
これは大正13年8月31日の横浜貿易新報の記事。横浜市内で嗜眠病が3件発生したことを伝えている。 この病気は第一次世界大戦の副産物で、病原菌も分からず、空気伝染するので予防法は困難であるという。 ![]() どんな病気なのか調べている際に、宮本百合子の『長崎の印象』という作品にぶつかった。この中に嗜眠病という言葉が出てくるのだ。それと同時に、天然痘の予防接種の話も。 《私共は別府にいる時既に知人から流行の天然痘予防の注意を受けていた。臼杵へ行くと、そこでは全町民強制種痘をしたという。まして、長崎へ行くのなら危険此上ないというK氏の言葉で、計らず臼杵町費の一端を掠め、S氏の種痘を受けた。私のは一日痒くそれきり。Yのは、吸収がよく怪しいと思っていると、十四五年ぶりの植疱瘡では無理もない、鹿児島の市を歩いている頃からそろそろ妙になって来た。》 種痘とは天然痘の予防接種のことであるが、植疱瘡も同じだそうだ。宮本百合子はワクチンを打ったあと、一日痒かっただけなのに、同行者のYにはかなりの副反応が出ていたと思われる。 嗜眠病という病気が流行していたという記事を読んだことから、宮本百合子の短編につながったという話だけのことだが、短い作品なので読んでみたらいかがだろうか。 『長崎の印象(この一篇をN氏、A氏におくる)』 (青空文庫) 昨日(25日)、日本でもサル痘の患者が発生したそうです。厚生労働省のページ。 ![]() |
文章を読み、「あれ?」と疑問が湧き、
「そういえば」と少し調べたらやっぱり……。
この時代ってレズビアンがけっこう多くて、
作家もカミングアウトしていたのですね。
知りませんでした。
Yが男だという前提で読み始めましたが、
途中で女性だとわかって、
女の二人旅かと思っていましたが。
タイトルにあるN氏、A氏、誰なんでしょうかねぇ。