op's weblog

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レビュー:ベイビーステップ(32)

2014年10月21日 16時19分24秒 | Weblog
何だか時間ができたので、例によって遅い(サクッと)レビュー。

雑誌の方では「最後の闘い」宣言が出てしまった全日本がいよいよ開始。例によって止まるところを知らぬ充実した内容、しかもこの巻では、前半と後半で「攻略プラン」の中でも視点を変えた闘いを描いてみせている。

前半の予選の1回戦と2回戦では、同じ予選から参加する荒谷や神田が強調する「いかに体力を温存して予選を突破するか」を中心に見せているが、これはそのまま「どのように確実に勝ちきるか」という「試合に勝つ上での最も基本的な戦略」になっている。実際に試合をしていればわかるが、「テニスの実力」(如何に「よりすごい」プレイができるか)云々よりも、これがしっかりできている人ほど「負けない」し、相手からすると勝てる気がしなくなってくる。

一歩後ろに下がって余裕を持ったフットワークで1/9くらいのコースに攻め込まれない程度の球威で…
焦らず勝負を決めにいくタイミングを待つ…

ポイント自体が長くなるのは仕方ない…
での この方が精神的に楽だしストップ&ダッシュが激しくない分体力的にも楽

攻めに転じた相手のテンポに惑わされないように…
攻め込まれないように…なるべく深く

必要な時に必要なだけのリスクを負う

つまりキモは適切なリスク配分・管理なわけで、これは打つコースや強さだけでなく、球種、打ち合うテンポ、プレイスタイル(例えば条件によってはベースラインで打ち合うより全てネットに出る方が楽で安全な場合もある)等々を自分が確実にこなし続けられる範疇に保つこと、その上で相手に特定の攻撃パターンで得点を続けさせないための必要なリスクは負うことを意味する。

これは「実力差」が本当に圧倒的な時以外、つまり実際に経験する試合の殆ど全てに通用する。まず、自分がしっかりプレイし続けられる「領域」を知っておくこと、次に外部条件(相手のプレイ)を考慮して何にどれだけリスクを高めるべきかより客観的により正確に判断すること。最後に判断したことを試合終了まできちんとやり続けられること。この作品の主人公のようにスマートで(怪物的に)タフな頭脳の持ち主はだから「負けない」のだ。


一方、予選決勝となる後半はもちろん濃くてアツいが、戦術的な部分を見せることが中心になっているので(前半とは違い)この作品のいつもの感じで試合を楽しめる。というかいつも以上に堪能できる。プレイの描写もうまくなっているし、本当に、よくまあこのやり方で際限なく品質を上げつづけられるなあと半ば呆れながら読んでしまった。第1セットの決着に至るまでひたすら濃いです。


アツい試合に加え、今回はオープン大会なので「社会人の事情」場面が所々挿入され、ユーモラスだがリアルさをさらに増している。あえて不満を言えば、プロテニスのプレイスタイルの変遷に言及しているところは、ややおおざっぱ過ぎるように思う。これは先週の連載分でサービスのスピード(数値)を出したことと同様、「ビギナー」や若年層読者への配慮なのかも知れないが、個人的には正直どちらもあまり好きになれない。


歴史的観点といえば、昨晩YouTubeで、ボルグを引退決定に追い込んだとされるモンテカルロでの対ルコント戦のダイジェストを観た。まだ髪が短めでジュニアを卒業したばかりのように見えるルコントは、この試合のおかげで『スマッシュ』の表紙になったんじゃなかったかな。クレーでもネットに出まくるルコントだったが、映像を観る限りボルグはあまり動けておらず、プロテニスプレイやーとしては既に精神的にも抜け殻の状態だったことがわかるちょっと悲しい内容だった。

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