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第4回『〈政治〉の危機とアーレント』を読む会・レジュメ

2017-12-27 | 『〈政治〉の危機とアーレント』を読む
第4回佐藤和夫『〈政治〉の危機とアーレント』を読む会 (まとめ:渡部 純)

第4章「労働・仕事・活動」
この3つの概念はアーレント政治思想の中核
【基本的な枠組み】
① 西欧政治思想では「活動的生活」よりも「観想的生活」こそが最高(133)
② ポリスの「不死」に対する疑念が「観照」という「永遠なものの経験」へ向かわせた
③ 「死すべき人間」の「活動」の儚さを「不死」のものにさせる歴史物語
④ 3つの活動的生活(人間の条件)
「労働」…生命を維持するための営み。だが、その確保はときに暴力性を発揮する
⇒恐慌、飢餓、戦争
「仕事」・「制作」への警戒…近代思想・科学が歴史と自然を「つくる」ことができる
⇒全体主義・原子爆弾
「活動」…活動的生活の中核をなす自由な話し合い。
 ⇒予測不可能性と不可予言性、儚さ

1.労働
① 近代の労働賛美…資本主義と科学技術は労働からの解放を実現するように思われた
 ⇒しかし、アーレントの批判は労働がもつ他者との共同の忘却に向けられる
② 労働…「背後に何も残さないこと、労苦の結果がそれに費やした労苦と同じくらい早く消費されてしまうこと」
⇒他方、「生命の祝福」は労働に固有の物…仕事後の一杯のビール。この幸福は宝くじ に当たる幸運とは違う。労苦がともうなうがゆえに幸福は生まれる
③ マルクスの発見…は剰余価値が生みだす「労働力」は際限のない富の拡大の論拠となる
 ⇒私的所有の無視につながったことをアーレントは批判する。富の増大は話し合いという「ポリス(政治)的動物」の次元には達しえないのだ
④ アーレントが批判を向ける「労働」とは
⇒他者との共存が忘れられ、ひたすらカネや富の増殖が目的化された「労働」
※ しかし、他者の世話に従事するケア労働には「活動」的が含まれている

2.仕事
①仕事とは
「仕事は、すべての自然環境と際立って異なる物の「人工的」世界を作り出す。その物の世界の境界線の内部で、それぞれ個々の生命は安住の地を見いだすのであるが、他方、この世界そのものはそれら個々の生命を超えて永続するようにできている。そこで、仕事の人間的条件は世界性である。」(『人間の条件』)
② マルクスの労働=アーレントにおける「仕事」…人間が自然に働きかける中で自己を対象化し、人間主体が形成され世界が人間化される
⇒しかし、今日、人間が自然に働きかける営みは、もはや無制限に肯定されない
⇒工作人は自然の破壊者になる
⇒自然に対する「制作」の「自己確証と満足」は暴力の経験である
③ 「仕事」/「制作」はモデル(目的)と手段のカテゴリーに支配される

a.道具の手段性とテクノロジーによる人間の「適合」
① 工作人は世界の持続と安定性を目指す世界建設的な営む存在である。
⇒しかし、道具から機械に変わっていくと労働者に対して機械のリズムに合わせるように要求し始める
⇒機械が人間の条件になるのであって、そこから自由になることはありえない
② 科学技術の進行…蒸気⇒電力⇒オートメーション⇒核エネルギー=地球破壊の段階
⇒自然過程に核エネルギーが入り込むと、「目的―手段」の関係が成り立たず、自分たちの目的のために打ち立てるはずの手段が世界を破壊するようになる

b.手段性の拡大
① 制作の「目的―手段」の関係の問題点…何のための目的か?有用性だけで目的が定まるものはすべて他の物の手段としてのみ有用であるにすぎない
② 目的によって手段の暴力は正当化されるが…
 ⇒ベンヤミンの『暴力批判論』…軍隊や警察暴力を正当化する法

3.活動
① 「話し合うことによってこそ人間は政治的な存在になる」
⇒人間が人間であるがゆえに直接コミュニケーションする存在であるということは人間が言葉で話し合うということによる
③ 他者との語り合いの中にユニークネス(個性)を示していく(第二の誕生)
⇒誰も自分の経験を誰かに変わってもらうことはできない。その経験を語るところにユニークネスが現れる
④ 活動空間の条件…人々が互いの違いを認め合い、違いのゆえにこそ平等であること、コミュニケーションそのものに関心や喜びを向けうること
⇒経済的利害や労働条件によって活動の条件は奪われる
 ※サラリーマンは現代の奴隷!
⑤ 「活動」の忘却が全体主義を招いた
人間存在のリアリティやアイデンティティのためには「活動」が不可欠
⑥ 近代の『歴史の進歩』
・光…科学技術の発展、資本主義による富の形成、市民革命による人権思想や民主主義
・影…物質的欲望の際限のない拡大、帝国主義と植民地化、侵略戦争、排外主義…
⇒歴史の進歩という必然性の中で予測不可能な個々人の共同による「活動」は忘却された
⑦ 家事・市民運動・出産・教育の活動/非活動性
⇒家族の中においても政治的要素が意味を持ちうる
⑧ 「活動」の予測不可能性と一回性
⇒活動の不可逆性と不可予言性という性質…予測不可能な「活動」は過ちをももたらす
・「赦し」…新たな「始める」ことを可能にする人間の能力
⇒撫順の奇跡…担白という『告白』作業による修復的正義、真実和解委員会
・「約束」…予測不可能な活動に安定を確保する

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