1970年、高校に入学した私はギター同好会に入会した。
ギター同好会の練習場所は音楽室で、月水金をコーラス部が使用するので、火木土に決まっていた。
音楽室には、レコードや楽譜、ステレオなどの機材と、ギター同好会のギターを収納する別部屋があり、コーラス部の練習日でも、私や同好会の他の2、3人のメンバーが入り浸っていた。
そんなわけで、コーラス部の1年女子とは顔見知り程度にはなった。
その中に私好みの女の子がいて、夏休み明けの9月に意を決して映画デートに誘った。
映画は『レット・イット・ビー』だ。
ビートルズ・ファンの私としては、観ないという選択肢はなかった。
断られたら、ギター同好会のメンバーを誘うつもりだったし、最悪ひとりでも行く予定だった。
ダメもとで、映画のタダ券があるんで、今度の日曜、映画観に行かん? と物のついでみたいな軽いノリで誘ったら、意外にもOKだった。
当日、ビートルズにハマっていた私は、映画館で2人並んで観ていたにもかかわらず、彼女のことは忘れるくらい、映画に集中というか没入していた。
映画を観る前に購入して何度も聴いていた、豪華写真集付きの『レット・イット・ビー』のアルバムの映像版を観ることができて、彼女といる楽しさよりも、その興奮のほうが優っていた。
すでに解散していたビートルズ・メンバーの、解散直前のひしひしと伝わる緊張感や寂寥感、時折見せるリラックスした雰囲気は、レコードでは味わえない至福の体験だった。
アップルビル屋上でのライブを観るに至っては、それこそ、武道館公演を観たオールドファンもかくありなんの心境だった。
映画のあとの心地よい疲労感のまま入った喫茶店では、ほとんど雑誌からの受け売りの、ビートルズに関するウンチクを半ば得意気に喋りまくっていた。
ネタが尽きたところで、彼女に映画の感想を尋ねたところ、あんまりわからんかった、途中でウトウトしていた、とのまさかの反応で拍子抜けだった。
聞けば、ピアノも弾く彼女は、クラシック一辺倒で、ビートルズはおろか、GSやフォークもほとんど聴かないという。
もちろん彼女を責めたりはできない。
私がクラシックのコンサートに出かけたら、同じような感想を漏らしたことだろう。
その後はとりとめもないクラスメートの話や、世間話をしたはずだけど、その内容はほとんど覚えていない。
それ以降、相性のなさを痛感した私は熱も冷め、彼女との距離はだんだん間遠になった。
さながら失恋の『レット・イット・ビー』だ。
その時のことは、ビートルズにまつわるほろ苦い青春のひとコマとして、古希の今でも記憶の引き出しにしまっている。
ギター同好会の練習場所は音楽室で、月水金をコーラス部が使用するので、火木土に決まっていた。
音楽室には、レコードや楽譜、ステレオなどの機材と、ギター同好会のギターを収納する別部屋があり、コーラス部の練習日でも、私や同好会の他の2、3人のメンバーが入り浸っていた。
そんなわけで、コーラス部の1年女子とは顔見知り程度にはなった。
その中に私好みの女の子がいて、夏休み明けの9月に意を決して映画デートに誘った。
映画は『レット・イット・ビー』だ。
ビートルズ・ファンの私としては、観ないという選択肢はなかった。
断られたら、ギター同好会のメンバーを誘うつもりだったし、最悪ひとりでも行く予定だった。
ダメもとで、映画のタダ券があるんで、今度の日曜、映画観に行かん? と物のついでみたいな軽いノリで誘ったら、意外にもOKだった。
当日、ビートルズにハマっていた私は、映画館で2人並んで観ていたにもかかわらず、彼女のことは忘れるくらい、映画に集中というか没入していた。
映画を観る前に購入して何度も聴いていた、豪華写真集付きの『レット・イット・ビー』のアルバムの映像版を観ることができて、彼女といる楽しさよりも、その興奮のほうが優っていた。
すでに解散していたビートルズ・メンバーの、解散直前のひしひしと伝わる緊張感や寂寥感、時折見せるリラックスした雰囲気は、レコードでは味わえない至福の体験だった。
アップルビル屋上でのライブを観るに至っては、それこそ、武道館公演を観たオールドファンもかくありなんの心境だった。
映画のあとの心地よい疲労感のまま入った喫茶店では、ほとんど雑誌からの受け売りの、ビートルズに関するウンチクを半ば得意気に喋りまくっていた。
ネタが尽きたところで、彼女に映画の感想を尋ねたところ、あんまりわからんかった、途中でウトウトしていた、とのまさかの反応で拍子抜けだった。
聞けば、ピアノも弾く彼女は、クラシック一辺倒で、ビートルズはおろか、GSやフォークもほとんど聴かないという。
もちろん彼女を責めたりはできない。
私がクラシックのコンサートに出かけたら、同じような感想を漏らしたことだろう。
その後はとりとめもないクラスメートの話や、世間話をしたはずだけど、その内容はほとんど覚えていない。
それ以降、相性のなさを痛感した私は熱も冷め、彼女との距離はだんだん間遠になった。
さながら失恋の『レット・イット・ビー』だ。
その時のことは、ビートルズにまつわるほろ苦い青春のひとコマとして、古希の今でも記憶の引き出しにしまっている。
ビートルズのジョージ、ストーンズのキース。どちらもヘタウマギタリストだ。キースに至っては、歳をとってその素人顔負けのヘタさに、磨きがかかってきた気もする。でも、そのサウンドには、他のギタリストには出せない独特な味わいがあるんだよね。 そんな味わいの小説を、Amazon Kindle Storeに30数冊アップしています。★★ 拙著電子書籍ラインナップ・ここから、またはプロフィールのQRコードから買えます。
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