小児アレルギー科医の視線

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RSウイルスワクチン「アブリスボ」登場!(2024年1月)

2024年01月19日 07時37分36秒 | 予防接種
私が小児科医になってから30年以上経過しますが、
新規予防接種の開発・導入により、
感染症流行の構図が変化してくるのを観察できました。

その中でも肺炎球菌ワクチンとヒブワクチンは大きなインパクトがありました。
乳児早期の細菌性髄膜炎患者が激減したのです。
最近の研修医は診療経験がないと聞いています。

20年以上前、市中病院小児科の病棟では冬になると、
ロタウイルス胃腸炎の大部屋と、
RSウイルス気管支炎の大部屋が、
自然発生的にできるのが通例でした。

RSウイルスは乳児が感染すると、
こじれて気管支炎になりやすく、
ゼーゼー苦しそうになります。
とくに生後3ヶ月未満の赤ちゃんは重症化して顔色が悪くなり、
おっぱい、ミルクも飲めなくなり入院することも稀ではありません。

しかし従来、RSウイルスに特効薬はなく、
小児科医は対症療法で本人が自力で危機を脱するのを見守るしかありませんでした。

★ 小児のRSウイルス感染症について知りたい方はこちらをご覧ください。

近年、ロタウイルスワクチンが登場してから、
ロタウイルス胃腸炎による入院数は激減したと耳にします。

正式には「組み換え2価融合前F蛋白質抗原含有RSV(RSVpreF)ワクチン」だそうです。
このワクチンの特徴は、
乳児自身に接種するのではなく、
妊娠しているお母さんに接種(※)して抗体を作り、
それが胎盤を通して胎児にもたらされ、
出生後に乳児に効果を発揮するという画期的システムです。

※ 妊娠24〜36週の妊婦に1回接種(筋肉注射)

本人以外にワクチンを接種して予防効果を期待する方法は「コクーン戦略」と呼ばれ、
アメリカでは既に百日咳ワクチンなどで(2011年から)実施されてきました。

アブリスボ®の有効率(重症化予防率)は、
生後3ヶ月未満では約80%
生後6ヶ月未満では約70%
と良好です。


新生児用のRSウイルスワクチンを承認へ 妊婦に接種、肺炎を予防
(2023年11月28日 朝日新聞)より抜粋
 新生児や乳児の重い肺炎を防ぐための、妊婦向けのRSウイルス(RSV)ワクチンについて、厚生労働省の専門家部会は27日、国内での製造販売承認を了承した。高齢者向けワクチンは9月に承認されていたが、新生児や乳児用はなかった。
 了承されたのは、米ファイザー社のワクチン(販売名・アブリスボ筋注用)。・・・米国では8月に承認されている。・・・
 RSVワクチンは、国の予防接種基本計画の中で「開発優先度の高いワクチン」に位置づけられていたが、子ども用ワクチンがなかった。重症化リスクの高い子には予防的に抗体を投与するしかなく、ワクチン開発が待たれていた。
 今回了承されたワクチンは、妊娠24週~36週の妊婦に1回接種する。ワクチンによりできた抗体が、母体から胎児に移行することで、新生児や乳児のRSV感染症による肺炎などを予防する。
 このワクチンの国際共同臨床試験(治験)の結果では、接種した妊婦から生まれた赤ちゃんでは、重症化を予防する効果は生後3カ月以内で81・8%、同半年以内で69・4%だった。

<参考>
・アブリスボ®筋注用 [組換えRSウイルスワクチン(母子免疫)]製造販売承認を取得
・RSウイルス感染症 妊婦向けのワクチン承認へ 厚労省専門家部会

さて、上記記事にあるように、高齢者に対するRSVワクチンも少し前に認可されています。
その名は「アレックスビー」。
こちらは60歳以上が対象で、一回接種(筋肉注射)です。

RSウイルス感染症のワクチン 日本国内初承認へ 対象は60歳以上
2023年8月28日:NHK)より一部抜粋; 
・・・RSウイルス感染症のワクチンについて、厚生労働省の専門家部会は28日夜、60歳以上を対象に使用を認めることを了承しました。・・・了承されたのは、イギリスの製薬会社、グラクソ・スミスクラインが開発した、RSウイルス感染症のワクチン「アレックスビー®」です。
・・・
ワクチンの接種の対象は60歳以上です。
今後、厚生労働省の正式な承認を経て、RSウイルス感染症のワクチンの製造・販売が国内で初めてできるようになります。
製薬会社の臨床試験によりますと、ワクチンは17か国のおよそ2万5000人の60歳以上が接種を受けて、有効性が確認できたということです。
・・・
今回、ワクチンの承認申請をしている大手製薬会社、グラクソ・スミスクラインなどの研究グループの推計によりますと日本国内でRSウイルスに感染して入院する60歳以上の人は、1年間におよそ6万3000人、入院して亡くなる人はおよそ4000人とみられるということです。

<参考>
・60歳以上へのRSウイルスワクチン発売


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