
国立国際美術館で開催中の「森山大道写真展 オン・ザ・ロード」を見た。
この展覧会は森山氏の1960年代から現在までの作品群が一望できる、大回顧展のような構成になっている。
まだ本人さんは生きてるけど。
あまりにも有名な写真家なので知っている気になっていたが、こうして400点以上もの作品をじっくり見たのははじめてだ。
プロヴォーク時代のいわゆる「アレ・ブレ・ボケ」もおもしろいが、そのあとのカリッとしたモノクロ写真群の方がわたしはカッコいいと思う。
以前ならあんなハイコントラストなプリントは美しいと思わなかったけど、きょう見たらとても美しく見えたのはなぜか。
RCペーパーで焼かれたプリントでさえ、美しく見えたから不思議だった。
全部見おえての感想は「まずいものを見てしまった」ということだ。
こんなに何もかもヤラレてしまったら、スナップ写真を自分の制作スタイルにしてる者はもうやることがない。
森山氏のイメージをなぞらずに、自分のイメージで撮るのは骨の折れる仕事だ。
調子に乗って見るのではなかったと思う。
もしスナップ写真を撮りたいのなら、森山大道を見るまえに撮るべきである。
余談だが、女性の入場者が多いのが意外であった。
一眼レフを提げた年配の女性たちやカップルでもたくさん来ている。
森山氏の写真は完全に男の視線(欲望)で撮っているから、あれは「オトコ写真」の最右翼であって、いま流行りのかわいい「女子写真」ではない。
あんな写真を女性が見ておもしろいものか。
カップルや熟年の夫婦が見ているのを見ていると、だいたい男性が女性に森山写真のウンチクを垂れていることが多かった。
どこにでも森山フリークはいるものである。
それを聞かされながら、400点ものあんな写真を見るのもどうかと思う。