小児科外来でも抗菌薬アレルギーに時々遭遇します。
主に、溶連菌性咽頭炎患者さんのペニシリンアレルギーですね。
溶連菌性咽頭炎はAMPC(商品名:ワイドシリン®ほか)で治療するのが原則ですが、
内服期間が10日間と長いため、感作される患者さんがいらっしゃいます。
以前、当院で治療した溶連菌性咽頭炎1000例を電子カルテで調べたところ、
約5%に発症していました。
だいたい、内服1週間頃に手足に1cm弱の丸くて赤い斑点として出てきます。
溶連菌性咽頭炎は繰り返す病気なので、
次に罹ったときは同じ薬が使えません。
その代わりに、系統違いの抗菌薬であるマクロライド系を選択すべし、
とテキストには書いてあります。
しかしこのマクロライド系抗菌薬、作用が弱いのが難点。
治療しても消しきれないことをまれに経験します。
すると行き詰まり。
次の抗菌薬に何を選択すべきか、悩んでしまうのです。
抗菌薬の主流であるセフェム系はペニシリン系のバリエーションで、
同じ骨格を持つ化学構造なので使いにくい。
とずっと思いこんでいたのですが、あるとき、
「Dr.岡田のアレルギー疾患大原則」(ケアネットDVD)
を視聴した際、
「ペニシリン系抗菌薬とセフェム系抗菌薬の交差性は約20%」
というコメントに出会いました。
これは、ペニシリンアレルギーの患者さんにセフェム系抗菌薬を使用しても、
症状が出る確率は約20%と読み替えることができます。
また、最近以下の文章に出会いました。
■ ペニシリンアレルギー患者に抗菌薬はどう選択する?
(2020/06/24 日経メディカル)より抜粋
・・・「レジデントのための感染症診療マニュアル第3版」では、ペニシリン系抗菌薬にアレルギーの既往がある患者で即時型でない場合、第3世代セファロスポリン系薬の交差反応は1%以下とされています。
また、別の報告ではペニシリン系の抗菌薬とセフェム系の抗菌薬の交差反応は、第1世代、第2世代、第3世代と世代が上がるにつれて減っていき、第1世代では5~16%、第2世代では約10%、第3世代では2~3%と言われています。
これを参考にすると、当院で採用しているメイアクト(CDTR-PI)は第3世代セフェム系抗菌薬であるので、ペニシリンアレルギー患者さんが溶連菌性咽頭炎に罹った際、情報提供しつつ処方することが可能と考えられますね。
なお、これは非即時型に限定したお話で、ショックなど即時型反応の場合は危ないので使えません。