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中大杉並高校 音楽部

中央大学杉並高校の部活動のひとつ〈音楽部〉のブログです。

活動内容やスケジュール、受賞実績などをご紹介します。

謹賀新年

2021-12-31 12:10:00 | 
あけましておめでとうございます。
 
2021年は、
 
・顧問がやらせたいことをやらせているだけなのではないか?
 
・でも、「どんなことができるのか?」「それによってどんな成長や達成感を得られるのか?」を知ってもらうために、無理にでも顧問が主導するべきではないか?
 
ということに逡巡した1年でした。中等教育における部活動の在り方の問い直しが迫られる昨今です。今後も部員とともに大いに悩みながら活動してまいります。
 
皆様にご支援・ご指導賜りたく、よろしくお願い申し上げます。
 
 
 
 
 


 

2021年 顧問やコーチはどこまで手を出すか問題

2021-08-08 15:08:34 | 

かなり以前から、このテーマで一本書いておきたいと思っていたのですが、近年埼玉方面からこの手の話題がよく聞こえるようになってきたため、このタイミングで中杉音楽部としての姿勢を今一度明確にしておきたいと思います。

埼玉から聞こえてくるのは、「顧問の先生が賞レースに必死になるあまり、部員のバンドをプロデュースし過ぎている」という声です。私も顧問の一人として、ついつい賞レースに一喜一憂してしまいますので、改めて注意喚起をされる思いです。

 

◆賞とは何か?

私がよく部員に話すテンプレを列挙してみましょう。

・音楽のプロが審査員を務めている以上、高校生が演歌をやろうがレゲエをやろうが、「良いものは良い」として評価をしてくれる。だから、「審査員と好みが合わなかったから賞が獲れなかった」というのは負け惜しみ。

・より多くの人が「良い」と思ったら、それは自ずと賞につながってくる。だから、たくさんの人に自分たちの表現したいことを伝えるために、あれこれ考えよう。(もちろん技術的な練習もね。)

・バンドのコンテストは半分は相対評価(他のグループとの比較)だけど、半分は絶対評価。「絶対的な基準」とは、演奏者当人が「やろうと思っていること・表現したいこと」を指す。他のバンドよりも優れていたとしても「やろうとしていることは分かる。でもやれていないよね。」と思われたら、評価は著しく低くなる。客(審査員)が期待したものを提供しなかったんだから、低評価でも仕方がない。だからこそ、「ウチよりも技術の低い人たちが受賞した」と不審がるのはナンセンス。技術の低い人たちが手持ちの技術の中で表現したいことをきっちり表現してれば、その方が魅力的。

・審査員がたいがい「オジサンたち」だからといって、オジサンたちに迎合してはならない。オジサンたちよりも同世代の人たちに、好きになってもらえる音楽を作ろう。だからこそ、コンテストでオジサンたちにウケなかったとしても、同世代の人たちに「良かった」と言ってもらえるなら、そのことを誇りに思おう。(※)

 

◆大人は何をするか?(中杉の場合)

当部には、かれこれ15年以上お世話になっているコーチがいます。当部のOBで、現在は街の音楽教室を経営するほか、いくつか音楽関連のビジネスを手掛けています。忙しい方なので、実際に来校していただいて指導を仰げる機会は年に10日程度でしょうか(合宿や文化祭を含む/この1年半でオンライン環境が充実し多様な指導が仰げるようになってきました)。

そのコーチと私(顧問)で長年にわたり申し合わせてきたことがあります。それは「ダメ出しはするけれど、提案はしない」です。もちろん「ダメ出し」から「提案」までの間はグラデーションであり、明確に線は引けないのですが、何かを言いたくなるとお互いに顔を見合わせて、「ここから先は『提案』になっちゃうから言わないよ。自分で考えよう!」と言うことにしています。

この夏もコーチは、「こっち(コーチ側)で提案するのは簡単。でもそれで賞を獲れても嬉しくないよ。自分たちで試行錯誤して遮二無二取り組んで、それで賞を獲れれば本当に嬉しいし、それで賞を獲れなかったら本当に悔しい。喜びも悔しさも自分たちで引き受けた方が良いよ。」という趣旨のことを話していました。ミュージシャン視点でもプロデューサー視点でもなく、あくまでこうした教育的な視点で指導に当たってくださるからこそ、コーチとは長いお付き合いになっています。

私(顧問)自身は、まともに音楽に取り組んだことの無い人間です。とはいえ20年近く顧問をしてきて色んなものを見聞きしてきましたので、部員のバンドをプロデュースしたくもなります。それはとても楽しいことです。音楽を生業(なりわい)にしているコーチであれば、なおさらです。きっと私が思いもつかない楽しいアイディアをたくさん持っているはずです。でも、常にその楽しそうなアイディアを飲み込んでもらっています。だって、目の前の高校生が大人になるために必要なことは、「誰かにプロデュースをしてもらうこと」ではなく「自分で自分のことをプロデュースできるようになること」ですから。

「提案はせずダメ出しはする」というのは、本当に難しいものです。例えば、一般的なコード進行のセオリーに従わないコード進行の音楽を生徒が作ってきたときに、「セオリー通りではないから気持ちよく聞けないよ」というのは我々にとって「ダメ出し」です。「そのメロディーだったら、こういうコード進行にしてみたら?ここにⅡⅤ進行を挟んで…」みたいな話になったら「提案」です。でも、「T-S-D-Tっていうのがあって、あなたの作ったコード進行の場合はこのDにあたる部分が…」という話になったらどうでしょうか。「セオリー通りではない」という「ダメ出し」であり、同時に「セオリー通りにやれ」という「提案」でもあります。もちろん、そうした「提案」にならないように「音楽に正解はない。だからその表現が狙ってやっているものなら、それでやれば良い。でもワケも分からずに自分たちでも『何か変だな』と思っているのだとしたら、一般的なセオリーはこうである」と言う言い方を心がけています(コーチの話です。顧問は一般的なセオリーもあまり分かっていません。)

ここら辺は本当に「匙加減」なんですが、ともかく常に「生徒がコーチ(その他大人)のアイディアを丸パクリしないようにする」ということを心がけている、ということです。

――と書くと、節度ある指導をしているようにも聞こえますが、きっと専門的な知識のない顧問の先生にしてみたら「『セオリー通りのコード進行ではない』という指摘ができるかどうかは大きな違いだし、ある種の『提案』でしょ?」とおっしゃると思います。その通りだと思います。だからこそ、「何のための部活動であり、何のための指導なのか?」は指導者の側で見失わないようにすべきです。

先に私は「出来るだけ自分たちの力で取り組んで、嬉しさも悔しさも自分で引き受けろ」というコーチの言葉を紹介しました。これもまた絶対的な基準にはなり得ません。本校の生徒は家庭環境の面でも経済的にも(相対的に)恵まれている人が多い。そういう人たちにドーピングを施してまで成功体験を与える意味はありません。

その一方で、学校によっては成功体験とそれに伴う自己肯定感に乏しい生徒が多く通っているところもあるでしょう。そうした子どもたちに必要なことは、成功体験を与え自己肯定感を高めてやることです。そのためのドーピングであれば、外野が口を差し挟むことではない。要はそうした教育的な信念があるかどうかであり、信念もなくただ顧問が賞レースに躍起になっているのであれば、それは批判されても仕方のないことです。

(ちなみに、音源制作の点でも、本校は極力大人が手を貸さないようにし、また大人の手を借りないように呼び掛けています。そもそも顧問はレコーディングやDAWについては、極めて断片的な知識を持っているにとどまりますし、自分で手掛けたこともありません。たまに、顧問の知らないうちに近隣の「レコーディングお兄さん」に頼んで音質の良い音源を作ってもらっていることがありますが、顧問としては推奨していませんし良いことだとも思っていません。「自分たちでレコーディングし、自分たちでミックスする」というのが基本姿勢です。機材を揃えたり、必要な知識が得られるYouTube動画を紹介したりと、「レコーディング環境を整える」という点では、顧問はそれなりに世話を焼いています。)

 

◆プロデュースを超えて

つい先日も他校の先生と意見の一致を見たことですが、教員が生徒をプロデュースすること(そしてコンテストで賞を獲ること)以上にワクワクすることがあります。——それは、生徒たちが教員の思いもよらない音楽やステージングを自らプロデュースすることです。

当たり前のことですが、教員がプロデュースするということは教員のアイディアの範囲に収まるしかありません。しかし、我々のアイディアなんかを遥かに飛び越えて「そんなやり方があったか!」と舌を巻くような場面に遭遇すると本当にワクワクするものです。

残念ながら、そういう機会は多くありません。体感では3年に一度くらいでしょうか。理由はわかりませんが、近年はもっと減っているかもしれません。本校の生徒は、将来的に与えられたことをただ粛々とこなすのではなく、現状に対して常に問題意識・課題意識を持ち、知恵と工夫でブレイクスルーしていける人物になってほしいと思っています。そういう意味でも常に新しい挑戦をし続けてもらいたいものです。

——そういう点においては、私(顧問)は、バンドや楽曲・ステージングのプロデュースはしないようにしているものの、「部活全体のプロデュース」についてはあれこれやっているように思います。ここら辺はまだ考えが明確にまとまっていませんので、いつかまた書いてみたいと思います。

 

※どのような聞き手をターゲットとして音楽に取り組むのか?ということについては、以前怒りに任せて詳細に書きました


2020年 生配信トークライブ(顧問)8/25

2020-08-26 11:33:15 | 

普段からお世話になっているサウンドスタジオリバイバルさんの呼びかけにより、普段からの付き合いの深い4名の顧問が集まり、

緊急生配信 軽音2020 「コロナ時代の軽音楽部が進む道とは? 」

と題した生配信トークライブを行いました。

 

大舘は「ライブ演奏を諦める」派の代表として(笑)、「リモート制作に活路とやりがいを求めているところです」というお話をしました。

この配信に需要があったかどうかはともかく、この4人+リバイバルさんでコロナ禍での近況報告ができ、たいへん楽しい時間でした。

 

 

 

↓↓ 以下 ↓↓ いつまでアーカイブが残っているのか分かりませんが…

 

 


2020年 明日のために(4)

2020-06-27 16:28:16 | 

寄せられた質問に回答します。

 

Q.週5活動となっていますが、日曜や祝日などは活動があるのでしょうか?
Q.以前のブログで△がついていた日曜日などは部活があると考えればいいのでしょうか。

→「コロナ不安」が無くなって、ライブがやれる日が戻ってくるなら日曜や祝日に、合同ライブやイベントに出ることがありますが、向こう1年くらいは、そういうことは出来ないんじゃないかと思っています。(卒業まで出来ないかもしれません。)

 

Q.今、私のギターのレベルが、コードを抑えられるくらいの実力なのですが、それでもギターを弾くとは出来ますか?
Q.楽器未経験者でも入部できますか?楽器未経験者だと部活ないで思うように動けなかったり、入部にあたって優遇されなかってりしますか?未経験で入部して楽器を弾けるようになったり、未経験で入って活躍してる人はどのくらいいますか?
Q.楽器を全く演奏したことがない人でもいいですか??(ドラム希望です。)
Q.また、初心者で楽器も何も弾けないのですが、それでも大丈夫ですか?

→今まで全国レベルで活躍した人たちの多くが、高校からその楽器を始めています。ですので、ひとえにやる気次第だと言えます。ただし、今までに「ピアノを習ったことがある」など音楽の経験が少しでもあった方が、有利ですし、そのような人が多いことも確かです。

 

Q.根っからの初心者でもやっていけますか?今の先輩方に初心者の方はいらっしゃいますか?
Q.初心者と経験者の割合はどのくらいですか。

→昨年入部した人のうち、49%がピアノまたはエレクトーンの経験者、16%が歌のレッスンや吹奏楽部、自己流でギターを弾く、などの音楽経験者。35%が、特に音楽的なバックグラウンドの無い人でした。

 

Q.音楽部は楽器を買う必要はありますか?

→ドラムセットを買う必要はありませんが、ギター、ベース、キーボードであれば自分の楽器を持っている必要があります。

 

Q.私は模擬裁判選手権に興味があるのですが、部活との両立ができるかが心配です。もしも模擬裁判の関係で欠席したりしたら、部活についていけなくなるでしょうか。

→他にやりたいことがあるのなら、両立はお勧めしません。

 

Q.先生は経験者ですか?

→「バンドをやったことがあるか?」という意味であれば、一応あります。「技術的な指導ができるか」といえば、ある程度はできます。「上手くなるために何をすべきか?」「良い曲をするためには何を直すべきか?」といったアドバイスはそれなりに出来ると思っています。また、専門的な指導のできる正規コーチもいます。

 

Q.少し前にブログに載っていた、音楽部の紹介動画を見ました。そこで、「ボーカルになるにはオーディションが必要」とありました。ボーカル以外の楽器なら、オーディションはないのですか。
Q.この楽器は人気があるから希望通りになりにくい、または、この楽器はやりたい人が少ないので希望通りになりやすい、などはありますか? 
Q.楽器は自分の希望のものを持てるのですか?
Q.ボーカルの場合はどうやって決めたりしますか?

→ボーカルのオーディションや、パートごとの人数調整は行いません。ただし「ボーカルのみをやる」ということは認めません。詳しくは、部活のブログに掲載した動画を見てください。
https://blog.goo.ne.jp/chusugionbu/e/aa86cede23dd0d4397e5b79e95e98652

 

Q.バンドは好きな友達と組んでいいのでしょうか?

→固定バンドは組みません。詳しくは、部活のブログに掲載した動画を見てください。
https://blog.goo.ne.jp/chusugionbu/e/aa86cede23dd0d4397e5b79e95e98652

 

Q.ブログに載っていた動画に、ボーカルギターベースドラムキーボード以外にも、サックスやバイオリンなどその他として書かれた楽器がありました。それらの楽器も1年生を募集しているのですか?また、それらの楽器を担当している先輩は他のボーカルやギターに比べると少ないのでしょうか。

→現在、ボーカルギターベースドラムキーボード以外を担当する人はいません。でも、それ以外の楽器でやりたい、という強い熱意があるなら歓迎します。詳しくは、部活の(以下略

 

Q.部員の皆様に質問ですが、正直休日なども部活があるのはキツいですか?

→コロナ以前は、月に2回ずつくらい日曜や祝日に合同ライブやイベントがありましたが、そういう活動が出来る日常が戻ってくるかどうかは、誰も分かりません。

 

Q.いつもどんなことをしてますか?

→コロナ以前の「いつも」について説明しても無駄かもしれません。今後の「いつも」であれば、リモート活動が中心になります。(対面状況で何かをやったり、大勢で集まったりする機会は、極端に少なくなる見込みです。)

 


2020年 明日のために(2)

2020-05-02 05:39:41 | 
前回の続きです)
 
このまま「ライブ」「体験」をベースにした、音楽コミュニケーションが衰退する。そうした予測&前提にたったとき、学校の部活同としての軽音楽部はどうするか?――そういうお話でした。
 
 
さて、そもそも、この「コロナ禍」が部活動に多大な影響をもたらしているというのは、何も軽音楽部に限ったことではありません。血反吐を吐いて練習を重ねてきた(やらされてきた!?)トップクラスの運動部員にとって、インターハイ中止という決定は「多大な影響」なんていう表現でも生易しく感じられるでしょう。
 
もし、この新型コロナウイルスCOVID-19の特効薬が開発され、せいぜいインフルエンザくらいの位置づけになるのだとしたら、世界は元通りになるかもしれません。問題は、それにかかる時間ですよね。おそるおそる活動を再開できそうな、屋外の運動部は、顧問や部員、OBOGなどの頑張りによって活動を立て直すことができるかもしれません。
 
では、以下の運動部あたりはどうでしょう?
 
・バドミントン・卓球……部屋を閉め切ることが求められます
・柔道・剣道・相撲その他の武道……室内で競技者同士が密着します
・ダンス……照明ありきの演出を前提とするなら軽音楽部と同じ
 
こうした部活動は、「当面活動停止」になるかもしれません。
 
 
文化部においては、そのほとんどが室内で行われるものになります。
 
・茶道……茶室の風通しを良くしたにしても、狭いですよね
・美術・マンガ・書道・科学系……風通しの良い部屋で、部員通しの距離を保てばアリ?
・演劇……大きな声を出す上に、演者通しが近づくシーンは削れない
・吹奏楽……「密」ですよねえ
 
さて、こうした文化部のうち、そのいくつかは「まあそもそも、本当にやりたいのなら家で一人でやればよいのでは?」ということになります。(もちろん、部員同士が同じ空間に居て、共に切磋琢磨することには大きな価値があります。「その価値を渋々捨てて、個人の活動に戻される」という意味です。)
 
室内競技系運動部、格闘技・武道系、個人創作系文化部――こうした部活動が当面の活動停止となることで、中には、それらの活動から「降りる」人が出て来るでしょう。そのうちの一部は、「活動が継続できる部活動」に流れ、一部は、部活動そのものから降りることになります。
 
同じことが残念ながら、我々軽音楽部業界にも起こることでしょう。今まで部員100人を集めていたマンモス軽音楽部がありましたが、そういう部がせいぜい20人くらいになる、なんていうことも容易に想像できます。軽音楽部に来なかった人たちの一部は他の部に流れ、一部は学校の部活動に所属すること自体をやめます。だいたいにおいて、活動が存続できる部活動にもキャパがあり、そこに殺到してしまったら「密」になってしまうわけですから。(グラウンドで芋を洗うように活動する野球部、いやですねえ。)
 
軽音楽部がどうなるか?(どうするか?)の前に、一度おさえておきたいこと。それは、「これまで何十年と課外活動(教育)の中心をなしてきた部活動の在り方が、大きく揺さぶられる。もっというと、ようやく学校教育は、部活動指導から解放される。」ということです。
 
内田良氏をはじめ、昨今「部活動ってどうよ?」という議論が活発になされていました。それに呼応し「ブラック部活問題(教員にとっても生徒にとっても)」「教員の働き方改革」の話題も、ずいぶん増えてきていた矢先のことです。そういう議論がある中でも、なかなか「部活動のくびき」から解き放たれることのなかった学校教育業界が、とうとう強制的に「部活動の重みを減らす」ことを余儀なくされるわけです。――残念ながら、学校の先生の多くは、変化を嫌う人たちです。自分たちの力では変わる(変える)ことのできなかった、根本的な構造にメスが入ることは、ポジティブに捉えて良いと思います。
 
部活から降りた若者が、非行に走るとか、アルバイトとして搾取されるとか、そういうことは一定数起こるでしょう。部活動という「学校に閉じこめて他の物事に目を向けさせず、若者のあり余るエネルギーを消費させるシステム」が部分的に機能しなくなるのだから、当たり前です。しかし、そういったことについては、今までルーティンに堕していた学校教育全体が、立ち向かうしかないのです。
 
また、そうした悲観的な話だけではなく、部活動でもない・アルバイトでもない・非行的享楽でもない、新たな若者の居場所や生きがいも創出されていくはずです。実際のところ、本校でも「部活動から社会活動へ」という萌芽が見え始めていたところでした。私は、他の教員に比べれば民間の人とじっくり話をする機会に恵まれています。さまざまな大人がポジティブに若者とコミットすることを求めています。「こういう活動に高校生に参加してほしいんだけど、部活の制約が大きくてなかなか参加してもらえない」という話を色んな人から聞きました。ですので、何も部活動に縛り付けなくても、若者の新しい居場所や生きがいは、ちゃんとできていくのです。
 
 
(もう少し続きます)

2020年 明日のために(1)

2020-05-01 04:56:41 | 
本稿「明日のために」シリーズは、2020年4月15日に当部コーチ主催のZoomミーティングの中で話されたことがベースになっています。顧問一人の発想というよりは、コーチから示唆されたこと、その対話の中で気づいたことを整理します。
 
 
 
【部活動ベースでの今後の見通し】
 
・3年生はおそらく引退(9月)まで合同ライブはできない
・おそらく、多くのライブ形式のコンテストは中止になる
・9月の文化祭も、従来のように不特定多数の人を学校に呼ぶなんてできない
 
 ↓ ↓ ↓
 
・首都圏の軽音楽部の
 「合同ライブ+コンテスト」をベースにした活動が白紙化
 
 ↓ ↓ ↓
 
・目標や楽しみを失い、モチベーションが下がり、部員が減る
 (本校に限らず、活発に活動をしてきた全国の高校の話)
 
 ↓ ↓ ↓
 
・「ライブ」を主軸とするアクターがいなくなる
 
 ↓ ↓ ↓
 
ロックは死ぬ
 
 
 
【ロックバンド全体の見通し】
 
・営業自粛期間の長期化
 
 ↓ ↓ ↓
 
・全国のライブハウスが閉店を余儀なくされる
・全国のリハーサルスタジオが閉店を余儀なくされる
 
 ↓ ↓ ↓
 
・音響・照明などの裏方さんの廃業
・「ライブありき」で活動していたミュージシャンの廃業
 
 ↓ ↓ ↓
 
ロックは死ぬ
 
 
 
これまで、何度となく「ロックは死んだ」と言われてきました。
 
今回も、その一つに過ぎないのかもしれません。杞憂に終わったのなら「前に、アイツ大げさなこと言っていたよな」と笑ってください。
 
※ もちろん、「運よく商業ベースに乗ることのできる"ロックバンド"」が全ていなくなるとは思いません。
いま日本中にいる「密室で大音量で演奏する草の根ミュージシャン」が激減する、という話です。
 
 
もし、このまま「ライブ」「体験」をベースにした、音楽コミュニケーションが衰退するのだとすると、業界の皆さんは、本当にお気の毒な事態です。せっかく業界が「ライブ」「体験」をベースにした形で盛り上がりを見せてきた、そのタイミングでこれですからね。でも、「衰退する」という予測に立つのだとしたら、業界は、ビジネスモデルの大・再編成を余儀なくされたことになります。
 
 
さて、そのような状況下で、「学校の教育活動の一環としての・ライブ活動を前提にしていた、軽音楽部の今後」について、つらつらと書いていきたいと思います。
 
※ 部活動を「教育活動の一環と捉えるか/趣味的で自主的な生徒の集まりと捉えるかか」は学校・顧問によって様々です。本稿ではそれを前者と捉えます。
 
※ どこの馬の骨とも分からない奴に「お前はもう死んでいる」と言われて御不快に思われた業界関係者にはお詫び申し上げます。個人的な見解であるとご理解いただき、ご海容いただければありがたく思います。
 
 
 

2000円で聴けるバンドの音楽で良いのか

2020-02-03 09:29:00 | 
高校生軽音楽部員が邦ロックしか聞かない問題は、本当に大丈夫なのか――「今の若いモンは」というオジサンの嘆きですが。


「CDアルバムを繰り返し聞いてたまに大枚はたいてライブに行く」

という時代が終わり、

「YouTubeやサブスクリプションサービス(あるいは脱法アプリ)で、代表曲だけ聞いて、ライブ体験を楽しむ」

という時代になりました。


「CDは売れなくなったけど、音楽産業自体は決して衰退していない」というのが、おおかたの現状認識だと思います。私も同感です。

ただ、「お手軽にライブに行けるようになった」「ライブハウスに活気が戻ってきた」ことの弊害を感じます。

それは、高校生バンドマンが「会いに行けるバンドしか聞かなくなっている」ということです。言うまでもなく、「会いに行ける」というフレーズはAKB商法を意識して使っています。「会いに行けることの価値」を世の中に(再?)認識させただけでも、秋元康(中附→中大)はスゴイですね。


高校生にはお金がありません。音楽の楽しみ=ライブ体験 なのだとしたら、当然ながら、数をこなしたくなります。3ヶ月に1回8000円のライブに行くよりは、最低でも月に1回2000円のライブに行きたい――そういう感覚でしょう。

ただ、反論を恐れずに言ってしまうと、
・2000円で体験できるライブ と
・8000円で体験できるライブ には
やはり大きな差があるはずです。

その差は、楽曲のクオリティの差であり、エンターテインメント性の差であるはずです。

もちろん、例外はたくさんありますよ。まだ見出されておらず、プロモーションもしてもらえず、良い機材を持つこともできず、広い会場でやらせてもらえる知名度もない――それでも、本来なら8000円を取っても良いようなアーティストが、そういう事情で2000円のライブをしていることだってあるでしょう。

ただ、平均的に考えれば、体験にかかる費用と、そこで得られるものは、やはり比例するのではないかと思うのです。


音楽が大好きな高校生バンドマンほど、2000円でライブを見られるバンドを応援することになります。2000円でライブが見られるバンドは、(ホントにごめんなさい)2000円程度の音楽であり、2000円くらいのエンタメです。(ジャニーズやLDH系に全く興味が無い人が、実際にライブに行ってみたら「やっぱ大金を取る人たちのライブはスゲーな!」と思った――という話はよく聞きます。)

これが、ただの高校生「リスナー」なら別にいいんです。稼げるようになったら、8000円のライブに行って、8000円の音楽とライブを享受すればいい。

ただ、高校生「バンドマン」となると話が違う。もし彼らに「2020年代の音楽シーン」を担うことを期待するのであれば、絶対に良いものに触れた方が良いに決まっています。古今東西の幅広く良質な音楽に触れることでしか、ブレイクスルーは生まれないはずです。(もちろん、そうした体験を経ずしてものすごいものを生み出してしまう天才だっているでしょう。いつだってどこだって例外はいます。)


サブスクやYouTubeをDIGれば、古今東西の音楽に触れることは簡単です。しかし、鈴木謙介や佐々木俊尚を始め、多くの専門家が指摘する通り、情報がたくさんあることはたくさんの情報に触れることを意味しません。サイバーカスケード効果により、個人の情報環境はタコツボ化し、より狭い情報にしかアクセスできなくなります。こうした時代にあって、どのようにセレンディピティ(偶然にして幸運な出会い)を得るのか、ということは音楽に限らず、現代社会で重要なテーマです。

昨今のフェスブームによって、「たまたま居合わせた場所で良いバンドを見つけた!」というようなセレンディピティを得ることができます。それ自体は良い。でも、2000円で見られるフェスで出会えたアーティストはやっぱり(以下略)


高校生バンドマンが毎月8000円のライブを見ることはできないが、15000円をとるアーティストの楽曲には簡単にアクセスできます。しかもタダで。――でも、聞かない。この状況を、軽音楽系の顧問として、どう乗り越えたら良いのか、まだ解決策が見えていません。


謹賀新年2020

2020-01-03 07:11:30 | 


あけましておめでとうございます。

旧年中はたくさんの人に支えられ、そして応援していただき、充実した活動を行うことができました。

本年もたくさんの人に支えていただきながら、常に新しい挑戦を続け、自由でクリエイティブな活動をしていきたいと思います。


ご指導、ご鞭撻のほど、よろしくお願いいたします。


素材提供

CD配布から音源配信へ

2019-10-18 14:55:19 | 

2008年から作成・配布を続けてきた、部のオリジナル曲コンピレーションアルバムCDの配布を、今年度やめることにしました。

10年を一区切りに…とはなりませんでしたが、11年間作り続けてきました。



★★CDを作り続けた11年間のこと★★

2008年当時、たまたまDTMに凝っている部員(44期生)がおり、「オリジナル曲をレコーディングしてCD化したい」と発案があった瞬間を今でもよく覚えています。当時、部活の「再建」に取り組む途上にあったため、こうした新しい挑戦を大変好ましく感じたものです。




最初の4年間は、↑画像↑上段のように、CDはCDで用意して、それとともに学校の印刷機で歌詞をまとめた冊子を印刷していました。
その後、「やっぱりCDサイズの歌詞カードが欲しい」ということで、学校の印刷機で作ることも試みましたが、ピッタリにレイアウトしてピッタリに裁断することがあまりに(顧問の)手間で、どうしたものかと考えていました。

そんな折に野心家の48期生が「業者に発注して本格的なものを作りたい」ということで、2枚組分の曲数の歌詞を収めた歌詞カード+プラケース用バックインレイ+プラケース――という非常にお金のかかった仕様(苦笑)で作り上げたのが■■これ■■でした。(しかも「欲しい人全員に行き渡らなかった」ということで、48期生が(たしか)自腹でお金を追加して、必要数を増産した上で、なぜか余る!というオマケがつきました。)ちなみに2012、2013はジャケ絵を漫研の人に書いてもらいました。

この2012からは良くも悪くも安定して2枚組の作品が続き、現在に至っています。その2枚組を700枚ずつ計1400枚、部員各自のPCで寝ずに「手焼き」するということを昨年まで続けてきたわけです。音源制作~物理メディア制作をやりつつ、文化祭で演奏する曲を練習したりステージの演出を考えたりしていたのですから、何度か保護者の方から「やり過ぎだ(やらせ過ぎだ)」とのお叱りをいただきました。(とは言え、毎年「CDを文化祭のタイミングで作ることの是非」については再検討をしてきました。それでも部員は「文化祭でCDを配る」という決断をしてきたわけです。)

レコーディング~ミキシング~増産という一連の作業を何年も積み重ねてきたおかげで、「DiGiRECO JR.」さんには見開き1ページの記事を書いてもらったこともありました。



★★CD/配信 のメリット・デメリット★★

さて、思い出を語っていると話題は尽きないのですが、ここ数年は「本当にCDというメディアで良いのか?」という検討をしてきました。「CDが売れない・CDを聞かない」と言われるこのご時世に、です。

◆わざわざトレーに入れて再生をしてもらえなくても、「キレイなジャケット付きのCD」という〈形〉をとるのか?(ジャケットだけで1枚100円弱かかるものを部費で作って配って、聴いてはもらえない、というので良いのか?)

◆何も〈形〉は残らなくても、「広くみんなに聞いてもらう」という〈実〉をとるのか?

このどちらをとるのか?というのを数年議論してきたわけです。

現段階でも「やっぱりCDを作りたい」という声があることも確かです。しかし、現今、Eggs(サービス/アプリ)で高校生バンドが音源を発信することが多くなり、「配信して聞いてもらう」というやり方が浸透してきたこともあり、とうとう「CD制作をやめる」という方向に舵を切ることになりました。



★★スマホで聞いてもらうために★★

ここから、また新たな悩みが生まれます。それは、「どのような手段で配信して、聴いてもらうか」ということです。

今現在、高校生が音楽に接する手段は、多様化し、拡散しています。

従来のようにCDをPCに取り込み、WalkmanやiPhoneとデータ同期をして外に持ち出す、というスタイルも生き残っています。しかし、手元にCDがある状態から外に持ち出せるようになるまでのプロセスは(今や)お手軽とは言い難いものがあります。このことについて、部員の一人は「大好きなアーティスであればCDを買って、PCを介してモバイルに取り込むまでの手間は惜しくない。でも、『なんとなく聞いてみようかな』というレベルの作品だったら、その手間は面倒に感じる。」と教えてくれました。軽音楽部ごときのCDでは、なかなかその手間をかけてくれることは期待できそうにありません。

だとすると、例えば「Dropboxのようなクラウド上に音源データを置いておいて、後は各自のモバイルデバイスにダウンロードしてもらう」という手段も、あまり聞いてもらえるとは思いません。(しかもスマートフォンの普及に伴って、10代のPC操作スキルはむしろ下がっているため、「音源データを、モバイルと同期するための目的のフォルダにDLする」ということも、多くの人ができないと考えられます。)

そうなってくると、「いかにスマートフォンでお手軽に聞けるか」ということが重要になってきます。

首都圏高校生バンドマンが、いま一番身近に感じている配信プラットフォームはEggsです。Eggsはアプリを入れていなくてもブラウザベースで再生ができるという点では「お気軽に再生できる」というメリットがあります。一方で、「高校生バンドマンには広く浸透しているが、そうでない若者には馴染みがない」「プレイリストの形での配信向きではない」という点もあります。よって、少なくとも今年度はEggsを軸とした楽曲配信は考えませんでした。


いろいろと高校生にインタビューをしてみて、「高校生にお気軽に聞いてもらうための条件」は以下であると考えられます(少なくとも2019年秋現在では)。

(1)スマホで聞ける‬
(2)無料‬である
(3)専用アプリのインストールが不要‬
(4)通信容量を喰わない‬
 ‪=Wi-Fi下でDLして、オフラインで聴ける‬
(5)バックグラウンド再生可能

これに加えて、私たちの場合には
(6)アルバムというパッケージで配信できる

という条件が必要になります。

しかしながら、この条件を満たすような環境は見当たらず、(1)(2)(4)(5)の条件を満たす環境と言えば、「MusicFM」「MusicBox」「ClipBox」といった、著作権侵害が問題視されているようなアプリになってしまいます。(これらのアプリが若者に広く浸透しているのは、この(1)(2)(4)(5)を満たしているからだと思われます。)


――このように様々な手段を検討した結果として、今年度は以下の二つの手段をとりました。


【第1段階】

…YouTubeに音源+各曲ジャケット画像を組み合わせてアップロードし、再生リスト化することで、アルバムの体裁をとる。

この手段は上記の(1)~(6)に照らした時に、以下のようなメリット/デメリットがあります。

◎ (1)スマホで聞ける‬
◎ (2)無料‬である
○ (3)専用アプリのインストールが不要‬
△ (4)通信容量を喰わない‬…オフライン環境で聞くためにはユーザー側の工夫が必要
△ (5)バックグラウンド再生可能…アプリ次第
◎ (6)アルバムというパッケージで配信できる


【第2段階】

…配信代行サービスを利用し、Apple Music, LINE Music, Spotifyなど各種ストリーミングサービスから配信する。

この手段は上記の(1)~(6)に照らした時に、以下のようなメリット/デメリットがあります。

◎ (1)スマホで聞ける‬
○ (2)無料‬である…サービスによって様々!
△ (3)専用アプリのインストールが不要‬
△ (4)通信容量を喰わない‬…音楽を外に持ち出すためのDLはだいたい有料
○ (5)バックグラウンド再生可能…アプリ次第
◎ (6)アルバムというパッケージで配信できる


第1段階については、なるべく音源に(ジャケット画像ではない)画像をつけることで、「知っている子が出てくるみたいだから再生してみよう」というきっかけを作ろう!と呼びかけたのですが、生徒たちが音源制作で力尽きてしまい、実現しませんでした。これは来年の課題となります。

第2段階については、どうしても「音源・アー写・ジャケ写・著作権者情報」などの取りまとめをするディレクターが必要になります。前例がないために、今年は顧問がこのディレクション業務を行いましたが、正直なところ「顧問がお世話しすぎ」の感が拭い去れません。加えて、音源処理の技術の無い顧問がディレクションを行う都合上「アルバム全体のマスタリング」にまで手が回りません。ここをどうするのか、も今後の課題になります。


今後、若者の音楽への接し方は、どんどん変わっていくと思います。そこに部活動のような、ある種ルーティーン中心の組織が、どこまでキャッチアップできるか――部の底力を試されるところです。


(追記)
先日、twitter上で「高校生が脱法アプリで音楽を聴くのを阻止できないのなら、Apple MusicやLINE Musicを高校生に無料で開放すればよい」という意見を見かけました。「サービス提供側が高校生と大学生をどうやって見分けるのか」「クリエイターに適切な対価を払えるのか」といった問題はあるでしょう。しかし、多くのスマホゲームやマンガアプリなどが広告収入に期待して、無料で提供されつつクリエイターにも還元されている現状を見ると、あながち暴論ではないように思えました。

 
 
(2021年追記)
本記事執筆当時、配信に伴う収益について何も書いておりませんでした。
 
もとより私たちが作っていたCDは無料で配布していたものであり、それに値段を付けたことはありません。しかしながら、配信登録サービスを提供している会社は、ストリーミング配信やダウンロードによる収益をアーティストサイドと折半することでビジネスが成り立っています。したがって私たちのアルバムをダウンロードするとなると1,200円ものお金がかかってしまいます。これでも設定しうる最低額です。
 
ただ、上記のように私たちの目的は高校生が手軽に聴ける環境を用意するところにあります。有料ダウンロードしてもらうことはほとんど想定しておらず、すでにサブスクリプションサービス自体ににお金を払っている人が、その延長で聴いてくれれば良いと思っています。
 
ですので、サブスクリプションサービスを利用していない人が無料で聴けるように、今後もしばらくはYouTubeの再生リストも併用していきたいと思います。
 
ちなみにサブスク利用者は、そのための定額を払っていれば、当然のことながら当部のアルバムを聴く際に別途費用はかかりません。ただ、そのストリーミング配信1再生に対して、極めて少額のお金が部の収益になることは確かです。ここら辺も部員には「雑収入として部の会計に組み入れる」旨を伝えています。また、内規として明文化していることではないのですが、特定の楽曲が顧問の想定していないほどに突出して収益を上げることがあれば、相当するアガリを当事者に戻すつもりでいます。(ということも部員には伝えてあります。)