小児アレルギー科医の視線

医療・医学関連本の感想やネット情報を書き留めました(本棚2)。

医師からみた学校健診

2024年06月30日 11時00分15秒 | 学校健診
群馬県みなかみ町の学校健診における「下半身を診た」騒ぎは、
ほとんどが“セクハラ”という視点から報道されています。
事前の説明がなかったので、生徒が驚いて騒いだのは無理もありません。

現実は、その学校医が小児科の内分泌専門医だったので、
思春期早発症のチェック(陰毛の有無を観察)もした、
というものでした。

さて私はこのトラブルを耳にしたとき、町の乳児検診を思い出しました。
基本的に小児科医が担当しますが、小児科医の数が少ないため、
他科の医師が担当することもあるのは学校医と同じ事情です。

そして他科の医師の間では小児科医の評判が悪いのです。
「小児科医は診察に時間をかけすぎる」
「そのために私(他科医師)は倍の人数を診察する羽目になる、不公平だ!」
と。

どういうことかおわかりですね。
小児科医の診察は他科医師より丁寧なのです。
(他科医師を批判するわけではありません)

ですからみなかみ市のトラブルを耳にしたとき、私は、
「説明なしに下腹部を観察するのは一般人にとってはありえない」
という感想とともに、
「そこまで診察するなんてすごい」という印象も少し持ちました。

下記記事の中で森戸先生が発言しているように、
「プライベートゾーンというのはむやみに見せてはいけないんだ、それは嫌だって言っていいんだ」
という教育が浸透してきた影響を指摘しています。
私はそれとともに、
「自分の健康を守るために、時にはプライベートゾーンを見せて診察を受けることも必要だ」
という教育も必要だと思います。

この辺をあやふやにしてきたために、
社会人女性の内科診察でも「下着を取る取らない問題」が延々と続き、
日本では子宮頚がんワクチン受診率が低いまま、
という弊害が発生し続けているのでしょう。


■ 小児科医が伝える「学校健診」の現状 小学校との打ち合わせの機会「ないことが多い」【学校健診問題を考える(下)医師の見方】
2024/6/26:Jcastニュース)より抜粋(下線は私が引きました);

 今、小学校における健康診断のあり方が問われている。 
 群馬県みなかみ町の小学校健診で、校医が児童の下着の中をのぞき下半身を視診したという報道をはじめ、脱衣のままの健診や下腹部の診察が問題となった。 
 児童が不安や不快を感じることなく、適切な健診を行うためには、何が必要なのだろうか。 
 2回シリーズの第2回では、小児科医に学校側と校医側の双方に求められる対応について、見解を聞いた。 

▶ 医師の専門分野「特に念入りに」は必要なし 
 どうかん山こどもクリニックの小児科医・森戸やすみさんはJ-CASTニュースの取材に、「配慮のない健診は昔の方が多かったと思う」としつつも、現在は「人権意識も高まり、子どもへの配慮が必要だというのが一般的に浸透してきたにも関わらず、昔ながらのやり方をする人もいます」と問題点を挙げる。 
 みなかみ町の校医は、自身の専門分野について診察したと話しているというが、森戸さんは、学校健診は「全国どこで受けても同じようなスクリーニングの健診が受けられるということが前提」だと説明する。 
 スクリーニングとは病気の可能性がないかどうかをチェックするもので、特定の病気を見つけるための「検診」ではない。こうした目的は、校医側も学校側も理解しておく必要がある。 「たとえば学校医が自分は心臓や呼吸器の専門家だからといって、心臓や肺の健診を特に念入りにやりますといったことは求められていません。事前に保護者と児童に提案があり『せっかくの機会なので、うちの子はそれも診てください』ということがあれば問題にならなかったと思います。ですが、前もって説明がないまま『自分は専門家なので診た』というのはよくなかったと思います」 
 学校健診には文部科学省と日本小児保健学会が作ったマニュアルがあり、「本来は健診の要請を受けた医師会や団体、あるいは医師個人が周知しておくべき」だとした。

▶ 学校側には児童や保護者への説明が求められる
 森戸さんは、学校側には打ち合わせの機会を設けてほしいと話す。 
 森戸さんによると、学校健診の際、「プライバシーを守るための衝立はこんな感じでいいですかとか、同性の先生が立ち会いますとか、そういうことを打ち合わせする機会がないことが多い」という。 
 健診の際以外にも、健診を受けられなかった児童や不登校児への対応に関する打ち合わせは事前にない、と話す。 
 健診は学校側に定められた義務。そのため、保護者や児童に対する「(学校健診を)どのように行うか、いつやるか、その目的は何か、配慮の方法といった説明は、学校側が主体となってしてほしいなと思います」(森戸さん)。 
 また、学校側が健診の目的や主体、文科省のマニュアルについて重視していない場合もある。それだけに、個々の学校ではなく文科省や自治体による保護者への説明や周知があってもよいのではないか、と提案する。

脱衣自体が問題になることは「正しい診断に結びつかない
 児童生徒への心情やプライバシーの配慮は当然必要だが、脱衣自体が問題になることは、正しい診察につながらないのではないか。森戸さんは、次のように見解を述べた。 「学校健診では、何百人、少なくとも何十人を一度に短時間で見なければいけません。その時に情報量が多くないと、正しい診断に結びつかないことがあります。たとえば背骨に側弯がないかどうかということは、着衣のままでは見落としがありえます」 
 また、アトピー性皮膚炎の悪化や傷、皮下出血から医療の忌避や虐待の発見につながることも少なくない。森戸さん自身も、子どもの身体に不自然なあざを発見し、虐待の発見につながった経験があると話した。 「なるべく脱衣でいることが望ましいですが、当然、脱衣のまま待っている必要はありません。すぐ脱げるような状態で、診察自体はプライバシーが保たれる状況で、同性の第三者の同席のもと行われるのがよいと思います」

▶ 学校健診をなくすことは「子どもにとってデメリットの方が大きい」
 SNSで一部上がっている学校健診は不要との意見に対して、森戸さんは「(学校健診に)代わるいい方法があるならやめてもいいと思うんですけど」としつつ、次のように話す。 「同じ年齢の子が大勢集まっているところで、一度にスクリーニングとして診察をするというのは大変効率がよく、保護者は医療機関に連れて行かずにすみ、子どもにとっても健康の問題が早期発見できてとてもいい制度だと思います。だからこそ、明治時代からずっと続いてきているので」 
 さらに、こう続ける。 「以前には医師による盗撮被害もあり、そういった問題のある医師がいるから、配慮のない学校があるから感情的にやめてしまおうというのでは、子どもにとってデメリットの方が大きいです。うまく運用する方法見つけるのが大人の役目ではないかなと思います」 
 今まで大きな問題として扱われてこなかった学校健診での配慮の問題。なぜ今、表面化してきているのか。森戸さんはそれはいい傾向だと見ている。 「子ども自身も、プライベートゾーンというのはむやみに見せてはいけないんだ、それは嫌だって言っていいんだ、疑問を呈していいんだっていうことが浸透してきたからではないかと思います」


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