“凡人”である本田圭佑がなぜこの位置にいられるのか?
というのも、僕はサッカーの能力でいえば、本当に低いと言わざるを得ない。
それは小さい頃から常に実感してきたことで、ガンバ大阪のジュニアユースに所属していた時も、周りにいた同級生の方が明らかに上手かった。当然のことながら、ガンバユースに昇格できなかったんです。普通の人間だったら、そこでプロになるのを諦めるのだと思う。でも、僕にはその逆境こそが必要だった。
結果的には星稜高校に進んで、名古屋グランパスに入って、21歳でオランダのフェンロに移籍した。自分のイメージからすると、随分遅いけれども、29歳の今はミランの10番を背負っている。“凡人”である僕が何で、ここまで来れたのかと言えば、逆境をバネにした精神力と圧倒的な努力なんです。
日本代表の練習でも、スキルの面では自分より上手いなと思う選手がたくさんいる。特に若い選手は、細かいタッチが上手で、思わず感心してしまうことすらある。
そんな自分がなぜこの位置にいられるのか? 何度も言うように、サッカーはスキルだけではない。むしろスキル以外の部分が勝敗を分けることも多々ある。僕はそのことに早い段階から気がついて、真剣に着手した。試合に勝つために大事なものは日々の努力で補える。今、目の前にある課題、困難な問題をいかに解決するのか。それをサッカー選手・本田圭佑としては証明してきたつもりではある。
もちろん、もっと上はあるし、それを目指している。でも少なくとも、サッカー選手としてスキルでは並の人間が、ミランの10番に行き着くまでの道は見えているわけです。
僕が誇れる本当の武器は――。
人間は誰しも知らず知らずのうちに、自分で自分の限界を定めてしまっていることがある。しかも、限界というのは自分自身ではなかなか取り外せないもの。その意味でも外側から常識を外してあげる作業はとても大事です。
本当に伸びる人間は、やはりいい人間との出会いがある。
僕自身、本当に今まで巡り会えた人に助けられたからこそ、自分の枠を大きくしてビジョンを広げられたのだと思っている。
僕は“凡人”だし、それを僕自身が自覚している。
何が人より優っているのかというと、“決断力”と“行動力”なんです。僕が考えているよりも凄いプランや天才的なアイディアを持っている人はたくさんいると思う。でも、それを実行に移せないまま終わってしまうケースが圧倒的に多い。
僕は自分が信じた道は、リスクを恐れることなく突き進むことができる。それは自分が誇れる本当の武器だと思っています。
写真と記事は無関係です。