小児アレルギー科医の視線

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ダニの舌下免疫療法は喘息にも有効

2016年09月14日 07時24分35秒 | アレルギー性鼻炎
 スギ花粉の舌下免疫療法に引き続き、2015年にダニ抗原による舌下免疫療法が日本で認可されました。
 しかし、適応は「ダニによるアレルギー性鼻炎」のみ。
 ダニが原因のアレルギーと言えば喘息が頭に浮かびますが、その適応はないのでガッカリした医療関係者は数知れず。

 下記のような報告が増えて、ぜひ喘息にも適応が通る時代が来て欲しい:

■ チリダニ舌下免疫療法の効果をRCTで確認 〜コントロール不良の成人喘息患者対象
2016.05.11:Medical Tribune
 ドイツ・University of RostockのJ. Christian Virchow氏らは,チリダニアレルギーに関連したコントロール不良の成人喘息患者を対象に舌下免疫療法を行う二重盲検ランダム化比較試験(RCT)の結果,舌下免疫療法群ではプラセボ群と比べ,吸入ステロイド(ICS)減量期間中の喘息増悪までの期間が延長したとJAMA(2016; 315: 1715-1725)で報告した。

◇ 喘息増悪リスクに対する影響を検討
 チリダニ(house dust mite)は,アレルゲンであるハウスダストを構成する成分の1つで,喘息患者の約半数がチリダニに感作しており,喘息症状の重症化の原因にもなっている。
 アレルギー疾患の根本治療法としてエビデンスが確立されているのは,舌下免疫療法などの減感作療法のみで,減感作が奏効すれば治療を中止しても長期の便益が期待できるチリダニに対する舌下免疫療法により,アレルギー性鼻炎が改善し,治療薬を減らせることは以前に報告されていたが,喘息増悪リスクに対する影響は不明であった
 今回の研究では,チリダニアレルギーに関連した喘息を有し,ICSやICS配合薬で症状がコントロールできず,アレルギー性鼻炎を合併する成人患者834例(平均年齢33歳,女性48%)を欧州の109施設で登録。それまでの喘息治療からICS(ブデソニド)と気管支拡張薬(サルブタモール)に切り替え,プラセボ群,舌下免疫療法6SQ-HDM群,同12SQ-HDM群にランダム化した。SQ-HDMとは,今回使用されたチリダニ舌下錠を製造・販売するALK社が製品の力価を表すために欧州連合域内で用いている単位である。舌下錠の投与は1日1回,治療期間は登録時期により7〜12カ月であった。
 試験期間後半の3カ月間にまずICSを50%減量し,その後の3カ月間は完全に中止した。主要評価項目は,ICS減量期間中に中等度〜重度の喘息増悪が発現するまでの期間とし,副次評価項目は,喘息症状の悪化,抗原特異的免疫グロブリン(Ig)G4の変化,喘息コントロール質問票と喘息QOL質問票の変化,有害事象とした。

◇ 増悪リスクが約30%相対的に減少
 834例中693例が試験を完遂した。実薬群2群ともプラセボ群と比べ中等度〜重度の喘息増悪リスクが有意に低下した〔6SQ-HDM群:ハザード比(HR)0.72,95%CI 0.52〜0.99,P=0.045,12SQ-HDM群:同0.69,0.50〜0.96,P=0.03,図〕。プラセボ群と比べた実薬群2群における初回増悪の絶対リスク差は,6SQ-HDM群が0.09(95%CI 0.01〜0.15),12SQ-HDM群が0.10(同0.02〜0.16)であった。実薬群2群の間で絶対リスクに有意差は認められなかった。(JAMA 2016; 315: 1715-1725)
 喘息症状の悪化を伴う増悪のリスクは,プラセボ群と比べて6SQ-HDM群でHR 0.72(95%CI 0.49〜1.02,P=0.11)と有意差には至らなかったが,12SQ-HDM群ではHR 0.64(同0.42〜0.96,P=0.03)と有意に低下した。抗原特異的IgG4は,実薬群2群ではプラセボ群と比べて有意に上昇した。一方,喘息コントロール質問票と喘息QOL質問票の変化は,いずれもプラセボ群と実薬群2群で有意差は認められなかった。
 全身アレルギー反応の報告はなく,最も多い有害事象は軽度〜中等度の口内掻痒(6SQ-HDM群13%,12SQ-HDM群20%,プラセボ群3%)で,その他に口内浮腫,咽喉の炎症が見られた。

◇ 減感作療法に新たな可能性
 ICSでコントロール不良のチリダニアレルギーに関連した成人喘息患者に対して,舌下免疫療法が喘息増悪リスクの低下に有用であることをRCTで示したのは今回の研究が初めてで,Virchow氏らは「長期の有効性と安全性を評価するためにさらなる研究が必要である」と述べている。
 米・Johns Hopkins UniversityのRobert A. Wood氏は,同誌の付随論評(2016; 315: 1711-1712)で今回の試験について「重要な患者集団に焦点を当て,極めて妥当な評価項目を用いており,この分野における貴重な貢献である」と評価。減感作療法には依然改良の余地が多くあるため,こうした研究を継続し,個々の患者ごとに最適化された減感作療法を確立していく必要があると指摘している。

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