※写真は石原真衣さんの博士論文をまとめた『〈沈黙〉の自伝的民族誌(オートエスノグラフィー) サイレント・アイヌの痛みと救済の物語』(北海道大学出版会)の表紙
【テーマ】「サイレント・アイヌ」とは何か?
【日 時】2021年8月1日(日)15:00〜18:00
15:00~15:45 石原さんによるトーク
15:45~16:00 石原&渡部によるダイアローグ
16:10~18:00 参加者とのダイアローグ
【ゲスト】石原真衣さん(北海道大学アイヌ・先住民研究センター,助教)
【会 場】ペントノート 福島市上町2-20 福島中央ビル2階
【定員】20名
【参加申込】 参加希望の方はメッセージをください。定員になり次第応募を締め切ります。
満員御礼m(__)m参加募集を締め切りました。
【参加費】 ※ドリンクは各自でご購入下さい。会場費として300円いただきます。
【開催趣旨】
「サイレント・アイヌ」。聞きなれぬこの言葉が意味するものとは何か。
今回、北海道よりお越しいただくゲストの石原真衣さんは、〈アイヌ〉と〈会津〉にルーツをもつ文化人類学者です。石原さんは、その二つのルーツのあいだで沈黙してきた自身の経験を踏まえて、ご自分の家族の語りとファミリーヒストリーを分析しながら「サイレント・アイヌ」という概念を形成されました。それについて、石原さんの言葉を以下に引用します。
「私は自己の出自を明かさなければ、アイヌと名指されることはないし、人生の多くを「サイレント・アイヌ」として過ごしてきたので、市民がいかにアイヌについて感じているかということを、身体を通じて感じてきた。私のように多くのアイヌ出自の者が沈黙することによって、アイヌの存在は自明のものとはされずに、社会は構成されてきだろう。なぜ、多くのアイヌ出自の人間が沈黙するのかという問題は、これまでほとんどタブーとして扱われてきた。私は「サイレント・アイヌ」として、この問題に当事者として取り組みたいと思ってきたが、「寝た子を起こすな」と何度も言われたことがある。それは、差別や偏見を恐れて、日本人として生きることを選択する人々にとって、やっと手に入れた穏やかな生活を脅かすなという警告でもあると思う。
しかし、多数派の社会の一員として生きる世界と、アイヌの出自が絶えず迫る別の世界を彷徨い続ける現代の<アイヌ>の生き方に違和感を覚え、沈黙したまま痛みを抱えることは、本当に自らが望んでいる生活といえるだろうか。
アイデンティティの葛藤や回復といった側面からの議論ではなく、なぜ、現代を生きるアイヌ民族が沈黙するのか、そこにはどのような植民地主義的過去があったのかを検討することによって、これまで検討されてきた文化や福祉問題といった従来の先住民問題とは異なる、新たな視点を提供したい」(「沈黙を問う : 『「サイレント・アイヌ』」というもうひとつの先住民問題」,北方人文研究,2018年)
石原さんはこのような問いは、原発事故によって沈黙を強いられた福島においても共有される課題ではないでしょうか。
日本の植民地主義によって周縁化されたアイヌ民族の中に、さらに周縁化された「サイレント・アイヌ」という存在がいる。そのことを考えることは、私たちの社会のなかで沈黙を強いられているあらゆる存在への想像力を逞しくすることに通じるでしょう。
ぜひこの問題を皆さんで一緒に考えましょう!
久しぶりのカフェロゴに多くの皆様にご参加いただければ幸いです。
【参考資料】
動画:
第1552回 アイヌルーツを持つ文化人類学者 石原真衣さん