部員ならびに卒業生の皆さんは、顧問が常々「プロのミュージシャンなんて目指すものじゃない」と発言していることをご存知かと思います。これが、「中杉の音楽部顧問は若者が夢を追うことを阻害している」「安全で無難な人生のレールを歩ませようとしている」と一部で受け止められたようですので、反論しておきます。
私は、
(1)高校生レベルが考える「プロのミュージシャンになるためのプロセス」に
疑問を感じています。また、
(2)ビジネスモデルが大きく変化している音楽シーンで生き抜くためには、それなりのattitudeを先に身につけておく必要がある
――と考えています。この(1)と(2)は切り離して語れないために、一緒にお話ししましょう。
まず(1)の観点から。高校生が「プロのミュージシャン」になるために、どんなことに情熱を注ぐでしょう?
(a)頑張って楽器の練習をする、歌の練習をする、音楽的な知識を深める
(b)良い曲を作り、良い音源を作る
(c)ライブハウスなどで、ライブを繰り返す
(d)ファンを獲得する
(e)レコード会社の人に見出してもらう
こうしたプロセスが疑いもなく大量に再生産されている現状で、それに乗っかって「頑張る!」ということを想定している以上、私はプロのミュージシャンを目指すことを全力で阻止します。たぶん成功はつかめませんから。
(a)
プロのミュージシャンよりもスキルの高いアマチュアがいることは、高校生でも想像できるでしょうし、演奏スキルと収入が比例していないことだって、分かるはずです。それなのに、「スキルアップすればチャンスが掴める」と愚直に信じる姿は、ピュアもしくは○○です。もちろん、緩やかには比例してますよ。でも、「それ以外の要因がいかに大きいか」に目を背けて、「上手くなれば…」とほざいておっしゃっていることが愚かだと言うんです。
(b)
〈アーティストに紐づけられた形の音源とか楽曲〉が売れない時代です。売れているのは個々の楽曲コンテンツではなく、それを聞くためのサービスとかパッケージです。LINEミュージック然り、Spotify然り。どっちも利用してないけど。サービスさえ導入しちゃえばタダで聞けるものを(あるいは若者の多くが利用している違法ダウンロードサイトで聞けるものを)どうやって「売る」つもりなんでしょう?
(c)
いま、音楽関連である程度収入が得られるとしたら、ライブです。でも、それは正確に言えば「ライブによる物販収入」です。プロのミュージシャンを目指して、結果としてタオルの売り上げで食えるようになって嬉しいか?それは「プロのミュージシャン」ではなく「タオル屋さん」です。もう一つ。ワンマンライブが売れず、フェスが盛況なのも(b)と同じですよね。つまりアーティスト名というミニマムなコンテンツは売れず(また、そうした「作家性」への信奉も薄れ)、それらを集約したパッケージが売れているわけです。パッケージしているのは誰か?多くの場合、アーティストとかミュージシャンではないですよね?これでも「ライブを頑張ればビッグになれる」なんて信じ続けられるんですかね?誰かにパッケージしてもらうのを待つんですか?
(d)
(a)~(c)を否定された場合、何を頑張ってファンを獲得しますか?(ファンからどうやってお金を取りますか?)——だいたい「お金を払って」と言うのは、アーティストサイドというよりは、マネジメントサイドですよね。
(e)
メジャーレーベルに見出してもらえれば、それはビッグチャンスです。しかし、その瞬間からアーティストはレーベルの商売のための商品です。売れるためには、メンバーを差し替えることだってやりますし、〈ミュージシャンのcreativeness〉よりも、〈商品として売れる作品を作れるプロデューサーの権限〉の方が優先されます。つまり、自分たちのやりたいことは大きく捻じ曲げられる可能性があるのです。売れるためには、○ュージック○テーションで、弾いているフリだってしなきゃいけないんですが、それって本当にやりたいことですか?
ミュージシャンを目指して、夢を追う若者の多くが、以上のことを直視できていません。見えてない人も終わってますが、見ないようにしている人はもっと終わってる。使い古された「レコ初」なんて言葉を使って、それっぽい活動をしているのもどうかと思いますし、「一人でも俺の歌を聞いてくれる人がいたらその人のために俺は歌うぜ!」などと叫んでいる人には「そいつを連れてカラオケボックスに行ってこいや」と言いたい。――逆に、上記(a)~(e)の現状にカウンターを喰らわす妙案を持っているのなら、「頑張れ」と背中を押します。「夢を追え」と。いや、現状ではアイディアがないにせよ、問題の所在が見えていて、そこを突破しようとするattitudeの持ち主だと判断すれば応援します。中杉にいる子たちは――全員とは言えませんが――そういうポテンシャルを有しているとは思っています。でも、考えない人、システム自体を再構築する野心のない人の背中なんか押しませんよ。
ここまで書いたことでお分かりいただけると思うのうですが、上記(a)~(e)に対して、手を打っているのはミュージシャンサイドではなく、マネジメントサイドあるいはプローデューサーサイドなんですよ。だから、中杉音楽部はマネジメント力とかプロデュース力をつけるべく活動をしているのです。一生懸命練習するだけでなく、自分たちのバンドとかイベントとかをどのようにプロデュースするのか?ということを考えてもらっています。最先端のテクノロジーを使いこなすのは難しいですが、それでもiPhoneでPVを作っちゃったり、YouTubeラジオをやってみたり、既存の軽音楽部の活動の枠組みを突破する試みを強く推奨しています。どれもこれも、消費され、使い捨てられる側で「夢を追っている」という幻想に浸るのではなく、現状分析をして問題解決力と突破力のある人間として、力強くこの不確実な社会をサバイブしてもらうために!!!!――それでも、中杉の顧問は「夢をあきらめるよう仕向けている」「安全なレールを進ませようとしている」とおっしゃいますか?
私は、
(1)高校生レベルが考える「プロのミュージシャンになるためのプロセス」に
疑問を感じています。また、
(2)ビジネスモデルが大きく変化している音楽シーンで生き抜くためには、それなりのattitudeを先に身につけておく必要がある
――と考えています。この(1)と(2)は切り離して語れないために、一緒にお話ししましょう。
まず(1)の観点から。高校生が「プロのミュージシャン」になるために、どんなことに情熱を注ぐでしょう?
(a)頑張って楽器の練習をする、歌の練習をする、音楽的な知識を深める
(b)良い曲を作り、良い音源を作る
(c)ライブハウスなどで、ライブを繰り返す
(d)ファンを獲得する
(e)レコード会社の人に見出してもらう
こうしたプロセスが疑いもなく大量に再生産されている現状で、それに乗っかって「頑張る!」ということを想定している以上、私はプロのミュージシャンを目指すことを全力で阻止します。たぶん成功はつかめませんから。
(a)
プロのミュージシャンよりもスキルの高いアマチュアがいることは、高校生でも想像できるでしょうし、演奏スキルと収入が比例していないことだって、分かるはずです。それなのに、「スキルアップすればチャンスが掴める」と愚直に信じる姿は、ピュアもしくは○○です。もちろん、緩やかには比例してますよ。でも、「それ以外の要因がいかに大きいか」に目を背けて、「上手くなれば…」と
(b)
〈アーティストに紐づけられた形の音源とか楽曲〉が売れない時代です。売れているのは個々の楽曲コンテンツではなく、それを聞くためのサービスとかパッケージです。LINEミュージック然り、Spotify然り。どっちも利用してないけど。サービスさえ導入しちゃえばタダで聞けるものを(あるいは若者の多くが利用している違法ダウンロードサイトで聞けるものを)どうやって「売る」つもりなんでしょう?
(c)
いま、音楽関連である程度収入が得られるとしたら、ライブです。でも、それは正確に言えば「ライブによる物販収入」です。プロのミュージシャンを目指して、結果としてタオルの売り上げで食えるようになって嬉しいか?それは「プロのミュージシャン」ではなく「タオル屋さん」です。もう一つ。ワンマンライブが売れず、フェスが盛況なのも(b)と同じですよね。つまりアーティスト名というミニマムなコンテンツは売れず(また、そうした「作家性」への信奉も薄れ)、それらを集約したパッケージが売れているわけです。パッケージしているのは誰か?多くの場合、アーティストとかミュージシャンではないですよね?これでも「ライブを頑張ればビッグになれる」なんて信じ続けられるんですかね?誰かにパッケージしてもらうのを待つんですか?
(d)
(a)~(c)を否定された場合、何を頑張ってファンを獲得しますか?(ファンからどうやってお金を取りますか?)——だいたい「お金を払って」と言うのは、アーティストサイドというよりは、マネジメントサイドですよね。
(e)
メジャーレーベルに見出してもらえれば、それはビッグチャンスです。しかし、その瞬間からアーティストはレーベルの商売のための商品です。売れるためには、メンバーを差し替えることだってやりますし、〈ミュージシャンのcreativeness〉よりも、〈商品として売れる作品を作れるプロデューサーの権限〉の方が優先されます。つまり、自分たちのやりたいことは大きく捻じ曲げられる可能性があるのです。売れるためには、○ュージック○テーションで、弾いているフリだってしなきゃいけないんですが、それって本当にやりたいことですか?
ミュージシャンを目指して、夢を追う若者の多くが、以上のことを直視できていません。見えてない人も終わってますが、見ないようにしている人はもっと終わってる。使い古された「レコ初」なんて言葉を使って、それっぽい活動をしているのもどうかと思いますし、「一人でも俺の歌を聞いてくれる人がいたらその人のために俺は歌うぜ!」などと叫んでいる人には「そいつを連れてカラオケボックスに行ってこいや」と言いたい。――逆に、上記(a)~(e)の現状にカウンターを喰らわす妙案を持っているのなら、「頑張れ」と背中を押します。「夢を追え」と。いや、現状ではアイディアがないにせよ、問題の所在が見えていて、そこを突破しようとするattitudeの持ち主だと判断すれば応援します。中杉にいる子たちは――全員とは言えませんが――そういうポテンシャルを有しているとは思っています。でも、考えない人、システム自体を再構築する野心のない人の背中なんか押しませんよ。
ここまで書いたことでお分かりいただけると思うのうですが、上記(a)~(e)に対して、手を打っているのはミュージシャンサイドではなく、マネジメントサイドあるいはプローデューサーサイドなんですよ。だから、中杉音楽部はマネジメント力とかプロデュース力をつけるべく活動をしているのです。一生懸命練習するだけでなく、自分たちのバンドとかイベントとかをどのようにプロデュースするのか?ということを考えてもらっています。最先端のテクノロジーを使いこなすのは難しいですが、それでもiPhoneでPVを作っちゃったり、YouTubeラジオをやってみたり、既存の軽音楽部の活動の枠組みを突破する試みを強く推奨しています。どれもこれも、消費され、使い捨てられる側で「夢を追っている」という幻想に浸るのではなく、現状分析をして問題解決力と突破力のある人間として、力強くこの不確実な社会をサバイブしてもらうために!!!!――それでも、中杉の顧問は「夢をあきらめるよう仕向けている」「安全なレールを進ませようとしている」とおっしゃいますか?