小児アレルギー科医の視線

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じんましんにステロイドは無効?

2017年05月20日 06時13分24秒 | 医療問題
 蕁麻疹の治療の第一選択は抗ヒスタミン薬(≒抗アレルギー薬)です。
 改善しない場合は抗ヒスタミン薬の種類を変え、それでもよくならないときはステロイド薬を併用する、というのが一般的な知識であり、これは日本皮膚科学会作成の「蕁麻疹診療ガイドライン」に明記されています。



 というところに、下記報告が目にとまりました。
 抗ヒスタミン薬にステロイド薬を追加投与しても、偽薬と経過が変わらなかったという衝撃的な内容です。
 現行の蕁麻疹診療に一石を投じることになるのでしょうか。

■ 急性蕁麻疹にステロイドは無効
(2017.05.12 Medical Tribune)
 急性蕁麻疹に対しては第2世代のヒスタミンH1受容体拮抗薬(抗ヒスタミン薬)が第一選択薬として推奨されているが、ステロイドの追加が有用である可能性も指摘されている。このほどフランス・Toulouse University HospitalのCaroline Barniol氏らは、救急部(ED)を受診した急性蕁麻疹の患者100例を対象に前向きランダム化二重盲検プラセボ対照並行群間比較試験を実施した結果、痒みの消失または治癒に至るまでの期間短縮に関して、ステロイドを追加しても抗ヒスタミン薬単独を上回る効果は得られなかったとAnn of Emerg Med(2017年5月3日オンライン版)に発表した。

◇ レボセチリジンにプレドニゾン追加とプラセボ追加を比較
 対象は18歳以上で血管性浮腫が認められない急性蕁麻疹の患者とし、アナフィラキシー症例、ED受診前5日以内の抗ヒスタミン薬またはステロイド投与例は除外した。年齢中央値27歳の計100例を、抗ヒスタミン薬(レボセチリジン5mgを1日1回5日間経口投与)に追加してステロイドを投与する群(プレドニゾン40mgを1日1回4日間経口投与)またはプラセボを投与する群に50例ずつランダムに割り付けた。
 主要評価項目はED受診から2日後の止痒効果とし、0~10の痒みスコアで判定した。副次評価項目は皮疹の消失、再燃、有害事象とした。

◇ 痒み消失、再燃、副作用がプラセボと同等
 ED受診2日後に痒みスコアが 0(完全消失)であった患者はステロイド群62%に対してプラセボ群76%であった〔群間差(Δ)-14%、95%CI -31~4%〕。結果はプロトコル違反15例を除外した感度解析でも同様であった。また、ベースラインから2日後までの痒みスコアの低下パターンは両群で同等であった。

 2日後に皮疹が消失した患者はステロイド群の70%に対してプラセボ群では78%であった(Δ-8%、95%CI -25~9%)。また、再燃が認められた患者はステロイド群30%に対してプラセボ群24%で(Δ6%、95%CI -11~23%)、大部分(89%)が5日以内の再燃であった。
 有害事象の評価では、ステロイド群12%およびプラセボ群14%に軽度の副作用が認められたが、投与中止に至るものはなかった。主な副作用は疲労(7例)、鎮静(眠気、3例)、不眠(2例)、ディスペプシア(2例)で、重篤な有害事象は認められなかった。

◇ ステロイドの副作用への懸念も
 Barniol氏らは以上の結果から、急性蕁麻疹によるED受診例において、ステロイドは抗ヒスタミン薬による治療効果を増強しないと結論付けた。
 同氏は「第2世代のH1抗ヒスタミン薬は副作用を伴わずに急性蕁麻疹を治療できるというエビデンスがあるにもかかわらず、迅速な症状軽減にはステロイドが最も有効だと考える医師が多い」と述べ、「今回の結果は、抗ヒスタミン薬とステロイドの併用を合併症のない急性蕁麻疹に対するファーストライン治療として支持するものではない。ステロイドは短期投与なら臨床的に重要な毒性を引き起こさないとしても、頻回投与や長期投与では有害作用を引き起こす可能性がある」と警告している。

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