3.不安定なベタ足
陸上の短距離走が速い人でも、テニスやその他“動く標的を追いかけて、自分のコントロール下に置く”スポーツが苦手な人は多い。逆に短距離走が遅い人でテニスのフットワークが良い人も多い。フットワークが悪ければ、当然しっかり構えて打てなくなるので、安定して強打することは難しくなる。
これは主に以下の原因による。
①待っている場所と姿勢が悪い
②動き出しのタイミングが悪い
③走ったあと、構えて打ちやすいような止まり方をしていない
①のポジションについては、
前エントリーに書いた
「センターベルトを中心に、相手と点対称の位置を基本ポジションとし、相手と正対する形で待つ。」でかなり改善される。姿勢については、
「足を肩幅よりやや広めに開き、肩と膝を内側に落とし、重心が両足の親指にかかるようにする」形を基本にする。これを維持することで、サーフェースの種類を問わず今までよりずっと楽に(かつ安定して)動き始められ、ボールに近づきやすくなるはずだ。お気づきの方もいるだろうが、これはバスケットボールのディフェンスの姿勢に酷似している。
ちなみに足の親指に重心をかけることに関しては、これを極端にしてインプレー中は基本的に踵を浮かしたままであっても構わない。軽やかなフットワークが印象的なロジャー・フェデラーやステフィ・グラフはこのタイプである。但し、足首をしっかり固め続けて、さらにこむら返りを起こさないよう鍛える必要はある(笑)
②動き出すタイミングの問題は、陸上競技と違い、走り出さなければならないタイミングが一定でない状況に対応できていないことに起因している。これに対応するには
「リズミカルに動くこと、または膝や肩でリズムを刻みながらプレーし、相手がヒットする瞬間に合せて重心を一度落とす」ことで、相手の打球に対してあわてて動き出そうとして足を滑らせ転びそうになる(余裕がないので急激に地面にパワーをかけ、グリップが得られずスリップする)ケースをなくすことができる。相手のボールが速かったり、相手がヒットするタイミングと合わない場合は
「刻むリズムを速くすることで対応できる許容範囲を広げることができる。」
③の上手く止まれないという問題については、
「ボールの落下予想地点には、重心を下げながら近づく」こと、そしてこれも、
前エントリーに書いたように、
「落下点の後ろに回り込んでゆくように動」くことでほぼ解消される。
そしてもう一つ、より正確で、強いショットを打つ秘訣は、
構えて、打つ間は、ボールが飛んでくる方向に対して、構えた後ろ足の膝を(後ろ足の)シューズより必ず前に置くことである。飛んでくる巨大なボールを後ろ足(右利きのフォアハンドであれば右足)で踏ん張って支えるイメージになる。これは、重心移動が少ない(腰の回転重視の)フォームであっても、重心を後ろに逃がさない(ヒットする方向とは逆の力が働くのを防ぐ)ための処置であり、さらに打ち終わった後、次の動き出しも早くすることができる利点がある。重心が後ろに逃げてしまうと、一度それをニュートラルに戻す必要が生じるので、当然動き出しはその分遅くなる。
とまあ、長々と書いてきたが、レベルの高い相手と頻繁にゲームができる環境があれば特別意識せずとも自然に身についてしまうことが殆どであることも確かである。ただ、そのせいで、“恵まれた環境”にいたことが圧倒的に多いテニスコーチたちは、
これらを身につけなければならないということさえ気づかないことが多いのも確かで、そのために“ただのスクール上級者”からずっと抜け出せない人たちが少なからず存在し、無駄に時間と授業料を費やしていることもまた事実なのである。