小児アレルギー科医の視線

医療・医学関連本の感想やネット情報を書き留めました(本棚2)。

教師から診た学校健診

2024年06月30日 10時22分37秒 | 学校健診
学校健診の方法と存在意義が揺れています。
トコトン意見を出し合って結論を引き出すよい機会だと思います。

ネット上で、2回に分けて「教師の見方」「医師の見方」を連続掲載している記事が目に留まりました。
賛否両論を公平に扱っていそうなので、紹介します。

▢ ポイント;

▶ 健診の際に学校側に必要な対応3点
(1)健康診断の方法について、学校医との打ち合わせを入念に行うこと   
(2)健康診断の方法は、児童生徒のプライバシーや心情に十分配慮した方法とすること(他の児童生徒に個人情報が漏れないように配慮すること、できるだけ着衣のまま健診を受けるなど)   
(3)健診の目的、方法を保護者と児童生徒に事前に説明すること。特にどのような疾患が見つかる可能性があるのか、をしっかりと事前に説明すること

 → 私個人(小児科医&学校医)の話になりますが、
(1)…養護教諭とメールで十分にやり取りします。
(2)…診察前後に着替えスペースがあるようなないような状態だったので「しっかり仕切りをして見えないスペースを作ってください」と要望しました。
(3)…事前に私が作成した説明プリントを、生徒家族に渡すことを提案しました。しかし、もうひとりの学校医の反対に遭い、却下され、養護教諭が発行する「保健便り」に簡易版が掲載されただけでした。

▶ 健診を担当する校医に求めたい対応3点
1つ目:打ち合わせ時に「○○のために、□□を△△のように診る」といった具合に健診内容を丁寧に説明してもらいたい。
2つ目:『どうしても、いやな検査があったら「やめてほしい」と言っていい』ということを、児童生徒本人に許可してほしい。
3つ目:健診に関する学校からの要望をできるだけ受容してほしい。

 → 私見ですが、
1つ目…事前にメールで養護教諭と綿密に連絡を取り合いました。
2つ目…「検診を受けるのは権利であって義務ではない」「イヤなら受けなくてよい」ことを事前に通知してあります。
3つ目…私の提案をことごとく拒否されましたが、私はそれを受け入れました。

皆さんに今一度考えて欲しいのですが、
「子どもの健康を守る」「子どもの人権を守る」
とはどういうことでしょうか?
「恥ずかしがる子は着衣診察」が理想ですか?

私は以下のように考えます。
・海外のように幼児期からの性教育を充実させ、デリケートゾーンは守ることを教える。
・健康・病気チェックの際は例外で、肌を見せることが必要な場合がある。
以上をないがしろにして事を進めると、トラブルが発生します。

例えば、子宮頚がんワクチン副反応問題。
この問題の根本原因を、私は「性教育の歯止め規定」だと思っています。
日本の性教育では「性交渉そのものを教えてはいけない」という暗黙のルールがあります。
つまり、性感染症予防にコンドームが有効、という授業に「性交渉」の説明はないのです。
このようなゆがんだ教育、あるいは教育不全状態のまま、
筋肉注射という未経験の痛みを伴う処置が見切り発車され、
受ける女子生徒達には不安・恐怖感がつのり、それをマスコミが増長して問題が大きくなったのです。

イギリスでは性教育がしっかりしており、
子宮頚がんワクチンがなぜ必要なのかを生徒自身に説明・納得してもらい、
接種率8割以上を維持していると聞いています。

性に関するタブーを少しずつ剥がしていく努力をしないと、
このような派生問題が今後も発生し続けることでしょう。


■ 問題相次ぐ「学校健診」 校医に求めるのは「いやな検査があったら『やめてほしい』と言っていい」許可【学校健診問題を考える(上)教師の見方】
2024/6/25:Jcastニュース)より抜粋(下線は私が引きました);
 小学校の健康診断をめぐる問題が相次いで報道されている。 
 説明のない脱衣や下腹部の診察がなされ、児童が不快感を訴えたことが発端だ。こうした不安や不快を児童が感じることなく、適切な健診を行うためには、何が必要なのだろうか。
 学校側と校医側の双方に見解を聞き、2回にわたって学校健診の現状と今後を考える。前半では、現役の小学校教師に、学校側と校医側のそれぞれにどのような対応や配慮が必要かを聞いた。 

▶ 24年5月末~6月に3件の学校健診の問題が報道 
 福岡県北九州市八幡西区の小学校で2024年6月5日に行われた健診では、医師に下腹部を触られたとして、児童が不快感を訴えたことが報じられた。医師は腸の音を聞くためにへそ周辺に聴診器を当てたと説明しており、市教育委員会は配慮が不足していた、としているという。 
 また、群馬県みなかみ町の小学校で4日に行われた健診では、医師が児童の下着の中をのぞき、下半身を視診していたことが報じられた。報道によると、医師は内分泌学を専門とし、成長を見るため必要な診察だった旨を主張。町教育委員会と学校は、文部科学省の指針に沿っていなかった、として保護者説明会で謝罪した。  さらに5月には、神奈川県横浜市内の小学校で、男性医師による上半身裸での診察があり、泣き出す女子児童もいたとするX投稿が波紋を広げた。この投稿は大きな注目を集め、メディアに取り上げられた。31日には、市立小学校339校のうち16校で上半身裸での健診をしていたと、市教育委員会が明らかにしたと報じられた。 
 もっとも、これらの問題に先立つ24年1月には、文部科学省が全国の教育委員会等へ、学校健診の際には児童のプライバシーや心情に配慮を求める通知を出している。
 それにもかかわらず、こうした問題が続出する事態となってしまった。適切な健診を行うには学校と医師はそれぞれ、どのような配慮や対応が必要なのだろうか。

▶ 学校側に必要な3つの対応
「学校における健康診断は、児童生徒の健康の保持増進を目的として行われるものです。これは、学校保健安全法によって規定され、言うまでもなく児童生徒が健康に日常生活を送ることができるように、行われるものです」 
 公立小学校の教師で、教育に関する書籍を多数執筆している山田洋一さんはJ-CASTニュースに、学校健診についてこのように説明する。 
 一方で、 「しかし、健康のためだからと言って、どんな検査の仕方であっても黙って受け入れるべきだというのは、適切ではありません」 と断言した。 
 直近で問題となった学校健診では、複数の児童が不快感を訴えたことが報じられている。山田さんは、「本来、心身の健康のために行われるべき健康診断で、心身不調の原因となるような扱いを受けるのは、不適切なことと考えられます」と述べた。 
 そのうえで山田さんは、健診の際に学校側に必要な対応として、次の3点を挙げる。
(1)健康診断の方法について、学校医との打ち合わせを入念に行うこと   
(2)健康診断の方法は、児童生徒のプライバシーや心情に十分配慮した方法とすること(他の児童生徒に個人情報が漏れないように配慮すること、できるだけ着衣のまま健診を受けるなど)   
(3)健診の目的、方法を保護者と児童生徒に事前に説明すること。特にどのような疾患が見つかる可能性があるのか、をしっかりと事前に説明すること

▶ 校医側には求めたい3つの対応
 一方で、健診を担当する校医に求めたい対応はどうか。 
 山田さんは1つ目として、打ち合わせ時に「○○のために、□□を△△のように診る」といった具合に健診内容を丁寧に説明してもらいたいと挙げた。そうすることで、養護教諭や担任教員からの児童生徒への丁寧な説明につながるという。 「通常、学校健診は短時間で行われるため、一人を診察する時間も極端に短くしなくてはなりません。もちろん、健診の目的や方法をその場で説明することは、現実的には無理です。しかし、児童生徒が安心して健診を受けられる環境づくりとして、健診の目的や方法の説明は必須です。代理的にであっても、不安なく健診をするための説明が、必要でしょう」 
 さらに、「こうした健診に対する安心、安全な環境づくりは、将来にわたって児童生徒が疾病の予防や早期発見に努める態度につながるもので、国民の健やかな営みを将来にわたって保障するものになるはずです」とも述べた。 
 2つ目は、「『どうしても、いやな検査があったら「やめてほしい」と言っていい』ということを、児童生徒本人に許可してもらえると、健診への安心度が高まります」と伝える。 「学校には、人に触られることを過度に嫌がる児童生徒、なれない環境、不安を感じる環境が極端に苦手な児童生徒などもいます。ぜひ、そうした児童への配慮にご協力を得られたらと思います」 
 3つ目は、「健診に関する学校からの要望をできるだけ受容していただけると、ありがたく思います」と挙げた。 
 なぜなら学校は医師に対し、短時間で多数の児童を診なければならない健診に来てもらうことを「たいへん申し訳なく思っています」。そのため、「児童生徒に関する個別の要望を伝えにくいと感じている場合も少なくありません」と状況を明かした。 「こうした状況を超えて、真に児童生徒の健康のための健診が具現できるように、できれば医師と学校とが対等な関係を結べるとよいと考えます」

▶ 問題の表面化の理由は「インフォームドコンセント」の考え方の浸透
 今回問題となったような健診の仕方は、今までも行われていたはずだ。実際、毎日新聞の報道によると、みなかみ町の校医は、全員ではなかったかもしれないが昨年も同様に診察したと記憶している旨話している。なぜ今、学校健診の問題が大きく取り上げられるようになったのか。 
 山田さんは、医師や看護師に十分な説明をしてもらい、納得のうえで医療行為を受ける「インフォームドコンセント」の考え方が普及してきたことが大きいと見解を示した。 「医師は、社会的信用が高く、その診療行為は聖域であり、『お任せする』のが当然のこと。疑問をもつことさえ許されない雰囲気が、日本の社会には長くありました」 
 山田さんはそう背景を説明した。インフォームドコンセントの考え方は30年ほど前から徐々に普及してきたといい、どの治療を選ぶのかといった診療の主体が患者にあるとする考え方が「当たり前」になってきた。  こうした考え方の変化が学校健診の場においても普及し、「『お医者さんのしていることだから、間違いない』という従来の考え方が払拭され、『不適切なのでは?』と疑問の声をあげやすくなった社会の状況が、その背景にあると考えられます」と山田さんはいう。 
 一方で、「コロナ禍を経験し、医療行為を含めた人との接触に関して、人々が敏感になっているということも言えるのではないでしょうか」とも述べる。 「日本の社会において、『当たり前』と考えられてきた人との距離や接し方が、見直されてきていると言えるでしょう」

▶ 学校健診は「すべての児童生徒を医療機関へとつなぐという意味」で重要
 学校健診時の問題の頻出を受け、SNSでは学校健診は不要だ、やめるべきと言った声も上がっている。  山田さんは「確かに、短時間で多くの児童生徒の健診を行うことは、その精度が十分理想的なものだとは言えないでしょう」としつつも、次のように、学校健診の必要性を説明する。 「学校における健康診断で重大な疾患が見つかる例もあること、またこれだけ多くの児童生徒に漏れなく健診をし、疾病を早期に治療する機会を得る方法が、現状では他にないと言えます」 
 さらに、家庭状況や保護者の健康に対する考え方は、児童生徒ごとに異なる。つまり、「この程度でも、病院に受診させる」という家庭と、「どうして、こんなにひどくなるまで受診させなかったのだ」という家庭とが混在するのだ。 「そうした家庭状況に関係なく、すべての児童生徒を医療機関へとつなぐという意味において、学校における健康診断は、今なお重要な機会であることは間違いがありません」 
 またもう1点、虐待を受けている児童生徒の早期発見のためにも、学校健診は必要だという。 「外傷を見つける、虐待に起因する成長不全を見逃さない重要な機会として、学校における健康診断が機能していることを忘れてはならないと思います」


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