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小児アレルギー科医の視線

医療・医学関連本の感想やネット情報を書き留めました(本棚2)。

ピーナッツを食べさせるとピーナッツアレルギー予防になる?

2015年04月14日 18時28分46秒 | 食物アレルギー
 時代は変わりました。
 食物アレルギーの予防は「食べさせないこと」ではなく「食べさせること」へ180度方向転換したのです。

 先日のNHKスペシャル「新アレルギー治療~鍵を握る免疫細胞~」にも登場した医師(King's College London教授のGideon Lack氏)の論文を扱った記事です;

■ 乳幼児期の抗原摂取でピーナツアレルギー発症リスクが低下~英国のランダム化比較試験で明らかに
(2015.2.24:MTPro)
 乳幼児の食事からピーナツなどのアレルギー性食品を除去することは,臨床ガイドラインや小児科医,アレルギー専門医により,長年の間推奨されてきたが,こうした除去食によるアレルギー予防効果が認められないことが徐々に報告されるようになり,英米のガイドラインでは除去食に関する推奨は2008年に削除されている。英・King's College London教授のGideon Lack氏らは,乳幼児600児以上を生後11カ月以内にピーナツ蛋白質を頻繁に摂取し始める群と除去し始める群にランダム化して追跡した結果,5歳時点でのピーナツアレルギー発症率は,摂取群で有意に低かったことをN Engl J Med(2015年2月23日オンライン版)で報告した。アレルギー性食品の摂取がアレルギー予防に有効な方法であることを示したランダム化比較試験(RCT)は今回のものが初めてである。

◇増えるピーナツアレルギー,英米では過去10年で2倍に
 食物アレルギーの発症頻度は,過去数十年間に上昇している。特に,英国と北米におけるピーナツアレルギーの発症頻度は過去10年間に2倍以上になっており,英国では就学年齢の小児の50人に1人で見られ,西欧や米国,オーストラリアでも小児人口の1~3%を占めている。さらに,アフリカやアジア諸国においてもピーナツは主要なアレルギー食品となっている。ピーナツアレルギーは幼児期に発症し,成長して治癒することはまれである。現在のところ治癒的治療法はなく,患者や家族にとっては大きな負担で,QOL低下の原因となっている。
 今回報告されたLEAP※試験では,英国のEvelina London Children's Hospitalにおいて,生後4~11カ月の児で,重度の湿疹か卵アレルギーの既往があることからピーナツアレルギーが高リスクと考えられる640児を登録し,ピーナツ摂取群とピーナツ除去群にランダム化割り付けし,5歳時点でのアレルギー発症率を比較した。ピーナツ摂取群には週3回以上ピーナツ蛋白質を含む食品を摂取させ,ピーナツ除去群には5歳になるまでピーナツを含む食品を摂取させなかった。アドヒアランスの評価は,食品摂取頻度に関する定期的な質問表調査により行い,さらに一部の家庭ではハウスダスト中に検出されるピーナツ蛋白質の量を測定した。

◇摂取群でリスクが70~80%低下
 Intention to treat(ITT)解析において,ランダム化前の皮膚プリックテスト(SPT)で陰性だった集団(530児)では,5歳時点のピーナツアレルギー発症率は,ピーナツ除去群が13.7%であったのに対し,ピーナツ摂取群では1.9%であった(P<0.001)。SPT陽性であった集団(98児)でも結果は同等で,ピーナツ除去群とピーナツ摂取群のアレルギー発症率は,それぞれ35.3%と10.6%(P=0.004)であった。
 重篤な有害事象の発生頻度にピーナツ摂取群とピーナツ除去群で差はなかった。ピーナツ特異的IgG4抗体の上昇は主にピーナツ摂取群で認められ,ピーナツ特異的IgE抗体の上昇が認められた児はピーナツ除去群に多かったSPTにおける膨疹径の大きさとピーナツ特異的IgG4/IgE比低値は,ともにピーナツアレルギーと関連していた。ランダム化された児の98.4%が最終評価まで試験を継続した。このことは,ピーナツ含有食品の早期導入は安全かつ忍容性が高いことを示している。

◇新規推奨の前に適切な摂取量や期間を特定する必要あり
 研究責任者のLack氏は「今回の知見は,臨床上の重要な進歩であり,従来のガイドラインと対立するもので,ピーナツアレルギーの発症率を低下させるには新たなガイドラインが必要であることを示している」と指摘している。ただし,今回の試験では,スクリーニングされた児の約10%がSPTでピーナツアレルギーの強い徴候(4mm超の膨疹)を示し,ランダム化から除外されている。同氏も「こうした児における早期ピーナツ摂取の安全性と有効性は不明であり,さらなる研究が必要である。湿疹や卵アレルギーの既往がある乳幼児の親は,ピーナツ含有食品を摂取させる前に,アレルギー専門医や小児科医,かかりつけ医に相談すべきである」と述べている。
 米・University of Texas Southwestern Medical CenterのRebecca S. Gruchalla氏らは,同誌の付随論評(2015年2月23日オンライン版)で「今回のRCTは,乳幼児期のピーナツ蛋白質摂取がピーナツアレルギーのリスクを劇的に低下させることを明白に示している」と認めた上で,これを基に新規のガイドラインを作成する前に,適切なピーナツ蛋白質の摂取量・摂取頻度・摂取期間などを見極め,摂取を長期間中断した場合に保護効果が維持されるのか否かも確認する必要があると指摘している。このうち中断後の保護効果については,今回の試験の延長追跡であるLEAP-On研究で検討される予定である。
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