小児アレルギー科医の視線

医療・医学関連本の感想やネット情報を書き留めました(本棚2)。

レディー・ガガも苦しむ「線維筋痛症」

2017年10月06日 06時03分37秒 | アレルギー性鼻炎
 「線維筋痛症」という疾患、医師にとっても捉えにくい概念です。
 “痛み”という症状は主観的なので科学的に評価しにくい減少だからでしょうか。

■ 「線維筋痛症」(疼痛.com
■ 「線維筋痛症とは」(線維筋痛症友の会
■ 「線維筋痛症」(リウマチ情報センター

 HPVワクチンの副反応と共通している印象もあります。
 なぜかというと、「日本線維筋痛症学会」の理事長西岡久寿樹氏は、HPVワクチンの副反応を「HANS症候群」として定義したものの、その基準があまりにも非科学的なので医学界では認められていないという現実があるからです。

 漢方治療が効果があるという話も耳にしますね。

■ レディー・ガガも苦しむ線維筋痛症の実態
提供元:HealthDay News:2017/10/06
 先日、米国の人気歌手レディー・ガガが線維筋痛症に苦しんできたことをソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)で明らかにした。線維筋痛症に伴う慢性疼痛などの症状を理由に、予定されていた欧州ツアーの延期も決定されている。今回のレディー・ガガのニュースをきっかけに、まだ十分解明されていないこの疾患への関心が高まっている。
 線維筋痛症を発症すると、身体の広い範囲で疼痛が持続し、疲労や睡眠の質の低下、記憶力や集中力の低下などがもたらされることもある。また、光や音への過敏性や不安、抑うつなどの精神症状を伴う場合もある。米ミシガン大学麻酔科学・リウマチ学・精神科学教授のDaniel Clauw氏によると、線維筋痛症でみられる疼痛や障害は、他のどの慢性疼痛を伴う疾患よりも深刻であることが多いという。
 これまで、線維筋痛症に関する研究を主導した経験を持つ米マサチューセッツ総合病院統合疼痛神経画像センターのMarco Loggia氏も、「研究を通じて出会った患者のほとんどが、この疾患によって大きな打撃を受けている。重い症状のため、仕事をしたり、通常の社会生活を送ったりすることが難しい患者もいた」と振り返る。
 線維筋痛症はまれな疾患ではない。米国の非営利団体である全米線維筋痛症・慢性疼痛協会(NFMCPA)によると、この疾患の有病率は世界で4%と推定されており、米国には500万~1000万人の患者がいるという。患者の約80%が女性で、小児期に発症することもあるが、中年期に診断される場合が多い。
 その原因について、米国立関節炎・骨格筋・皮膚疾患研究所は「現時点では明確には分かっていない」としている。ただ、一部の専門家は、線維筋痛症の発症には交通事故などの外傷を伴う出来事や複数回にわたる負傷の経験のほか、中枢神経系の障害、遺伝的素因などが関与しているのではないかとの見方を示している。
 さらにLoggia氏らによると、米国とドイツの研究グループが最近、一部の線維筋痛症患者では末梢の小径神経線維に異常があることが示唆されたと報告している。また同氏の研究グループも、線維筋痛症患者の多くが苦しんでいる慢性背部痛には脳の炎症が関与している可能性があることを突き止めたという。
 ただ、原因がはっきりとしていないために「線維筋痛症の痛みは気のせいだ」と信じている人も多いのが現状だ。Loggia氏は「以前から線維筋痛症患者は疑念や偏見の目を向けられがちで、患者のケアに当たるべき立場にある医師でさえ、そのような態度をとる者がいた。現在も『線維筋痛症患者の痛みは気のせいで、本当の痛みではない』とみなされることは珍しくない」と指摘する。しかし、MRIなどの脳画像検査による研究では、線維筋痛症患者が経験する痛みへの過敏性は実際に存在することが確認されているという。
 線維筋痛症に対する治療法としては、疼痛コントロールを目的にオピオイドによる治療やヨガ、認知行動療法(CBT)などが行われているが、いずれも治癒を導くことはほとんどない。Clauw氏は「線維筋痛症患者が今、一番必要としているのは、より効果的な治療法だ」と強調する。
 今回のレディー・ガガのニュースを受け、Loggia氏は「線維筋痛症患者の多くは診断されないまま症状に苦しんでいるが、レディー・ガガの場合、若いうちに診断されたのは幸いだった。彼女はレディー・ガガだから線維筋痛症であることを早期に認識してもらえ、より適切な治療を受けることができた。しかし、彼女とは置かれた環境が異なる多くの患者にとっては、診察に応じ、真剣に対処してくれる医師を見つけることさえ困難なのが現状だろう」とコメントしている。


<追記>

■ ガガさんの「線維筋痛症」 女性に多く完璧主義は注意
2017/10/20:日経Gooday
 「骨が裂けるような」痛みが特徴の線維筋痛症。実は日本でも潜在的に200万人の患者がいるといわれています
 米国の人気歌手、レディー・ガガさんが活動休止を発表し、「線維筋痛症と闘病中だ」と明かした。日本でも潜在的に200万人の患者がいるといわれながら、あまり知られていない線維筋痛症とは、一体どんな病気なのだろうか? 国際医療福祉大学教授で山王病院心療内科部長の村上正人さんに聞いた。

「骨が裂けるような」激しい全身の痛みが特徴
 線維筋痛症とは、全身の激しい痛みが特徴的な病気だ。痛みは急に発症し、慢性化する。患者の痛みの訴えは「筋肉がひきつれるような」「骨が裂けるような」「全身をガラスの破片が巡っているような」などと表現され、重症な場合には、「痛みで失神してしまう」「布団が背中に当たるのが痛くて、1年も横になって眠れていない」「ものを飲み込むと喉が痛くて食事がとれない」といったケースもあるそうだ。
 「筋肉は骨膜という骨の膜についていて、関節周辺の筋肉が収縮するたびに骨膜を引っ張るため、骨が裂けるような激しい痛みを感じるのです。健康な人でも似たような痛みを一時的に経験することは珍しくありませんが、それが何年も回復せず、全身に起こるのですから、非常につらい病気です」(村上さん)
 骨格筋だけでなく、内臓なども含めて、深いレベルまで全身の筋肉がけいれんのようにひきつれるため、胃腸障害や月経困難症、排尿障害、血流不全など全身に不調をきたす。痛み以外にも、慢性的な疲労感、眠れない、しびれ、こわばり、口の渇き、頭痛、光がまぶしいなど多彩な症状が見られ、うつ病、強迫性障害など精神疾患の合併も少なくない。
 男女比は1対5~8、年齢では30~50代と中高年の女性に多く、国内でも潜在的に200万人の患者がいると推定されているが、そのうち医療機関にかかっているのは5万人程度だという。治療を受けている人が少ない背景には、セルフケアでなんとか付き合っている軽症の人も多いことや、多くの科に関わる多彩な症状が表れることからなかなか診断にたどりつかない、治療がうまくいかずに病院から遠ざかる人もいる、といったことが考えられる。
 他の病気との鑑別という意味でも、各科に横断的な知識を踏まえて総合的な診断が求められる。一般的に次のような米国リウマチ学会の線維筋痛症分類基準(1990年)に沿って診断されるが、2010年にも新しい予備診断基準が発表され両方の基準を参考に診断されている。

・広範囲の痛みが3カ月以上続く
・18カ所の圧痛点(図)を指で押すと11カ所以上で激痛が走る
・原因となるほかの病気が認められない

(c)alila-123rf

■痛み信号を増幅する脳のシステム異常
 線維筋痛症の原因はまだはっきりとは解明されていないが、脳の痛みを感じるシステムに何らかの異常があるのではないかと考えられている。
 「痛みに対する脳の過敏性があり、その背景に中枢神経系の神経細胞の炎症があるのではないかという説が有力です」(村上さん)
 線維筋痛症の患者には、アロデニアと呼ばれる、触覚が痛覚に変わる現象が見られることがあり、ちょっとした接触、服のこすれ、気圧や気温、音や光などの外的刺激を激痛と感じてしまう。このように痛み刺激に過敏になるだけでなく、通常では局所に限定されるはずの痛みが全身に広がる。ということは、「痛み刺激を繰り返し体験することで脳の中枢の炎症が慢性化して、入力された痛みの信号を増幅させるような指令が出されている可能性がある」と村上さんは言う。

■発症や予後には心のクセが関係する?
 線維筋痛症の発症には、2つの段階があると考えられている。多くの場合、最初の段階として、何らかの身体的外傷(手術、事故などの外傷、オーバーワークによる肉体的負荷など)や心的外傷(虐待やショックな体験によるトラウマなど)を負っているという。
 2つ目の段階が、過去の外傷からある程度経過した後に、新たな外傷やストレスが加わることだ。それをきっかけに発症することが多く、背景には、自分の体に負荷をかけ続ける行動パターンになりやすい「過剰な几帳面さ」「強迫性」「完璧性」といった気質が関係しているという。
 「だからこの病気は活動性の低い人には起こりません。患者には共通して、厳しい世界で完全性を求めたり、運動などでも徹底的に鍛えるといった、完璧主義で活動性が高い一面があります」(村上さん)

■心の持ち方を含めた多面的アプローチが重要
 治療は対症療法で、まずは症状に合わせた薬によって痛みを和らげる。神経障害性疼痛(とうつう)緩和薬(プレガバリン)、抗うつ薬、抗けいれん薬などが使われる。
 「一時期に比べれば、何年も病名が分からず苦しむというケースは減って、早めに治療が受けられるようになってきました。しかし、薬物療法の効果は病気全体の6割くらいまで。残りの4割を埋めるには生活全般にわたる改善が関わってきます」(村上さん)
 薬以外には、運動療法や認知行動療法、リハビリテーションなどが行われる。個人個人に合わせた多面的なアプローチが必要だ。
 「運動が効果的と聞くと、休まず徹底的に頑張ってしまう人もいます。症状や背景を総合的に理解して、根本的な心の持ち方から見直していくことが大切です」(村上さん)
 先述のように、痛みの刺激が慢性的に繰り返し脳に伝達されることで、中枢の神経細胞に炎症が起きると考えると、一度痛みが出たときに放置せずしっかりケアをして、悪循環を断ち切ることが大切になる。ケアをしないまま無理に負荷をかけ続けてしまうと、脳に痛み刺激を与え続けることになり、発症につながる。
 ガガさんは病気の公表に当たって「病気の啓発と患者同士の出会いにつながることを願っている」と述べたという。自分はこの病気ではないから関係ないと思っているあなたの中にも、頑張り過ぎる一面や、「完璧にしなければ」「もっと努力しなくちゃ」といった行動上の特性はないだろうか。
 線維筋痛症という病気から、オーバーワーク、オーバートレーニングの危険性を学ぶことができる。ときには立ち止まって自分をいたわることも大切なことだ。特に長引く痛みがあったら要注意。痛みが3カ月以上続く、徐々に強くなる、全身に広がる、一般的な鎮痛薬が効かない、といったことがあったら、早めに受診しよう。線維筋痛症を診療している医師は日本線維筋痛症学会のホームページから検索できる。



■ 線維筋痛症GLが4年ぶりに改訂 〜新たに抗うつ薬(SNRI)、弱オピオイド薬を強く推奨
2017年10月26日:メディカル・トリビューン
 線維筋痛症診療ガイドライン(GL)が4年ぶりに改訂、2017年版が刊行された。2014年に日本医療機能評価機構の医療情報サービス(Minds)が国際的な動向に歩調を合わせた形でGLの定義を変更したことや、臨床で使用できる薬剤が拡大したことなどに対応した。
・新たな治療薬としてセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)デュロキセチン、三環系抗うつ薬アミトリプチリンが最も推奨度の高い「実施する」とされた。
・弱オピオイド薬のトラマドール、トラマドール-アセトアミノフェン配合薬も「実施する」と記載された
ーことなどが主な変更点だ。

アルゴリズムにはEULAR2016を採用
 第9回日本線維筋痛症学会(10月14~15日)で桑名市総合医療センター(三重県)リウマチ膠原病内科の松本美富士氏が「線維筋痛症診療ガイドライン2017」の内容を紹介した。同GLは、MindsのGL作成の手引きに従いGRADE Systemを用い、AGREEⅡによる評価を考慮して国際標準に耐えうるものとして作成された。同学会が日本医療研究開発機構(AMED)研究班と合同で作業を進め、市民・患者代表も参加した。47のクリニカル・クエスチョン(CQ)の他に、疾患の解説とトピックス、診療上必要な資料集も盛り込み、線維筋痛症の教科書として活用できるようにしてある。疾患概念そのものの理解が必ずしも進んでいない現状を配慮し、GLのCQとしては珍しく疾患概念が掲載された。
 診断には、米国リウマチ学会(ACR)の分類基準(1990年)、ACRの診断予備基準(2010年)、Wolfeらの改訂基準(2011年および2016年)が挙げられ、日本人での有用度も高いとされた。新しい基準ほど簡便で使いやすいものの、疼痛よりも随伴症状に重点を置いてあるため、診断には慢性疼痛や精神疾患との鑑別が必要になることに注意が必要だという。
 診断と治療のアルゴリズムに関しては欧州リウマチ学会(EULAR)が2016年に公表したGLのものを採用。治療に関してはまず、患者・家族への教育、情報提供を行い効果が見られなかったときに物理療法を行い、さらに効果不十分なときには個別化治療を追加する流れになっている(図)。

図. 診断と治療のアルゴリズム
1710067_fig1.jpg
(EULARガイドライン2016)

GL普及で均てん化した地域完結型医療の実現に
 疼痛に対する薬物療法では、前回GLと同様、プレガバリンが「実施する」、ガバペンチンは2番目に高い推奨度の「提案する」とされた。抗うつ薬では、アミトリプチリン、デュロキセチンが新たに「実施する」とされたが、ミルナシプランはエビデンスの強さが最も高い「A」だが、わが国では保険適応がないため「提案する」とされた(表)。

表. 薬物療法、非薬物療法のエビデンスと推奨度

薬物療法
1710067_tab1.jpg

非薬物療法
1710067_tab2.jpg
(図、表とも松本美富士氏提供)

 非薬物療法で「実施する」とされたのは、認知行動療法と運動療法。「提案する」には、鍼灸と「WAON(和温)療法」が含まれた。
 線維筋痛症を診療できる医療機関はまだ限定的だが、GLを作成した日本線維筋痛症学会は200万人とされる患者に対して、均てん化した地域完結型医療を実現するために同GLの普及を図りたいとしている。
 松本氏は「数年ごとの改訂のために常設委員会の設置も検討していく。また、GL作成メンバーが固定化してきているので、若い学会員の参加を促していきたい」と今後の課題を挙げた。
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モンテルカスト(シングレア®、キプレス®)の副作用情報

2017年09月28日 08時05分17秒 | アレルギー性鼻炎
 モンテルカストは小児喘息で頻用する薬剤です。
 今回、精神神経系の副作用情報記事に目がとまりました。

■ モンテルカストは精神神経系の副作用と関係している
Univadis Medical News2017.09.22:Smartmed/MSD
 『 Pharmacology Research & Perspectives 』に発表された新しい研究において、モンテルカストは精神神経反応と関係していた。そのような反応には例えば、うつ病攻撃性などがあり、子供では特に悪夢が頻繁に生じていた。
 この後ろ向き研究では、小児と成人におけるモンテルカストに関連するすべての医薬品副作用(ADR)を考察した。このADRのデータは2016年までオランダ薬剤監視センター「Lareb」と、世界保健機関(WHO)の国際データベース「VigiBase」に報告されたものであった。
 オランダのデータベースでは、モンテルカスト投与後に331件のADRが報告されていた。全報告例のうち45件(13.6%)が重篤なADRとして報告された。ADRで入院した事例は26例あった。最も頻繁に報告された有害事象は頭痛であり、報告オッズ比(ROR)は2.26であった。
 VigiBaseでは、モンテルカスト関連のADRが17723件報告されていた。Vigibase集団全体で最も頻繁に報告されたのはうつ病であり、RORは6.93であった。子供において最も多く報告された副作用は攻撃性であった(RORは29.77)。Vigibase集団全体でRORが最も高かったのは、攻撃性(24.99)、自殺念慮(20.4)、異常行動(34.05)、悪夢(22.46)であった。
 オランダのデータベースではアレルギー性肉芽腫性血管炎の患者が8人報告され、VigiBaseでは同患者が563人報告されたが、因果関係は確立されなかった。

<参照>
・Haarman MG, van Hunsel F, de Vries TW. Adverse drug reactions of montelukast in children and adults. Pharmacology Research & Perspectives. Published online 20 September 2017. DOI: 10.1002/prp2.34.


 当院は小児科・アレルギー科なので幼児の喘息患者さんもたくさん通院しており、モンテルカストを処方する機会も少なくありません。
 今のところ、「うつ」「攻撃性」「悪夢」といった訴えは目立ちませんが、今後はより注意して患者さんを診療したいと思います。
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インフルエンザワクチン、遺伝子組換え vs.不活化

2017年09月23日 15時25分23秒 | アレルギー性鼻炎
 インフルエンザワクチンの効果は他のワクチンと比べて低いことは周知の事実です。
 いろいろな理由が挙げられますが、それはさておき。

 研究者もウイルスに負けじといろいろな方法で有効なワクチンを開発中です。
 その中で、近年「遺伝子組み換ワクチン」が注目されています。
 現行の鶏卵培養ワクチンと比較したメリットは、

・卵の蛋白成分、ホルムアルデヒド、抗菌薬、防腐剤を含まないワクチンを製造することができる。
・鶏卵培養法では6ヵ月間かかる製造期間が、6~8週間に短縮できる。
・鶏卵培養で製造されるワクチンでは、製造過程でインフルエンザの抗原性に関わるヘマグルチニン(HI)をコードする遺伝子の変異が生じることでワクチンの有効性が低下する可能性が指摘されており、遺伝子組み換えワクチンの有効性が勝る。

 等々。
 関連記事を日経メディカルから;

■ インフルエンザワクチン、遺伝子組換え vs.不活化/NEJM
ケアネット:2017/07/12
 従来の不活化インフルエンザワクチンと比べて、遺伝子組み換えインフルエンザワクチンが優れた防御能を示したことが、米国・Protein Sciences社のLisa M. Dunkle氏らが行った第III-IV相の多施設共同無作為化二重盲検試験の結果、報告された。検討されたのは遺伝子組み換え4価インフルエンザワクチン(RIV4)で、試験は2014~15年のインフルエンザシーズンに、50歳以上の成人を対象に実施された。標準用量の鶏卵培養4価不活化インフルエンザワクチン(IIV4)接種群よりも、確認されたインフルエンザ様疾患の確率が30%低かったという。なお、同時期のインフルエンザはA/H3N2型が主流で、ワクチン株の抗原性との不一致により多くの認可ワクチンについて効果の低下がみられたシーズンであった。NEJM誌2017年6月22日号掲載の報告。

50歳以上の成人9,003例を対象に無作為化試験
 試験は2014年10月22日~12月22日に、50歳以上の成人9,003例を登録して行われた。被験者を、RIV4(遺伝子組み換え赤血球凝集素[HA]量45μg/株、蛋白量180μg/接種)またはIIV4(同15μg、60μg)を接種する群に無作為に割り付け、ワクチン接種後14日以降に、発症がRT-PCR法で確認されたインフルエンザ様疾患(事前にプロトコルで規定されたあらゆるインフルエンザ株によるもの)に対する相対的なワクチンの有効性を比較した。被験者にインフルエンザ様疾患の症状がみられた場合、鼻咽頭スワブで検体を採取し、RT-PCRと培養検査でインフルエンザ感染の確定診断を行った。
 主要エンドポイントは、ワクチン接種後14日~インフルエンザシーズン終了(2015年5月22日)に、RT-PCRで確認・プロトコルに規定されていたインフルエンザ様疾患とした。

遺伝子組み換えのほうが、確認されたインフルエンザ様疾患の確率が30%低い
 9,003例のうち8,855例(98.4%)が試験ワクチンの接種を受け、有効性に関する追跡を受けた(修正intention-to-treat集団)。ワクチン接種後のデータを得られて安全性解析に包含されたのは8,672例(96.8%)。RIV4群とIIV4群のベースラインの特性は両群で類似しており、平均年齢は両群とも63歳、男性の比率はそれぞれ41.5%、41.6%であった。
 鼻咽頭スワブで検体を採取したのは、RIV4群809/4,328例(18.7%)、IIV4群822/4,344例(18.9%)。検出されたインフルエンザ株は234/1,631検体(14.3%)で、A/H3N2型が最も多く181例、B型が47例、A亜型不明が6例であった。
 per-protocol解析の追跡を完了した8,604例(95.6%、修正per-protocol集団)において、RT-PCRで確認されたインフルエンザ発病率は、RIV4群2.2%(96/4,303例)、IIV4群3.2%(138/4,301例)であり、インフルエンザ様疾患が確認された確率は、RIV4群がIIV4群よりも30%低かった(95%信頼区間[CI]:10~47、p=0.006)。
 修正intention-to-treat集団で行った有効性の事後解析では、RIV4群の発病率2.2%(96/4,427例)およびIIV4群の発病率3.1%(138/4,428例)は、相対的なワクチンの有効性が基本的に同一の30%(95%CI:10~47)であることが示された。なお、RIV4のIIV4に対する非劣性に関する主要解析、および事前規定の探索的優越性の基準は満たされたことが確認されている。
 RT-PCRで確認されたインフルエンザ様疾患の累積発生率は、インフルエンザシーズン中、RIV4がIIV4よりも有意に効果があることを示した(ハザード比[HR]:0.69、95%CI:0.53~0.90、p=0.006)。各インフルエンザ株についての相対的なワクチンの有効性に関する事後解析では、RIV4はA型に対しては36%(95%CI:14~53)の有効性を示したが、B型に対しては他のワクチンと有効性に違いがなかった。
 安全性プロファイルについては、両ワクチンともに類似していた。


<原著論文>
Dunkle LM, et al. N Engl J Med. 2017;376:2427-2436.

 ちょっと専門用語が並ぶ読みにくい記事ですね。
 この記事には専門家の解説・コメントが添えられていました。

■ 遺伝子組み換えインフルエンザワクチンの有効性(解説:小金丸 博 氏)
臨床研究適正評価教育機構:2017/08/17
コメンテーター:小金丸 博(東京都健康長寿医療センター感染症内科医長)

 インフルエンザの流行の抑制を期待されているワクチンの1つが、遺伝子組み換えワクチンである。遺伝子組み換え法は、ベクターを用いてウイルスの遺伝子を特殊な細胞に挿入し、ウイルスの抗原性に関わる蛋白を細胞に作らせ精製する方法である。この方法では、卵の蛋白成分、ホルムアルデヒド、抗菌薬、防腐剤を含まないワクチンを製造することができる。また、鶏卵培養法では6ヵ月間かかる製造期間が、6~8週間に短縮できることが大きな利点となる。
 本研究は、2014~15シーズンに行われた、遺伝子組み換え4価インフルエンザワクチン(RIV4)と鶏卵培養4価不活化インフルエンザワクチン(IIV4)の有効性を比較した第III-IV相のランダム化二重盲検実薬対照試験である。50歳以上の成人を対象とし、急性疾患に罹患している患者や免疫抑制治療中の患者は除外された。その結果、per-protocol解析を行えた8,604例において、RT-PCRで確定診断されたインフルエンザ発症率は、RIV4接種群が2.2%、IIV4接種群が3.2%であり、インフルエンザ様疾患が確認された割合はRIV4接種群がIIV4接種群より30%低かった(95%信頼区間:10~47、p=0.006)。修正intention-to-treat集団で行った有効性の事後解析でも同様の結果であった。
 本研究は、遺伝子組み換えワクチンと既存のインフルエンザワクチンである鶏卵培養不活化ワクチンを、head-to-headで臨床効果を比較したものである。鶏卵培養で製造されるワクチンでは、製造過程でインフルエンザの抗原性に関わるヘマグルチニン(HI)をコードする遺伝子の変異が生じることでワクチンの有効性が低下する可能性が指摘されており、遺伝子組み換えワクチンの有効性が勝る一因になっていると推察される。
 本研究の対象は50歳以上の成人であり、75歳以上の割合は12%程度であった。インフルエンザワクチンの恩恵を受けやすい高齢者、小児、妊婦、免疫不全者などに対する遺伝子組み換えワクチンの有効性や安全性については本試験では評価できない。
 研究が実施された2014~15シーズンは、インフルエンザA/H3N2の流行株とワクチン株の不一致がみられたシーズンであった。このようなシーズンでより有効性を示したことは評価できるが、流行株とワクチン株が一致した場合でも本試験と同様の結果が得られるのかはわからない。B型インフルエンザに対しては有効性に差がなかったという結果も興味深い。遺伝子組み換えワクチンは利点の多いワクチンでもあるため、安全性の評価も含めて、今後さらなる研究が待たれる。


 さあ、将来日本でも導入されるのでしょうか?
 この論文・記事にはアジュバントについて言及されていませんが・・・。
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「生後24時間以内にB型肝炎ワクチン接種を」米学会が声明

2017年09月23日 14時38分56秒 | アレルギー性鼻炎
 日本では健康児に対するB型肝炎ワクチンは生後2ヶ月以降に接種します。
 ただし、母親がHBウイルスキャリアの場合は最初の接種を生後12時間以内に設定されています。
 
 紹介する記事は、アメリカ小児科学会が“健康児”に対してB型肝炎ワクチン初回接種を生後24時間以内に行うべきであるという見解を出した内容です。
 その理由として「オピオイド系鎮痛薬の乱用の拡大に伴い注射器を介したB型肝炎の感染者が増加している」という日本にはないアメリカのお国事情があるようです。

■ 「生後24時間以内にB型肝炎ワクチン接種を」米学会が声明
HealthDay News:2017/09/19
 米国小児科学会(AAP)は8月28日、出生時体重が2,000g以上で健康状態に問題のない全ての新生児に対し、B型肝炎ワクチンの初回接種を生後24時間以内に行うべきとする見解を示した声明文(policy statement)を発表した。米国の一部の州では、オピオイド系鎮痛薬の乱用の拡大に伴い注射器を介したB型肝炎の感染者が増加していることから、自身が感染していることに気付いていない母親からの母子感染を確実に防ぐことが狙いだとしている。
 声明文をまとめた同学会感染症委員会のFlor Munoz氏は「B型肝炎ワクチンは乳児が生まれて初めて接種するワクチンとなる。B型肝炎ワクチンを接種しないまま産院を後にする新生児を1人も出さないことが重要。小児科医には、全ての妊婦に対して出生直後のB型肝炎ワクチン接種の必要性について説明することを勧める」と述べている。
 B型肝炎ウイルスに感染すると、肝臓が障害され、急性あるいは慢性の肝炎を発症する可能性がある。慢性化すると肝不全や肝がん、さらには死亡に至ることもある。同学会によると、母子感染を防ぐには出生直後のワクチン接種が有効だが、現在も米国では年間約1,000人もの新生児でB型肝炎ウイルス感染が確認されているという。こうした現状を踏まえ、同委員会のElizabeth Barnett氏は「このワクチンは出生の時点から乳児を重篤な感染症から守る重要なセーフティネットである」と強調している。
 また同氏によると、B型肝炎ウイルス感染者の多くで自覚症状がなく、周りから見ても普段と様子が変わらないことが多いため、感染に気付きにくい。しかし、感染している母親が乳児の世話をする過程で乳児に感染してしまう可能性もあるという。これに対し、B型肝炎ワクチンを必要回数(3~4回)接種すれば、乳児の98%はB型肝炎ウイルスに対する免疫を獲得できると推定されている。
 同委員会のKaren Puopolo氏は「オピオイド系鎮痛薬の乱用が全米に広がる中、一部の州ではB型肝炎ウイルスの新規感染者が増えている。出生直後の乳児は特に感染しやすい状態にあるため、生後すぐに初回のワクチンを接種して最大限の防御を行う必要がある」と述べている。なお、今回の声明文ではワクチン接種のほか、妊婦に対する分娩前のB型肝炎検査の実施も推奨されている。


<原著論文>
COMMITTEE ON INFECTIOUS DISEASES, et al. Pediatrics. 2017; 140: e20171870.
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舌下免疫療法は3年以上続けましょう。

2017年07月30日 08時27分22秒 | アレルギー性鼻炎
 スギ花粉とダニに対する舌下免疫療法が登場して数年が経過しました。
 効果を検証する記事が続々報告されています。

 結論から申し上げると、

・満足度90%以上のすぐれた治療法
・2年以下では十分な効果持続が期待できないかもしれないので3年以上続けましょう

 ということ。

■ 効果的な舌下免疫療法の継続年数を検証
アレルギー性鼻炎患者へのアンケート結果から
(2017年07月19日:メディカル・トリビューン)
 スギ花粉症に対する舌下免疫療法が保険適用されてから3年、ダニアレルギー性鼻炎に対しては2年が経過し、同療法のより適切な実施に寄与するデータや知見が徐々に集まりつつある。千葉大学大学院耳鼻咽喉科・頭頸部腫瘍学の米倉修二氏は、同科で舌下免疫療法を施行した患者のアンケート結果などから、同療法の効果的な継続年数や効果持続期間などを検討し、第66回日本アレルギー学会(6月16~18日)で報告した。

◇ スギ花粉症では経年的に症状が緩和し、治療満足度も高い
 米倉氏は同科アレルギー外来で舌下免疫療法を2014年から実施したスギ花粉症症例にアンケートを行い、症状の程度や服薬状況、同療法への満足度などを集計した。なお、対象症例数は同療法の実施1年目が30例、2年目、3年目がともに24例であった。
 その結果、例年もしくは昨年(2016年)と比較した症状に関して、実施1年目は「重かった」、「なかった」との回答がともに6.7%だったが、3年目はそれぞれ0%、8.3%となり、鼻炎治療薬について「使用なし」とする回答は、1年目が23.3%、3年目が58.3%となった。
 3年目の時点で同療法が「効果的」と感じている割合は100%で、同療法を「満足」としている割合は91.7%に及んだ。
 また、同療法を2年間実施した17例についてもアンケートを行い、実施5年後にほぼ同様の項目を尋ねたところ、症状が「軽かった」が76.5%、「なかった」が5.9%で、鼻症状の治療薬および点眼薬について「使用なし」とする回答はそれぞれ35.8%、58.8%であった。
 同療法の効果が「持続している」と感じている割合は82.4%で、同療法を「受けて良かった」としている割合は88.2%に達した。
 同氏は、スギ花粉症に対する同療法の実施1年目と2年目では、2年目で総合鼻症状薬物スコアがより改善していたとする報告にも言及し、その継続的な効果を示した。
 ただし、イネ科花粉症に対して2年間舌下免疫療法を実施した後に、1年間実施しなかったところ、その時点での治療効果がプラセボ群と変わらなかったとの報告(JAMA 2017; 317: 615-625)があることにも触れ、同療法の効果を十分発揮させるには3年以上継続する必要があると論じた。

◇ ダニアレルギー性鼻炎でも継続効果を確認
 米倉氏は、ダニアレルギー性鼻炎に対する舌下免疫療法についても、海外の報告からその継続効果が確認できるとした。
 具体的には、高濃度のダニエキスを用いた舌下免疫療法を6カ月間実施すると、治療終了1年後でも同疾患の誘発症状を抑制できるとした報告(Ann Allergy Asthma Immunol 2016; 117: 690-696)や、同療法を3~5年間継続すると、治療終了後6~7年間にわたり鼻炎に関連する諸症状が低減されるとする報告(J Allergy Clin Immunol 2010; 126: 969-975)などが挙げられるという。
 以上の内容を踏まえ、同氏は「今後もより適切な治療の継続期間や終了後の効果持続期間、スギ花粉やダニといった複数のアレルゲンに対する効果や安全性を検討する必要がある。加えて、治療効果を予測、客観的に判断できる指標や、より即効性がある新規治療薬の開発も望まれる」と展望した。
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「ペニシリンアレルギー」の小児、大半は誤診や思い込み?

2017年07月17日 06時24分56秒 | アレルギー性鼻炎
 ペニシリンアレルギー。
 医師なら一度は経験していると思います。

 その昔、勤務医時代は抗生物質の点滴前には「皮内反応」というアレルギー・テストを行った時代が長く続きました。
 しかし、皮内反応陰性でもアレルギー反応の起こる可能性が指摘され、その結果「すべての症例にショックが起こりえるという体制で臨む」ことにより皮内反応は行われなくなりました。

 開業してからのペニシリンアレルギーに遭遇する機会は、溶連菌性咽頭炎での経験がメインです。
 この感染症では、ペニシリン系抗菌薬を10日間内服する治療法がスタンダート。
 しかし、一定の確率で「薬疹」が出現します。
 だいたい1週間くらい内服した時点で、手足に5mm前後の紅斑がいくつも出てきます(多形滲出性紅斑型)。

 溶連菌感染の一症状としても皮疹がありますが、こちらは病初期に細かい(粟粒大と表現されます)赤い斑点が手足〜体幹、ひどいときは全身にびまん性に出現し、痒いのが特徴です。
 昔は「猩紅熱」と呼ばれました。

 当院ではAMPC(Amoxicillin)という抗菌薬10日間で治療してきました。
 薬疹の頻度を調べたことがあり、約5%。
 決して無視できない頻度であり、これを理由にセフェム系へ変更したところ、薬疹の頻度は減りました。

 さて、紹介する記事は「ペニシリンアレルギーは患者や医師の思い込みがほとんど」という内容です。


■ 「ペニシリンアレルギー」の小児、大半は誤診や思い込み?
HealthDay News:2017/07/17:ケアネット
 安価な抗菌薬であるペニシリンに対するアレルギーがあると疑われる小児の多くは、実際にはアレルギーではないことが新たな研究で明らかになった。詳細は「Pediatrics」7月3日オンライン版に掲載されている。
 今年初めには成人でも同様の研究結果が報告されており、年齢を問わず多数の患者がペニシリンの代わりに高価な広域スペクトル抗菌薬を処方されていると考えられる。しかし、広域スペクトル抗菌薬には重い副作用のリスクがあり、薬剤耐性菌の発生にもつながるほか、家計と医療システムの双方に費用負担の増大をもたらす。
 研究を実施した米ウィスコンシン医科大学小児救急専門医のDavid Vyles氏は、「多くの症例は真のアレルギーではないと考えられるが、ペニシリンアレルギーがあるとされた場合、処方できる抗菌薬の種類は大きく制限されてしまう」と述べている。なお、米疾病対策センター(CDC)によると、米国の薬局における抗菌薬の調剤件数は2014年だけで2億6600万件を超えるという。これは米国人6人につき5件以上に相当する。
 今回の研究では、小児救急を受診し、親の申告で「ペニシリンアレルギーの既往がある」とされた4~18歳の小児597人を対象として、アレルギー症状に関する質問票に記入してもらった。親の回答によると、そのうち302人は発疹、嘔吐、下痢など低リスクのペニシリンアレルギー症状を経験したことがあった。
 これらの低リスク症状がある小児100人を対象に、標準的なアレルギー検査を実施した。これは、
(1)皮膚テスト、
(2)微量のペニシリンを注射する皮内反応テスト、
(3)厳重な医学的監視下でペニシリンを服用させる「経口負荷試験」
―の3種の検査を実施するもの。その結果、全ての小児でペニシリンアレルギーの反応は認められず、ペニシリンアレルギーの記載は診療録から削除された。
 Vyles氏は、「これまでの診療でペニシリンアレルギーがあると訴える家族を多く見てきたが、本当にそうなのかと疑問を抱いてきた。また、私の子ども3人のうち2人も、誤ってペニシリンアレルギーと判定されたことがある」と話す。このような混乱が生じる理由として、ペニシリンの処方と同時期に子どもに発疹が現れることが少なくなく、その発疹がアレルギーに起因するものだと誤って判定される場合があるためだと、同氏は説明する。しかし、こうした発疹は実際には感染症に起因するものである可能性が高い。発疹を伴う感染症は多く、その治療のために抗菌薬が投与されることもある。
 本研究には関与していない小児感染症の専門家、米クリスティアナ・ケア・ヘルスシステムのStephen Eppes氏によると、一般的に10%近くの人が「自分はペニシリンアレルギーだ」と考えているが、検査をするとそのうち90%以上はアレルギーではないという。「最初から診断が誤っていたか、当初は過敏性があったものの後に消失したかのいずれかだが、前者の方が多いのではないか」と同氏は指摘する。また、ペニシリンアレルギーは遺伝するとの誤解も存在し、そのため、親がアレルギーだから子どもも同じだろうと思い込んでいる場合もある。
 今回検討した3種のアレルギー検査を実施するためには3時間ほどかかるため、受けたがらない人も多い。Vyles氏は今回の研究結果を基にして別の研究を計画しており、低リスクのペニシリンアレルギーの小児には、救急部での治療中に最初から経口負荷試験を実施できないか検討する予定だという。


<原著論文>
・Vyles D, et al. Pediatrics. 2017 Jul 3. [Epub ahead of print]

 病初期の溶連菌による皮疹と、ペニシリン系抗菌薬投与1週間後の薬疹・・・正常も異なるので私は誤診しているとは思いませんが・・・ 私が「ペニシリンアレルギー」と診断した患者さん達は、この方法で検証するとどうなるんだろう? 


<参考>
アモキシシリン(AMPC)投与後 の発疹に関する前方視的調査
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米国高齢者の各種ワクチン接種率に差

2017年07月07日 10時50分07秒 | アレルギー性鼻炎
 米国における高齢者への推奨ワクチンの接種状況の記事を紹介します。
 帯状疱疹と肺炎球菌ワクチンは高齢者特有のワクチンですが、小児期に接種して経年で免疫がなくなってしまう破傷風も推奨しているところが日本と異なります。

■ 米国高齢者の各種ワクチン接種率に差
2017年07月05日:メディカル・トリビューン
 米疾病対策センター(CDC)の国立健康統計センター(NCHS)は6月28日、高齢者のワクチン接種状況について、3分の2が帯状疱疹ワクチンを受けたことがなく、半数近くが過去10年間に破傷風ワクチンを受けていなかったとNCHS Data Brief No.281 June 2017で発表した。今回の結果をまとめたNCHSのTina Norrisらは「各種ワクチン接種率は、インフルエンザ・肺炎球菌ワクチンは比較的高いが、差が大きい」と述べた。

◇ 人種民族や年齢、収入によっても接種率に差
 2015年において、米国の65歳以上の高齢者は4,700万人を超えている。高齢者はワクチン接種で予防可能な感染症の合併リスクが増加するため、米国予防接種諮問委員会(ACIP)はインフルエンザ、肺炎球菌2回接種、帯状疱疹1回接種および10年ごとの破傷風の追加免疫を推奨している。
 65歳以上の高齢者の過去12カ月以内のインフルエンザワクチン接種率は69%、肺炎球菌ワクチンの1回以上接種率は63.6%と高かった。これらのワクチン接種率は、65~74歳に比べて地域在住の85歳以上で高かった。しかし、過去10年以内の破傷風追加免疫、過去の帯状疱疹ワクチン接種率は、85歳以上の高齢者のほうが65~74歳よりも低かった。また、過去10年間の破傷風ワクチン接種率は女性よりも男性で高かった一方、帯状疱疹ワクチン接種率は男性よりも女性で高かった。
 人種民族の違いがワクチン接種への制度的・社会的障壁の原因になることが報告されている。今回の研究でも、非ヒスパニック系白人は、ヒスパニック系および非ヒスパニック系黒人に比べて過去12カ月のインフルエンザワクチン接種率が高かった。非ヒスパニック系白人は、ヒスパニック系、非ヒスパニック系黒人・アジア人に比べて過去10年間の破傷風ワクチン接種率、肺炎球菌や帯状疱疹ワクチン接種率が低かった。非ヒスパニック系黒人は、ヒスパニック成人に比べて破傷風や帯状疱疹ワクチン接種率が低かったが、肺炎球菌接種率は高かった。
 ワクチン接種率は世帯収入と正の相関を示した。65歳以上は経済状態が良いほど、インフルエンザ、肺炎球菌、破傷風および帯状疱疹ワクチン接種率が高かった。

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小児C型肝炎、99%以上が母子感染

2017年07月06日 15時35分26秒 | アレルギー性鼻炎
 B型肝炎ではなく、あまり目にしない小児のC型肝炎の話題です。
 B型肝炎はワクチンで予防可能ですが、C型肝炎のワクチンは存在しません。

■ 小児C型肝炎、99%以上が母子感染、肝硬変や肝がんは皆無-久留米大
2017年06月05日:QLifePro
◇ 1986~2015年に出生し、研究条件を満たした348例を検討
 久留米大学は6月1日、小児のC型肝炎ウイルス(HCV)感染に関する大規模な疫学研究を行い、日本における小児HCV感染の疫学的特徴を明らかにしたと発表した。この研究は、同大医学部小児科学講座の水落建輝助教を中心とする研究グループによるもの。研究成果は「Journal of Gastroenterology」オンライン版に5月31日付けで掲載されている。
 調査の対象は、2012~2016年に全国の小児施設で登録された抗HCV抗体陽性症例。1986~2015年出生、17歳未満で診断、Follow-up期間1年以上、HIVとHBVの併存感染なし、の条件を満たす348例を抽出した。1986~1995年、1996~2005年、2006~2015年と出生年ごとに3群に分け、診断時年齢、最終受診時診断、治療、感染経路、ゲノタイプなどを比較検討。また、肝生検が実施されていた147例に関しては、肝組織像を詳細に検討したという。

◇ 2006~2015年には母子感染が99%以上に
 しかしその結果、診断時は3.1歳、最終受診時は10.9歳で、近年、診断年齢は有意に低下していることが明らかになった。最終受診時の臨床診断では、自然消失9%、キャリア34%、慢性肝炎4%、SVR40%、治療中5%、不明8%、肝硬変/肝がん0%で、治療は54%に実施されていた。感染経路は母子90%、水平1%、輸血5%、不明4%で、近年、母子感染の実数は増加していなかったが、感染経路全体に占める割合は増加し、2006~2015年は99%に達していたという。
 Genotypeは1型が42%、2型が57%、3型が1%と小児では2型が最多で、近年、1型が有意に減少し、2型が増加している傾向だった。147例に肝生検が行われ、初回実施時の年齢は8.9歳、感染経路は母子86%、輸血7%であった。肝組織の線維化は、F0が33%、F1が58%、F2が9%で、F3-4はなかった。
 これまで小児HCV感染に関する国内における大規模な疫学研究はなく、今回の研究成果は小児HCV感染の疫学的特徴を明らかにしたもの。近年の傾向は、より低年齢で診断され、母子感染が99%以上になり、Genotype 2型が最多になっていた。欧米では1~2%に認められる肝硬変は見られず、大部分の症例は肝組織で線維化がないか、軽度であったとしている。

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(医学雑誌拾い読み)「牛乳・乳製品の加工とアレルゲン性」

2017年07月03日 06時55分50秒 | アレルギー性鼻炎
日本小児難治喘息・アレルギー疾患学会誌 13-1 42-46、2015
岩本洋(森永乳業株式会社)

■ 加熱処理
流通する牛乳の大半は超高温加熱処理(UHT、120-150℃で1-3秒間)法で処理されているが、この程度の加熱では牛乳タンパク質の消化性は向上するものの、アレルゲン性は低減しない。
殺菌を超える強度の加熱、例えば調理レベルの加熱では牛乳タンパク質の低アレルゲン化は可能。

■ 発酵
ヨーグルトでは乳酸菌の消化酵素によるタンパク質の分解はほとんど期待できないが、チーズの場合、レンネット(カゼインを凝固させるために添加されるタンパク質分解酵素)やスターター乳酸菌の産生する酵素のの影響もあり、長期熟成したものではある程度分解が進むものもある。

■ 牛乳の低アレルゲン化には工業的な加水分解処理が必要
前述の「加熱処理」「発酵」などが牛乳タンパク質のアレルゲン性に及ぼす影響は一般に限定的であり、牛乳アレルギー患者の摂取を前提とした低アレルゲン化では工業的な加水分解処理が必要である。
食品産業でたんぱく質分解物を調製する場合、酸による加水分解と消化酵素による加水分解の二つの方法があるが、牛乳タンパク質のアレルゲン性を低減する目的では酵素加水分解が用いられる。通常、牛乳から調整したカゼインや乳性タンパク質濃縮物を原料とし、これに食品添加物のプロテアーゼやペプチダーゼを作用させて調製している。
十分な低アレルゲン化を行うためには分解度を高める必要があるが、その一方で分解が進むにつれてペプチドの苦味やアミノ酸臭が生じて風味が悪化する。

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アメリカの乳児突然死関連ガイドライン(2016改訂版)

2016年12月07日 07時34分35秒 | アレルギー性鼻炎
 元気な赤ちゃんが何の前触れもなく突然亡くなってしまい、原因が特定できない時に使う病名が乳児突然死症候群(SIDS)。
 2015年には日本で96人(3.8日に一人)、アメリカでは3500人(毎日9.6人)という頻度です。
 それがたまたま予防接種後に起こると・・・ワクチンの副反応との判別がたいへん困難になります。
 
 日本では乳児突然死症候群(SIDS)診断ガイドライン(2012年第2版)が作成され、厚生労働省から以下のような啓蒙がされています。

■ 乳幼児突然死症候群(SIDS)について〜睡眠中の赤ちゃんの死亡を減らしましょう
 睡眠中に赤ちゃんが死亡する原因には、乳幼児突然死症候群(SIDS:Sudden Infant Death Syndrome)という病気のほか、窒息などによる事故があります。
○ SIDSは、何の予兆や既往歴もないまま乳幼児が死に至る原因のわからない病気で、窒息などの事故とは異なります。
○ 平成27年度には96名の赤ちゃんがSIDSで亡くなっており、乳児期の死亡原因としては第3位となっています。
○ SIDSの予防方法は確立していませんが、以下の3つのポイントを守ることにより、SIDSの発症率が低くなるというデータがあります。

(1) 1歳になるまでは、寝かせる時はあおむけに寝かせましょう
 SIDSは、うつぶせ、あおむけのどちらでも発症しますが、寝かせる時にうつぶせに寝かせたときの方がSIDSの発生率が高いということが研究者の調査からわかっています。医学上の理由でうつぶせ寝を勧められている場合以外は、赤ちゃんの顔が見えるあおむけに寝かせましょう。この取組は、睡眠中の窒息事故を防ぐ上でも有効です。

(2) できるだけ母乳で育てましょう
 母乳育児が赤ちゃんにとっていろいろな点で良いことはよく知られています。母乳で育てられている赤ちゃんの方がSIDSの発生率が低いということが研究者の調査からわかっています。できるだけ母乳育児にトライしましょう。

(3) たばこをやめましょう
 たばこはSIDS発生の大きな危険因子です。妊娠中の喫煙はおなかの赤ちゃんの体重が増えにくくなりますし、呼吸中枢にも明らかによくない影響を及ぼします。妊婦自身の喫煙はもちろんのこと、妊婦や赤ちゃんのそばでの喫煙はやめましょう。これは、身近な人の理解も大切ですので、日頃から喫煙者に協力を求めましょう。


 アメリカのガイドラインが2016年に改訂されましたので、その記事を紹介します。
 欧米では従来、乳児早期から親とは別室で寝かせることが習慣と認識していましたが、このガイドラインでは「生後6ヶ月(できれば1年)までは同室で、しかし同じベッドではなくベビーベッドで寝かせましょう」と方針転換していることに気づきました。

■ 乳幼児の突然死予防ための14のこと〜米学会が安全な睡眠環境ガイドラインを5年ぶりに改訂
2016年11月27日:メディカルトリビューン
 乳幼児突然死症候群(SIDS:Sudden Infant Death Syndrome)は、これまでに目立った病気もなく、健康に過ごしていたにも関わらず、眠っている間に突然死してしまう病気。米国小児科学会(AAP)は、2011年以来、5年ぶりに乳幼児突然死症候群(SIDS)などによる睡眠中の乳児死亡を予防するための安全な睡眠環境に関するガイドライン(GL)を改訂し、 Pediatrics に掲載、自宅などでも実践できる項目を示した。

◇ 1歳まで親と同じ寝室で寝かせることを推奨
 生後2~6カ月に多く見られ、日本では2015年にSIDSで亡くなった乳児は96人で、乳児期の死亡原因として第3位を占めている。予防法は確立しておらず、厚生労働省では「1歳になるまではあお向けに寝かせる」「できるだけ母乳で育てる」「タバコをやめる」ことを発生率を下げるために出来ることとして推奨している。
 一方、AAPは、4カ月未満の乳児だけでなく4カ月以上の乳児でもベッドに毛布や枕などの柔らかい物があるとSIDSリスクが高まるとの新たなエビデンスに基づき、改訂を行った。
 米国では1990年代に展開された乳児の安全な重要性に関する啓発キャンペーンにより、SIDSや窒息事故などによって睡眠中に死亡する乳児は減少傾向にあったが、近年は年間約3,500人前後という。
 今回のGLでは、SIDSや寝具などによる窒息事故などによる1歳未満の乳児の死亡を予防するためにできる19の項目が示された。自宅などで実践できる主なものは次の14の項目。

1.必ず仰向けで寝かせる
2.固いマットレスなどの上に寝かせる
3.母乳育児が推奨される
4.少なくとも生後6カ月まで、できれば1歳を迎えるまでは親と同じ寝室に寝かせる。ただし、親と同じベッドを共有せず、ベビーベッドやバシネット(ゆりかご)などに寝かせる
5.乳児が眠る場所に柔らかい物や寝具は置かない
6.昼寝や夜の寝かしつけのときにはおしゃぶりを与える
7.ソファや椅子には決して寝かせてはならない
8.妊娠中、出産後は禁煙、乳児が受動喫煙になるような環境を避ける
9.乳児がアルコール、違法薬物にさらされないようにする
10.乳児を必要以上に暖かくしない(大人より一枚少ないのがちょうど良いとされる)、頭を覆わない
11.妊婦は出生前の定期健診をきちんと受診する
12.推奨されている全てのワクチンを接種する
13.エビデンスが不十分なため、乳児突然死の発生を避けると宣伝している市販品などを使用しない
14.乳児を毛布などで包み込むことは、推奨されない


 このうち乳児を寝かせる場所に関しては、ぬいぐるみなどの柔らかいおもちゃを置いたままにすることやベビーガード(乳児がベッドの柵にぶつかったり手足を挟んだりしないようにするために柵の内側に取り付けるパッド)、毛布、枕を使用することも否定ベビーベッドを使用する場合には、固いマットレスにぴったりとシーツを敷いた上で乳児を寝かせ、それ以外には何も使用すべきではないとしている。
 また、AAPは「親と同じ寝室にベビーベッドなどを設置して乳児を寝かせることで、SIDSリスクを最大で50%低減させられるとのエビデンスがある」と説明。さらに、親と同じ寝室に寝かせることで万が一乳児が窒息したり、どこかに挟まって動けなくなったりした場合にもすぐに救助できるとしている。
 一方、「ソファや椅子などに寝かせることは極めて危険」と強調。クッションの間に挟まって動けなくなり、窒息する危険性もあるとしている。

◇ 添い寝するならベッド上のすべての寝具を取り除いて
 ただ、昼夜を問わず授乳しなければならない母親にとっては、ソファで授乳しているうちに自身も眠気に襲われ、毎回乳児をベビーベッドなどに運ぶことが難しい場合もある。そのような時は「乳児にとって最も安全な場所は親のベッドの近くに設置された乳児のための寝具だが、授乳中に自分が眠りに落ちそうだと感じたら短時間であれば親のベッドに移動して授乳しても良い。ただし、目覚めたらすぐに乳児をベビーベッドに移すべき」と記載。その理由としてソファや椅子に乳児を寝かせるよりも親のベッドで一緒に寝る方がリスクは低いことを挙げている。
 その一方で、SIDSによる死亡例の多くは親のベッドで寝具を頭までかけた状態で発見されていることに言及し、「親のベッドで一緒に寝る場合は枕やシーツ、毛布など乳児の窒息の原因となる可能性のある全ての物を取り除く」「4カ月未満の乳児や早産児は、どんな状況でもSIDSリスクが高まることが示されているため、同じベッドで寝てはならない」ことなどが注意事項として示されている。
 その他、寝かしつけの際のおしゃぶり使用に関しては、「メカニズムは不明だが、おしゃぶりはSIDSの抑制に有効であることを示唆する2件の報告がある」と説明。ただし、「乳児がおしゃぶりに抵抗を示す場合には、無理に使用する必要はない」としている。


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