不思議な出来事との関連性が見えなりつつあった中盤に、「は?」という展開になり、そこからやっとこの小説の意図がわかっ . . . 本文を読む
このところ社会との距離感がある生活をしていて、世の中の流行を追うことなんぞ皆無なのですが、せめて本くらいは新しいものを読んで若い人の文化を追っておかないと、と買ってきたのがこちらの本。
新しい本についての情報アンテナが鈍いわしのような人にうってつけなのは、芥川賞などの受賞作品。しかもこの帯には「品の無い煽り文句」が書かれていなくて好感が持てます。
内容紹介はこんな感じ。
主人公は記憶 . . . 本文を読む
ふと気が向いて、南総里見八犬伝の現代語訳を読んでみました。
わしらの世代は、子どもの頃、NHKで放映されていた人形劇「新八犬伝」を楽しみにしていた人も多いのではないでしょうか。坂本九の語り、辻村ジュサブローの人形、仁義礼智忠信孝悌の八犬士による活劇です。
「おう、覚えてるぞ」という方は、まずこちらのテーマソングで当時を偲んでください。 → オープニングテーマ (Youtubeへの . . . 本文を読む