Happyday of LUCKY

日々の気付きと感謝を忘れないように綴るページ

美しい家具に生まれ変わる木材たち

2010年09月26日 | Photography


友人の紹介で家具の写真を撮ってほしいという話が来た。
依頼主は永島庸さんという家具作家だ。
作品集をつくって外国へ売り込むための写真だという。
これは責任重大だ。
きょうは打ち合わせのために永島さんの工房へおじゃまする。

その工房は奈良県の田原本という町にあって、ウチからだと車で1時間半ほどかかるところ。
カーナビの案内で到着したその場所は、田んぼの真ん中にある神社だった。
その神社の横(というか中)に永島さんの工房はあった。
永島さんって本業は神主なのか?



永島さんはの作品のコンセプトは「廃材家具」。
解体した家屋などの廃材を譲り受けて、そこから新たに家具をつくりだすのだそうだ。
庸さんがデザインを考え、加工と仕上げを夫のリッキーさんと二人でするという。
廃材などというと、なにかネガティブなイメージを持ってしまうけど、そこから生まれた家具たちを見ると、それが廃材であったとは思えないほどステキなものばかりだ。
リッキーさん曰く。
「この家具が受けているのは、いまの時代が後押ししているからや」
エコやリサイクルといった言葉は聞こえはいいが、あえて廃材という言葉を使って、そこから生まれ変わってくる姿を強調しているというわけか。
見せてもらった作品はどれもやさしいデザインで、思わず触りたくなるものばかりだった。

作品を見たあと、その一つを屋外で試し撮りさせてもらう。
家具を撮るのは久しぶりだが、永島さん夫婦と話しているあいだに、なんとなく撮りたいイメージが浮かんできた。
その作品は彼らの作品のなかでも一番人気の高い「桜のついたて」だ。
表面に桜の樹の皮を貼って浮き彫りのようになっており、花びらや葉っぱは透かし彫りになっている。
日本的な情緒とあたたかい味わいがある。
これを裏の神社へつづく細い道に立ててみると、まるで地面から自然に生えてきたように見えた。
本番の撮影はまた来週だ。

永島庸さんの紹介

若者よ、野望をいだけ!

2010年09月24日 | Life


本年度さいごの授業。
まず先日の前期末テストの返却と解答から。
「問15:プロカメラマンになるために、もっとも大切なことは何だと思いますか。あなたの考えを自由に書いてください。(140文字以上)」
この問いに正解はない。
いろいろな解答があったが、書いてあればすべて○だ。

 写真・カメラに関する知識や技術
 被写体に対する観察力や洞察力
 情熱や意気込みを持続していく
 目標を持つ
 自分を甘やかさない
 あいさつ、礼儀正しさ、ていねいな言葉、笑顔、大きな声

どの答えも正解だと思う。
実感としてわたしの考えに近いのは、さいごの「あいさつ、・・・」だ。
社会人になるのだからあたりまえのことだけど、人間というものはまずは外見や言動から評価されるので、この点はもっとも大切だ。
いくら写真が撮れても、無愛想で失礼な態度のカメラマンには仕事は来ない。
もっといえば、約束を守り、感謝の気持ちを素直に伝えることのできる人が、お客さまやクライアントの信頼を勝ち得るのである。

夏休みの課題を返却し、良く撮れていた人の写真を紹介すると、もう時間切れとなった。
ネパールで撮った写真を見せようと思って準備していたのに残念だ。
つぎの時間のはじめに無理をいって記念写真を3枚だけ撮らせてもらった。
無理ついでにネパールのスライドショーもやればよかった。
ホントは学生たちの自由な作品も見せてもらう予定だったが、それもかなわなかった。

印象派の画家が見た光

2010年09月20日 | Life


日本人の絵画の見方はまちがっていると思う。
きょう、サントリーミュージアムへ「印象派とモダンアート」展を見にいって、そう思った。
絵画って作品の大きさにもよるけど、2~3メートルは離れないと何が描いてあるかわからない。
なのに、みんな1メートルくらいから見るので、離れて見ようと思っても人垣がじゃまで見えないのだ。
なかには絵に顔を擦りつけるくらい近づけて見てる人もいるが、あれはいったい何を見ているのか。

それにしても日本人って印象派が好きだ。
印象派がらみの展覧会は毎年どこかで必ず開催されている。
とくにモネとかルノワールなどの淡泊でふわふわとした筆づかいが日本人の感性に合うのか。
だけど印象派の絵画こそ一歩下がって絵全体を見わたさないと、あの光の美しさを感じることはできないのに。
わたしは最初のコーナーでこれらの作品を人垣の切れ間からぼんやり見ていたのだけれど、以前よりも光をより感じることができたのがおもしろかった。
ピサロやシスレーが好んで描いたフランス郊外の風景画を見ると、こんな風景を写真で撮っても写真にならないだろうという場所が多い。
だが、その絵からは光があふれ出ていて、やはりこれは描かざるを得なかったのだなと感じた。
モネなんかウォータールー橋をまったく同じ場所から何枚も描いているけど、光の表情がそれぞれちがうので作品たりえてる。
写真なら成立しないと思う。



印象派以外にもさまざまな作品があって、今回とくに感銘を受けたのはルソーの絵だ。
素朴派とよばれる彼の絵は、どうも構図や遠近法がヘンで、いかにも素人っぽいので、じつは好きではなかった。
が、きょう「パッシィの歩道橋」というF8ほどの小作品を見て、まずその色の美しさに魅せられた。
そしてヘンだと思っていた構図(やはりヘンだけど)の力の抜けたユルさがとても気持ちよかった。
50歳までパリ市の公務員をしながら独学で描いていたルソーならではの絵であって、本格的な絵画教育を受けた人間にはぜったいに描けないと思う。

さらにモダンアートのコーナーへ行く。
モダンアートといってもホックニーあたりまでで、学生時代大好きだったヴァザルリやベン・ニコルソンなどは懐かしさとともに、なにか古典絵画のように見えてしまった。
フォンタナの有名な「空間概念」シリーズは、例のナイフで切った作品だけでなく、中央に穴を開けてその開口部に油えのぐを盛りあげて塗った、まるで火山の火口のような作品がおもしろかった。
久しぶりにマンズーの彫刻とも出会えたし、なんか気持ちがリフレッシュできた展覧会であった。

M8で初仕事

2010年09月13日 | Camera


きょうから今月の25日まで現代美術センター(谷町4丁目)で「画廊の視点」という現代アートの展覧会が開催されている。
会場には大阪にある13の画廊やギャラリーから選ばれた作家の作品が一堂に会している。
それぞれの画廊イチオシの作家さんが集まっているので、ある意味、関西で見られるアート作品の美味しいところ取りのような展覧会である。
これを見ない手はないだろう。

この展覧会に楓ギャラリーの推薦で出品している吉田重信さんとは10年近いお付き合いで、関西で展覧会や個展をするときには必ず作品撮りを頼まれる。
今回はなんと現代美術センターと楓ギャラリーとの同時開催なのだが、わたしは新作を展示してある楓ギャラリーで作品を撮る。
ギャラリーに入ってまず驚くのは足の踏み場もないほど、子供用の靴や草履が床を埋め尽くしていることだ。
さらに一番奥の方に小さな赤いランプが点っていて、ギャラリー内の照明はすべて消えている。
真っ赤に塗られた窓ガラスから弱い外光が入ってくるほかは、その赤いランプだけなので、目が慣れるまでほとんど何も見えない。
徐々に見えてくると壁一面に一輪挿しのような花が並んでいるのに気づく。
作品の題名は「心ノ虹」。
あなたの虹をここで見つけてください、ということらしい。

毎回おもしろい作品を見せてくれる吉田さんであるが、今回の作品はちょっと暗すぎて撮りづらいと思う。
とりあえずニコンD300で撮ってみると、ノイズよりもピントに問題が発生。
いったん照明を点けてしっかりピント合わせしているのに、なぜかピントがピシッと来ないのである。
ためしに照明を点けたままで撮ってみるとピントが来るではないか。
ということは、この小さな赤いランプのせいなのか。なぜ?
原因はわからないが、とにかくこれではまともな写真にならない。


D300で撮った画像の一部

仕方がないので今度はライカM8で撮ってみる。
吉田さんは「そんな小さなカメラで大丈夫?」と心配そう。
しっかりピント合わせをしてレリーズすると、はたして十分な解像感でピントが来た!
これならB1のポスターにでも使えるレベルだろう。
ああ、M8を持っていっておいてよかった。


M8で撮った画像の一部

ほとんどのデジカメはモアレ軽減のためにイメージセンサの前にローパスフィルターが入っている。
だがローパスフィルターをかけると解像感が失われるのでM8にはそれが入っていない。
D300とのちがいはそこだと思う。
あと考えられるのは、M8のイメージセンサは赤い光の波長を赤外線レベルまで感じてしまうので、ふだんの撮影には赤外線をカットするIRフィルターを付けなければならない。
だが、きょうはそのフィルターを外して撮影したので、より赤いランプの光を感じてくれたのかもしれない。
くわしいメカニズムはわからないけど、とにかくきょうほどM8のすごさを実感した日はない。


光の芸術家・吉田重信さん

M8の質感描写を支えるもの

2010年09月11日 | Camera


ちょっとしたものを買いにビックカメラへ行く。
ナンバまでの道すがらM8でパチパチと。
いやあ、ゾナー40ミリってホントによく写る。
最近これを付けっぱなしでレンズ交換さえしていない。
上の鯛のオブジェの質感はどうよ。



こちらのブロンズのレリーフはどうよ。
クリックすると長辺979ピクセルの画像になります。
ちなみに元画像は979の4倍です。

鯛はディフューズされたトップ光線、レリーフはダイレクトの斜光線なので、それぞれの光線が被写体の質感をうまく表現している。
一般的に柔らかいものは柔らかい光で、硬いものは硬い光で撮るのがセオリーだ。
ただスタジオでライトを組むわけではないスナップ撮影では、光質は自由にならないのでその場で判断するしかない。
言いかえれば、どんな光が当たっているのか見きわめる目がなければ、きれいな質感描写はできないのである。