

かなり以前から、このテーマで一本書いておきたいと思っていたのですが、近年埼玉方面からこの手の話題がよく聞こえるようになってきたため、このタイミングで中杉音楽部としての姿勢を今一度明確にしておきたいと思います。
埼玉から聞こえてくるのは、「顧問の先生が賞レースに必死になるあまり、部員のバンドをプロデュースし過ぎている」という声です。私も顧問の一人として、ついつい賞レースに一喜一憂してしまいますので、改めて注意喚起をされる思いです。
◆賞とは何か?
私がよく部員に話すテンプレを列挙してみましょう。
・音楽のプロが審査員を務めている以上、高校生が演歌をやろうがレゲエをやろうが、「良いものは良い」として評価をしてくれる。だから、「審査員と好みが合わなかったから賞が獲れなかった」というのは負け惜しみ。
・より多くの人が「良い」と思ったら、それは自ずと賞につながってくる。だから、たくさんの人に自分たちの表現したいことを伝えるために、あれこれ考えよう。(もちろん技術的な練習もね。)
・バンドのコンテストは半分は相対評価(他のグループとの比較)だけど、半分は絶対評価。「絶対的な基準」とは、演奏者当人が「やろうと思っていること・表現したいこと」を指す。他のバンドよりも優れていたとしても「やろうとしていることは分かる。でもやれていないよね。」と思われたら、評価は著しく低くなる。客(審査員)が期待したものを提供しなかったんだから、低評価でも仕方がない。だからこそ、「ウチよりも技術の低い人たちが受賞した」と不審がるのはナンセンス。技術の低い人たちが手持ちの技術の中で表現したいことをきっちり表現してれば、その方が魅力的。
・審査員がたいがい「オジサンたち」だからといって、オジサンたちに迎合してはならない。オジサンたちよりも同世代の人たちに、好きになってもらえる音楽を作ろう。だからこそ、コンテストでオジサンたちにウケなかったとしても、同世代の人たちに「良かった」と言ってもらえるなら、そのことを誇りに思おう。(※)
◆大人は何をするか?(中杉の場合)
当部には、かれこれ15年以上お世話になっているコーチがいます。当部のOBで、現在は街の音楽教室を経営するほか、いくつか音楽関連のビジネスを手掛けています。忙しい方なので、実際に来校していただいて指導を仰げる機会は年に10日程度でしょうか(合宿や文化祭を含む/この1年半でオンライン環境が充実し多様な指導が仰げるようになってきました)。
そのコーチと私(顧問)で長年にわたり申し合わせてきたことがあります。それは「ダメ出しはするけれど、提案はしない」です。もちろん「ダメ出し」から「提案」までの間はグラデーションであり、明確に線は引けないのですが、何かを言いたくなるとお互いに顔を見合わせて、「ここから先は『提案』になっちゃうから言わないよ。自分で考えよう!」と言うことにしています。
この夏もコーチは、「こっち(コーチ側)で提案するのは簡単。でもそれで賞を獲れても嬉しくないよ。自分たちで試行錯誤して遮二無二取り組んで、それで賞を獲れれば本当に嬉しいし、それで賞を獲れなかったら本当に悔しい。喜びも悔しさも自分たちで引き受けた方が良いよ。」という趣旨のことを話していました。ミュージシャン視点でもプロデューサー視点でもなく、あくまでこうした教育的な視点で指導に当たってくださるからこそ、コーチとは長いお付き合いになっています。
私(顧問)自身は、まともに音楽に取り組んだことの無い人間です。とはいえ20年近く顧問をしてきて色んなものを見聞きしてきましたので、部員のバンドをプロデュースしたくもなります。それはとても楽しいことです。音楽を生業(なりわい)にしているコーチであれば、なおさらです。きっと私が思いもつかない楽しいアイディアをたくさん持っているはずです。でも、常にその楽しそうなアイディアを飲み込んでもらっています。だって、目の前の高校生が大人になるために必要なことは、「誰かにプロデュースをしてもらうこと」ではなく「自分で自分のことをプロデュースできるようになること」ですから。
「提案はせずダメ出しはする」というのは、本当に難しいものです。例えば、一般的なコード進行のセオリーに従わないコード進行の音楽を生徒が作ってきたときに、「セオリー通りではないから気持ちよく聞けないよ」というのは我々にとって「ダメ出し」です。「そのメロディーだったら、こういうコード進行にしてみたら?ここにⅡⅤ進行を挟んで…」みたいな話になったら「提案」です。でも、「T-S-D-Tっていうのがあって、あなたの作ったコード進行の場合はこのDにあたる部分が…」という話になったらどうでしょうか。「セオリー通りではない」という「ダメ出し」であり、同時に「セオリー通りにやれ」という「提案」でもあります。もちろん、そうした「提案」にならないように「音楽に正解はない。だからその表現が狙ってやっているものなら、それでやれば良い。でもワケも分からずに自分たちでも『何か変だな』と思っているのだとしたら、一般的なセオリーはこうである」と言う言い方を心がけています(コーチの話です。顧問は一般的なセオリーもあまり分かっていません。)
ここら辺は本当に「匙加減」なんですが、ともかく常に「生徒がコーチ(その他大人)のアイディアを丸パクリしないようにする」ということを心がけている、ということです。
――と書くと、節度ある指導をしているようにも聞こえますが、きっと専門的な知識のない顧問の先生にしてみたら「『セオリー通りのコード進行ではない』という指摘ができるかどうかは大きな違いだし、ある種の『提案』でしょ?」とおっしゃると思います。その通りだと思います。だからこそ、「何のための部活動であり、何のための指導なのか?」は指導者の側で見失わないようにすべきです。
先に私は「出来るだけ自分たちの力で取り組んで、嬉しさも悔しさも自分で引き受けろ」というコーチの言葉を紹介しました。これもまた絶対的な基準にはなり得ません。本校の生徒は家庭環境の面でも経済的にも(相対的に)恵まれている人が多い。そういう人たちにドーピングを施してまで成功体験を与える意味はありません。
その一方で、学校によっては成功体験とそれに伴う自己肯定感に乏しい生徒が多く通っているところもあるでしょう。そうした子どもたちに必要なことは、成功体験を与え自己肯定感を高めてやることです。そのためのドーピングであれば、外野が口を差し挟むことではない。要はそうした教育的な信念があるかどうかであり、信念もなくただ顧問が賞レースに躍起になっているのであれば、それは批判されても仕方のないことです。
(ちなみに、音源制作の点でも、本校は極力大人が手を貸さないようにし、また大人の手を借りないように呼び掛けています。そもそも顧問はレコーディングやDAWについては、極めて断片的な知識を持っているにとどまりますし、自分で手掛けたこともありません。たまに、顧問の知らないうちに近隣の「レコーディングお兄さん」に頼んで音質の良い音源を作ってもらっていることがありますが、顧問としては推奨していませんし良いことだとも思っていません。「自分たちでレコーディングし、自分たちでミックスする」というのが基本姿勢です。機材を揃えたり、必要な知識が得られるYouTube動画を紹介したりと、「レコーディング環境を整える」という点では、顧問はそれなりに世話を焼いています。)
◆プロデュースを超えて
つい先日も他校の先生と意見の一致を見たことですが、教員が生徒をプロデュースすること(そしてコンテストで賞を獲ること)以上にワクワクすることがあります。——それは、生徒たちが教員の思いもよらない音楽やステージングを自らプロデュースすることです。
当たり前のことですが、教員がプロデュースするということは教員のアイディアの範囲に収まるしかありません。しかし、我々のアイディアなんかを遥かに飛び越えて「そんなやり方があったか!」と舌を巻くような場面に遭遇すると本当にワクワクするものです。
残念ながら、そういう機会は多くありません。体感では3年に一度くらいでしょうか。理由はわかりませんが、近年はもっと減っているかもしれません。本校の生徒は、将来的に与えられたことをただ粛々とこなすのではなく、現状に対して常に問題意識・課題意識を持ち、知恵と工夫でブレイクスルーしていける人物になってほしいと思っています。そういう意味でも常に新しい挑戦をし続けてもらいたいものです。
——そういう点においては、私(顧問)は、バンドや楽曲・ステージングのプロデュースはしないようにしているものの、「部活全体のプロデュース」についてはあれこれやっているように思います。ここら辺はまだ考えが明確にまとまっていませんので、いつかまた書いてみたいと思います。
※どのような聞き手をターゲットとして音楽に取り組むのか?ということについては、以前怒りに任せて詳細に書きました。
普段からお世話になっているサウンドスタジオリバイバルさんの呼びかけにより、普段からの付き合いの深い4名の顧問が集まり、
緊急生配信 軽音2020 「コロナ時代の軽音楽部が進む道とは? 」
と題した生配信トークライブを行いました。
大舘は「ライブ演奏を諦める」派の代表として(笑)、「リモート制作に活路とやりがいを求めているところです」というお話をしました。
この配信に需要があったかどうかはともかく、この4人+リバイバルさんでコロナ禍での近況報告ができ、たいへん楽しい時間でした。
↓↓ 以下 ↓↓ いつまでアーカイブが残っているのか分かりませんが…
寄せられた質問に回答します。
Q.週5活動となっていますが、日曜や祝日などは活動があるのでしょうか?
Q.以前のブログで△がついていた日曜日などは部活があると考えればいいのでしょうか。
→「コロナ不安」が無くなって、ライブがやれる日が戻ってくるなら日曜や祝日に、合同ライブやイベントに出ることがありますが、向こう1年くらいは、そういうことは出来ないんじゃないかと思っています。(卒業まで出来ないかもしれません。)
Q.今、私のギターのレベルが、コードを抑えられるくらいの実力なのですが、それでもギターを弾くとは出来ますか?
Q.楽器未経験者でも入部できますか?楽器未経験者だと部活ないで思うように動けなかったり、入部にあたって優遇されなかってりしますか?未経験で入部して楽器を弾けるようになったり、未経験で入って活躍してる人はどのくらいいますか?
Q.楽器を全く演奏したことがない人でもいいですか??(ドラム希望です。)
Q.また、初心者で楽器も何も弾けないのですが、それでも大丈夫ですか?
→今まで全国レベルで活躍した人たちの多くが、高校からその楽器を始めています。ですので、ひとえにやる気次第だと言えます。ただし、今までに「ピアノを習ったことがある」など音楽の経験が少しでもあった方が、有利ですし、そのような人が多いことも確かです。
Q.根っからの初心者でもやっていけますか?今の先輩方に初心者の方はいらっしゃいますか?
Q.初心者と経験者の割合はどのくらいですか。
→昨年入部した人のうち、49%がピアノまたはエレクトーンの経験者、16%が歌のレッスンや吹奏楽部、自己流でギターを弾く、などの音楽経験者。35%が、特に音楽的なバックグラウンドの無い人でした。
Q.音楽部は楽器を買う必要はありますか?
→ドラムセットを買う必要はありませんが、ギター、ベース、キーボードであれば自分の楽器を持っている必要があります。
Q.私は模擬裁判選手権に興味があるのですが、部活との両立ができるかが心配です。もしも模擬裁判の関係で欠席したりしたら、部活についていけなくなるでしょうか。
→他にやりたいことがあるのなら、両立はお勧めしません。
Q.先生は経験者ですか?
→「バンドをやったことがあるか?」という意味であれば、一応あります。「技術的な指導ができるか」といえば、ある程度はできます。「上手くなるために何をすべきか?」「良い曲をするためには何を直すべきか?」といったアドバイスはそれなりに出来ると思っています。また、専門的な指導のできる正規コーチもいます。
Q.少し前にブログに載っていた、音楽部の紹介動画を見ました。そこで、「ボーカルになるにはオーディションが必要」とありました。ボーカル以外の楽器なら、オーディションはないのですか。
Q.この楽器は人気があるから希望通りになりにくい、または、この楽器はやりたい人が少ないので希望通りになりやすい、などはありますか?
Q.楽器は自分の希望のものを持てるのですか?
Q.ボーカルの場合はどうやって決めたりしますか?
→ボーカルのオーディションや、パートごとの人数調整は行いません。ただし「ボーカルのみをやる」ということは認めません。詳しくは、部活のブログに掲載した動画を見てください。
https://blog.goo.ne.jp/chusugionbu/e/aa86cede23dd0d4397e5b79e95e98652
Q.バンドは好きな友達と組んでいいのでしょうか?
→固定バンドは組みません。詳しくは、部活のブログに掲載した動画を見てください。
https://blog.goo.ne.jp/chusugionbu/e/aa86cede23dd0d4397e5b79e95e98652
Q.ブログに載っていた動画に、ボーカルギターベースドラムキーボード以外にも、サックスやバイオリンなどその他として書かれた楽器がありました。それらの楽器も1年生を募集しているのですか?また、それらの楽器を担当している先輩は他のボーカルやギターに比べると少ないのでしょうか。
→現在、ボーカルギターベースドラムキーボード以外を担当する人はいません。でも、それ以外の楽器でやりたい、という強い熱意があるなら歓迎します。詳しくは、部活の(以下略
Q.部員の皆様に質問ですが、正直休日なども部活があるのはキツいですか?
→コロナ以前は、月に2回ずつくらい日曜や祝日に合同ライブやイベントがありましたが、そういう活動が出来る日常が戻ってくるかどうかは、誰も分かりません。
Q.いつもどんなことをしてますか?
→コロナ以前の「いつも」について説明しても無駄かもしれません。今後の「いつも」であれば、リモート活動が中心になります。(対面状況で何かをやったり、大勢で集まったりする機会は、極端に少なくなる見込みです。)
2008年から作成・配布を続けてきた、部のオリジナル曲コンピレーションアルバムCDの配布を、今年度やめることにしました。
10年を一区切りに…とはなりませんでしたが、11年間作り続けてきました。
★★CDを作り続けた11年間のこと★★
2008年当時、たまたまDTMに凝っている部員(44期生)がおり、「オリジナル曲をレコーディングしてCD化したい」と発案があった瞬間を今でもよく覚えています。当時、部活の「再建」に取り組む途上にあったため、こうした新しい挑戦を大変好ましく感じたものです。
最初の4年間は、↑画像↑上段のように、CDはCDで用意して、それとともに学校の印刷機で歌詞をまとめた冊子を印刷していました。
その後、「やっぱりCDサイズの歌詞カードが欲しい」ということで、学校の印刷機で作ることも試みましたが、ピッタリにレイアウトしてピッタリに裁断することがあまりに(顧問の)手間で、どうしたものかと考えていました。
そんな折に野心家の48期生が「業者に発注して本格的なものを作りたい」ということで、2枚組分の曲数の歌詞を収めた歌詞カード+プラケース用バックインレイ+プラケース――という非常にお金のかかった仕様(苦笑)で作り上げたのが■■これ■■でした。(しかも「欲しい人全員に行き渡らなかった」ということで、48期生が(たしか)自腹でお金を追加して、必要数を増産した上で、なぜか余る!というオマケがつきました。)ちなみに2012、2013はジャケ絵を漫研の人に書いてもらいました。
この2012からは良くも悪くも安定して2枚組の作品が続き、現在に至っています。その2枚組を700枚ずつ計1400枚、部員各自のPCで寝ずに「手焼き」するということを昨年まで続けてきたわけです。音源制作~物理メディア制作をやりつつ、文化祭で演奏する曲を練習したりステージの演出を考えたりしていたのですから、何度か保護者の方から「やり過ぎだ(やらせ過ぎだ)」とのお叱りをいただきました。(とは言え、毎年「CDを文化祭のタイミングで作ることの是非」については再検討をしてきました。それでも部員は「文化祭でCDを配る」という決断をしてきたわけです。)
レコーディング~ミキシング~増産という一連の作業を何年も積み重ねてきたおかげで、「DiGiRECO JR.」さんには見開き1ページの記事を書いてもらったこともありました。
★★CD/配信 のメリット・デメリット★★
さて、思い出を語っていると話題は尽きないのですが、ここ数年は「本当にCDというメディアで良いのか?」という検討をしてきました。「CDが売れない・CDを聞かない」と言われるこのご時世に、です。
◆わざわざトレーに入れて再生をしてもらえなくても、「キレイなジャケット付きのCD」という〈形〉をとるのか?(ジャケットだけで1枚100円弱かかるものを部費で作って配って、聴いてはもらえない、というので良いのか?)
◆何も〈形〉は残らなくても、「広くみんなに聞いてもらう」という〈実〉をとるのか?
このどちらをとるのか?というのを数年議論してきたわけです。
現段階でも「やっぱりCDを作りたい」という声があることも確かです。しかし、現今、Eggs(サービス/アプリ)で高校生バンドが音源を発信することが多くなり、「配信して聞いてもらう」というやり方が浸透してきたこともあり、とうとう「CD制作をやめる」という方向に舵を切ることになりました。
★★スマホで聞いてもらうために★★
ここから、また新たな悩みが生まれます。それは、「どのような手段で配信して、聴いてもらうか」ということです。
今現在、高校生が音楽に接する手段は、多様化し、拡散しています。
従来のようにCDをPCに取り込み、WalkmanやiPhoneとデータ同期をして外に持ち出す、というスタイルも生き残っています。しかし、手元にCDがある状態から外に持ち出せるようになるまでのプロセスは(今や)お手軽とは言い難いものがあります。このことについて、部員の一人は「大好きなアーティスであればCDを買って、PCを介してモバイルに取り込むまでの手間は惜しくない。でも、『なんとなく聞いてみようかな』というレベルの作品だったら、その手間は面倒に感じる。」と教えてくれました。軽音楽部ごときのCDでは、なかなかその手間をかけてくれることは期待できそうにありません。
だとすると、例えば「Dropboxのようなクラウド上に音源データを置いておいて、後は各自のモバイルデバイスにダウンロードしてもらう」という手段も、あまり聞いてもらえるとは思いません。(しかもスマートフォンの普及に伴って、10代のPC操作スキルはむしろ下がっているため、「音源データを、モバイルと同期するための目的のフォルダにDLする」ということも、多くの人ができないと考えられます。)
そうなってくると、「いかにスマートフォンでお手軽に聞けるか」ということが重要になってきます。
首都圏高校生バンドマンが、いま一番身近に感じている配信プラットフォームはEggsです。Eggsはアプリを入れていなくてもブラウザベースで再生ができるという点では「お気軽に再生できる」というメリットがあります。一方で、「高校生バンドマンには広く浸透しているが、そうでない若者には馴染みがない」「プレイリストの形での配信向きではない」という点もあります。よって、少なくとも今年度はEggsを軸とした楽曲配信は考えませんでした。
いろいろと高校生にインタビューをしてみて、「高校生にお気軽に聞いてもらうための条件」は以下であると考えられます(少なくとも2019年秋現在では)。
(1)スマホで聞ける
(2)無料である
(3)専用アプリのインストールが不要
(4)通信容量を喰わない
=Wi-Fi下でDLして、オフラインで聴ける
(5)バックグラウンド再生可能
これに加えて、私たちの場合には
(6)アルバムというパッケージで配信できる
という条件が必要になります。
しかしながら、この条件を満たすような環境は見当たらず、(1)(2)(4)(5)の条件を満たす環境と言えば、「MusicFM」「MusicBox」「ClipBox」といった、著作権侵害が問題視されているようなアプリになってしまいます。(これらのアプリが若者に広く浸透しているのは、この(1)(2)(4)(5)を満たしているからだと思われます。)
――このように様々な手段を検討した結果として、今年度は以下の二つの手段をとりました。
【第1段階】
…YouTubeに音源+各曲ジャケット画像を組み合わせてアップロードし、再生リスト化することで、アルバムの体裁をとる。
この手段は上記の(1)~(6)に照らした時に、以下のようなメリット/デメリットがあります。
◎ (1)スマホで聞ける
◎ (2)無料である
○ (3)専用アプリのインストールが不要
△ (4)通信容量を喰わない…オフライン環境で聞くためにはユーザー側の工夫が必要
△ (5)バックグラウンド再生可能…アプリ次第
◎ (6)アルバムというパッケージで配信できる
【第2段階】
…配信代行サービスを利用し、Apple Music, LINE Music, Spotifyなど各種ストリーミングサービスから配信する。
この手段は上記の(1)~(6)に照らした時に、以下のようなメリット/デメリットがあります。
◎ (1)スマホで聞ける
○ (2)無料である…サービスによって様々!
△ (3)専用アプリのインストールが不要
△ (4)通信容量を喰わない…音楽を外に持ち出すためのDLはだいたい有料
○ (5)バックグラウンド再生可能…アプリ次第
◎ (6)アルバムというパッケージで配信できる
第1段階については、なるべく音源に(ジャケット画像ではない)画像をつけることで、「知っている子が出てくるみたいだから再生してみよう」というきっかけを作ろう!と呼びかけたのですが、生徒たちが音源制作で力尽きてしまい、実現しませんでした。これは来年の課題となります。
第2段階については、どうしても「音源・アー写・ジャケ写・著作権者情報」などの取りまとめをするディレクターが必要になります。前例がないために、今年は顧問がこのディレクション業務を行いましたが、正直なところ「顧問がお世話しすぎ」の感が拭い去れません。加えて、音源処理の技術の無い顧問がディレクションを行う都合上「アルバム全体のマスタリング」にまで手が回りません。ここをどうするのか、も今後の課題になります。
今後、若者の音楽への接し方は、どんどん変わっていくと思います。そこに部活動のような、ある種ルーティーン中心の組織が、どこまでキャッチアップできるか――部の底力を試されるところです。
(追記)
先日、twitter上で「高校生が脱法アプリで音楽を聴くのを阻止できないのなら、Apple MusicやLINE Musicを高校生に無料で開放すればよい」という意見を見かけました。「サービス提供側が高校生と大学生をどうやって見分けるのか」「クリエイターに適切な対価を払えるのか」といった問題はあるでしょう。しかし、多くのスマホゲームやマンガアプリなどが広告収入に期待して、無料で提供されつつクリエイターにも還元されている現状を見ると、あながち暴論ではないように思えました。